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  • 2015/12/11

月刊バイオインダストリー 2015年12月号

シーエムシー出版

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【特集】環境ストレス耐性作物の開発に向けて

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特集にあたって
Introduction

篠崎和子 (東京大学)

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企業における環境ストレス耐性作物の開発の現状
―乾燥耐性トウモロコシを例として―
Current Status of Development of Stress Tolerant Crops in Industry
― Case of Drought Tolerant Corn―

山根精一郎 (日本モンサント(株))

 地球温暖化に伴う環境ストレスの中でも, 干ばつは収穫量への影響が大きく, その対策の一環として遺伝子組換え技術を利用した乾燥耐性作物が開発されている。モンサント・カンパニーが商品化した遺伝子組換え乾燥耐性トウモロコシは効果が高く, 生産者から支持を得ている。今後, 農業生産を維持・拡大する環境ストレス耐性技術の研究開発が期待される。

【目次】
1. はじめに
2. 環境ストレス耐性作物の開発
3. DroughtGard(R)トウモロコシ(MON87460)の乾燥耐性効果
4. DroughtGard(R)トウモロコシの乾燥耐性のメカニズム
5. アフリカにおける乾燥耐性トウモロコシ
6. おわりに

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統合オミックス情報解析と作物育種への利用
Effective Application of Large-Scale Omics Data and Knowledge-Based Information on Crop Plants

工藤 徹 (明治大学)
寺島 伸 (明治大学)
矢野健太郎 (明治大学)

 ゲノムやトランスクリプトームなどの大規模オミックス情報の蓄積に伴い, 有用遺伝子の探索と高度利用化の促進などが期待される。ここでは, 大規模な遺伝子発現情報に基づく遺伝子探索手法やWeb データベース・知識ベースの活用法, 圃場情報(フェノームなど)とオミックス情報の統合データベース整備について紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. 遺伝子発現情報解析
3. CAに基づく遺伝子発現ネットワーク構築
4. 高信頼度な遺伝子機能アノテーション情報の整備と活用
5. 圃場情報管理システムの整備
6. おわりに

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植物ゲノム編集技術の現状と作物育種への利用
Development and Application of Genome Editing for Molecular Breeding in Plants

雑賀啓明 (農業生物資源研究所)
土岐精一 (農業生物資源研究所)

 ゲノム編集技術は標的遺伝子を効率良く改変できる変異導入技術である。この技術は遺伝子の機能解析などの基礎研究のみならず, 植物の分子育種などの応用研究にも広く利用され始めている。ゲノム編集技術自体の開発も加速度的に進んでおり, 今後の進展が期待される。

【目次】
1. はじめに
2. 人工制限酵素
3. ゲノム編集技術
3.1 標的変異(targeted mutagenesis)
3.2 標的組換え( 遺伝子ターゲッティング, gene targeting[GT])
4. 植物研究へのゲノム編集の利用
5. おわりに

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植物の乾燥・高温応答の解明と耐性作物の開発に向けて
Analysis of Drought and Heat Stress Response in Plant for Developing Stress-Tolerant Crops

佐藤 輝 (理化学研究所)
篠崎和子 (東京大学)

 近年, 植物の環境ストレス応答の詳細な分子メカニズムが明らかにされつつある。その中で乾燥や高温ストレス耐性作物を開発するための重要な知見も得られており, 地球温暖化が進む中で環境変動による作物の減収を防ぐことが期待されている。本稿では, 環境ストレス耐性作物の開発に関わる知見や, 課題, その解決策などについて紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. 環境ストレス耐性向上の効果とその汎用性の考察
3. 環境ストレス耐性向上に付随する問題
4. 環境ストレス耐性向上の制御
4.1  プロモーター開発によるストレス条件限定的な制御
4.2 化学物質添加による条件限定的な制御
4.3  ストレス条件限定的な機能を持つ共役因子の開発
4.4 環境ストレス耐性と生長の複合的な制御
5. おわりに

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大型台風にも負けない強稈性を持つ耐倒伏性イネの開発
Development of Lodging Resistant Rice with a Strong Culm for Overcoming Large Typhoons

大川泰一郎 (東京農工大学)

 地球温暖化に伴う集中豪雨, 台風の大型化などによりイネの倒伏被害が拡大している。将来の食料, 飼料増産, バイオマスエネルギー原料としてイネを利用する場合, 重い穂, 地上部バイオマスを支える強健な稈に改良する必要がある。現在, イネゲノム情報を利用したマーカー選抜により効率的に耐倒伏性イネを開発できるようになってきた。

【目次】
1. はじめに
2. 強稈イネ品種の持つ特徴とその原因遺伝子
3. 強稈準同質遺伝子系統とそれらの集積による強稈コシヒカリの開発
4. 低リグニン性と強稈性を両立するイネの開発とその形質解明
5. 大型台風に負けない極強稈性イネの開発に向けて

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光障害を防ぐ植物ビタミンC トランスポーターの発見
Identification of a Vitamin C Transporter Required for Photoinhibition Tolerance

宮地孝明 (岡山大学)
森山芳則 (岡山大学大学院)

 ミトコンドリアで作られたビタミンCは葉緑体に運ばれ光障害を防ぐために使われている。一連の輸送過程は光障害の防御に重要であるが, よくわかっていなかった。著者らは, この過程を司るビタミンCトランスポーターを同定した。ビタミンCが光ストレスを軽減する分子機構の一端が解明された。

【目次】
1. はじめに
2. ビタミンCの役割
3. ビタミンCの輸送機構
4. 新しい輸送活性測定法の開発
5. ほ乳類のトランスポーター研究から得たヒント
6. 植物のビタミンCトランスポーターの発見
7. おわりに

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ナトリウム排除能が高いヨシ根におけるナトリウム下方移動の証明
Evidence for Na+ Exclusion to the Direction of Root Tips in Common reed

樋口恭子 (東京農業大学)
藤巻 秀 (日本原子力研究開発機構)

 筆者らは放射性Naと非破壊的画像化技術, および新たなデータ解析手法を用いて, ヨシの根では侵入したNaが地上部に到達する前に回収され根の先端に向かって送り返されていることを証明した。これは新たな耐塩性作物を作出する端緒となるとともに, 本法が植物生理学および農学に対して新たな展開をもたらすことを示している。

【目次】
1. ナトリウムに対する中生植物の応答
2. 植物体内でのナトリウム輸送・分配の観察
3. 生きた植物体内での物質移動の観察―PETIS―
4. ヨシ根におけるナトリウム下方移動の証明
5. 今後の展望
5.1 ナトリウム排除能の高いイネの作出に向けて
5.2 「核農学」の確立

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効率的な窒素栄養吸収を可能にする根-葉-根間長距離シグナル伝達
Effective Nitrogen Uptake Controlled by Root-to-Shoot-to-Root Long-Distance Signaling

田畑 亮 (名古屋大学)
松林嘉克 (名古屋大学)

 土壌中の硝酸イオンの分布は不均一であるため, 植物は個体全体として硝酸イオン取り込み量を最適に保つように, 根-葉-根間の情報伝達を介して, それぞれの根において取り込み量を変化させるシステムを保持している。本稿では, この全身的な硝酸イオン取り込み制御機構において, ペプチドホルモンCEP を介した長距離シグナルが果たす重要性について紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. CEPファミリーペプチド
3. CEP受容体の同定
4. CEP受容体の二重変異体における硝酸イオントランスポーターの発現量低下
5. 窒素欠乏によるCEPファミリーペプチドの発現量上昇
6. 全身的窒素要求シグナリングにおけるCEPの役割
7. CEPR受容体はCEPペプチドを地上部で認識している
8. CEPおよびCEP受容体を介した全身的窒素要求シグナリング
9. おわりに

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BIO R&D

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CHO細胞培養におけるIgG モノクローナル抗体の酸性電荷バリアントに対する温度シフトの影響
Effect of Temperature Shift on Levels of Acidic Charge Variants in IgG Monoclonal Antibodies in CHO Cell Culture

岸下昇平 (中外製薬(株))
青柳秀紀 (筑波大学)

 Chinese Hamster Ovary(CHO)細胞による抗体生産において, 酸性電荷バリアント(ACV)は抗体の重要な品質特性の一つであるが, その有効な制御に着目した培養法はこれまで報告されていない。臨床開発中の抗体の生産性向上をめざし, 製法改良を行ったところ, ACV 量の増加が認められた。この問題を解決するために, Failure Modes and Effects AnalysisとPlackett-Burman計画を活用したスクリーニングを試みた結果, ACV量の制御に有効な培養パラメーターを効率的かつ客観的に見出すことができ, その有用性が示唆された。得られた知見に基づき, 培養温度を低温にシフトさせることで, CHO細胞による抗体生産においてACV 量を低下させることに成功した。

【目次】
1. はじめに
2. Plackett-Burman計画による培養の制御パラメーターのスクリーニング
3. 培養温度シフト(シフト温度・シフトタイミング)が酸性電荷バリアントへ及ぼす影響の解析
4. おわりに

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TOPICS

応用脳科学の産業分野への利用拡大
Industrial Innovation by Applied Neuroscience

萩原一平 ((株)NTT データ経営研究所)
小俣貴宣 ((株)NTT データ経営研究所)
茨木拓也 ((株)NTT データ経営研究所)
山崎和行 ((株)NTT データ経営研究所)

 脳科学の産業応用は人工知能分野への脳科学研究成果の活用が行われるようになり, 急速に顕在化している。しかし, 欧米では, 以前より, IT分野に限らず, あらゆる産業分野において, 人間の脳活動, とりわけ無意識に行われる意思決定や, ダイナミックな脳システムに関する研究成果がビジネスに活用されている。本稿では, その一部を紹介しつつ, 全体的な動向を概観する。

【目次】
1. なぜ今脳科学なのか
1.1 企業が生み出すものは満足した顧客の脳
1.2 選好に関する神経科学的研究の背景
2. 新商品開発における神経科学の知見と技術の応用
2.1 脳のメカニズムに根差した商品設計
2.2  新商品が市場で消費者にどのように捉えられるかを神経科学関連技術で評価
2.3  商品・サービスの魅力を実際に消費者に訴求していく際の, 広告効果の予測や改善
3. 香りを活用したビジネスの拡がり
3.1 フレグランスの心理的効果と活用
3.2 フレーバーの心理的効果と活用
3.3 香りを活用した商品開発のトレンド
3.4  香りを活用した商品開発をサポートする共用データベースの開発
4. ニューロエコノミクス研究が示す応用脳科学の将来