商品詳細

  • シーエムシー出版
  • ¥4,950
  • 28MB
  • 2019/06/12

月刊バイオインダストリー 2019年6月号

シーエムシー出版

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井上國世 京都大学
根来誠司 兵庫県立大学 
武尾正弘 兵庫県立大学
柴田直樹 兵庫県立大学
樋口芳樹 兵庫県立大学
加藤太一郎 鹿児島大学
重田育照 筑波大学
寺田喜信 江崎グリコ(株)
古林万木夫 ヒガシマル醤油(株)
野村幸弘 野村食品技術士事務所
大日向耕作 京都大学
飛松裕基 京都大学
加藤健太郎 東北大学
Oluyomi Stephen Adeyemi ランドマーク大学
山本兼由 法政大学
安部伸治 広島工業大学


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【特集】食品・バイオにおける最新の酵素応用 II

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特集にあたって
Introduction

 食品およびバイオ分野における酵素応用の進歩には目を見張るものがある。その応用範囲は多岐にわたる。酵素応用の全貌を正しく理解し,咀嚼して自らの研究・開発に反映させることが,はなはだ困難になっている。本特集では,「食品・バイオにおける最新の酵素応用」と題し,本分野における最近の興味深い話題を取りまとめた。バイオインダストリー誌5 月号~6 月号をまたぐ特集号である。まず,ご多用にも拘らず,こころよくご執筆をお引き受けいただいた先生方に御礼申し上げたい。本特集が,食品およびバイオ分野における酵素の応用のみならず,ひろく酵素の科学と技術に関わる研究者,技術者,学生諸氏にとって,研究や学習の一助となれば,執筆者一同にとり望外の幸いである。
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ナイロン分解酵素NylB の構造進化,触媒機構とアミド合成への応用
Structural Evolution and Catalytic Mechanism of Nylon Hydrolase NylB,and Application to Amide Synthesis

 6−アミノヘキサン酸オリゴマーの酵素分解は,当初,ナイロン工場の排水処理が目的であったが,その後,非天然物質に対する酵素進化のモデル,立体構造と触媒機構の解明,タンパク質工学と分子進化工学による機能改良へ展開した。本稿では,これらの知見を紹介するとともに,加水分解の逆反応によるアミド合成において,酵素反応の方向性に影響を与える構造基盤について述べる。

【目次】
1 はじめに
2 ナイロン分解酵素遺伝子群のゲノム構造
3 NylBの立体構造と触媒機構
4 ナイロン分解酵素の進化
5 加水分解の逆反応によるアミド合成:酵素の内部平衡に影響を与える変異
6 終わりに

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酵素合成多糖(酵素合成グリコーゲン,酵素合成アミロース)の機能性と応用
Enzymatically Synthesized Polysaccharide, Glycogen and Amylose:Functionality and Application

 糖転移酵素を利用することで,スクロースなどの低分子からアミロースやグリコーゲンを合成できることは以前から知られていた。遺伝子組み換え技術によりこれら糖転移酵素を生産することで,大量生産が実現した素材が酵素合成グリコーゲンと酵素合成アミロースである。これら酵素合成多糖の合成と応用について紹介する。

【目次】
1 はじめに
2 糖転移酵素による多糖類の合成
2.1 酵素合成アミロース
2.2 酵素合成グリコーゲン
3 酵素合成グリコーゲンの機能
3.1 免疫賦活機能
3.2 その他の機能
4 酵素合成アミロースの機能
4.1 包接機能
4.2 酵素合成アミロース含有繊維(アミセル)
5 おわりに

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醤油醸造における原料分解と健康機能性の発現
Hypoallergenicity and Health Functions of Soy Sauce

 日本の伝統的な発酵調味料である醤油に関して,原料である小麦や大豆のアレルゲン分解・除去機構,ならびに有用な機能性成分である醤油多糖類の健康機能について,古くから言い伝えられている醸造工程の意義も振り返りながら解説する。

【目次】
1 はじめに
2 醤油の醸造工程
3 醤油醸造における原料たんぱく質の分解
3.1 小麦アレルゲンの分解機構
3.2 大豆アレルゲンの分解・除去機構
4 醤油醸造における原料糖質の分解
4.1 SPSの抗アレルギー作用
4.2 SPSの鉄分吸収促進作用
4.3 SPSの中性脂肪低下作用
5 おわりに

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食品製造時における酵素による品質劣化への対応
Measures Against Food-Quality Degradation by Enzymes During Food Processing

 食品の製造,加工,保存,流通中に起こる品質劣化の主な原因には,油脂の酸化や酵素の関与などがある。今回は,酵素が関与する品質劣化に焦点をあて,食品の製造加工の過程において,原料に含まれる酵素が働いて食品の品質劣化が起こった事例およびその対応について紹介する。
 
【目次】
1 はじめに
2 食品の品質に関与する酵素群
2.1 物性の変化に関与する酵素
2.2 呈味性の消失や不快臭の発生に関与する酵素
3 おわりに

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超高齢社会に挑む食の先端科学~新しい認知機能改善および血管拡張ペプチドの発見~
Cutting Edge in Food Science for Super Aged Society

 我が国の高齢化率は世界トップであり,少子高齢化が顕著で高齢化のスピードが速い。この状況を逆手に取り,超高齢社会に対応した高機能食品を創製し新規市場を開拓すれば世界をリードすることができる。2025 年には認知症が700 万人を超えるとされ,認知症パンデミックへの対応が急務である。「脳」は記憶学習を担う中心的な臓器であることから,これまでの認知症研究では主に脳にフォーカスが当てられてきた。しかしながら,疫学調査により糖尿病などの生活習慣病が認知症の危険因子であることが判明し,「末梢」環境に着目した新しい認知症予防戦略も考えられる。実際,これまで我々は末梢環境に焦点を当て認知機能低下を改善する食品由来ペプチドを見出している。一方,老化の実体解明も期待される。生体情報ネットワークは加齢により徐々に変容・破綻していく。この過程をジペプチドライブラリーを用いて解析し,さらに,加齢により反応性が低下した組織でも作用するペプチドを発見した。今後,これらの生理活性ペプチドをリードとして高機能ペプチドを開発するとともに,酵素利用による効率的な生産を図り新しい高齢者対応食品市場を創造することが期待される。

【目次】
1 はじめに
2 末梢環境に注目した認知機能低下の予防戦略
2.1 脳も臓器のひとつである−多臓器円環−
2.2 糖尿病は認知症の危険因子である
2.3 短期間の高脂肪食摂取により認知機能が低下する
2.4 新しい認知機能改善ペプチドの発見
3 老化の実体解明
3.1 生体の外部環境のシグナル受容,伝達および情報統合
3.2 ジペプチドライブラリーを用いた血管老化の実体解明
3.3 老齢ラットにおいて血圧降下作用を示すペプチドの解明
3.4 CCKを標的とした降圧ペプチドの探索と酵素利用によるペプチド生産
4 今後の展望

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リグニンの構造多様性とバイオマス利用に向けた代謝工学
Structural Variability of Lignin and Its Bioengineering for Biomass Utilization
 
 リグニンは,維管束植物を特徴づける二次細胞壁の主要成分であり,持続型社会構築を担う貴重な芳香族バイオマス資源でもある。本稿では,リグニンの生合成機構と構造多様性について解説するとともに,バイオリファイナリーへの応用も視野に入れたリグニンの代謝工学研究について著者が関わった研究を中心に紹介する。

【目次】
1 はじめに
2 リグニンの生合成と構造
2.1 ケイ皮酸モノリグノール経路を介したリグニンモノマーの合成
2.2 脱水素重合による高分子リグニンの生成
2.3 リグニンの構造多様性
3 代謝工学によるリグニンの構造改変
3.1 天然リグニンモノマー組成の制御
3.2 非天然型リグニンモノマーの導入
4 おわりに

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BIO R&D

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金属ナノ粒子の抗原虫効果とアミノ酸被膜による向上
Anti-Protozoan Effects of Metal Nanoparticles and These Improvements by Amino Acids Capping

 トキソプラズマ症は,トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)の経口摂取により引き起こされ,妊婦の感染により流産や胎児の脳症などの先天性感染症を,エイズ患者などには重篤な症状をもたらすことがある人獣共通の感染症である。現状のトキソプラズマ治療のための薬剤は限られており,薬価の高騰もあり,代替薬が求められている。本研究では,金,銀,白金の各々の金属ナノ粒子が,宿主細胞への細胞毒性が発現する1/20以下の濃度でトキソプラズマの増殖阻止に働くことを明らかとした。また,この作用は原虫の酸化還元シグナルに関与し,ミトコンドリアの膜電位に影響を与えることで,原虫の宿主細胞侵入,増殖,感染性に影響を与えることがわかった。さらに,金属ナノ粒子の表面にアミノ酸を被膜することで,トキソプラズマへの増殖阻止作用が増大することを明らかとした。アミノ酸被膜金属ナノ粒子の抗原虫作用には,酸化ストレスや低酸素誘導因子の調節によるキヌレニン経路の活性化等のトリプトファン代謝経路が関わっていることがわかった。本研究の成果は,金属ナノ粒子の抗トキソプラズマ薬のシーズとしての可能性,抗原虫作用の分子メカニズムの解明に向けた新たな知見を提供するものである。

【目次】
1 研究背景
2 金属ナノ粒子の抗原虫効果
3 アミノ酸被膜金属ナノ粒子による抗原虫効果の向上
4 金属ナノ粒子の抗原虫薬としての可能性
5 おわりに

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BIO R&D

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微生物ゲノムを活用したバイオプロセスによる金属資源化
Recovery of Metal with Bioprocess Using the Designed Escherichia Coli

 微量分析の発達と微生物ゲノム機能の解明から,微生物における金属の役割を包括的に理解できるようになった。持続可能な社会の観点から,循環型流通の肝となる金属資源供給にバイオプロセスの応用が期待されている。本稿では,金属資源化を可能にするバイオソープションやバイオアキュムレーションに向けた大腸菌デザインについて紹介する。


【目次】
1 サーキュラー・エコノミーにおける金属資源化
2 微生物バイオプロセスによる金属資源化
3 メタルバイオロジー
4 金属資源化への合成生物学的アプローチ
4.1 バイオアキュムレーション
4.2 バイオソープション
5 まとめ

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BIO ENGINEERING

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高齢化社会を支える情報技術-最新の情報技術を利用した高齢者のための生活支援-
Assistive Technology for the Elderly -Daily Living Support Using the Latest ICT Technology-

独居高齢者の会話機会を創出する手法を提案した。本論文では,非言語コミュニケーションによる言語野活性化の効果を高めるため,擬人的媒体や遠隔存在感伝達技術によって,遠隔の家族との自然な対話環境を提供するシステム概要について述べた。また,次期基盤研究開発の一環として,高画質没入型空間表示による外出体験システムを紹介した。

【目次】
1 はじめに
2 スマクロプロジェクト
2.1 システム概要
2.2 課題点
3 プレサービス実証実験
3.1 実証実験フォーメーション
3.2 QoL評価手法について
3.3 評価結果について
3.4 アンケート結果からの考察
3.5 サービス提供開始
4 次期基盤技術開発プロジェクト[I]
4.1 遠隔存在感伝達技術
4.2 プロジェクションマッピングを用いた遠隔存在感伝達技術
5 次期基盤技術開発プロジェクト[II]
5.1 社会的背景
5.2 疑似16 k湾曲配置高精細ディスプレイによる外出疑似体験システム
6 おわりに