書籍一覧
74 件
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月刊バイオインダストリー¥24,200
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月刊バイオインダストリー 2021年2月号
¥4,950
<著者一覧>
松原輝彦 慶応義塾大学
堀 克敏 名古屋大学
小澤祐市 東北大学
中野祥吾 静岡県立大学
小塚康平 静岡県立大学
南野優季 静岡県立大学
伊藤創平 静岡県立大学
駒崎友亮 (国研)産業技術総合研究所
木村賢一 岩手大学
鈴木 聡 (株)実正
神崎 浩 岡山大学
仁戸田照彦 岡山大学
畑生俊光 岡山大学
森 隆 埼玉医科大学
羅霄霖 (株)ジェヌインR&D
開 忍 (株)ジェヌインR&D
宮鍋征克 ㈱ジェヌインR&D
今井博之 甲南大学
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BIO R&D
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繊細な生体物質を触れずに操る無容器バイオフラスコ
Contactless Bioflask for Investigation of Sensitive Biological Samples
近年,定在波音波を利用して液滴を空気中で捕捉して浮揚させ,特殊な界面を利用した化学および生物反応を行う研究が始まっている。微小重力環境においてのみ可能な三次元の気-液界面を常温・常圧下,地球上で実装できる技術である。本稿では,この技術が次世代の無容器バイオフラスコとして利用できるかどうか,その可能性について解説する。
【目次】
1 はじめに
1.1 繊細な生体物質を扱う実験プロトコールの必要性
1.2 定在波捕捉による浮揚液滴
2 浮揚液滴内による生物有機合成反応
2.1 単軸超音波振動子による浮揚装置の構成
2.2 高分子重合反応
2.3 生体直交反応(クリック反応)
2.4 酵素による発色反応
2.5 制限酵素によるDNA切断反応
2.6 超音波による生体試料への影響
3 近年の研究動向
4 最後に
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微生物接着タンパク質AtaAの無限の可能性
Boundless Applicability of the Microbial Adhesive Protein AtaA
筆者らは,様々な材料表面に付着する細菌の細胞表層タンパク質AtaAを発見し,その性質,構造,接着機構の解明を進めてきた。さらに,AtaAを微生物固定化や接着分子材料へ利用する応用研究についても取り組んできた。本稿では,AtaA分子の特徴を説明するとともに,無限に拡がりつつある応用展開について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 微生物接着タンパク質AtaA
3 AtaAの微生物工学への応用
3.1 微生物固定化技術への応用
3.2 オン・ファイバーディスプレイ
4 AtaAの接着分子材料としての応用
4.1 リポソームのファイバーデコレーション
4.2 分子固定,表面機能化への利用
5 将来展望
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3次元情報を一挙に可視化するレーザー走査顕微鏡法
Laser Scanning Microscopy Acquiring Three-Dimensional Information from a Single Laser Scanning
レーザー走査型蛍光顕微鏡法は試料の3次元構造を詳細に可視化可能なイメージング法として生命科学分野を始めとして広く用いられているが,複数枚の2次元断層画像の重ね合わせから3次元化する従来法では,イメージングの高速化が容易ではなかった。本稿では,光の新しい特性を巧みに利用して深さ情報を一挙に可視化できるイメージング法について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 原理
2.1 長焦点ニードルスポット励起
2.2 蛍光信号に対するエアリービーム変換
3 ニードル顕微鏡システムによる3次元画像構築
3.1 顕微鏡システム
3.2 エアリービーム変換に基づく深さ情報の抽出
3.3 画像構築
4 おわりに
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配列解析を礎とした次世代蛋白質工学~難生産性L-アミノ酸酸化酵素の改良とD-アミノ酸動的光学分割法への応用を例に~
A Semi-rational Protein Engineering by Sequence-based Method and Development of Artificial L-amino Acid Oxidase.
40億年にわたる進化の過程において,生物は変異を遺伝子に蓄積することで,多様な機能を獲得してきた。遺伝子から転写・翻訳され生合成される酵素の進化を俯瞰すると,相同な立体構造を持ち類似の触媒反応を担う酵素であっても,分子全体に多数の変異が導入され,自在に基質特異性,生産性,安定性等の機能が改変されている。しかし,一つ一つの変異のほとんどは,生物の自然淘汰に対して有利でも不利でもない中立的な変異であり,蛋白質の機能においても中立的である。加えて分子進化による変異は極めて不規則であり,人間の目で変異による機能の変化を合理的に理解するのは極めて困難である。よって,実験科学的手法に依存したスクリーニング,構造生物学・分子進化工学的手法による合理的な改変が現在も主流となっている。しかし,これら手法に依存した技術開発や合理的改変のコストは総じて高く,バイオ技術の社会実装を阻む障壁にもなっている。我々は,拡大の一途を辿る遺伝子・配列データベースを,独自の機械学習型配列解析法により演繹的に解析,実験結果と照合することで,蛋白質・酵素機能のデザインが可能であるか検証してきた。本報では,次世代型の蛋白質工学技術の紹介と,適用例として難生産性L-アミノ酸酸化酵素の改良とD-アミノ酸動的光学分割法への応用を紹介する。
【目次】
1 次世代蛋白質工学とは?
2 人工L-アミノ酸酸化酵素の設計と動的光学分割
3 今後の展開
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高柔軟性シリコーン感湿材料の開発と状湿度センサへの応用
Hygroscopic Silicone Rubber Composite and Textile Based Humidity Sensor
近年,人が身に着けて使用する電子機器,「ウェアラブルデバイス」が話題を呼んでいる。本稿では,著者らが衣服型ウェアラブルデバイス向けに開発した布状湿度センサと,それを可能にした高柔軟性シリコーン吸湿材料について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 高柔軟性シリコーン感湿材料の開発
3 布状湿度センサの作製
4 おわりに
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久慈産琥珀に含まれる生物活性物質の多彩な化学構造と生物活性-メラニン産生抑制活性とコラーゲン産生促進活性の発見-
Diversity of Structures and Biological Activities of Bioprobes Isolated from Kuji Amber-Discovery of Inhibition of Melanin Production and Promotion of Collagen Production Activities in Kuji Amber-
久慈産琥珀の約5%を占めるアルコール可溶性画分には,他国産琥珀の場合とは大きく異なり,kujigamberolを中心に多数の新規構造を有する生物活性物質が含まれている。これまで,動物における高い抗アレルギー活性を報告してきたが,今般メラニン産生抑制とコラーゲン産生促進活性が細胞で新たに見出された。今後,それらの活性を有する新たな成分の発見とメカニズム解析,並びに抽出物を用いた多角的な商品化が期待される。
【目次】
1 はじめに
2 医薬品探索のための天然資源としての琥珀
3 久慈産琥珀の生物活性物質の構造
4 久慈産琥珀の抗アレルギー活性
5 久慈産琥珀のメラニン産生抑制活性
6 細胞外マトリックスとコラーゲン
7 久慈産琥珀抽出物の多角的な産業利用
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エノキタケ菌床抽出物の脂肪蓄積抑制効果とペット動物用サプリメントへの応用
Adipogenesis Suppression by Enokitake Mushroom Bed Extract and its Application to Pet Animal Supplements
エノキタケ栽培針葉樹菌床水抽出物が,脂肪蓄積抑制効果を示し,その抽出液を含む飲料を用いる飲水試験で,通常食給餌マウスに対して,体重増加抑制,血糖値抑制,脂肪蓄積抑制,腸内細菌叢改善効果等を示すことが判明した。食用キノコ生産で得られる菌床抽出物のペットサプリメント等への用途開発が期待される。
【目次】
1 はじめに
2 生物試験に供するキノコの培養とその抽出物の調製
3 エノキタケ栽培針葉樹材菌床抽出物の脂肪蓄積抑制効果
4 エノキタケ栽培針葉樹材菌床抽出物の血糖値上昇抑制効果
5 エノキタケ栽培針葉樹材菌床抽出物のマウス飲水試験
6 ペット用試作飲料の小型犬に対する試飲アンケート
7 終わりに
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没食子酸(α/β-セクレターゼ作用剤)はアルツハイマー病のマウスモデルの認知機能障害を改善しアルツハイマー様病態も軽減する
Gallic Acid is a Dual α/β-secretase Modulator that Reverses Cognitive Impairment and Remediates Alzheimer-like Pathology in the Alzheimer’s Disease Mouse Model
植物由来の没食子酸をアルツハイマー病のマウスモデルに6ヶ月間経口投与すると,認知機能障害が改善し,アルツハイマー様病態も軽減した。没食子酸がアミロイド前駆体蛋白質代謝を制御する2種類の切断酵素(α/β-セクレターゼ)に作用して,原因蛋白質の1つであるアミロイド-β蛋白質の産生を抑制することを明らかにした。
本稿では,没食子酸の概要,行動・認知機能障害の改善効果,脳アミロイド症の抑制効果,α/β-セクレターゼへの二重効果,抗炎症・抗酸化効果を紹介する。没食子酸は現行する処方薬との併用も可能であり,軽度認知障害の患者への適応も期待される。
【目次】
1 はじめに
2 没食子酸の概要
3 行動・認知機能障害の改善効果
4 脳アミロイド症の抑制効果
5 α/β-セクレターゼへの二重効果
6 没食子酸の抗炎症・抗酸化効果
7 まとめ
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食用キノコの自己消化反応を利用した植物からの遊離セラミドの生産
Free ceramide production from plants using enzymes prepared from mushrooms
セラミドは,化粧品やサプリメントの美容成分として一般消費者にも周知されてきた。その中でも注目されている角質層セラミドと同じ構造を持つヒト型セラミド(遊離セラミド)を,野菜や果物などの植物から作り出す研究を行った。植物にはグルコシルセラミドなどの糖セラミドはあるが,ヒト型セラミドは存在しない。この植物の糖セラミドを食用キノコの消化反応を利用して遊離セラミドに変え,機能性素材として展開する。
【目次】
1 はじめに
2 キノコの自己消化によるヒト型セラミド産生
2.1 植物スフィンゴ脂質
2.2 スフィンゴ脂質代謝経路生合成系と分解系
3 実験方法
3.1 キノコ自己消化後酵素液の調製
3.2 酵素反応
4 結果と考察
4.1 GIPC由来遊離セラミドの産生
4.2 GlcCer由来遊離セラミドの産生
5 おわりに
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BIO BUSINESS
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医薬品工業
世界の医薬品市場は2014 年に1 兆ドルを突破し,2019 年には1 兆2,500 億ドルを超え,今後も3~6%程度の成長が見込まれている。2018 年の国内医薬品の生産金額は,6 兆9,077 億円となり,前年比2.8%の伸びを示した。医療用医薬品,一般医薬品とも増加したが,配置用家庭薬は減少した。全体的にみると生産金額は年によりばらつきがあるが,製薬業界にとって厳しい状況が続いている。また,2019 年末から発生しているコロナウイルス(COVID-19)による肺炎に関して,2020 年,政府はPCR 検査を幅広く行い,治療薬やワクチンの研究開発や生産体制の整備を行い,医療提供体制を強化することを発表している。今後,医薬品業界に大きな影響を及ぼすと思われる。
【目次】
1 医療用医薬品
2 一般用医薬品
3 臨床検査薬
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《BIO PRODUCTS》
α-アミラーゼ(α-Amylase)
β-アミラーゼ(β-Amylase)
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月刊バイオインダストリー 2021年1月号
¥4,950
<著者一覧>
矢澤一良 早稲田大学
孫 輔卿 東京大学
飯島勝矢 東京大学
葛谷雅文 名古屋大学
鈴木隆雄 桜美林大学
大澤俊彦 愛知学院大学
長竹貴広 (国研)医薬基盤・健康・栄養研究所
國澤 純 (国研)医薬基盤・健康・栄養研究所
山口浩平 東京医科歯科大学
戸原 玄 東京医科歯科大学
香川靖雄 女子栄養大学
功刀 浩 帝京大学
田中友規 東京大学
安藤 進 IMS グループ クローバーのさと
大渕修一 (地独)東京都健康長寿医療センター研究所
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【特集】抗フレイルと予防医学
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抗フレイルと予防医学~特集にあたって~
Anti-Frail for Preventive Medicine
1 はじめに
2 ロコモティブシンドロームからフレイルへ
3 ロコモ,フレイル対策としての運動系・抗疲労系機能性食品素材の有効活性
4 抗疲労系機能性食品と「筋肉・脳相関」
5 おわりに
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フレイル対策の実践
Combined Practces for Frailty Prevention
フレイルは健康状態と要介護状態の中間的な段階であり,可逆性があるため,適切なタイミングでの予防・対策により健康な状態に戻れる概念である。フレイル予防・介入には,「運動」「栄養・口腔」,「社会参加」の3 本柱が重要とされている。そのなか,「運動」と「栄養・口腔」は身体的フレイルの予防・介入の中核となる。加齢による骨格筋量の減少や食欲不振による慢性的な低栄養は相互に影響し,さらに悪循環となり,心身機能の低下を加速させることからもサルコペニアと低栄養に対する予防・介入はフレイル予防対策の大きな部分を占めている。現在,フレイルの予防・介入策は確立されているとは言い難いが,アジア太平洋のフレイル管理の診療ガイドラインでは,フレイル管理の原則として,「フレイルはサルコペニアと重複する。そのため管理の原則は両者間で同一になりうる」と述べられている。日本サルコペニア・フレイル学会の「サルコペニア診断ガイドライン2017 年版」においても,栄養と運動がサルコペニアの発症を予防・抑制できるかについて,強く推奨すると示している(表)。
実際,フレイル高齢者における運動や栄養の介入効果については多数報告されている。「運動」や「栄養」単独の効果だけではなく,組み合わせによる増大効果(augment effect)に関してもランダム化介入試験などによる検討が行われ,効果検証されるようになってきた。このような動向からも,フレイルの予防・介入策は「運動」,「栄養・口腔」,「社会参加」をどのように組み合わせて,相乗効果をもたらすか,また続けられる組み合わせはなにかが重要になっている。最近の知見をあげながら,その組み合わせの例を紹介する。
【目次】
1 運動:種類の組み合わせ効果
2 栄養:運動や口腔との組み合わせ効果
3 ウイズ・ポストコロナ社会における「社会参加」の創意工夫
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フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドロームの概念
The Concept of Frailty, Sarcopenia, and Locomotive Syndrome
フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドロームは昨今健康寿命延伸との関連性で良く聞かれるタームである。ただ,それぞれの正確な定義,診断法などは意外と周知されていない。本章ではそれぞれの概念,診断,相違点,地域高齢者の有病(症)率などについて言及する。
【目次】
1 はじめに
2 フレイルの概念
3 サルコペニア
4 ロコモティブシンドローム(運動器症候群)
5 フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドロームとの相互関係
6 さいごに
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フレイルと認知症
Frailty & Dementia
わが国の超高齢社会における高齢者の健康の大きな課題となっているフレイルと認知症について両者の概念,疫学的データを述べた。特に認知的フレイルの特徴や,認知症の前段階とも考えられる軽度認知障害(MCI)における認知症予防対策に関する科学的根拠の構築状況についても実験例を中心として紹介した。
【目次】
1 フレイルと予防対策
2 認知的フレイルについて
3 認知症予防としての軽度認知障害の重要性
4 BDNFと脳機能
5 わが国の地域在宅高齢者を対象としたBDNFに関する研究の紹介
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フレイルとフリーラジカル障害
Frailty and Free Radical Damage
高齢期では加齢に伴ない「フリーラジカル・活性酸素」の過剰な産生が「酸化ストレス障害」を生じ,「フレイル」の大きな原因となっている。本稿では,「酸化ストレス障害」のメカニズムを概説し,「植物エクオール」や「アスタキサンチン」,「レモンフラボノイド」などの「抗酸化物質」による「フレイル」予防の可能性を紹介する。
【目次】
1 「フレイル」と「サルコペニア」
2 「酸化ストレス障害」はなぜ生じるか?
3 「フレイル」の予防における「酸化ストレス障害バイオマーカー」の開発への期待
4 「フレイル」予防における「抗酸化物質」への期待
5 抗酸化評価系のヒト臨床への応用
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加齢による免疫フレイル・炎症・脂質代謝
Frailty in Immune System:Ageing, Inflammation and Lipid Metabolism
加齢は感染症への罹患や重症化のリスク因子であり,その背景には免疫老化や炎症制御機構の破綻が考えられる。本項では,免疫老化におけるT 細胞の質的変容や,胸腺や二次リンパ組織の構造変化,ワクチン応答の差,また筆者らが最近見出した抗炎症性脂質代謝物に関する知見を交えて最近の話題を提供する。
【目次】
1 はじめに
2 加齢による胸腺の退縮とT細胞の変容
3 加齢による二次リンパ組織の変容とワクチン応答の減弱
4 炎症制御における脂質代謝の重要性
5 ω3脂肪酸代謝物による新たな炎症制御機構
6 おわりに
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口から始める,フレイル予防
Frail Measures Starting From the Oral Cavity
オーラルフレイルは,口腔機能の軽微な低下から心身の機能低下に至るまでの一連の現象および過程を指す。フレイルは健常と障害の中間に位置するため,適切な介入による予防効果は高い。口腔・嚥下機能向上には,口腔だけでなく,身体へのアプローチも重要である。フレイル対策には,口腔・嚥下,運動,栄養などが一体化したプログラムの構築が必須であり,同時に対象者を適切に動機付けすることも重要である。
【目次】
1 オーラルフレイルとは?
2 オーラルフレイル理解の第一歩,口腔機能って何??
2.1 口腔乾燥
2.2 口腔衛生環境
2.3 舌圧
2.4 咬合力
2.5 咀嚼能力
2.6 嚥下機能
3 オーラルフレイルの勘所 口腔と全身の関連について
4 オーラルフレイルを広げるために~高齢者のニーズを捉える~
5 まとめ ~オーラルフレイルからの抗フレイル~
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抗フレイルのための栄養学
Nutrition to Prevent Frail
フレイル予防の基本は全ての栄養素を揃える食品多様性である。特にサルコペニアを予防する蛋白質摂取量は1.2~1.5 g/ 体重kg/ 日を3 食に等しく分け,消化能と同化能の低下に半消化態蛋白質,ロイシン,HMB 等を使う。さらに炎症性老化を防ぐ食事炎症指数の低い食事とし,老化で拡大する個人差の原因である遺伝子多型に対応した食事が望ましい。
【目次】
1 フレイル検診
2 心身活動と食事多様性で予防
3 低栄養とサルコペニアの予防
3.1 三大栄養素の最適な割合
4 フレイル予防のビタミン・ミネラル
5 炎症性老化を防ぐ食事
6 フレイルからの回復運動
7 遺伝子対応抗老化栄養
8 おわりに
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フレイルと老年期の精神疾患:うつ病,認知症との関連を中心に
Frailty and Elderly Psychiatric Disorders:Focus on Depression and Neurocognitive Disorders
フレイルと関連する精神疾患として,老年期うつ病や認知症との関連がよく検討されている。うつ病はフレイルの危険性を高め,フレイルはうつ病の危険性を高める。認知症も同様であり,特に歩行速度の低下や筋力低下は認知症発症のリスクとなる。これらの3 病態は互いに関連しており,老年期の健康維持において極めて重要な要因となる。日常的な運動習慣は,これらの病態の予防に重要である。
【目次】
1 はじめに
2 うつ病とフレイル
3 認知機能障害とフレイル
4 抗フレイル対策
5 おわりに
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社会的フレイル
Social Frailty
フレイルの社会的側面(社会的フレイル)は,外出・生活範囲,社会的ネットワーク(人とのつながり),社会的サポート,社会的脆弱な状況(一般・医療資源へのアクセス,経済的困窮など)が絡み合うため,慎重に見極め,介入する必要がある。社会的フレイル対策は貧困対策や生活支援は全体に講じつつも,社会参加や人とのつながりの醸成には性差を加味することが留意点である。
【目次】
1 フレイルとは?
2 社会的フレイルとは?
3 社会的フレイル対策はなぜ必要か?
4 社会的フレイルに性差はあるのか?
5 社会的フレイル対策「人とのつながり」の重要性
6 さいごに
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後期高齢期に要介護にならないために
To Avoid The Requirement of Nursing Care in Late Old Age
後期高齢期に入ると健康上の不具合が多くなる。平均寿命に対して健康でいられる期間はおよそ10 年短いといわれる。介護保険の世話にならないためには第1 に認知症にならないことである。認知症予防を目指す臨床試験の現状を述べる。第2に高齢者は感染症に罹りやすい問題である。免疫力の低下に帰せられるが,特に感染阻止の自然免疫力を高める重要性を述べる。
【目次】
1 はじめに
2 認知症を回避する試み
2.1 中枢神経系の老化─シナプス老化から説明
2.2 中枢神経機能の改善─シナプス機能の改善から
2.3 高次脳機能を向上させる─脳可塑性の賦活によって
2.4 認知症のリスク要因─疫学研究からわかってきたこと
2.5 認知症予防─臨床試験の現状から
3 免疫系の賦活
3.1 免疫系の老化─高齢者の易感染性の理由
3.2 免疫力を高める方法─自然免疫力を高めるのがベターか
3.3 ビタミンD(VD)による感染症流行の抑え込み─有望な臨床効果
4 おわりに
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フレイルと高齢者スポーツ
Sports Participation Preventing Frailty Among Old Persons
超高齢社会に於いては,疾病の予防にくわえて加齢に伴う心身機能,並びに社会機能の低下を予防していく必要がある。この加齢に伴う心身機能や社会機能の低下のうち可逆的なものを日本老年医学会はフレイルと定義した。要介護状態となる原因は疾病よりフレイルが多い。高齢期の生活の質を高めるためにもフレイル予防が大切となる。
本稿では,このフレイル予防に有効と考えられる介入をレビューし,これらの要素を持つスポーツについて論じたい。
【目次】
1 はじめに
2 介入
3 スポーツ
3.1 運動機能低下
3.2 認知機能低下
3.3 口腔機能低下
4 おわりに
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月刊バイオインダストリー 2020年12月号
¥4,950
<著者一覧>
川添嘉徳 佐賀大学
上村大輔 神奈川大学
池松真也 沖縄工業高等専門学校
石上友章 横浜市立大学
荒川健太郎 横浜市立大学
陳 琳 横浜市立大学
内田浩太郎 横浜市立大学
西郷紗絵 横浜市立大学
菅原拓哉 横浜市立大学
木野旅人 横浜市立大学
中島理恵 横浜市立大学
土肥宏志 横浜市立大学
安部開人 横浜市立大学
桑江明子 横浜市立大学
杉山美智子 横浜市立大学
鹿野耕平 旭川医科大学
川辺淳一 旭川医科大学
坂根郁夫 千葉大学
八尾 滋 福岡大学
杉山友康 東京工科大学
髙橋史樹 信州大学
片山礼司 久留米大学
櫻井謙三 聖マリアンナ医科大学
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BIO R&D
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抗肥満薬リードの開発
Drug Leads for Anti-obesit
近年,肥満人口は年々増加している。肥満は様々な生活習慣病のリスク因子であり,その解決は世界的にも喫緊の課題である。私たちはこれまで,肥満の治療に対して効果を示す天然物の取得に努めてきた。本稿では,私たちの取り組みによって見出した二種類の天然物について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 カワラタケより得られたテルナチン
3 海洋性藍藻から得られたヨシノンA
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“琉れん草”有効成分を活用したサプリメント開発(沖縄生物資源の産業利用)
The Supplement Development that Utilized the“Ryurensou”Grass Active Ingredient(The Industrial use of okinawa Bioresources)
「琉れん草」は沖縄県の名護市と恩納村の一部で栽培され,食されてきた葉物野菜である。本研究開発では,有効性を高めるためのサンプルの調製法を検討し,そのサンプルを用いて「免疫賦活作用」や「抗腫瘍活性」を検討した。しかし,これら作用は商品開発において訴求効果が弱いと考えられ,「抗肥満効果」の活性を検討した。その結果,「抗肥満作用」が確認された。
【目次】
1 はじめに
2 沖縄の自然環境に適した栽培状況
3 “琉れん草”の強みを探す
3.1 生理活性探索用サンプル調製
3.2 免疫賦活作用
3.3 抗腫瘍活性
4 やっと見つけたストロングポイント
4.1 沖縄県民における健康上の留意点
4.2 抗肥満活性探索
4.3 株化細胞を用いたin vitroアッセイ
4.4 マウスを用いたin vivoアッセイ
5 抗肥満作用検索結果考察
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腸管粘膜バリア機能に着目した,新たな動脈硬化治療
New Therapeutic Approaches For Atherosclerosis Targeting Intesitinal Mucosal Barrier Function
動脈硬化症は,国民の健康長寿を妨げる主要な疾患である。高血圧・動脈硬化症・脂質異常症といった,生活習慣病に共通する終末像であり,狭心症・心筋梗塞・脳梗塞の原因になる。重要臓器の虚血症状によって有症化するまで,自覚・他覚されることがないことから,動脈硬化症に対する医療は,カタストロフ的な病状に対する医療が展開されている。その結果,有症時にすでに,全身の動脈が侵されていることを経験することも,しばしばである。我々は,動脈硬化症の成因に迫り,初期の段階での病的な状態を診断し,特異的な手段によって解消することで,生存や健康を脅かす動脈硬化症の制圧の実現へ向けた研究を進めている。本稿では,その一部の成果についてご紹介したい。
【目次】
1 はじめに
2 無細胞タンパク質合成技術を応用した高感度ハイスループット・自己抗体アッセイによる,動脈硬化症患者の自己抗体解析
3 腸内細菌による脾臓B2細胞の活性化と,動脈硬化症の制御
4 腸管バリア機能の改善による,動脈硬化症の制圧
5 腸内共生微生物(Commensal Microbiota)と動脈硬化症(Atherosclerosis)-これまでと,これから
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EphA7陽性多能性周幹細胞の組織再生における役割と臨床応用にむけて
Role of EphA7+Multipotent Pericytes in Tissue Regeneration and its Clinical Appplication
組織の隅々に分布する毛細血管,その構成細胞である周細胞群の中から,多能性幹細胞の,EphA7をマーカーとして末梢組織から分離した。EphA7陽性周幹細胞(Capillary stem cells;CapSCs)は,血管細胞や骨格筋細胞を含む間葉系および神経系細胞への多分化能を有し,優れた組織再生能を示す。本稿では,多細胞生物が維持していく上での基盤細胞としてのCapSCsの役割や臨床応用への展望について概説する。
【目次】
1 はじめに
2 微小血管内の多能性幹細胞
2.1 多能性周細胞(MPCs)は主要な体性幹細胞なのか?
2.2 不死化細胞を利用した新しいMPCsの識別
3 多細胞生物におけるEphA7 陽性PCsの役割
3.1 血管新生:「毛細血管」前駆細胞として機能するか?
3.2 神経再生:CapSCsは「神経血管伴走化」の中心的な役割を果たすか?
3.3 骨格筋再生:CapSCsは,持続的な筋芽細胞供給能があるか?
4 おわりに
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科学的根拠に基づいた継続が容易な2型糖尿病リスク低減食品・サプリメントの開発
Development of Risk Reduction Foods/supplements of Type 2 Diabetes that Have Scientific Evidence and is Easily Continued
2型糖尿病の症状改善のためには,継続的な日常の運動や味気ないエネルギー調整食の持続的摂取が必要であり,継続が難しい。我々は,従来注目されず盲点だったミリスチン酸に注目し,科学的根拠に基づいた,楽に血糖値を下げ且つ肥満を軽減する,継続が容易な2型糖尿病のリスク低減食品・サプリメントの製品化を目指している。
【目次】
1 はじめに
2 目指す製品
3 製品の分析と波及効果
3.1 新規性,優位性
3.2 市場性
3.3 波及効果
4 製品化・事業化へ向けて
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小口径・閉鎖系内表面の抗血栓性を可能にする新規バイオマテリアル創製技術
New Biomaterial Creation Technology that Enables Antithrombotic Properties on the Inner Surface of Small-diameter or Closed Systems
側鎖に長鎖アルカン鎖を持つ高分子はこのユニットで結晶化し,ポリエチレンなどの難改質性高分子表面と強い相互作用を示す。この特性を活かし,親水性などの機能を持つユニットを対に持たせたブロック共重合体は,PE表面を簡単に改質することができ,種々の用途に展開が可能である。本報では,この側鎖結晶性ブロック共重合体を用いた新たなバイオマテリアル創製技術について述べる。
【目次】
1 緒言
2 側鎖結晶性ブロック共重合体とその機能
3 抗血栓性機能について
4 終わりに
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がん幹細胞の形態を識別する人工知能の開発
Development of an Artificial Intelligence for the Segmentation of Cancer Stem Cells in Microscope Image
がん組織は少数のがん幹細胞によって維持,亢進される。したがって治療や診断法を開発する標的として注目されてきた。そのがん幹細胞は未分化かつ特徴的な形質・形態を持つことが知られる。一方,人工知能による画像識別技術が飛躍的に進歩している。我々は条件付き生成的敵対的ネットワークを使用して,その識別を試みた。
【目次】
1 はじめに
2 CSCの形態と画像認識技術
3 培養したCSCを深層学習したAIの作成
4 培養したCSCを認識するAIの改善策
5 腫瘍組織に存在するCSCを深層学習したAIの作成
6 おわりに
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電気化学発光による薬毒物の検出
Electrochemiluminescence for Primary Screening of Drugs and Poisons
法令などにより規制されている化学種である薬毒物を分析するため,ラボ分析に加えて,現場での予備的な試験が必要とされている。今回,電気化学発光原理に基づく薬毒物の分析方法について基礎および応用に関する知見の取得を行ったため,本稿で紹介する。市販の予備的な検査キットと合わせることで,分析結果の誤判定防止の一助として提案したものである。
【目次】
1 はじめに
2 電気化学発光を利用した薬毒物スクリーニングに向けた取り組み -覚醒剤の分析を中心に-
3 超音波照射条件下における新しいECL反応場を用いた分析
4 おわりに
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BIO ENGINEERING
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臓器外形3Dプリントモデルで触覚を再現するhybrid型VR
Tactile Sensing Hybrid Virtual Reality with Organ-shape 3D Printed Model
近年,virtual reality(VR)技術の医学・医療分野への応用が進んでおり,教育やトレーニングツールとしての期待が大きい。本稿で解説する「臓器外形3D プリントモデルで触覚を再現するhybrid 型VR」は,VR 技術の持つ大きな課題を補完するものであり,医療・医学・教育・産業などの広い分野での導入や応用が期待される。
【目次】
1 はじめに
2 医学・医療分野におけるVR の活用状況
3 VR解剖画像観察の特徴と課題
4 触知可能な既存の医療用ツール
5 VR環境での触覚再現技術
6 触覚を再現する補完的技術の開発
7 VR臓器画像と3Dプリントモデルの重畳・同期
8 本技術の特徴
9 臓器外形3Dプリントモデルの特徴
10 医学・医療分野での用途
10.1 診察
10.2 教育
10.3 研究
11 そのほかの応用可能な用途例
11.1 リハビリテーションへの組み込み
11.2 認知症予防ツールとしての活用
11.3 工業・産業への応用
12 おわりに
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近未来の脳卒中診療~脳卒中診療補助アプリケーションの開発~
Medical Treatment of Stroke in The Near Future
本邦において死因および介護を要する疾患として常に上位に位置する脳卒中における診療格差の均霑化は以前より大きな課題となっている。近年,IT 技術の発展と医療の融合は目覚ましく,脳卒中領域においても例外ではない。ここでは,2つの新たな脳卒中関連機器について,実臨床の課題も踏まえながら紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 脳卒中診療の均霑化
3 脳卒中診療補助アプリケーション;OneStroke
4 脳卒中CT画像自動読影アプリケーション;Abierto
5 近未来における脳卒中診療の可能性
6 さいごに
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月刊バイオインダストリー 2020年11月号
¥4,950
<著者一覧>
宮崎 均 筑波大学
浅野敦之 筑波大学
國府大智 筑波大学
安井貴之 筑波大学
中島 章 東京工業大学
砂田香矢乃 (地独)神奈川県立産業技術総合研究所
永井 武 (地独)神奈川県立産業技術総合研究所
石黒 斉 (地独)神奈川県立産業技術総合研究所
高橋弘毅 関西医科大学附属病院
梶野健太郎 関西医科大学附属病院
佐々木健一 関西医科大学
鈴木啓章 山梨大学
川原敦雄 山梨大学
松岡浩司 埼玉大学
島村宗尚 大阪大学
中神啓徳 大阪大学
冨永昌人 佐賀大学
坂本憲児 九州工業大学
大野宏毅 産業医科大学
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BIO R&D
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機能性作物未利用部位の生殖障害改善への有効活用
Effective Utilization of Unused Parts of Functional Crops for Improving Rreproductive Failure
機能性作物は通常特定の部位のみが利用され残りは廃棄される。未利用部位を有効活用することは,農作物に新たな付加価値を与え儲かる農業に繋がるだけでなく,安価な原材料として,人だけでなく家畜への応用など様々な可能性を生み出す。本稿では,昨今問題となっている人や家畜のストレスによる生殖障害に焦点を当て,著者らが構築した生殖障害改善評価系を用いて明らかとなった未利用部位の有用性を紹介する。
【目次】
1 機能性作物の未利用部位の有効活用とは
2 人および家畜の生殖障害の現状
3 機能性作物の未利用部位を用いたストレス依存的な生殖障害改善の具体例
3.1 オリーブ葉の有効活用
3.2 アシタバの茎の有効活用
3.3 シャクヤクの葉の有効活用
3.4 コーヒーチェリー残渣の有効活用
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抗菌・抗ウイルス活性を有する撥水性複合酸化物
Hydrophobic Complex Oxides with Antiviral and Antibacterial Activities
昨年末に発生した新型コロナウイルスは,未だ世界中で猛威を振るっている。感染の「予防」や「拡大抑制」の技術や知識は「ワクチンや治療法の開発」と同様に,極めて重要である。本稿では最近筆者らが見出した,抗ウイルス作用を有する新しい撥水性無機複合酸化物についてその開発の経緯と作用について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 無機抗ウイルス材料
3 撥水性と抗ウイルス性
4 自己撥水性を有する希土類酸化物
5 撥水性と抗菌・抗ウイルス性を併せ持つモリブデン酸ランタン(LMO)
6 活性向上・機能性付与の試み
7 終わりに
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点滴開始までの時間短縮を可能とした新たな点滴キットの開発
A New Intravenous Drip Infusion Kit Shortening The Time for Preparation.
点滴を開始するまでに点滴セットを組み立てる必要があり,少なくとも数十秒から数分の時間を要する。医療現場では点滴開始までの時間短縮と労力の軽減が求められている。点滴開始までの時間を大幅に短縮し,労力不足の解消に繋がる新たな点滴キット開発について報告する
【目次】
1 はじめに
2 点滴の必要性
3 点滴の構造について
4 点滴の作成
5 現行の問題点
6 新たな点滴キットについて
7 期待できる用途や効果
8 終わりに
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ゲノム編集技術を活用した有害外来魚の戦略的な駆除
Strategic Extermination of Harmful Non-native Fish Using Genome Editing Technology
琵琶湖ではブルーギルやオオクチバスなどの外来魚による在来魚の食害が問題となっている。ゲノム編集技術はピンポイントでゲノム改変を誘導できる発生工学的手法であるが,生殖発生に関与する遺伝子をゲノム編集技術で破壊した有害外来魚を作製し,それらを湖沼に放流することで標的とした有害外来魚を選択的に駆除する戦略が考えられている。我々は,孵化腺に特異的な発現を示す遺伝子をゲノム編集技術で破壊したゼブラフィッシュが孵化不全を伴う胚性致死となることを見出したので,この知見が生殖発生の制御だけでなく孵化不全を誘導することで有害外来魚の個体数を制御できるのではないかと考えている。
【目次】
1 はじめに
2 klf17遺伝子破壊ゼブラフィッシュの孵化不全の表現型
3 klf17遺伝子破壊ゼブラフィッシュにおける孵化腺細胞の欠損
4 オオクチバスにおけるklf17遺伝子の破壊を基盤とする個体数の制御
5 おわりに
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糖-タンパク質相互作用解析への分子間FRETの活用
Intermolecular FRET can be applied for Evaluation of Carbohydrate-protein Interactions.
糖-タンパク質間の相互作用は弱いため,糖鎖クラスター効果を利用して親和力の向上を行った。また,本論文では,その解析法において,主として蛍光分光法の利用について述べる。糖鎖は蛍光発光しないため,レクチン由来の蛍光発光や蛍光発色団を導入した基質を合成するなど,種々の対応を行ってきたのでその一端を紹介する。
【目次】
1 研究背景
2 糖-タンパク質相互作用解析における最近の例
3 まとめ
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RANKL部分ペプチドMHP1による炎症性疾患の治療法開発
Development of Parial Peptide of RANKL, MHP1, for Treatment of Inflammatory Diseases
炎症制御は脳梗塞や乾癬,多発性硬化症などの様々な炎症に関連する疾患において重要な課題である。本稿では,TLR関連炎症を抑制する新たな機能性ペプチドであるRANKL部分ペプチドMHP1について,これらの疾患への治療応用の可能性について概説する。
【目次】
1 はじめに
2 脳梗塞後炎症の制御に関わるRANKL/RANKシグナルの発見
3 破骨前駆細胞に作用しないRANKL部分ペプチドMHP1の開発
4 MHP1による脳梗塞治療
5 乾癬および多発性硬化症への応用可能性
6 MHP1の新たな作用機序と今後の課題
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酵素バイオ発電・酵素バイオセンサのための電極設計技術
Electrode Design Technology for Electricity Generation and Biosensors Utilizing Enzyme
近年,超低消費電力・低電圧で動作可能な超小型パッケージICが開発されたことにより,ポータブル血糖値センサに続く,酵素を用いたデバイス開発が新しいフェーズを迎えている。本校では,筆者が研究を進めてきた酵素バイオ発電開発のための電極設計について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 酵素と電子コミュニケーション
3 酵素の配向制御
4 ウェアラブル型酵素バイオ発電
5 おわりに
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BIO ENGINEERING
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生活習慣病予防のための体液粘度測定装置
Body Fluid Viscosity Measuring Device for the Prevention of Lifestyle-related Diseases
体液粘度は,生活習慣病をはじめとする多くの疾患のマーカーとなる可能性が指摘されている。しかし現在,微量の体液粘度測定に特化した測定装置は存在しない。九州工業大学と産業医科大学は体液粘度測定を目指した粘度測定装置の共同開発を進めている。その内容について報告する。
【目次】
1 はじめに
2 マイクロ流体チップを用いた粘度測定手法
3 毛細管を用いた粘度測定手法
4 非ニュートン流体への適用
5 おわりに
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BIO BUSINESS
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保湿用化粧品に使われる生薬・薬用植物の市場
1 α-トコフェリルレチノエート
2 ベタイン
3 大豆タンパク分解物
4 デオキシリボ核酸(DNA)
5 ポリアスパラギン酸ナトリウム
6 納豆抽出物
7 大豆抽出物
8 水溶性コラーゲン
9 乳酸菌発酵代謝液
10 キトサンおよびその誘導体
11 ヒアルロン酸ナトリウム
12 トレハロース
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世界のバイオプラスチックの市場
1 市場規模
2 地域別動向
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月刊バイオインダストリー 2020年10月号
¥4,950
<著者一覧>
小川 順 京都大学
安藤晃規 京都大学
奥田知生 京都大学
菊川寛史 静岡県立大学
阪本鷹行 徳島大学
櫻谷英治 徳島大学
岸野重信 京都大学
藤原昂平 慶應義塾大学
磯部洋輔 (国研)理化学研究所
有田 誠 慶應義塾大学
竹田浩章 (国研)理化学研究所
和泉自泰 九州大学
馬場健史 九州大学
守口 徹 麻布大学
原馬明子 麻布大学
石田 渓 (国研)医薬基盤・健康・栄養研究所
長竹貴広 (国研)医薬基盤・健康・栄養研究所
國澤 純 (国研)医薬基盤・健康・栄養研究所
小倉正恒 国立循環器病研究センター研究所
後藤 剛 京都大学
岩瀬麻里 京都大学
川原崎聡子 京都大学
高橋春弥 京都大学
野村 亘 京都大学
井上和生 京都大学
河田照雄 京都大学
河島 洋 サントリーグローバルイノベーションセンター㈱
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【特集】ω-3脂肪酸
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特集にあたって
-ω-3 脂肪酸をつくる・理解する・展開する-
Introduction -Producing, Understanding, Developing ω-3 Fatty Acids-
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油糧微生物による種々のω3 脂肪酸含有油脂の発酵生産
Production of Various ω3-polyunsaturated Fatty Acid-containing Lipids by Oleaginous Microorganisms
オメガ3 高度不飽和脂肪酸(ω3-PUFA)は近年多彩な生理機能や有効性が報告され,健康維持に欠かせない食品成分として認知されつつある。ω3-PUFA のうち,ドコサヘキサエン酸(DHA),エイコサペンタエン酸(EPA)などは,魚油が主要な供給源となっているが,今後の需要の増加への対応や安定供給のために代替供給源の開発が活発化している。本稿では,DHA やEPA に加え,天然では希少なω3-ドコサペンタエン酸(ω3-DPA),エイコサテトラエン酸(ETA)を含有する油脂の微生物生産を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 Crypthecodenium sp. D31株によるDHA高含有油脂の発酵生産
3 Aurantiochytrium sp. T7株によるω3-DPA高含有油脂の発酵生産
4 Mortierella alpinaの分子育種株によるEPA高含有油脂の発酵生産
5 Mortierella alpina S14の分子育種株によるETA高含有油脂の発酵生産
6 おわりに
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腸内細菌によるω3 脂肪酸代謝と代謝物の生理機能
Omega 3 Fatty Acid Metabolism in Gut Microorganisms and Metabolite Biofunction
食事由来の主なω3 脂肪酸,α-リノレン酸,EPA,DHA が,宿主の酸化的代謝により生理活性脂質メディエーター等へ変換されるのみならず,腸内細菌による還元的代謝をうけ,水酸化脂肪酸,共役脂肪酸などの多様な代謝物に変換されることが明らかになってきた。その腸内細菌代謝の詳細と代謝物の生理機能を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 水和化代謝
3 飽和化代謝
4 ω3脂肪酸の腸内細菌代謝物の生理機能
4.1 抗炎症作用
4.2 抗酸化作用
4.3 脂肪酸合成抑制効果
4.4 消化促進作用
5 おわりに
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ω3 脂肪酸から生じる脂質メディエーターの生理機能と代謝経路
Physiological Function and Metabolic Pathways of Lipid Mediators Derived from ω3 Fatty Acids
生体内には多様な脂肪酸分子種が存在し,それらは代謝されることで様々な生理機能をもった脂質メディエーターに変換される。特にω3 脂肪酸由来の脂質メディエーターは炎症の制御や組織恒常性維持に関与することが近年報告されている。本稿ではω3 脂肪酸由来の脂質メディエーターの生理機能とその代謝経路について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 ω3脂肪酸由来の炎症収束性メディエーター(Specialized pro-resolving mediator;SPM)の生理機能
2.1 EPA由来の脂質メディエーター
2.2 DHA由来の脂質メディエーター
2.3 DPA由来の脂質メディエーター
3 ω3脂肪酸の機能性発現に関わる代謝経路
4 おわりに
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ω-3 脂肪酸含有脂質を識別する定量リピドーム解析技術
Quantitative Lipidome Analysis for Separating Lipids with ω-3 Fatty Acids
生体内には脂肪酸と極性基の組み合わせにより膨大な種類の脂質分子が存在し,脂肪酸側鎖が異なる構造異性体やその結合位置が異なる位置異性体など,個々の脂質分子の識別には高度な計測技術が必要となる。しかし,個々の脂質分子を高精度に識別かつ定量が可能な技術基盤は未だ十分に構築されていない。本稿では,こうした課題を克服するために取り組んできた超臨界流体クロマトグラフィー質量分析を用いた定量リピドーム解析技術について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 リピドーム解析の現状
3 超臨界流体クロマトグラフィーを用いた脂質クラスの分離
4 構造異性体を識別する質量分析計の選択
5 定量分析技術の開発と応用
5.1 三連四重極型質量分析計を用いた脂質分子の定量分析
5.2 荷電化粒子検出器を用いた脂質クラスの定量分析
5.3 生体試料への適用例
6 おわりに
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成長発達期における多価不飽和脂肪酸の相互作用
Interaction of Polyunsaturated Fatty Acids During Growth and Development Period
Δ6 不飽和化酵素欠損マウスの生後2 日齢から,人工哺乳法により多価不飽和脂肪酸のバランスを調整した人工乳を与え,成長発達期における各脂肪酸の機能性とその相互作用について検討した。 その結果,身体成長にはARA が,脳機能を含む身体の発達にはDHA が必須であることがわかった。
【目次】
1 脳神経組織の発達
2 早産児,正期産で出生しても体重の低い新生児
3 マウス,ラットの人工哺育法
4 多価不飽和脂肪酸の代謝とω3系脂肪酸の必要性
5 食餌性ω3系脂肪酸欠乏マウスの作製
6 Δ6不飽和化酵素欠損(D6D-KO)マウス
7 多価不飽和脂肪酸のそれぞれの働きについて
7.1 身体形成における多価不飽和脂肪酸の働き
7.2 脳機能における多価不飽和脂肪酸の働き
7.3 脳組織の多価不飽和脂肪酸組成
8 多価不飽和脂肪酸の摂取バランスについて
9 おわりに
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ω3 脂肪酸代謝物に見出された新たな抗炎症・抗アレルギー作用
Emerging Roles of ω3 Fatty Acid Metabolites in the Regulation of Allergic and Inflammatory Diseases
ω3 脂肪酸の抗炎症作用は古くより知られていたが,その作用機序についての全容は明らかではなかった。本稿では,ω3 脂肪酸の「代謝」に着目することで見えてきたω3 脂肪酸代謝物によるアレルギー・炎症性疾患に対する抑制作用とそのメカニズムについて概説する。
【目次】
1 はじめに
2 ω3脂肪酸の代謝
3 EPA代謝物17,18-EpETEに見出された食物アレルギー抑制効果
4 17,18-EpETEのアレルギー性皮膚炎に対する有効性と作用機序の解明
5 17,18-EpETEの立体異性体に着目した構造活性相関
6 EPA代謝物15-HEPEによるアレルギー性鼻炎抑制効果
7 ω3 DPA代謝物14-HDPAによる母乳を介した仔マウスの接触皮膚炎の軽減
8 おわりに
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ω3 脂肪酸と動脈硬化予防
Do Omega-3 Fatty Acids Prevent Atherosclerotic Cardiovascular Disease?
ω3 脂肪酸はω6 脂肪酸とは対照的に血中トリグリセリド値を低下させ,抗炎症または炎症収束的に働き,さらに血小板凝集抑制作用も有することから動脈硬化予防に有用と考えられてきた。しかし,ω3 脂肪酸を用いた臨床試験の結果は一定せず,メタ解析結果は否定的である。ω3 脂肪酸の動脈硬化予防効果について,その是非や今後の課題について概説した。
【目次】
1 はじめに
2 ω3 脂肪酸の脂質代謝への影響
2.1 血中脂質の量に及ぼす影響
2.2 血中リポタンパクの質に及ぼす影響
3 動脈硬化性疾患予防のエビデンス
3.1 魚食習慣と心血管イベント
3.2 心血管リスクマーカーとしてのEPA/AA比
3.3 介入試験による心血管イベント抑制効果
3.4 なぜω3脂肪酸と心血管イベントの関連は一定しないか?
3.5 ω3脂肪酸の腸内細菌代謝物の研究
4 おわりに
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脂肪酸および脂肪酸代謝物が褐色脂肪組織機能に及ぼす影響 ~ω-3 脂肪酸を中心に~
The Effects of Dietary Fatty Acids and Their Metabolites on The Function ofBrown Adipose Tissue ~Based around Omega-3 Fatty Acids~
褐色脂肪組織はミトコンドリア内膜中に存在する脱共役タンパク質1 の機能を介して高い熱産生能を有する組織である。褐色脂肪組織の活性は肥満や肥満に伴う代謝異常症の発症と逆相関し,肥満関連疾患の予防・改善における新たな標的組織として注目されている。いくつかの食品成分が褐色脂肪組織の活性化能を有することが示唆されており,その有効活用が期待されている。本稿では,ω -3 脂肪酸をはじめとする脂肪酸およびその代謝物による褐色脂肪組織機能制御に関する知見について,筆者らの研究結果を含めて紹介する。
【目次】
1 褐色脂肪組織の機能
2 ω-3脂肪酸・その代謝産物による褐色脂肪組織機能亢進とそのメカニズム
2.1 ω-3脂肪酸摂取による褐色脂肪組織機能の活性化
2.2 ω-3脂肪酸摂取時の褐色脂肪組織機能亢進のメカニズム
3 その他の脂肪酸・脂肪酸代謝産物による褐色脂肪組織機能調節
4 おわりに
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ω-3 脂肪酸の食品への応用
Application of Omega-3 Fatty Acids to Functional Foods
日本では2015 年から機能性表示食品制度が始まったが,ヒトにおける様々な機能性が知られているω-3 脂肪酸はその主役の一つである。ここでは,機能性表示食品を中心にω-3 脂肪酸を用いた食品について概観するとともに,ヒトにおけるエビデンスの最近の動向を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 ω-3 脂肪酸を用いた食品
2.1 DHA, EPA を用いた食品
2.2 α-リノレン酸を用いた食品
3 栄養素としてのω-3脂肪酸
3.1 摂取状況
3.2 目安量と目標量
4 ω-3脂肪酸と機能性表示食品制度
4.1 機能性表示食品制度の概要
4.2 DHA, EPAを機能性関与成分とする食品
4.3 α-リノレン酸を機能性関与成分とする食品
5 ω-3脂肪酸の機能性に関する最新の動向
5.1 機能性表示制度とω-3脂肪酸の機能性
5.2 循環器疾患リスクに関する最新情報
6 おわりに
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月刊バイオインダストリー 2020年9月号
¥4,950
<著者一覧>
島村道代 (国研)海洋研究開発機構
中川慎太郎 東京大学
吉江尚子 東京大学
小関康雄 小関環境事務所
加茂 徹 (国研)産業技術総合研究所
内藤 航 (国研)産業技術総合研究所
大南英雄 花王株式会社
南部博美 花王株式会社
藤井健吉 花王株式会社
髙橋祐次 国立医薬品食品衛生研究所
赤渕芳宏 名古屋大学
椎葉 究 東京電機大学;日本バイオリファイナリー株式会社
平本 茂 日本バイオリファイナリー株式会社
大平辰朗 (国研)森林研究・整備機構 森林総合研究所
茂木精一郎 群馬大学
内田紀之 東京農工大学
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【特集】海洋プラスチック問題への対応策:環境流出を念頭としたLCAリスク・管理の考え方
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海洋プラスチック問題への新たな視点:プラスチックの多角的評価の必要性
A New Perspective on Plastic Pollution Issues:The Need for Multifaceted-Viewpoints Evaluation of Plastics
近年,環境中に流出した5 mm 以下のプラスチック,すなわち「マイクロプラスチック」の環境影響が注目されている。プラスチック自体は,毒性や危険性の低い,比較的安全な化学物質である。しかし,長期間にわたり安定で自然界の一般的分解プロセスを免れるプラスチックの特性のために,適切な廃棄物マネジメント・プロセスから外れ,大量に環境中へ漏れ出したプラスチックが環境中に留まり続け蓄積することによって新たな問題を引き起こしている。一方,海洋科学分野においてこの現象は,古くから認識されていたことだった。本稿では,海洋プラスチック問題を自然科学の観点から整理した上で,社会全体でこの問題とどのように付き合っていくべきなのか,考えてみたい。また本特集号全体を通じ,環境中へのプラスチック流出も想定した今後のライフサイクルアセスメント(LCA),リスク評価,リスク管理等について,各界の先生方に最新の知見をご提供いただき現状を俯瞰することで,新しいプラスチックとのつきあい方,代替マテリアル開発等の一助となることを期待する。
【目次】
1 海洋プラスチック問題
1.1 SDG14 と海洋汚染
1.2 海洋汚染物質としてのプラスチック:時間的・空間的汚染の広がり
1.3 海洋マイクロプラスチック問題
1.4 不適切なプラスチック廃棄物処理と未来予測
1.5 プラスチックの利用と深海ごみの関係
2 プラスチック環境問題と社会・経済・政策
2.1 欧州
2.2 日本
3 おわりに代えて
3.1 プラスチック問題は海洋だけに限られるのか? 明らかになり始めた地球規模環境汚染
3.2 社会としてこの問題といかに付き合うか? COVID-19による「コロナごみ」という新たな海洋MP源の出現とニュー・ノーマル
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動的結合に基づく力学機能性ポリマー材料の開発
Development of Mechanofunctional Polymeric Materials Based on Dynamic Bonds
ポリマー材料の利用にともなう環境負荷を低減するためには,材料の信頼性を高め寿命を伸ばすことが重要である。共有結合よりも弱く可逆的な「動的結合」は,ポリマー材料に強靭性や自己修復性などの優れた力学機能を与える。本稿では,筆者らの最近の研究を中心に,動的結合を用いた力学機能性ポリマー材料開発の最近の動向を解説する。
【目次】
1 緒言
2 動的結合による高分子材料の強靭化
2.1 動的結合ユニットの疎密に基づく強靭なポリマー
2.2 動的結合ユニットの配置制御による熱可塑性エラストマーの強靭化
3 動的結合に基づく自己修復性材料の開発
3.1 水で自己修復性がトリガーされるボロン酸エステル架橋ポリマー
3.2 アルコールで自己修復性がトリガーされるヘミケタール架橋ポリマー
3.3 エントロピー駆動型水素結合により強靭性と自己修復性を両立したポリマー
4 まとめと展望
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バイオプラスチックのライフサイクルアセスメント(LCA)~石油由来プラスチックとバイオマス由来プラスチックの比較~
Life Cycle Assessment(LCA)of Bio-plastics-Comparison Between Petroleum-derived Plastics and Biomass-derived Plastics-
近年,温暖化と資源枯渇の対策の観点からバイオプラスチックが注目されている,ライフサイクル全体の視点から環境負荷を評価するLCA 技法を用いて,バイオマスプラスチックのPE とPET 及び生分解性プラスチックのPLA を例に取り,石油系由来のプラスチック(PE, PET, ABS)と比較し,バイオプラスチックの特徴(利点・欠点)を明確にすると共に,今後のバイオプラスチックの普及のための開発ポイントと評価の考え方を提案した。
【目次】
1 はじめに
2 LCA とは
2.1 LCA の概要
2.2 ISO規格に基づくLCA実施手順
3 バイオプラスチックのLCA
3.1 LCA計算方法
3.2 LCA評価結果
4 LCAの観点からの今後のバイオプラスチックの普及のために
4.1 バイオマスプラスチック
4.2 生分解性プラスチック
4.3 両者共通
5 おわりに
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海洋プラスチック問題に対するリサイクルの役割
The Role of Plastic Recycling for the Marine Debris
海洋プラスチック問題を解決するため,廃プラスチックのリサイクルの実用化が期待されている。多様な廃プラスチックに対応するためには,マテリアルリサイクル,ケミカルリサイクル,およびエネルギー回収の3 つの手法の特徴を活かして組あわせて利用する必要がある。また,ライフサイクル全体を通じて環境負荷を低減化させる社会システムの構築も重要である。
【目次】
1 はじめに
2 廃プラスチック問題とは
3 廃プラスチックのリサイクルの現状
4 なぜ廃プラスチックのリサイクルは難しいのか?
5 バイオプラスチックへの期待と課題
6 海洋プラスチック問題を解決するために
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海洋プラスチックの環境リスク評価の実施に向けてポイントと課題―マイクロプラスチックを中心に
―Challenges to Environmental Risk Assessment of Marine Plastics and Microplastics
海洋プラスチック,特に最近では「マイクロプラスチック」と呼ばれる微細なプラスチックによる海洋生態系への悪影響が懸念されている。本稿では,海洋プラスチック,特にマイクロプラスチックに着目して,合理的なリスク管理・対策に資する環境リスク評価の枠組み,重要ポイント,今後の課題と評価事例について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 マイクロプラスチックの環境リスク評価の枠組み
3 マイクロプラスチックの環境リスク評価のポイント・課題
3.1 評価の目的は何か? 何を評価の対象とするのか?
3.2 暴露と有害性の単位の整合化
3.3 モデルによる暴露評価の重要性
4 MPの環境リスク評価事例
5 おわりに
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海洋プラスチックごみ問題の排出源プロファイルから考える解決志向性リスク管理
Solution-Focused Risk Management on the Marine Plastic Waste Problem Based on the Emission Source Profile Analysis
現在,海洋プラスチックごみ問題が地球規模で問題となっており,解決に向けた取組を世界全体で推進することが求められている。本論では海洋に排出されるプラスチックの排出源プロファイリング,環境影響の検証,海洋マイクロプラスチックの環境運命,定量的リスクアセスメントの考え方について概説したい。
【目次】
1 背景
2 海洋プラスチック排出源のプロファイリング
3 海洋プラスチックごみの海洋生物への影響評価
4 下水処理施設におけるMPの捕捉
5 海洋プラスチックごみ問題の解決志向性リスク管理の検討
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ナノサイズプラスチックの評価
Evaluation of Nano-sized Plastics
【目次】
1 はじめに
2 ナノ/ マイクロプラスチックの経口摂取影響
3 ナノ/マイクロプラスチックの吸入曝露影響
4 ナノ/マイクロプラスチックの評価
5 革新的な物質が引き起こした事故例
6 おわりに
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予防原則とリスク評価─若干の試論をかねて
A Sketch on Risk Assessment and the Precautionary Principle:From the Perspective of Environmental Jurisprudence
環境法研究者からみれば,予防原則は,〈環境法の基本原則〉の1 つに位置づけられる,環境法上の概念であるが,それは科学的な不確実性を伴うリスクを対象とするものであり,〈不確実性〉あるいは〈リスク〉といった概念が窓口となり,さまざまな学問分野での議論に開かれてもいる。本稿は,環境法学の観点から,予防原則および同原則とリスク評価とのかかわりにつき,若干の試論を交えて,概説する。
【目次】
1 はじめに
2 予防原則について
2.1 予防原則と予防的アプローチ
2.2 予防原則の定式化とその多様性
2.3 予防原則を構成する4つの要素
2.4 〈半具体化〉された予防原則と,予防原則の定義
3 予防原則の適用要件である「科学的不確実性」とリスク評価
3.1 2つの不確実性──「科学的不確実性」と「慎重なアプローチ」との区別
3.2 予防原則の適用要件である「科学的不確実性」──環境法学における分類の試み
4 おわりに
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BIO R&D
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「竹バイオリファイナリー」孟宗竹中の健康に資する成分と孟宗竹の総合利用について
“Bio-refinery Technology on Moso-bamboo” An Application of Bamboo Constituents as Health Materials
孟宗竹は,その堅固な細胞壁構造を崩壊することが難しかったために,その後の健康素材としての利用が困難となった経緯がある。ここでは,孟宗竹の竹稈から健康素材となりうるリグノヘミセルロース成分を抽出する方法,抽出した成分の組成と化学的な構造,生理活性と,竹成分の総合的な利用について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 酸・塩基,有機溶媒を用いない健康に資する成分の抽出と分画方法
3 抽出した成分の組成と化学的な構造
4 抽出した成分の生理活性について
4.1 減圧マイクロ波処理により抽出した画分(BMW)の抗菌活性
4.2 蒸圧・酵素処理抽出成分(BOS)の抗酸化活性と局所光保護効果
4.3 BOSのコレステロール上昇抑制効果
4.4 免疫賦活活性
5 孟宗竹中の健康に資する成分と孟宗竹の総合利用について
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全身性強皮症に伴う末梢循環障害に対するボツリヌス毒素局所注入療法
Local Botulinum Toxin Injection Therapy for Peripheral Circulation Disorders Associated with Systemic Ssclerosis
全身性強皮症に伴うレイノー現象や手指潰瘍は難治であり有効な治療法が確立されていない。本稿では,筆者らが世界に先駆けて臨床研究を進めてきた「ボツリヌス毒素局所注入療法」の高い有効性と安全性について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 レイノー現象
3 末梢循環障害(レイノー現象,皮膚潰瘍)の治療
4 ボツリヌス毒素について
5 全身性強皮症に伴うレイノー現象や手指潰瘍に対するボツリヌス毒素局所注入療法について
6 ボツリヌス毒素局所注入療法のランダム化2重盲検試験(医師主導治験)
7 おわりに
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経皮浸透性リン脂質ナノシート
Skin Permeable Phospholipid Nanosheets
市販のアニオン性リン脂質をある条件下で水に分散させると,ナノサイズの厚みをもつナノシートが形成されることを見出した。このリン脂質ナノシートは高い生体適合性,簡便なサイズ制御性に加え,ナノシートの形状効果により皮膚組織の狭い間隙を通過し,皮膚組織内部へと浸透することができる。
【目次】
1 緒言
2 リン脂質ナノシート(バイセル)
3 生体親和性リン脂質ナノシートの発見
4 経皮DDSへの応用
5 構造色の発現と色材化粧品の可能性
6 おわりに
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月刊バイオインダストリー 2020年8月号
¥4,950
<著者一覧>
酒井芳紀 大阪大学
奥田直樹 国立循環器病研究センター
宮川 繁 大阪大学
平田陽一郎 北里大学
佐田政隆 徳島大学
田邊克幸 岡山大学病院
小屋俊之 新潟大学
松本邦夫 金沢大学
中川敬也 国際医療福祉大学
奥野龍禎 大阪大学
白石直之 大阪大学
望月秀樹 大阪大学
櫨川 舞 福岡大学
内田享弘 武庫川女子大学
矢嶋真心 兵庫医科大学病院
金谷知潤 大阪大学
河村拓史 大阪大学
上野高義 大阪大学
戸田宏一 大阪大学
倉谷 徹 大阪大学
澤 芳樹 大阪大学
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【特集】再生誘導剤(セルフリーな再生医療)の展望
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再生誘導剤の開発展開
Development of Regenerative Inducer
我々は,「炎症とプロスタグランジンに関する自然治癒メカニズムの基礎的研究を通じて見出した体内再生因子誘導剤(再生誘導剤)は,単一物質で炎症,虚血,線維化等組織損傷を伴う多くの疾患を治癒する」との仮説の基に多くの専門家と共同研究を行い,多種疾患に対する効果の検討を行った。その結果,本再生誘導剤は,局所疾患部位では,血管新生作用,抗線維化作用,抗アポトーシス作用,及び抗炎症作用等を示し,広範囲損傷部位では,骨髄間葉系幹細胞(MSC)の動員・集積作用等を示すことにより,心臓,肺臓,腎臓,肝臓,膵臓,骨,血管閉塞,及び神経変性疾患等多種の疾患に対して傷害部位を治癒することを確認した。
各種体内再生因子誘導による自然治癒力を増強した再生誘導剤の開発は,細胞を用いた再生医療に比し,緊急性,経済性,安全性,汎用性等に優れており,「飲み薬で再生医療」をも可能とする細胞を用いない全く新しい再生医療に成り得ることが示唆された。
【目次】
1 はじめに
2 医薬品開発の変遷
3 自然治癒力を増強した再生誘導剤の開発
4 プロスタグランジンの体内再生因子誘導作用
5 再生医療(細胞・遺伝子治療)の問題点と再生誘導剤
6 現在上市されている細胞治療及び遺伝子治療
7 再生誘導剤の位置付け
8 YS-1301類開発の立ち位置
9 再生誘導剤の特徴と競争優位性
10 YS-1301の耐性抑制作用
11 IP受容体作動薬(ベラプロスト)とTXA2合成酵素阻害薬(オザグレル)
12 YS-1301は,体内再生因子誘導剤(再生誘導剤)
13 YS-1301類の各種疾患モデルへの効果
14 YS-1301の製剤改良
15 YS-1301の各種製剤の特性
16 開発パイプライン
17 謝辞
18 あとがき
19 再生誘導剤(YS化合物)に関する論文・学術発表,及び特許出願状況
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拡張型心筋症に対するONO-1301 を用いた再生治療
Regenerative Therapy Using ONO-1301 for Dilated Cardiomyopath
拡張型心筋症は治療抵抗性の難病で,根本的治療が心臓移植しか存在しないが,ドナー心不足により治療困難な患者が数多く存在する。そのため,心臓移植に代わる治療の開発が急務である。ONO- 1301 を拡張型心筋症早期から継続的に経口投与することで,心不全の進行を抑制するという,新たなアプローチによる再生治療の可能性を示す。
【目次】
1 ONO-1301 と心臓再生治療
2 拡張型心筋症における再生医療の位置づけ
3 拡張型心筋症モデルハムスターに対するONO-1301の長期経口投与の効果
4 おわりに
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YS-1402 皮下投与,および心筋投与における虚血性心筋症に対する効果の検討
Beneficial Effect of YS-1402 on Rat Ischemic-reperfusion Injury Model
我々は,プロスタサイクリン製剤であるYS-1402 をラット心筋虚血・再灌流モデルに皮下投与することにより,心機能低下と心筋リモデリングを抑制する作用を示した。日本人における重要な死因の一つである,虚血性心疾患およびその後の慢性心不全への臨床応用が期待される。
【目次】
1 はじめに
2 方法
3 結果
4 まとめ
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YS-1402 による慢性腎臓病の治療効果
Therapeutic Effects of YS-1402 on Chronic Kidney Disease
慢性腎臓病は,末期腎不全とともに心血管イベントのリスクとなるが,その進行を抑制する治療戦略は未だ不十分であり,特に糖尿病性腎症と腎硬化症に対する治療ニーズは高い。本項では,これらの病態とともに,YS-1402 による糖尿病性腎症及び腎線維化に対する動物実験での治療効果を検討し,慢性腎臓病に対する新たな治療薬となる可能性について概説する。
【目次】
1 はじめに
2 腎臓とプロスタサイクリン
3 糖尿病性腎症の進展機序
4 糖尿病性腎症に対するYS-1402の治療効果
5 腎硬化症と線維化
6 腎線維化に対するYS-1402の治療効果
7 おわりに
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YS-1301 およびYS-1402 皮下投与におけるマウス喘息モデルに対する効果
Effects of Subcutaneous Administration of YS-1301 and YS-1402 on Murine Asthma Model
慢性気道炎症が主病態とされる気管支喘息において,吸入ステロイド薬(ICS)をはじめとする抗炎症薬は治療の柱である。一方で同時に存在する気道リモデリングも臨床的に重要で,症状に直結することも多い。気道狭窄に対して,気管支拡張剤が使用されるが,気道リモデリングに影響を与える薬剤が少ないのが現状である。YS-1301 またはYS-1402 はトロンボキサン合成酵素阻害作用を併せ持つ新規プロスタサイクリンアゴニストで,抗炎症および抗リモデリング効果を持つ数少ない薬剤であり,その効果についてマウス喘息モデルにおける解析結果を解説する。
【目次】
1 はじめに
2 YS-1301皮下投与における難治性喘息に対する効果
3 YS-1402皮下投与における難治性喘息に対する効果
4 おわりに
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増殖因子(HGF)パスウェイを介した肝傷害・肝線維化の抑制
Suppression of Hepatic Faimure and Fibrosis Through Growth Factor(HGF)Pathway
YS-1301 は,急性肝傷害に対して肝細胞死を阻止し,肝傷害を強く抑制する一方,慢性肝傷害による肝臓の線維化を改善した。YS-1301 はHGF の発現を強く促す活性をもち,YS-1301 の薬効はHGF の中和により減弱した。YS-1301 はHGF発現促進→MET 活性化を介して肝傷害阻止・線維化改善作用を発揮する。
【目次】
1 HGFとMET受容体
2 YS-1301によるHGF産生促進
3 YS-1301→HGF誘導を介した肝傷害抑制
4 YS-1301→HGF誘導を介した肝線維化抑制
5 MET受容体活性化による再生・治癒促進医薬の展望
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重症下肢虚血に対するYS-1402 投与による血管再生および骨格筋再生療法の構築
Administration of a Slow Release Synthetic Prostacyclin Agonist Promoted Angiogenesis and Skeletal Muscle Regeneration for Limb Ischemia
重症下肢虚血疾患(CLI)は,血管の途絶による虚血がメインの病態であるが,崩壊していく骨格筋をいかにして再生させるかも重要であり,血管新生および組織再生効果を併せ持つような新しい治療法の開発が期待されている。我々は,低分子合成化合物による各種体内再生因子誘導剤として,YS-1301 を新しく見出し,そのDDS(Drug Delivery System)製剤であるYS-1402 を作製した。これらの製剤はCLI に対し機能的な血管新生と骨格筋の再生を促進し,下肢虚血を改善する新しいCell Free 型再生誘導剤になり得る可能性がある。
【目次】
1 はじめに
2 YS-1402投与による血管再生
3 YS-1402投与による骨格筋再生
4 まとめ
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YS-1402 のALS に対する効果の検討
The Beneficial Effect of YS-1402 on ALS
筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS)は運動ニューロンが選択的に変性,脱落する致死的神経変性疾患であるが,病巣の低酸素およびHGF やVEGF といった体内再生因子の病態への関与が示唆されてきた。我々はこれらの病態を改善させ得る薬剤としてYS-1402 に注目し,ALS モデルマウスへの有効性を検討した。YS-1402 の単回皮下投与によりALS モデルの運動機能の改善および体重の増加が認められ,治療薬候補となりうることが示唆された。
【目次】
1 筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic Lateral Sclerosis:ALS)
2 ALSの病態,特に低酸素および血流障害との関連について
3 ALSモデルマウスに対するYS-1402の効果
4 おわりに
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YS-1301 の血管新生作用と実用化のための再生医療製剤の開発
The Angiogenic Effect of YS-1301 and Development of Practical Regenerative Medical Formulation
YS-1301 は,PGI2 誘導体の中から体内再生因子誘導剤として見出された新規低分子化合物である。本稿では,YS-1301 の有する血管新生作用に着目し,その実用化のために開発されたYS-1301 含有マイクロスフェア製剤のセルフリーな再生医療製剤としての有用性と今後の展望について述べる。
【目次】
1 はじめに
2 YS-1301の血管新生作用の作用機序
3 YS-1301含有マイクロスフェア製剤の血管新生作用
4 セルフリーな血管新生作用を有する再生医療製剤の重要性とその展望
5 おわりに
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YS-1301 の脳保護作用とその徐放性製剤の脳梗塞治療薬としての有用性
The Neuroprotective Effects of YS1301 and Usefulness of YS-1301 Loaded PLGA Microspheres, as a Therapeutic Medicine for Cerebral Ischemia
プロスタグランジン誘導体YS-1301 は,体内再生因子誘導作用を有し,脳虚血後の学習障害に対し顕著な改善効果を発揮する。本稿では,脳虚血ラットモデルを用いたYS-1301 の学習障害・短期作業記憶障害の改善作用を紹介し,YS-1301 およびその徐放性製剤の脳梗塞治療薬としての有用性について述べる。
【目次】
1 はじめに
2 MCAOモデルラットを用いたYS-1301原末の1日2回の反復経口投与の梗塞巣形成抑制効果と治療可能時間
3 4-VOモデルラットを用いたYS-1301原末反復経口投与の学習障害の改善効果
4 4-VOモデルラットを用いたYS-1301マイクロスフェア製剤単回皮下投与の短期作業記憶障害の改善効果
5 脳梗塞治療のための今日の再生医療の現状と将来の展望
6 おわりに
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心筋虚血再灌流障害に対する疾患局所集積性nanoparticle 製剤;YS-1603 の効果の検討
Prostacyclin Analogue-Loaded Nanoparticles(YS-1603)Attenuate Myocardial Ischemia/ Reperfusion Injury in Rats
YS-1603 は,ナノサイズ粒子であり,ポリエチレングリコールをその表面に持つ構造によりステルス性を高めている。その結果,虚血心筋組織に特異的に集積し,組織中薬物濃度が維持,延長され,疾患局所において有効に血管新生性効果,抗炎症性効果により心保護効果発揮を発揮する。
【目次】
1 はじめに
2 研究方法
3 研究結果
4 心筋虚血再灌流傷害に対するYS-1603の治療効果に関するメカニズム
5 結語
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肺高血圧症モデルに対するYS-1603 の効果の検討
Effect of YS-1603 for the Pulmonay Artery Hypertension Rat
ONO1301 はProstacyclin 作動作用であり,新規肺高血圧薬として期待されるが,全身の副作用が問題である。Nano 粒子に薬剤を封入し投与する事で,障害部位特異的に作用する事が期待される。今回,Sugen/hypoxia 誘導の肺高血圧ラットにおいて,ONO1301 ナノ製剤が肺高血圧肺に特異的に取り込まれ,肺高血圧を組織学的,血行動態的に改善させることを示した。
【目次】
1 はじめに
2 YS-1301内包リポソームナノスフェアー製剤(YS-1603)
3 YS-1301の肺高血圧薬としての作用
4 モノクロタリン誘発ラット肺高血圧症モデルの対する効果の検討
5 肺高血圧モデルラットの作成
6 肺高血圧モデルラットにおけるNano drugの組織分布
7 肺高血圧に対するYS-1603の効果
8 おわりに
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月刊バイオインダストリー 2020年7月号
¥4,950
<著者一覧>
高原茉莉 北九州工業高等専門学校
神谷典穂 九州大学
舘野浩章 (国研)産業技術総合研究所
堀北夏未 東海大学
酒井大輔 東海大学
上原 隆 金沢医科大学
倉知正佳 富山大学
近藤 隆 富山大学
阿部 仁 富山大学
鈴木道雄 富山大学
矢口俊之 東京電機大学
井上 聡 東京電機大学
大山慎太郎 名古屋大学医学部附属病院
岩月克之 名古屋大学
平田 仁 名古屋大学
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BIO R&D
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人工脂質化タンパク質の調製法
How to Prepare Artificial Lipid-protein Conjugates
生体系を構成するタンパク質のなかには,脂質が付加されることで新たな機能を獲得するものがある。本稿では,自然界における脂質化タンパク質の生合成機構と機能を概説した後,その機能を評価・活用するために開発された様々な人工脂質化タンパク質の調製法について,最近の展開を紹介する。
【目次】
1 脂質化タンパク質の機能性
2 脂質化タンパク質の化学合成
3 酵素反応を用いた脂質化タンパク質の合成
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膵がん表層糖鎖をレクチン?薬剤複合体で狙い撃ち
Targeting Cell Surface Glycans of Pancreatic Cancer Using a Lectin-durg Conjugate
膵がんの治る確率(5年生存率)は未だ10%未満であり,新たな抗がん剤の開発が切望されている。我々は膵がんに発現する新たな糖鎖マーカーと結合するレクチンを同定した。レクチン?薬剤複合体を創出し,膵がん移植マウスモデルに投与すると,劇的な抗がん作用を示した。本総説ではレクチンを用いた新たな膵がん治療の可能性について紹介する。
【目次】
1 背景
2 糖鎖とは
3 レクチンマイクロアレイ
4 糖鎖プロファイリングに用いるレクチン
5 膵がん細胞株の糖鎖プロファイリング
5.1 多能性幹細胞と膵がん細胞に共通して発現するHタイプ3構造
5.2 レクチン?薬剤複合体の膵がん細胞株への殺傷効果
5.3 膵がん移植マウスモデルにおけるrBC2LCN?PE38の治療効果
5.4 rBC2LCN?PE38の安全性
5.5 レクチンを抗がん剤として使う利点
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椎間板再生医療と産業化の課題
Commercialization Challenges of Regenerative Medicine for Intervertebral Discs
国内でも患者数の多い腰痛は,椎間板の変性によって発症するとも言われる。未だ抜本的な治療法が存在しない中,椎間板組織の再生を目指した再生医療等製品の開発が進められている。本稿では,椎間板変性症における再生医療の必要性と産業化の課題について述べる。
【目次】
1 はじめに
2 椎間板組織の変性と腰痛
3 国内外の臨床研究
4 再生医療等製品の産業化における課題
5 開発が進む椎間板変性症に対する再生医療等製品
6 おわりに
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抗酸化機能を付与したハイブリッド型神経保護薬の創製
Nobel Hybrid Neuro-protectors with Anti-oxidant Activity
統合失調症は慢性の経過をたどる精神疾患である。罹患患者やその家族に多大な負担を強い,社会的コストから見てもその損失は大きい。しかしその病態生理は未だ不明な点が多く,したがって根治的な治療薬は開発されていない。近年その病態生理に酸化ストレスが関与しているエビデンスが蓄積されつつある。そこで我々は抗酸化作用を有するアポシニンと認知機能を改善し神経保護作用を持つタンドスピロンをリード化合物とした新規化合物を合成した。新規化合物はin vitroで抗酸化作用を示し,in vivoでも統合失調症モデル動物において抗酸化作用と神経保護作用を示した。このことから新規化合物が統合失調症の根治的治療薬になる可能性を秘めており,今後臨床応用に向けた開発が進むことが期待される。
【目次】
1 はじめに
1.1 統合失調症の薬物療法と現状
2 グルタミン酸仮説と酸化ストレス
3 リード化合物
3.1 アポシニン
3.2 タンドスピロン
3.3 新規化合物の構造
4 新規化合物の評価系とその結果
4.1 in vitro:抗酸化活性と抗アポトーシス効果
4.2 in vivo:NMDA受容体遮断薬投与ラットにおける効果
5 新規化合物の可能性(適応疾患など)と今後の課題
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BIO ENGINEERING
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水性二相系培養液を用いた細胞組織構築法
Developmental Study of Newly Method for Fabricating Cell Aggregate Using Aqueous Two Phase System
細胞凝集組織であるスフェロイドは再生医療分野や創薬分野で注目されている。本稿ではスフェロイド様細胞凝集塊の新たな細胞加工法として,水溶液でありながら“水と油”のように分離する性質を持つ水性二相系(Aqueous Two PhaseSystem, ATPS)法を応用した浮遊培養システムを提案し,その基礎検討と今後の展望について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 水性二相系(Aqueous Two Phase System)
2.1 水性二相系の特性
2.2 ATPSのバイオ領域への応用例
3 ATPS浮遊培養システム
3.1 浮遊培養の原理とシステム
3.2 浮遊培養の検討
4 おわりに
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機械学習を用いた複合性局所疼痛症候群(CRPS)の重症度評価技術の開発
Development of Machine-learning Based Objective Severity Assessment Model for Complex Regional Pain Syndrome( CRPS)
これまで疼痛の評価は主観的な質問票に頼る部分が大きく,客観的かつ定量的な検査が望まれてきた。近年,慢性疼痛における脳の可塑的変化が明らかになってきており,疼痛と密接な関連を持つと考えられている。本稿では慢性で強い疼痛が主症状である複合性局所疼痛症候群(Complex regional pain syndrome, CRPS)の患者に対して,脳磁計による脳機能解析を行い,それらパラメータを入力変数,主観的疼痛指標を応答変数とするモデルを機械学習手法により確立,その妥当性を示すことができたのでこれを報告する。
【目次】
1 慢性疼痛と複合性局所疼痛症候群
2 脳機能に着目したCRPSの重症度評価方法の開発
3 検証方法
4 結果
5 まとめ
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BIO BUSINESS
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再生医療
経済産業省の算出によると,再生医療の周辺産業まで含めた市場規模は,2012年の260 億円から急速に拡大し,2030 年には1.6 兆円に達すると予測されている。2014 年には再生医療推進に向け新たな法律も施行され,早期承認への道筋がつけられたほか,これまでは医療機関に限られていた細胞培養加工等の外部委託が可能となり,周辺産業も含めた市場の活性化が期待されている。
【目次】
1 概要
2 関連制度と体制
3 研究開発動向
4 メーカー動向
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バイオ医薬品
これまで多くのブロックバスターを生み出してきた低分子化合物を用いた新薬が頭打ちになってきたことから,抗体医薬をはじめとしたバイオ医薬品の市場が拡大している。バイオ医薬品の5 割以上を占める2017 年の抗体医薬品の国内市場は9,695 億円程度とみられ,がん領域を中心に現在も多くの臨床試験が進められていることから,今後も安定した成長が期待される。大型医薬品の特許切れが相次ぐ中,メーカー各社は研究機関との共同研究やバイオベンチャーの買収によって新薬の投入を急いでいる。
【目次】
1 概要
2 業界動向
3 バイオシミラー
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《BIO PRODUCTS》
ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Hydroxypropyl methyl cellulose)
乳酸ナトリウム(Sodium lactate)
ローカストビーンガム(Locust bean gum)
レブリン酸(Levulinic acid)
1,3―プロパンジオール(1,3-Propanediol)
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月刊バイオインダストリー 2020年6月号
¥4,950
<著者一覧>
大浦イッセイ 特定非営利活動法人 まもるをまもる
西垣孝行 森ノ宮医療大学
小栁智義 筑波大学
野口裕史 筑波大学
池野文昭 筑波大学
八木雅和 大阪大学
荒川義弘 筑波大学
原 正彦 (株)mediVR
小川晋平 AМI(株)
神尾 翼 AМI(株)
齊藤旬平 AМI(株)
髙木良輔 AМI(株)
加藤博史 神戸大学
安齊崇王 テルモ(株)
樋口高志 (株)カワニシホールディングス
本田佳範 (株)カワニシホールディングス
前島洋平 (株)カワニシホールディングス
西澤美幸 (株)タニタ
笠原靖弘 (株)タニタ
中村英治 (株)タニタ
蔦谷孝夫 (株)タニタ
Steven B Heymsfield Pennington Biomedical Research Center
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【特集】医工連携医療機器開発の最新動向
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デザインドリブンで行う医療機器開発
Medical Device Development with Desig-Driven Approach
ニーズドリブン,テクノロジードリブンでの開発ではなく,ニーズもテクノロジーも精査し,提供する価値を創造した上で,ソリューションとして社会実装できる,デザインドリブンで行う医療機器開発の一例を記す。
【目次】
1 はじめに
2 医療機器開発の最初に行うデザイン作業
3 医療機器開発に最も重要なデザイン作業
4 デザインドリブンで行う医療機器開発
5 おわりに
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医療機器開発における国の取り組みと医工デザイン融合
National Initiatives in Medical Device Development, Moreover Integration of DESIGN,Medicine and Industry
医療機器開発に関連する国の取り組みについて解説する。主に医工連携における開発支援策と日本におけるベンチャーエコシステムの現状を提示しながら,最新の動向を紹介する。また医療者と企業が新規事業を共創する社会を目指すための「医工デザイン融合」のコンセプトを解説し,著者らが開発した医療者の知的資産を守りながら企業と共創するプラットフォーム「evaGraphy」について情報提供を行う。
【目次】
1 はじめに
2 医療機器開発における国の取り組み
2.1 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)について
2.2 医工連携における開発支援策
2.3 日本の医療機器産業の課題
2.4 ベンチャーエコシステムにおける課題
2.5 J-Startupによる国主導のエコシステム
2.6 2040年の医療(ビジョナリーとバックキャスト)
3 医工デザイン融合
3.1 医工連携とデザイン
3.2 医療者の知的資産をまもるWEBプラットフォーム「evaGraphy」
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アカデミア発の医療機器開発支援?マーケットニーズと基礎技術のギャップを意識した開発人材育成
Creating Values Through the Matching of Clinical Needs and Technologies atthe University Hospital
アカデミアでは基礎医学,工学など,医療機器開発に結びつく可能性のある様々な研究が行われており,その成果の社会実装が大きな期待となっている。本稿ではまず大学の医療機器開発プロジェクトの特徴,日本の医療機器開発の潜在的な課題について,日本の国際競争力と医療機器開発の特徴をもとに考える。
ユーザーとしての臨床現場でありかつ臨床研究の現場である大学病院を舞台として様々な取り組みが進んでいるが,臨床現場の「ニーズ」を持つ医療者と,アカデミアの研究成果である「シーズ」を持つ研究者・技術者が共同して最終製品の開発に取り組まなければならない。そこで「デザイン思考」と「SPARK」という2 つのアプローチを元にし,筑波大学で行っている製品開発支援Program での挑戦について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 大学での医療機器開発に見られる特徴
3 日本のものづくりと医療機器開発体制の課題
4 デザイン思考とアカデミア発「シーズ」「ニーズ」の活用の可能性
5 筑波大学の医療関連製品事業化支援プラットフォーム
5.1 Research Studio powered by SPARK
5.2 クリニカルエクスポージャーと新たな取組
6 新型コロナウイルス対策プロジェクトで見えてきた課題
7 今後の展望
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医療機器イノベーション人材育成プログラム「バイオデザイン」の国内動向について
The Perspective of Biodesign Program to Make an Innnovation of Medical Ddevice in Japan
バイオデザイン・プログラムはStanford 大学で開発された医療機器イノベーション人材育成教育プログラムであり,同プログラムから多くの製品を創出するなど優れた成果も上げていることから世界的にも評価が高い。日本でも2015 年にジャパンバイオデザインが発足し,医療機器イノベーションのエコシステム創成が進められている。ジャパンバイオデザインのこれまでの取り組みとバイオデザインプロセスの特徴,ジャパンバイオデザインの課題及び今後の展望について概説する。
【目次】
1 はじめに
2 国内におけるバイオデザインの沿革
3 バイオデザインプロセスの実際
3.1 医療機器開発プロセスを体系化し,製品化に至るまでのロードマップが示されていること
3.2 医療現場に求められる開発に即したニーズを探求すること
3.3 医療現場に求められる「ニーズ」の仕様を事前に定めた上で,その目標に従ってプロトタイプとして具現化すること
4 日本の医療機器産業の動向とバイオデザインが果たす役割
5 日本におけるバイオデザインのさらなる発展に向けて
6 今後の展望
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VR リハビリ機器開発を通した医工連携による事業化の考え方と実際
Conceptual Review of Commercialization Through Medical-engineering Alliance with a Practical Example of Virtual Reality-guided Rehabilitation Medical Device Development
株式会社mediVR では仮想現実技術を用いたリハビリテーション支援用医療機器の開発及び製造販売を行っている。本特集ではニーズの掘り起こしから開発理論,上市から臨床効果に至るまでの弊社の取り組みを紹介することによって,読者が医療機器開発の一連の流れを理解し,医工連携活動を行う際の一助となるような情報提供を行いたい。
【目次】
1 はじめに
2 医工連携総論
3 各論1 mediVRカグラ開発に至る背景
4 各論2 mediVRカグラ開発の医学的理論根拠
5 各論3 mediVRカグラガイド下治療の臨床効果
6 各論4 mediVR社の資金調達と出口戦略
7 各論5 mediVR社の知財戦略
8 おわりに
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超聴診器
Development of the Stethoscope with Automatic Assisted Diagnosis for Heart Disease
著者らは各種バイタルサイン計測機能搭載 心疾患自動診断アシスト機能付遠隔医療対応聴診器「超聴診器」を開発中である。心音と心電を同時計測し,心音を可視化することで聴診を定量的に解析することを可能にした。今後は,自動診断アシスト機能を搭載するために,2020 年夏には複数の大学病院と連携し,大規模臨床研究を実施予定である。
【目次】
1 超聴診器とは
1.1 開発の背景
1.2 自動診断アシスト機能の開発
1.3 今後のビジョン
2 遠隔聴診の実現
2.1 遠隔医療の必要性
2.2 遠隔聴診の問題点
2.3 スペクトログラムの有用性
3 遠隔医療システムの構築に向けて
3.1 予備健診の実施
3.2 企業との連携
4 急激な医療革新を起こすために
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医工連携の出口戦略について
Exit Strategy for Medical-engineering Collaboration
医工連携による医療機器等の開発においてニーズを探し,これを検証する入口の部分は非常に重要だと認識されている。あわせて,開発された製品を世に送り出す出口の部分も非常に重要なプロセスである。本稿では筆者がニーズ検証の際に実施している出口戦略について説明する。
【目次】
1 出口戦略とタイミング
2 顧客はだれなのか? 顧客のビジネスを理解せず製品は売れない
3 市場調査
4 忘れてはいけない経営者というステークホルダー
5 ビジネスモデル
6 エビデンス
7 おわりに
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心臓血管関連医療機器
Medical Device for Cardiovascular Disease
我々,医療機器メーカーの技術者にとっての医工連携とは,医療現場のニーズ,課題をとらえ,それらに対して自らの専門技術や知識を駆使し,さらには異分野,先端技術も積極的に学び,取り入れることで医療現場に変化を起こすことである。本稿においては,筆者自身が開発初期から関わった抗血栓性ポリマーコーティング技術,その抗血栓性メカニズム,未来の医療に向けた展望について述べる。
【目次】
1 医工連携のスピリッツ
2 心臓血管関連医療機器に価値を提供する高分子化学
3 人工心肺とコーティング
4 ポリ2メトキシエチルアクリレート(PMEA)
5 PMEAコーティング人工肺の有効性
6 他用途への展開
7 PMEAの抗血栓性メカニズム
8 血栓課題の克服に向けて
9 最後に
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医療機器販売商社による医工連携の実践事例
Implementation of the Medical Device Dealer-driven Medical-engineering Collaboration
本稿では,医療機器流通の現状と医療機器販売業が医工連携に果たしうる役割,および当社が目指している医工連携のあり方を論述する。また,当社の開発事例の紹介と説明を通じて,現在の医工連携においてしばしば起こりうる問題や克服すべき課題,それに対する当社の現在および将来の取り組みを論述する。
【目次】
1 はじめに
2 背景
2.1 医療機器の商流と医療機器販売業の機能
2.2 当社の目指す医工連携・医療機器開発
3 当社の開発事例より
3.1 医師の手の代わりに器械器具を保持するカッツェシリーズ
3.2 心臓カテーテルの操作を安定化させるためのカテーテルホルダー
3.3 女性医師の消化器内視鏡操作を補助するためのアタッチメント
4 これからの課題
5 まとめ
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BIA 体組成評価装置
BIA Body Composition Monitor
近年,健康診断や保健指導など様々な場面でBioelectrical Impedance Analysis(BIA)による体組成評価が活用されつつあるが,簡便に使用できる反面,この装置の詳細についてはあまり知られていない。ここではこのBIA を用いた体組成評価装置についての測定原理や臨床的有用性に触れつつ,最新の研究情報についても紹介する。
【目次】
1 メタボリックシンドローム診断における内臓脂肪型肥満スクリーニングの意義
2 健康情報としての「体組成評価」の有用性
3 体組成評価法の変遷と各方法の特徴,有効な利用法について
3.1 古くから実施されている体組成評価法
3.2 DXA:Dual energy X-ray Absorptiometryによる体組成分析
3.3 4C(4-Compartment-model)法
3.4 簡便で客観的な測定:BIAによる体組成評価
3.5 BIAの問題点と精度について
3.6 BIA体組成計の測定をできるだけ正確に実施するために
4 近年のBIA研究:加齢や鍛錬によって変化する筋肉の「質」を評価
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月刊バイオインダストリー 2020年5月号
¥4,950
<著者一覧>
木下英樹 東海大学
中島勇貴 東海大学
覚張孝大 東海大学
竹田志郎 麻布大学
春日元気 日本大学
川井 泰 日本大学
本田洋之 八戸工業大学
荒川千夏 カゴメ(株)
鈴木重德 カゴメ(株)
重盛 駿 信州大学
下里剛士 信州大学
島津朋之 宮崎大学
荻田 佑 信州大学
西山啓太 慶應義塾大学
橋本光紀 医薬研究開発コンサルティング
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【特集】乳酸菌の機能と活用
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乳酸菌の機能性について
Functionality of Lactic Acid Bacteria
乳酸菌やビフィズス菌は安全性が高く,ヨーグルトを始めとした様々な発酵食品に利用されている。また,これらの菌やその発酵物の様々な機能性が明らかになっている。そこで本稿では乳酸菌やビフィズス菌の機能性を皮膚,口腔,胃,腸に分けて紹介すると共に免疫賦活作用や脂質代謝改善作用等の体内での機能についても概説する。
【目次】
1 はじめに
2 皮膚の保湿性改善効果
3 う蝕と歯周病予防
4 ピロリ菌の抑制
5 整腸作用
6 病原菌やウイルスの感染防御作用
7 免疫賦活化作用
8 抗アレルギー作用
9 血圧降下作用
10 脂質代謝改善作用
11 ストレス緩和作用
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青果物の発酵と食品開発
Fermentation of Vegetables and Fruits by Lactic Acid Bacteria and
Development of New Fermented Foods
乳酸菌と言えばヨーグルトとチーズを想像される人が多いと思うが,漬物,キムチ等,青果物を発酵させたものも多い。本稿では青果物や穀物等の植物原料の乳酸発酵食品について概説し,新しい発酵食品の可能性について述べる。また,当研究室で取り組んでいる六次産業化支援のための「種菌構想」について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 乳酸菌による青果物の発酵
2.1 醸造製品
2.2 大豆発酵製品
2.3 漬物
2.4 発酵飲料
2.5 その他
3 乳酸菌の効果的な活用法と新しい発酵食品の提案
4 六次産業化を支援する「種菌構想」
5 おわりに
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乳酸菌の発酵を利用した畜産食品
Animal Food Products Fermented by Lactic Acid Bacteria
我々は畜産食品の保存性や嗜好性の向上のために,乳酸発酵を利用してきた。乳酸菌は乳酸発酵に関与する細菌グループとして知られ,特定の菌株においてプロバイオティクス効果をもたらすことが分かってきた。従って,乳酸発酵は畜産食品の有効な加工法だけでなく,我々にとって乳酸菌を多く摂取するための有益な方法とも言える。
【目次】
1 乳酸菌による発酵を利用した乳製品
2 乳酸菌による発酵を利用した食肉製品
2.1 発酵食肉製品と乳酸菌スターター
2.2 乳酸菌スターター添加による発酵食肉製品のメリット
3 乳酸菌による発酵を利用した食卵製品
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乳酸菌が産生するバクテリオシンと食品保蔵への応用
LAB Bacteriocins and Their Application to Food Preservatio
化学合成された食品保存料が忌避される傾向にある現代では,天然由来の抗菌物質がその代替として考えられている。なかでも,乳酸菌由来のバクテリオシンは生産菌自体が長い食経験を有することに加え,耐熱性が高く,無味無臭であることから,食品の風味を損なわない保蔵剤として期待されている。本稿では,乳酸菌バクテリオシンの特徴や,食品応用に向けた研究例について解説する。
【目次】
1 バイオプリザベーションについて
2 乳酸菌バクテリオシンの歴史と分類について
3 乳酸菌バクテリオシンの食品応用に向けた研究について
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乳酸菌の細胞外多糖とβ-ガラクトシダーゼの機能
Functions of Exopolysaccharides and β-galactosidase in Lactic Acid Bacteria
乳酸菌の糖代謝は食材の発酵性に影響するのみでなく,細胞外多糖の産生,β-ガラクトシダーゼによるラクトースの低減,配糖体の生成・分解などを介して種々の機能性にも寄与している。本稿では, 植物性発酵食品由来の乳酸菌Lactobacillus brevis を中心として,糖質に関連した発酵性,および機能性について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 乳酸菌が生成する細胞外多糖(EPS)
2.1 EPSによる消化液耐性への寄与
2.2 EPSによる宿主の免疫機能への貢献
2.3 EPS産生に関する遺伝子研究
3 Lactobacillus brevisのラクトース資化の特徴
3.1 ラクトース糖源培地における生育緩慢性
3.2 カタボライト抑制機能の欠損によるβ-ガラクトシダーゼの常時発現
4 乳酸菌を用いた並行複発酵の可能性
5 配糖体を加水分解するβ-ガラクトシダーゼ
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乳酸菌組換え体を用いたバイオ医薬品の創製と課題
gmLAB as a Tool for Microbial Therapeutics:Current Perspectives
乳酸菌を有益タンパク質の運搬体として用いる乳酸菌組換え体(gmLAB)研究は,種々の疾病に対する予防・軽減手法の一つとして注目されている。本稿では,我々の研究グループが主導したgmLAB 研究に加えて,これまでの関連トピックスと現状,今後の課題について総括し,gmLAB の有用性と将来性について論じる。
【目次】
1 乳酸菌組換え体
2 乳酸菌粘膜ワクチンを用いた疾患の予防戦略
2.1 感染症ワクチン
2.2 アレルギーワクチン
3 炎症性腸疾患への適応
4 低分子抗体を産生するgmLABの開発と抗体医薬への展開
5 課題と将来展望
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乳酸菌による抗炎症作用
Anti-inflammatory Function of Lactic Acid Bacteria
食経験が豊かな乳酸菌には様々な機能性が期待されている。現在,生活習慣病や生活環境病など,炎症が関与する疾患が急増しており,炎症応答を改善可能な機能性乳酸菌が求められている。本稿では腸管上皮細胞において抗炎症作用を有する乳酸菌や炎症を抑制する制御性T 細胞を増加させる乳酸菌について紹介し,その応用可能性について概説する。
【目次】
1 はじめに
2 腸管上皮細胞における乳酸菌の抗炎症効果
3 乳酸菌による制御性T細胞の誘導
4 終わりに
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食成分による腸細菌叢変化が宿主に及ぼす影響
Effect of Changes in Intestinal Microflora by Dietary Components on the Host
近年,腸細菌と様々な疾病との関連が指摘されている。著者らは,これまで,食による腸細菌叢の変化に着目し,研究を進めてきた。本稿ではまず,プロバイオティクスと,食成分による腸細菌叢の変化と宿主への影響について概説する。最後に,著者らが最近明らかにした,腸細菌のアレルギー免疫応答抑制効果について報告する。
【目次】
1 はじめに
2 食成分による腸細菌叢の変化と宿主への影響
3 腸細菌Flavonifractor plautii
4 F. plautiiのアレルギー免疫応答抑制効果
5 今後の展望
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乳酸菌の消化管定着
Colonization of Lactic Acid Bacteria in the Gut
乳酸菌はヒトの小腸に主に棲息する腸内共生細菌である。消化管への接着機構の理解は,乳酸菌の腸内環境での生存戦略を知る手がかりであると考えられる。本稿では,腸内細菌のヒト消化管での局在について述べるとともに,乳酸菌の接着機構と病原細菌の感染予防への応用例について,筆者らの研究成果を中心に解説したい。
【目次】
1 ヒトに共生する細菌の分布と局在
2 腸内細菌の消化管への接着
3 乳酸菌の消化管への接着
4 乳酸菌のムーンライティングタンパク質
5 最後に
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BIO ENGNEERING
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医薬品GMP と品質
Good Manufacturing Practice for Active Pharmaceutical Ingredients and its Quality
医薬品は直接人体に投与されることより品質には特に留意すべきである。恒常的に高品質な製品の製造を行うためにGMP という規制があり,これを遵守することが必須である。グローバル化が進んだ今,ICH やPIC/S という世界規模での規制の統一が図られており医薬品を取り巻く環境が大きく変化している現状をGMP を中心に解説する。
【目次】
1 はじめに
2 GMPの歴史
3 GMP組織と責任
4 品質保証
5 GMP適合性評価
6 委受託における品質保証
7 品質管理と不純物
8 生データとデータインテグリティ
9 まとめ
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BIO BUSINESS
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食品添加物工業
【目次】
1 概要
2 需給動向
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《BIO PRODUCTS》
ダイマー酸(Dimer acid)
DL-α-トコフェロール(DL-α-Tocopherol)
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月刊バイオインダストリー 2020年4月号
¥4,950
<著者一覧>
東 大志 熊本大学
有村源一郎 東京理科大学
宮永正斗 東京理科大学
八須匡和 東京理科大学
臼杵克之助 大阪市立大学
入江文子 日本カンタム・デザイン(株)
大澤匡弘 名古屋市立大学
宮本啓補 名古屋市立大学
芳賀洋一 東北大学
鶴岡典子 東北大学
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BIO R&D
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シクロデキストリンを含有するポリカテナンの調製と構造解析
~世界最多級の環状分子数を有する放射型ポリカテナンの構築~
Design of Cyclodextrin-based Radial Polycatenanes
近年,ポリロタキサンおよびポリカテナンなどのインターロック超分子が大変注目を集めている。ポリロタキサンを構築するにあたり,環状分子としてシクロデキストリン(CyD)が最も汎用されてきたが,CyDポリカテナンに関する知見は極めて少ない。本稿では,CyDポリカテナンの調製と構造解析を行った筆者らの最近の知見を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 戦略
2.1 どの状態で環化するか?
2.2 軸分子と環状分子は何を用いるか?
3 β-CyDポリカテナンの調製
4 β-CyDポリカテナンの構造解析
4.1 反応液中のチオール基含量
4.2 各種分析装置を用いた解析
4.3 化学量論
4.4 構造様式
5 還元環境におけるポリカテナンの物性変化とβ-CyDの放出性
6 まとめ
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植物香気成分とテルペン誘導体の免疫活性化機能
Immunostimulation Activity of Plant Volatiles and Terpene-derivatives in Plants and Humans
メントール等の植物香気成分は,生物間の情報伝達(生物間コミュニケーション),病害虫に対する防衛,環境適応ならびに,ヒト健康の機能性成分としての多彩な役割を担う。本稿では,植物の香りの機能と応用基盤を構築するための学術研究について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 植物の香りを介した植物間コミュニケーション
3 ミントをコンパニオンプランツとして利用した栽培技術の確立
4 香気成分の植物免疫促進機能
5 香気成分のヒトの健康における機能性
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放線菌に学ぶ:新規抗アレルギー剤の創出展望
Lessons from Streptomyces:Prospects for Creating New Anti-Allergic Agents
現在,乳幼児から高齢者に至るまで日本人の約2人に1人が何らかのアレルギー疾患を有している。発症予防・重症化予防によって Quality of Life の改善をめざすプロジェクトがいくつも遂行されている。本稿では,筆者らがアンチマイシン系抗生物質の一種であるUK-2Aを構造上のモチーフとして創出した,アレルギー疾患克服に貢献する創薬シーズについて解説する。
【目次】
1 はじめに
2 UK-2Aを構造上のモチーフとする創薬シーズ
2.1 アンチマイシン系抗生物質
2.2 誘導体の分子設計と生物活性評価
2.3 抗体医薬と低・中分子薬
3 おわりに
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BIO ENGNEERING
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ExoView を用いたエクソソーム同定,発現定量評価
Indentification and Quantitative Evaluation of Single Exosomes Using ExoView.
最近のニュース等で知られるようになったエクソソーム(細胞外小胞)は癌の罹患や転移に非常に重要な役目をしていることが解明されつつあり,注目を集めています。しかしながらエクソソームは,顕微鏡でその存在を捉えることのできない極めて小さなナノサイズである為,従来の技術では扱うことが不可能でした。本稿で紹介するNanoView 社の製品,ExoView は,このようなナノサイズのエクソソームの計数と同定が可能な専用のアレイチップを世界に先駆け開発し,より正確,簡単かつスピーディーにエクソソームの分析が可能となりました。
【目次】
1 はじめに
2 ExoViewについて
3 対象サンプル
4 単一粒子解析
4.1 測定フローと手順
5 粒子サイズ・個数計測の原理
6 標的マーカの蛍光評価
6.1 共局在の評価,内腔タンパク質の検出
7 HEK293由来エクソソームの評価例
8 まとめ
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慢性疼痛治療ターゲットとしてのアストロサイト-ニューロン乳酸シャトル
Astrocyte-neuron Lactate Shuttle as a Therapeutic Target for Chronic Pain
慢性疼痛は,超高齢社会を迎えた本邦だけでなく,全世界的に患者数が増大しており,その治療法の開発は喫緊の課題である。本稿では,これまでの視点とは異なる慢性疼痛発現の機序として,脊髄におけるアストロサイトのエネルギー供給の異常に焦点を当て,ニューロンへの乳酸供給過多の関与について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 脊髄アストロサイト選択的活性化モデルの作出
3 脊髄後角ANLSの慢性疼痛への関与
4 ANLSの慢性疼痛の治療標的への応用
5 ANLSの高次脳機能での役割
6 まとめとして
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マイクロシステムを用いたウェアラブルヘルスケア機器
Wearable Healthcare Devices Using Microsystem
体表に装着し連続計測,間欠的計測を実現するウェアラブルシステムを身体に装着しやすい形状と大きさを維持し高機能化,多機能化するには,集積回路技術,MEMS(微小電気機械システム)などを用いたマイクロシステムが役立つ。本稿ではマイクロシステムを用いたウェアラブルヘルスケア機器について,筆者らの開発事例を引用しながら解説する。
【目次】
1 はじめに
2 小型発汗計とストレス反応の計測
3 超音波血管径計測と血圧,血管緊張の計測
4 微小還流を用いた乳酸計測
5 おわりに
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BIO BUSINESS
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化粧品工業
2018 年の化粧品の出荷実績は出荷個数31 億2,167 万個( 前年比106.2 %), 出荷金額1 兆 6,942 億円( 前年比105.2 %) となり, 市場が拡大している。洗顔料, 化粧水, 美容液,フェイスパックなどを中心とした訪日外国人観光客の需要取り込みの成功が市場の拡大に貢献した。またメーカー各社がシワ改善を訴求した薬用化粧品を投入し,中高年層だけでなく若年層にも需要が拡大した。薬用化粧品が好評を博していることから今後も機能性化粧品市場の拡大が見込まれる。海外に目を向けると,ASEAN 5ヵ国(インドネシア,タイ,フィリピン,ベトナム,マレーシア)では経済成長による個人消費の拡大により化粧品市場が拡大し続けている。日系化粧品メーカーも同市場で製品やブランドを根付かせていくために売り込みに力を入れている。
【目次】
1 需給動向
2 輸出入動向
3 化粧品受託製造市場の動向
4 日本メーカーの海外戦略
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健康食品・機能性食品工業
2018 年の特定保健用食品(トクホ)市場規模は6,432 億円(前年比97.7 %)と推定され,4年ぶりに減少に転じた。健康機能の認知度が高い乳酸菌やコレステロール関連のトクホが前年に引き続き市場をけん引した一方,近年好調であったトクホ飲料はブームに一服感がみられた。2015 年4 月より施行された機能性表示食品は,2018 年度は1,990 億円(前年度比108.7 %)規模の市場に成長したものと推定される。ガイドラインの第3 次改正により,届出手続の簡素化・迅速化が図られ,また糖質,糖類,植物エキスおよび分泌物についても新たに機能性関与成分として認められたことから,トクホに代わり機能性表示食品を活用する動きがさらに加速している。
【目次】
1 健康食品と機能性食品
2 トクホ市場動向
3 機能性表示食品市場動向
4 健康食品の機能別市場動向
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抗菌・防カビ剤工業
抗菌・防カビ剤や防腐剤,防虫剤,忌避剤,木材防カビ剤はバイオサイド(Biocide)と呼ばれ,身近な日常品から医療・衛生用品,工業製品まで幅広い分野で使用されている。抗菌ブームが巻き起こった我が国では,抗菌加工製品の市場規模は1 兆円を超えていると推定される。国外に目を向けても,中国や米国等で関心が高まっており,非常に速いスピードで市場が成長している。
【目次】
1 概要
2 抗菌剤の種類
3 用途
4 メーカー動向
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《BIO PRODUCTS》
L―システイン塩酸塩(l-Cysteine monohydrochloride monohydrate)
L-セリン(l-Serine)
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月刊バイオインダストリー 2020年3月号
¥4,950
<著者一覧>
久保田博南 ケイ・アンド・ケイジャパン(株)
三木則尚 慶應義塾大学
竹井邦晴 大阪府立大学
鈴木博也 (株)テクノメディカ
前中一介 兵庫県立大学
太田裕貴 横浜国立大学
浅野康一郎 東京大学
南木 創 東京大学
南 豪 東京大学
成瀬 康 (国研)情報通信研究機構
池田四郎 (株)ガステック
井上賢紀 広島大学
山本屋 武 広島大学
浅野知一郎 広島大学
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【特集】ウェアラブル医療・ヘルスケア機器
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ヘルスケアを支える生体情報モニタリング
Health Care Supported by Vital Sign Monitoring
ヘルスケアを目的とした健康機器の基礎技術は,医療のための生体情報モニタが基礎になっている。近年では,これにIT 関連技術が加わり,スマホで自分の健康状態をチェックできるようになってきた。測定項目には大きな変化が見られないが,日常の体調チェックが行えるような小型で持ち運び可能な機器に変貌しつつある。
【目次】
1 単能機器によるモニタリングの現況
1.1 スタートは歩数計から
1.2 体重計から体脂肪計へ
1.3 現在の代表格は脈波数モニタリング
1.4 ヘルスチェックのための心電図モニタなど
1.5 パルスオキシメータの役割増加
1.6 血圧モニタリングへの各社の競争
2 複合機器を含む市場開拓の動き
3 医療機器から一般ヘルスケア機器への移行動向
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インプラント人工透析システム
Implantable Dialysis System
国内33 万人の透析患者は,週3 回の通院や週12 時間の急峻な治療,太い注射針による毎回の血管穿刺などQOL が決して高いとは言えない。我々は,患者の通院負担,ならびに血管穿刺回数を低減するなど患者QOL を劇的に向上するインプラント人工透析システムの研究開発を行っている。本稿ではこれまでの成果と,課題について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 インプラント人工透析システム
3 インプラント人工透析システムの界面技術
4 インプラント人工透析システムの実用化に向けて
5 インプラント人工透析システム研究開発における課題
6 おわりに
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皮膚表面から健康管理する貼付型フレキシブルセンサシート
Attachable Flexible Sensor Sheet for Healthcare from Skin Surface
常時健康管理に向けた新たな取り組みの一つとして貼付型のフレキシブルセンサシートが注目を集めている。本項では,そのフレキシブルデバイスとして,活動量,心電図,皮膚温度,そして汗の化学物質を計測するセンサシートについて紹介する。また精度高く計測する方法についても簡単に議論する。
1 はじめに
2 多種物理センサを集積したフレキシブルセンサシート
2.1 印刷形成した3軸加速度センサ
2.2 ウェアラブル健康管理パッチ
2.3 その他フレキシブル物理センサ
3 汗成分計測用フレキシブル化学センサ
4 対象温度(皮膚温度)の高精度計測
5 結言
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検査分散・データ中央管理型診断機器
Central Management System for Clinical Data at In Vitro Diagnostic Devices
ヘルスケアデバイス,ウェアラブルデバイスには,検査データをはじめとしたデバイス管理のためのデータ一元管理と運用が必要である。臨床検査領域の検査データ管理の在り方を起点としてヘルスケア,ウェアラブルデバイスのデータ管理について考察し,著者らが取り組んでいるヘルスケアデバイス,ウェアラブルデバイスへの通信機能の搭載とデータの一元管理について解説したい。
【目次】
1 はじめに
2 臨床検査分野のデータ管理トレンド
3 ヘルスケア分野のデータ管理システム
4 IoT機能搭載のPOCT機器の一例
5 ウェアラブルで用いられる検査装置について
6 最後に
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身体密着型生体活動モニタリングシステムの開発
Development of Adhesive Type Human Monitoring Systems
身体に貼り付ける,あるいは密着させるタイプの生体モニタリングシステムについて述べる。このような形態のモニタリングシステムは,体躯の向きや動きを精度良く検出でき,また心電,筋電,脈波,血圧,(深部)体温など基本的バイタル量を計測しやすいという特徴を持ち,確度の高い見守りシステムに最適である。本稿では具体的なシステム例をいくつか示し,それらの内容を簡単に説明する。
【目次】
1 はじめに
2 生体活動モニタリングの形態
3 身体貼り付け型モニタリングシステム
3.1 絆創膏型実証モデル
3.2 柔軟センサとの組み合わせ
3.3 VitalgramII
3.4 Vitalgram CT
3.5 アクティブ筋電電極
4 おわりに
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周産期新生児医療のIoT 化に向けたウェアラブル黄疸計測デバイスの開発
Wearable Jaundice Device for Perinatal and Neonatal Medicine
近年,様々な現場でIoT 化が進んでいる。重要な現場の一つに周産期新生児医療がある。本研究では,当研空室で開発中の新生児用ウェアラブル黄疸計に関して論ずる。新生児黄疸は新生児の80%以上で検出される現象であるとともに処置が遅れると重篤な後遺症につながる症例である。本論のデバイスは,その診断・治療とIoT 技術の懸け橋となるデバイスである。
【目次】
1 はじめに
2 新生児黄疸
3 新生児黄疸の検出方法
4 ウェアラブル黄疸計測デバイス
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有機トランジスタ型化学センサの開発動向
Recent Trends in Development of Organic Transistor-based Chemical Sensors
有機電界効果トランジスタ(OFET)型化学センサは,分子認識情報の読み出しを可能とする有機デバイスの1 種である。本稿では,マイクロ流路と接合した延長ゲートOFET と,より高集積化を指向した電解質ゲートOFET を用いたそれぞれの化学センサによる標的種の検出例をもとに,人工レセプタを導入したOFET型化学センサのウェアラブルデバイスへの応用可能性について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 マイクロ流体デバイスを接合した延長ゲート有機トランジスタ型化学センサの開発
3 電解質ゲート有機トランジスタ型化学センサによるヒスタミン検出
4 まとめ
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ウェアラブル脳波計の開発
Development of Wearable EEG System
近年の脳波計測技術の進歩により,簡易に計測が可能なウェアラブル脳波計が実現されつつある。脳波計測を行うことでてんかんや認知症などの脳疾患の情報を得ることができる。現状では,長時間の装着が難しいなどの課題があるが,今後,よりよいウェアラブル脳波計が開発された場合,新たなるヘルスケアの創出につながると考えられる。
【目次】
1 はじめに
2 簡単に脳波計測が可能なウェアラブル脳波計の開発
2.1 一般的な脳波計測手法
2.2 導電性ジェルが不要で簡単に脳波が測れる技術の開発
2.3 ウェアラブル脳波計の為の小型脳波計とヘッドギアの開発
2.4 開発したウェアラブル脳波計の評価
2.5 日常での常時脳波計測を目指して
3 おわりに
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パッシブインジケータ法での皮膚アンモニア測定によるストレスの見える化
Visualization of Mental Stress by Measurement of Ammonia Emanated fromHuman Skin Using Passive Indicator
気象などわたしたちを取り巻く環境や社会的価値観の変化に伴い,体臭がこれまでと異なるとらえられ方をするようになり注目を集めている。一方,からだから発せられるにおいをさまざまな化学物質の集合体ととらえ,生体から放たれる情報として活用しようとする研究分野もある。皮膚表面から放散される微量な化学成分(皮膚ガス)について,皮膚ガスとは何か? から,最新の研究により日進月歩で明らかになっている皮膚ガスの利用価値,また皮膚アンモニアを利用したストレス診断に向けた取り組みについて,実測例も含めて解説する。
【目次】
1 なぜいま皮膚ガスが注目されるか
2 皮膚ガス測定でわかる生体情報
2.1 皮膚ガスとは
2.2 皮膚ガス測定により得られる情報
3 皮膚アンモニアとストレス
3.1 ストレスと心拍変動
3.2 皮膚アンモニアの生成と放散
3.3 皮膚アンモニアの測定方法
4 簡易ストレス測定キット
4.1 パッシブインジケータ法および測色
4.2 ストレス検出用の測定キットの開発
5 おわりに
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BIO R&D
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肥満から生活習慣病が生じるメカニズムの解明とその治療戦略
Mechanisms for the Treatment of Lifestyle-related Diseases fromObesity and Their Treatment Strategies
高カロリーの食事や運動習慣の欠如によって生じる肥満は糖尿病や非アルコール性脂肪肝(NAFLD)などの様々な生活習慣病を引き起こす。本稿では,肥満によって生じる生活習慣病の発症メカニズムについて各臓器で生じる分子シグナリングの変化に着目して,その治療戦略とともに解説する。
【目次】
1 はじめに
2 肥満とインスリン抵抗性
3 各臓器で引き起こされる肥満による変化
3.1 肥満による腸管炎症
3.2 肥満による肝臓での炎症と脂肪蓄積
3.3 肥満による脂肪組織のリモデリング
3. 4 肥満による筋肉の変化
4 肥満と生活習慣病を克服する治療戦略
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《BIO PRODUCTS》
γ-オリザノール(γ-Oryzanol)
アルギン酸ナトリウム(Sodium alginate) -
月刊バイオインダストリー 2020年2月号
¥4,950
<著者一覧>
木村信忠 (国研)産業技術総合研究所
兼橋真二 東京農工大学
内堀亮介 自治医科大学
林 幸壱朗 九州大学
橋本洋佑 Trinity College Dublin
橘 敬祐 大阪大学
近藤昌夫 大阪大学
松田健人 北海道大学
アリフ ムハンマド ラセドゥル コビル 北海道大学
佐田和己 北海道大学
角五 彰 北海道大学
葛谷明紀 関西大学
山田貴子 松谷化学工業(株)
汐田剛史 鳥取大学
板場則子 鳥取大学
竹山 旭 (株)NOVENINE
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BIO R&D
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未知微生物資源をターゲットにした機能性化合物の探索
Screening for Novel Bioactive Compounds from the Uncultivated Microbial Resources
環境中に生息するおよそ99%以上の微生物は未知であり,有用な生物遺伝子資源として様々な産業への活用が期待されている。本稿では,未知微生物を対象にした生物遺伝子資源の探索技術と,筆者の研究を中心に,未知微生物に由来する機能性化合物の探索研究について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 未知微生物資源の探索技術の進歩と成果
2.1 メタゲノム解析とは
2.2 メタゲノム解析技術の開発と応用
2.3 メタゲノム解析のターゲット
2.4 メタゲノム解析による新規なインジゴ合成酵素の探索
2.5 メタゲノム解析による微生物間コミュニケーション物質の探索
3 おわりに
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BIO R&D
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未利用廃棄資源の有効利用技術の確立に向けて
-非可食カシューナッツの殻油由来の機能性材料-
Development of Effective Utilization of Non-food Biomass
-Development of Cashew Nuts Green Plastics-
次世代の未利用資源として期待できる非食用の廃棄未利用資源のひとつであるカシューナッツの殻油の有効利用について紹介する。この殻油を原料として,速乾性,耐熱性,フレキシブル特性,耐薬品性,抗菌活性,光学的透明性を有する室温で材料形成可能な環境調和型材料を開発した。
【目次】
1 緒言
2 カシューナッツシェルリキッド(CNSL)とは
3 殻油を原料とする室温硬化可能な環境調和型バイオマスプラスチック
4 まとめと要望
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BIO R&D
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CAR-T療法の課題と次世代型CARの開発
Development of “Next-generation” CAR-T Cells
免疫チェックポイント阻害薬の登場によりがんに対する免疫療法が大きな注目を集めている。キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)発現T細胞を用いた養子免疫療法(CAR-T療法)もまた,B細胞性造血器腫瘍に対する治療で劇的な効果をあげている。CAR-T療法の寄せられている期待は大きく,さらに有効性を高める次世代型CARの開発がより一層活発化すると見込まれる。
【目次】
1 はじめに
2 キメラ抗原受容体
3 B細胞性腫瘍に対するCD19特異的CAR-T療法
4 CD19以外の抗原を標的としたCARの開発
5 CAR-T療法の課題
6 次世代型CAR-T細胞
7 おわりに
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BIO R&D
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骨髄様組織を形成するハニカムスキャフォールド
Honeycomb Scaffold for Generation of Bone Marrow-like Tissues
骨の無機組成である炭酸アパタイトからなるハニカム型スキャフォールドを作製した。ハニカム壁内に1~5μmのマイクロポアを有するスキャフォールドは骨と置換された後,大規模に材料吸収が生じた部位において骨髄様組織が形成した。この人工的に骨髄を形成するスキャフォールドは,白血病治療や造血幹細胞研究に有用であると思われる。
【目次】
1 はじめに
2 炭酸アパタイトハニカムの作製
3 炭酸アパタイトハニカムのポア特性
4 炭酸アパタイトハニカムの機械的特性
5 細胞接着およびアルカリホスファターゼ活性
6 骨および骨髄様組織形成
7 結論
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BIO R&D
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血液脳関門制御抗体の開発
Development of Antibodies with the Ability to Modulate the Blood-brain Barrier
血液脳関門には密着結合が存在し,薬物の脳内への移行を妨げる物理的障壁となっている。この密着結合を制御する技術を確立することができれば,中枢神経系疾患に対する治療に大きく貢献すると考えられている。本稿では,当グループが開発した血液脳関門制御抗体に関する研究の概要を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 BBBのTJを構成するタンパク質
2.1 Claudin-5
2.2 Occludin
2.3 Tricelluinとangulin-1
2.4 JAM-A
2.5 ZO-1
3 抗claudin-5抗体の特性
3.1 市販されている抗claudin-5抗体
3.2 当グループで作製した抗体
4 取得した抗claudin-5抗体によるバリア機能の制御
5 今後の展開
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BIO R&D
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生体分子モーターとDNAオリガミによる分子人工筋肉の開発
Development of Molecular Artificial Smooth Muscle by Using Biomolecular Motorand DNA Origami Nanostructures
生体分子モータータンパク質は,化学エネルギーを力学的な仕事へと変換するナノメートルスケールの分子機械である。本研究では,バイオテクノロジーにより合成される生体分子モータータンパク質とDNAナノテクノロジーにより合成されるDNAナノ構造体(DNAオリガミ)を組み合わせ,自在にサイズを制御可能な分子人工筋肉を開発した。
【目次】
1 はじめに
2 分子人工筋肉の設計
2.1 DNAオリガミによる微小管の空間配置制御
2.2 キネシンを架橋点とする微小管ネットワークの形成
2.3 分子人工筋肉が示す収縮運動
3 応用に向けた取り組み
4 おわりに
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BIO R&D
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希少糖含有シロップを用いた機能性表示食品の開発
Development of Foods with Function Claims Using Rare Sugar Syrup
希少糖含有シロップは,ブドウ糖や果糖を主成分とし,希少糖(プシコース,ソルボース,タガトース,アロース)を固形分として13%程度含有している。希少糖含有シロップは体脂肪低減効果や血糖応答低減効果などの生理作用を示す。本稿では,希少糖含有シロップを用いた血糖に関する機能性表示食品の開発について概説する。
【目次】
1 はじめに
2 希少糖
3 希少糖含有シロップ
3.1 低GI甘味料
3.2 低用量血糖応答試験
4 希少糖含有シロップを利用した機能性表示食品
4.1 スクラーゼ活性阻害
4.2 血糖応答低減効果
4.3 機能性表示食品の開発
5 おわりに
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BIO ENGINEERING
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肝硬変治療細胞シートの開発
Development of Cell Sheets for Treatment of Liver Cirrhosis
肝硬変は予後不良であり,特に,非代償性肝硬変は治療法がなく,治療法の開発が喫緊の課題である。著者らが開発した肝硬変治療細胞シートは,強力な肝線維化抑制作用を有し,作用機序は肝線維合成の抑制とマトリックスメタロプロテナーゼ(MMP)分泌による線維分解促進による。本細胞シートは有望な肝硬変治療法として開発を続けている。
【目次】
1 はじめに
2 肝硬変治療細胞シートの開発
3 肝硬変治療細胞シートの肝線維化抑制効果
4 硬変治療細胞シートの肝線維化抑制のメカニズム
5 おわりに
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BIO ENGINEERING
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歯科医療を通じて,ヘルスケアの未来を創る。
IoT スマート歯ブラシ“SMASH”の開発
Development of IoT Smart Tooth Brush“SMASH”
少子超高齢化社会と言われて久しい我が国において,生活習慣病の予防は非常に重要である。日本の医療費は年間42 兆円を超えており様々な抑制策が実行されているが,目立った効果は出ておらず,また歯科を主体とした取り組みは現状なされていない。近年,歯周病や虫歯による歯の欠損を素因とした口腔機能の低下により,全身のフレイル(虚弱)が惹起されることや,透析や脳卒中などの重篤な疾患は歯周病及び虫歯が発端となっていることを示す「メタボリック・ドミノ」という概念が報告された。そこで弊社では,健康寿命の延伸とQOL の向上を目的として,歯周病リスクをセンシングできるスマート歯ブラシと,それに付帯するサービス及びデータプラットフォームを開発し社会実装する。これにより,予防医療の当たり前化や疾患の早期発見,受診勧奨を実現し,全ての人々が自由で自分らしい人生を創出できる社会を実現したいと考えている。
【目次】
1 日本の医療課題
2 医療費増大の深刻化
3 歯科疾患と全身疾患の関係
4 行動変容
5 口臭と歯周病
6 口臭とは
7 口臭の原因物質
8 口臭の検査法
9 口臭をセンシングする歯ブラシ
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BIO BUSINESS
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芳香・消臭・脱臭剤工業
2018 年度の芳香・消臭・脱臭剤市場は前年とほぼ横ばいの約506 億円規模となった。消費者の価値観やニーズの多様化に対応し,2018 年も各社から様々な新商品が上市され,市場は活況を呈した。特定の悪臭の消臭に特化した機能や,よりナチュラルな香りを追求した商品が多く見られた。また,スプレー,ジェル,液体,スティックなど様々な形態の商品が発売され,消費者の選択肢が広がった。とりわけ女性をメインターゲットにした,インテリア性が高く,高単価な室内用スティックタイプの芳香・消臭剤が好調を博した。
また,ウイルスや雑菌から守る効果や,雑菌やカビの繁殖を抑える効果など,除菌機能や介護用途を想定した商品の需要が高まっている。今後もさらなる付加価値商品の開発・投入が進むとみられる。
【目次】
1 概要
2 種類・素材など
3 市場動向
4 主な企業動向
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《BIO PRODUCTS》
酢酸フタル酸セルロース(Cellulose acetate phthalate)
-
月刊バイオインダストリー 2020年1月号
¥4,950
<著者一覧>
末永 光 産業技術総合研究所
河崎雄太 横浜国立大学
武田 穣 横浜国立大学
岩長祐伸 物質・材料研究機構
亀崎允啓 早稲田大学
土屋浩一郎 徳島大学
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BIO R&D
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新しい合成生物学装置の開発~遺伝子発現のファインチューニング~
Fine-tune System for Gene Expression in Synthetic Biology
新奇な生命現象の発見は,新規なバイオテクノロジー創出への可能性をも秘めている。たとえば,CRISPR/Casシステムという獲得免疫機構の発見が,今まさに画期的なゲノム編集技術へと応用展開を遂げつつある。本稿においては,筆者らがメタゲノム配列から発見した反復配列について,合成生物学における有用な装置となり得る興味深い機能を明らかにしたので紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 反復配列とは
3 メタゲノムとは
4 メタゲノムからのタンデムリピートの発見
5 [MTR9]xの機能解析
5.1 大腸菌宿主
5.2 酵母宿主
5.3 宿主の拡大
6 おわりに
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BIO R&D
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グルコース・グルコサミン交互共重合体によるセルロースの表面改質-細菌性マイクロチューブ発の新技術-
Surface Modification of Cellulose with Glucosaminoglucan-New Technologies Based on Bacterial Microtubes-
グルコース・グルコサミン交互共重合体(グルコサミノグルカン)は糸状性硫黄酸化細菌の細胞列を包み込むマイクロチューブの主成分である。グルコサミノグルカンはあたかもセルロースとキトサンのキメラ多糖のような化学構造を有し水溶性と凝集性を併せ持つ。そして,セルロース素材に強く吸着し表面にアミノ基を付与する。本稿では,グルコサミノグルカンとその由来である細菌性マイクロチューブについて概説する。
【目次】
1 はじめに
2 マイクロチューブ形成細菌
3 Thiothrix属
4 Thiothrix属のマイクロチューブ
5 グルコサミノグルカン
6 セルロース素材の表面アミノ化
7 表面アミノ基の効果
8 グルコサミノグルカンの調製
9 まとめ
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BIO ENGINEERING
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生体分子を高感度に蛍光検出するメタ表面センサー
Metasurface Sensors Detecting Biomolecules Highly Efficiently with Fluorescence
数ある生体分子センサーにおいて蛍光検出を動作原理とするものは,最も高い感度を示すと認識されている。蛍光強度を著しく増強できるメタ表面を2 種類見出した。プラズモン・フォトンハイブリッド型と全誘電体型のメタ表面について紹介する。いずれも巨大タンパク質分子からなる生体分子用のセンサーとしても応用可能な新しい人工材料である。
【目次】
1 はじめに
2 メタ表面における蛍光増強
2.1 プラズモン・フォトンハイブリッド型メタ表面
2.2 シリコンナノロッドからなるメタ表面
2.3 生体分子検出に向けて
3 まとめ
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BIO ENGINEERING
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新産業創出のための機能性材料とメカトロニクスの融合デザイン~磁気応答性材料を用いたロボットアクチュエータ~
Multidisciplinary Design of Functional Material and Mechatronics for New Industries-Robot Actuators Using Magnetorheological Materials-
外部刺激に応じて物理化学等の特性が変化する機能性材料は,メカトロニクスのデザインにパラダイムシフトを起こし,いままで実現が難しかった新たな機能を発現させる大きな潜在性を有している。本稿では,機能性材料とメカトロニクスの融合による新産業創出を見据え,機能性材料をロボットアクチュエータへ応用した研究開発について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 BMSアクチュエータの駆動原理
3 BMSアクチュエータの設計手法
3.1 概念設計
3.2 設計パラメータの決定
3.3 導出した設計パラメータ
4 性能試験
4.1 性能試験手法
4.2 性能評価の結果と考察
5 おわりに
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BIO ENGINEERING
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抗体結合蛍光ナノビーズを活用した可搬型血中濃度測定装置の開発
Development of an Immunoassay-based Point-of-care Testing (POCT) Device forTherapeutic Drug Monitoring
臨床現場では薬剤師が患者の血液中の薬物濃度を分析し,医師がその投薬量を調節する薬物治療モニタリング(TDM)が行われている。しかし多くの医療機関は外注で薬物濃度を測定しているためTDM に基づいた迅速な判断は不可能な場合が多い。そこで抗体結合蛍光ナノビーズを活用し,POCT でTDM を可能にするシステムを開発したので紹介する。
【目次】
1 治療薬物モニタリング(TDM)とは
2 TDMの現状と課題
3 TDM用POCTシステムの概要
4 TDM用POCTシステムの将来性
5 おわりに
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BIO BUSINESS
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バイオ3D プリンティングの開発動向
【目次】
1 はじめに
2 バイオ3D プリンティングによる生体材料の作製プロセス
3 組織化プロセス
4 組織構築の手法
5 ハードウェア
6 バイオインク
7 国内研究開発動向
8 3Dプリンティングの医療応用
9 臓器モデル
10 義足/義歯
11 人工骨/人工関節
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BIO BUSINESS
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日本のバイオプラスチック市場
【目次】
1 バイオプラスチックの市場規模
2 国内市場の動向
3 研究開発動向
3.1 石油由来プラスチックのバイオプラスチック化
4 生分解性ポリマーの高性能化
5 新たなバイオプラスチックの開発
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BIO BUSINESS
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香料工業
2018年の国内生産量は前年比101.4 %の6万5,312トンで,減少から増加に転じた。生産金額は前年比105.7 %の1,769億6,700万円となり,前年実績を上回った。香料には大きく分けて食品香料(フレーバー)と香粧品香料(フレグランス)があり,海外では同程度の市場を持っているが,国内ではおよそ7:1 で食品香料市場の方が大きい。世界の香料売上高は,263 億ドルとなり前年比107.6 %と増加した。これはドルベースでの結果であり,現地通貨ベースでも増加している。特に中国,東南アジア市場の成長が大きい。香料は極めて嗜好性,快楽性の強い製品であるため,地域の気候,文化による差が大きく,それに対応した開発能力が求められている。
【目次】
1 需要動向
2 輸出入動向
3 安全問題への対応
4 メーカー動向
5 製品開発動向
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BIO BUSINESS
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紙・パルプ用化学薬品工業
製紙用薬剤は,紙・板紙の製造において様々な用途で用いられる。国内需要は紙・板紙の成熟市場に連動して縮小傾向にあるが,製紙用薬剤メーカー各社は,ニーズの高機能化に取り組むとともに,中国や東南アジア地域の発展をにらみ,同地域における市場展開・生産体制の強化を行っている。
【目次】
1 概要
2 紙・板紙需要動向
2.1 紙
2.2 板紙
3 製紙パルプ需要動向
4 古紙需要動向
5 製紙用薬剤需要動向
5.1 製紙パルプ用薬品
5.2 古紙処理工程用薬剤
5.3 抄紙工程用薬剤
5.4 二次加工用薬品
5.5 その他
6 製紙用薬剤メーカーの動向
6.1 国内メーカーの中国,東南アジア地域への進出
6.2 各社の国内動向
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《BIO PRODUCTS》
DL-アラニン(DL-Alanin)
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月刊バイオインダストリー 2019年12月号
¥4,950
<著者一覧>
笹内謙一 (株)PEO技術士事務所
菅野明芳 (株)森のエネルギー研究所
片岡直明 水ingエンジニアリング(株)
澤井正和 (株)テクノプラン
原田龍一 東北大学
盛戸貴裕 東北大学
谷内一彦 東北大学
梅津光央 東北大学
齋藤 裕 産業技術総合研究所
亀田倫史 産業技術総合研究所
津田宏治 東京大学
小沼泰子 (株)ニコン
清田泰次郎 (株)ニコン
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【特集】バイオマス発電の実際と今後
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木質バイオマス小規模発電
Small Scale Power Plant for Woody Biomass
小規模の木質バイオマス発電がFITの買取価格が40 円/kWh と再生可能エネルギーの中でも群を抜いて高いことや必要な燃料の量が比較的少ないことから注目を浴びている。中でもガス化発電は高効率であることからその導入が盛んである。ただしその技術の大半が欧州からの輸入であること,熱電併給の熱利用が活かせていないことから事業性の妨げとなっており,その留意点について述べる。
【目次】
1 はじめに
1.1 2,000 kW未満の発電所のメリットとデメリット
1.2 BTG発電
1.3 ORC発電
1.4 熱分解ガス化発電(ガス化CHP)
1.5 汎用ガス化CHPの留意点
1.6 熱電併給は必須
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バイオマス熱電併給・熱供給の最新動向
Latest Trends in Biomass Cogeneration and Heat Supply
「2050年にCO2排出量80%削減」達成には,日本のあらゆる企業や家庭が「CO2ゼロ」の実現に投資を行う必要がある。太陽光に比べバイオマス発電はコストが高止まりする短所がある一方で,工場での蒸気利用等の熱利用では他の再エネよりバイオマスが安価となる。民間企業や一般家庭から投資を呼び込む「バイオマス熱電併給・熱自給」のビジネス創出が胎動し始めた。
【目次】
1 はじめに
2 木質バイオマスの熱利用を伴う発電(熱電併給)・熱供給の現状
2.1 他の再エネ発電と,木質バイオマス発電の将来動向
2.2 木質バイオマスの熱利用の現況
2.3 民間事業者にとっての「儲かる木質バイオマスの熱利用事業」の定義
3 近年の特徴ある木質バイオマス熱電併給・熱利用の動向,導入事例について
4 結び
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バイオマスのメタン発酵技術の基礎と開発事例
Trends in Research & Development of Anaerobic Biological Treatment Technology for Biomass
メタン発酵(嫌気性処理)は,酸素のない嫌気環境下で生育する嫌気性菌の代謝作用により,有機物をメタンガスや炭酸ガスに分解する方法である。現在,低炭素社会に向けた未利用資源の活用技術として,生ごみや食品加工残渣,汚泥などのバイオマス向けメタン発酵が普及し始めており,その基礎と研究開発動向を紹介した。
【目次】
1 はじめに
1.1 メタン発酵技術の歴史
1.2 バイオマス活用の推進,循環型社会の形成,法制度の施行状況
1.3 バイオマスメタン発酵の技術開発
2 メタン発酵技術の基礎
2.1 メタン発酵処理の特徴
2.2 有機物の嫌気分解経路
2.3 バイオガス発生
2.4 バイオマス活用に向けたメタン発酵処理技術
3 食品廃棄物系メタン発酵技術の開発事例
3.1 システムフロー
3.2 食品製造残渣バイオガス化設備の運転結果
4 下水汚泥のメタン発酵技術の開発事例
4.1 高濃度汚泥消化システム
4.2 高濃度汚泥消化システムの評価(室内実験)
4.3 下水汚泥消化のバイオガス有効利用技術と課題
5 地域バイオマス利活用施設の事例
6 今後の展望
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メタン発酵発電事業の採算性と最適化および新技術
Profitability and Optimization of Methane Fermentation Power Generation Business and New Technology
本稿では,「新エネルギー・産業技術総合開発機構」(NEDO)の支援を受けて開発したメタン発酵槽に関する新技術について紹介する。この技術は,真空装置とバイオマスの可溶化装置として機能する「蒸気エジェクター」を利用したメタン発酵促進技術で,この技術を利用した発電システムからの熱回収と消化率の効率化により,発電事業の採算性を従来システムと比較して飛躍的に改善する方法を解説する。
【目次】
1 はじめに
2 メタン発酵発電事業の事業性向上対策
2.1 メタン発酵発電事業に適したバイオマスと発電事業の状況
2.2 メタン発酵発電事業における利益率向上のための方策と課題
3 蒸気エジェクター式加温装置によるメタン発酵の効率化技術
3.1 蒸気エジェクター式加温装置の原理と機能
3.2 蒸気エジェクター式加温装置の性能
4 蒸気エジェクター式加温装置を利用したメタン発酵発電システム
4.1 蒸気エジェクター加温装置を利用した高温メタン発酵システム
4.2 温水加温発電システムとの事業性(投資利益率)比較
5 おわりに
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BIO R&D
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ポジトロン放出核種標識タンパク質の新規合成方法の開発
Development of New Methods for Protein Radiolabeling with Positron Emitting Radionuclides
バイオ医薬品のようなタンパク質製剤が治療薬に出てきてから,タンパク質型のPETプローブへの期待も高まってきている。本稿では,筆者らが取り組んできた炭素11とフッ素18標識高比放射能標識アミノ酸と無細胞タンパク質合成試薬を用いた,新しいポジトロン放出核種標識タンパク質PETプローブの合成技術について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 無細胞タンパク質合成試薬を用いたポジトロン放出核種標識タンパク質の合成
2.1 11C標識L-メチオニンを用いた11C標識タンパク質の合成
2.2 18F標識4-フルオロ-L-プロリンを用いた18F標識タンパク質の合成
2.3 部位特異的な18F標識タンパク質の合成
3 おわりに
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BIO R&D
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機械学習が道先案内するタンパク質の進化分子工学
Can Machine Learning Guide Directed Evolution of Functional Proteins ?
タンパク質の設計とは「20種類のアミノ酸をどのように配列させるか」であるが,アミノ酸の配列が生み出す「場合の数(配列空間)」は膨大である。タンパク質のデータベースから骨格タンパク質を選定した場合,タンパク質の設計は「どこの残基」を「何のアミノ酸」に変えるかという単純なものになる。しかし,タンパク質の大規模な変異体ライブラリーの作製技術やスクリーニング操作が発展してきているにも関わらず,未だ開発時間も創出確実性も読めない中で開発を進めざるを得ない現状がある。本稿では,進化分子工学における変異体ライブラリーの作製に人工知能技術の一つである機械学習による機能予測を導入することで,目的変異体を含む確率が飛躍的に向上している小規模な変異体群(スマートホットライブラリー)を構築する手法を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 進化分子工学の課題:配列空間問題
3 配列空間の道先案内人としての機械学習
4 学習データの質と量
5 アミノ酸の記述子
6 ベイズ最適化に基づく機械学習
7 酵素への利用
8 まとめ
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BIO ENGINEERING
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細胞培養向けライブセルイメージング
Live Cell Imaging for Cell Culture
ライブセルイメージングは基礎研究だけでなく,医療及び産業で利用される細胞品質管理や in vitro での創薬スクリーニングにおいても欠かせないツールとなっている。安定したライブセルイメージングを実現するための,細胞培養環境を維持する細胞培養観察装置と画像解析について述べる。
【目次】
1 培養細胞のライブセルイメージング
2 ライブセルイメージングを支える画像解析技術
3 接着細胞のコンフルエンシーの解析
4 ヒト多能性幹細胞コロニーの解析
5 神経細胞の解析
6 画像解析のための撮影条件設定
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BIO BUSINESS
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世界のバイオプラスチック市場
【目次】
1 世界市場
2 ブラジル
3 アジア
4 欧州
5 北アメリカ
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BIO BUSINESS
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特定保健用食品(トクホ)市場の動向
【目次】
1 はじめに
2 市場動向
3 用途別動向
4 販売チャネル別動向
5 将来動向
6 トクホ市場における食物繊維含有製品の動向
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月刊バイオインダストリー 2019年11月号
¥4,950
<著者一覧>
志字寿文 松浦薬業㈱
今井昇治 松浦薬業㈱
大野高政 松浦薬業㈱
山地史哉 ポーラ化成工業㈱
多田明弘 ポーラ化成工業㈱
鈴木 茂 ㈱バスクリン
秀 道広 広島大学
榎本有希子 ㈱ファンケル
渡辺 均 千葉大学
新藤 聡 千葉大学
松原紀嘉 千葉大学
池上文雄 千葉大学
安藤広和 金沢大学
佐々木陽平 金沢大学
御影雅幸 東京農業大学
白鳥 誠 ㈱ウチダ和漢薬
福井健一 大阪大学
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【特集】漢方生薬・薬用植物の効能と栽培技術
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パフィアエキスパウダーの美肌素材としての有用性
Beneficial Effect of Pfaffia Extract Powder as Beautiful Skin Agent
老化を実感する肌などの組織は,コラーゲンの含有率が非常に高い。体内のコラーゲンは加齢と共に減少することや,20 歳前後をピークにコラーゲン合成能が低下することから,コラーゲン合成促進作用を有する素材はアンチエイジングに有用であると考えられる。
本稿では,パフィアエキスパウダーのコラーゲン合成促進作用,紫外線による光老化に対する改善作用など,パフィアエキスパウダーの美肌分野の研究成果をヒトモニターによるアンケート調査結果も交えて紹介する。
【目次】
1 はじめに
1.1 皮膚の構造
1.2 皮膚老化とコラーゲン
2 パフィアとは
3 パフィアの加齢による皮膚老化に対する有用性
4 パフィアの紫外線による皮膚老化に対する有用性
5 パフィアエキスパウダーの皮膚線維芽細胞活性化作用
6 モニターアンケート調査
7 パフィアエキスパウダーの安全性
8 おわりに
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コルチゾールによる細胞間接着の減少とトウニンエキスによる改善
The Intercellular Adhesion is Decreased by Cortisol and Increased by Peach Kernel Extract
様々な肌のトラブル・悩みに対応するため,有用性のある植物抽出物が多くの化粧品に含まれている。今回我々は,女性の肌悩みの一つである「むくみ」に着目し,むくみが細胞間接着の減少により生じることから,細胞間接着について調べた。
その結果,ストレスにより増加するコルチゾールが細胞間接着を弱くすることが新たに明らかとなり,またトウニンエキスが接着を強化する可能性が示された。
【目次】
1 はじめに
2 実験
2.1 試料
2.2 細胞間接着を構成するZO-1の染色
2.3 画像解析
2.4 ZO-1およびLNX1の発現量解析
2.5 統計解析
3 結果
3.1 コルチゾールが細胞間接着に与える影響
3.2 コルチゾールが細胞間接着を弱くするメカニズム
3.3 細胞間接着を強化するトウニンエキスの効果
4 考察
5 おわりに
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アトピー性皮膚炎に対するタンニン酸のスキンケア剤への活用
Efficacy of Sweat-antigen-inactivating Skin Care Products on Itching of Patients with Atopic Dermatitis
アトピー性皮膚炎の治療では,ステロイド外用薬を中心とした薬物療法ととも,原因・悪化因子の検索と対策,および異常な皮膚機能の補正を行うスキンケアが必要である。我々は,アトピー性皮膚炎に対する悪化因子である汗に着目し,植物成分の中からタンニン酸が汗中の抗原(汗抗原)を中和し,末梢血好塩基球からのヒスタミン遊離を抑制することを見出した。本稿では,アトピー性皮膚炎患者の痒みの軽減を目的としたタンニン酸を配合したスキンケア剤について報告する。
【目次】
1 はじめに
2 アトピー性皮膚炎患者における汗の影響
3 汗に含まれる抗原成分(汗抗原)
4 植物成分における汗抗原の中和作用
4.1 植物成分からのスクリーニング
4.2 タンニン酸の精製汗抗原中和試験
5 タンニン酸を配合したエアゾールスプレー剤の臨床的有用性
6 タンニン酸の入浴剤への活用と臨床的有用性
6.1 タンニン酸の吸着試験
6.2 タンニン酸入浴剤の臨床効果
7 おわりに
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Arginase-1 (ARG-1)に着目した新しい美白機能における生薬・有用植物由来成分“Stigmasterol”の効果
The Effect of“ Stigmasterol”, One of the Herbal Medicine and Useful Plant-derived Compound, on New Whitening Mechanism Regulated by Arginase-1( ARG-1).
「シミ」とは紫外線等により表皮中で過剰にメラニンが産生・滞留して形成される。「酸化反応」がシミ形成を加速することから,多数の抗酸化成分が美白用に開発されてきた。本稿では,抗酸化成分ではなく皮膚内の抗酸化性を間接的に保つARG-1 に着目した新しい美白機能と,その有効成分“Stigmasterol”の効果について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 シミの形成メカニズム
3 美白主剤および抗酸化機能成分から見た近年の美白機能研究
4 角層中ARG-1量とシミ
5 ARG-1阻害によるシミ形成促進メカニズム
6 ARG-1発現促進成分Stigmasterolと美白効果
7 おわりに
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トウキの系統選抜とセル成型苗生産
Line Selection and Plug Seedling Production of Angelica acutiloba Kitagawa
国産生薬の需要の高まりと共に,薬用作物の効率的な生産が求められている。トウキにおいて,国内で栽培されている系統を調査し,系統解析と系統選抜を行なって品質の高い系統を選抜した。また,採種技術の改善により発芽率が飛躍的に向上し,セル成型苗育苗が可能となった。これによりトウキの1 年栽培が実現した。
【目次】
1 生薬「当帰」の基原植物の遺伝的背景と系統選抜
1.1 はじめに
1.2 遺伝子解析によるトウキおよびホッカイトウキ同定法と選抜
2 トウキのセル成型苗生産に向けた課題解決
2.1 トウキ栽培の問題点
2.2 採種法の確立
2.3 トウキのセル成型苗により1年栽培が実現
3 おわりに
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漢方生薬「麻黄」の国産化研究
Studies of Domestic Production for Ephedra Herba
現在,我々は麻黄の国産化に向けて様々な研究を展開している。本稿では原植物の多様性について報告する。マオウ属植物の草質茎は,同一種であっても多様な形態的形質を有しており,含有成分においても個体内で差異を生じている可能性がある。そこで,特徴的な部位に分別し個体内での総アルカロイド含量の局在性を明らかにした。これらの知見は麻黄の製品化に向けた収穫時の重要な指標になると考えられる。
【目次】
1 はじめに
2 マオウ属植物のアルカロイド含量の局在性について
2.1 実験方法
2.2 結果
2.3 考察
3 日局収載種を用いたアルカロイド含量の局在性
3.1 実験方法
3.2 結果
3.3 考察
4 まとめ
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生薬の流通の現状と今後の課題
Current Situation of Crude Drugs and Future Subjects
生薬の流通については,日本漢方生薬製剤協会が継続して実施している「原料生薬の使用量等調査」の結果を基に,医薬品原料として用いられる生薬の種類,使用量,生産国などについて,その現状を報告した。また今後の課題として,生薬の栽培化と産地の複線化,中国産生薬の価格上昇,中国との交流強化の必要性を取り上げ,その状況を説明した。
【目次】
1 はじめに
2 生薬流通の現状
2.1 医薬品原料に用いられる原料生薬の使用量等調査データ
2.2 原料生薬使用量等調査
2.3 医薬品原料として用いられる生薬の種類,使用量及び生産国
2.4 医薬品原料における使用量の多い生薬
2.5 生産国による分類
3 今後の課題
3.1 生薬の栽培化と産地の複線化
3.2 中国産生薬の価格上昇
3.3 中国との交流強化
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BIO R&D
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睡眠中の生体活動に基づく睡眠個性の可視化と良否判別
Sleep Pattern Visualization and Quality Assessment Based on Activities During Sleep
本稿では,人工知能技術よる睡眠中の生体睡眠活動に基づく睡眠個性の可視化,および睡眠の時系列モデリングに基づく良否判別法を紹介する。本技術は,非接触・簡便に計測可能な睡眠中の音に基づいており,また,体動,歯ぎしり,いびきといった睡眠中の生体活動に基づく睡眠の個性を評価している。
【目次】
1 生体活動に基づく睡眠個性の可視化
1.1 睡眠個性可視化の流れ
1.2 睡眠関連音イベントの検出
1.3 睡眠個性の可視化法
1.4 睡眠個性の可視化例
2 生体活動の時系列モデリングに基づく睡眠の良否判別
2.1 睡眠の良否判別の流れ
2.2 音イベントの自動分類
2.3 隠れマルコフモデルによる生体活動の時系列モデリング
2.4 睡眠の良否判別法
2.5 睡眠の良否判別結果
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月刊バイオインダストリー 2019年10月号
¥4,950
<著者一覧>
村上庸人 明治大学
早瀬文孝 明治大学
渡辺寛人 明治大学
木下英樹 東海大学
橘 熊野 群馬大学
森 隆 埼玉医科大学
角南 寛 琉球大学
清水雄介 琉球大学
普天間直子 琉球大学
牧田昌士 オルソリバース(株)
大阪直也 オルソリバース(株)
西川靖俊 オルソリバース(株)
茶山和敏 静岡大学
南 和幸 山口大学
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BIO REVIEW
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コラーゲン架橋分子ピリジノリンの新たな生理作用
A Novel Physiological Function of Pyridinoline, a Crosslink of Collagen
細胞外マトリクスの主成分であるコラーゲンにおいては,特有の翻訳後修飾機構により架橋構造が形成される。主要な架橋構造はピリジノリンと呼ばれ,コラーゲンの分解によって線維から遊離するが,遊離ピリジノリンの生理作用は全く不明であった。糖尿病合併症に関わる糖化タンパク質の構造-作用相関を解析する過程で,ピリジノリンがパターン認識受容体RAGE に結合し,細胞に作用しうることが最近明らかとなった。この知見はコラーゲンの代謝や過剰産生が関わる骨代謝や組織線維化にピリジノリンが関与しうることを示唆するものである。
【目次】
1 コラーゲン
1.1 コラーゲンの構造
1.2 コラーゲンの架橋構造
2 ピリジノリンの受容体「RAGE」を介した新たな機能
2.1 RAGEの既知のリガンドAGEと糖尿病合併症
2.2 ピリジノリンはRAGEの生理的リガンドである
3 RAGEがピリジノリンを認識する意義
4 ピリジノリンの工業的利用の可能性
5 おわりに
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BIO R&D
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食材と機能に応じた乳酸菌の活用と六次産業化のための種菌構想
Utilization of Lactic Acid Bacteria According to Foods and Functions and a Starter Project for Promotion of Primary Producers’Diversification into Processing and Distribution
乳酸菌は安全性が高く様々な機能を持つ有用菌の一つである。現在ではヨーグルト,チーズのみならず様々な食品に添加され,利用範囲が拡大している。乳酸菌の発酵性や機能性は菌株により大きく異なることから活用にあたっては,発酵特性や機能性を十分考慮する必要がある。本稿では乳酸菌の効果的な活用法と当研究室で取り組んでいる六次産業化推進のための「種菌構想」について概説する。
【目次】
1 はじめに
2 乳酸菌による青果物の発酵
3 乳酸菌の機能性
4 乳酸菌を用いた六次産業化と種菌構想
5 機能性表示食品を狙った商品開発
6 おわりに
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BIO R&D
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バイオベースポリブチレンサクシネートとその共重合体
Biobased Poly(Butylene Succinate) and Its Copolymers
ポリブチレンサクシネート(PBS)は1,4-ブタンジオールとコハク酸の重縮合によって合成されているポリエステルである。PBSは自然環境中で分解する生分解性高分子であることに加えて,モノマーであるコハク酸や1,4-ブタンジオールのバイオマス化が検討されているため,バイオベース生分解性高分子として有望な高分子である。
【目次】
1 はじめに
2 PBSの合成
2.1 化石資源からの1,4-ブタンジオールとコハク酸合成
2.2 バイオマス資源からの1,4-ブタンジオールとコハク酸合成
2.3 バイオマスからの1,4-ブタンジオールとコハク酸化学合成
3 PBS共重合体
3.1 商業生産されたPBS共重合体
3.2 新たなPBS共重合体
4 材料特性
4.1 PBSの物性
4.2 生分解性
5 最後に
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BIO R&D
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アポリポ蛋白EとN末端アミロイド前駆体蛋白の結合を標的としたアルツハイマー病の新規治療法
Targeting the Interaction of Apolipoprotein E with N-terminal Amyloid β-proteinPrecursor as a New Therpeutic Strategy for Alzheimer's Disease
アポリポ蛋白E(apolipoprotein E,ApoE)とN末端アミロイド前駆体蛋白(amyloid β-protein precursor,APP)の結合に着目し,Aβ産生に関与するApoEとN末端APPの結合を明らかにした。ApoEの低密度リポ蛋白受容体(low-density lipoprotein receptor, LDLR)結合領域の133-152アミノ酸配列のみで構成されるペプチド(ApoEp)は,ApoEと同様にN末端APPに結合して,Aβ産生を亢進した。一方,ApoEpのN末端に6個のlysine(6K)を付加したペプチド(6KApoEp)は,ApoEとN末端APPの結合を阻止して,Aβ産生を抑制した。ApoEpをアルツハイマー病の病態モデルへ腹腔内投与(12週間)するとアルツハイマー様病態が悪化したが,6kApoEpを同様に腹腔内投与すると病態が軽減した。アルツハイマー病の新規治療法として,6KApoEpの臨床応用が期待される。
【目次】
1 はじめに
2 ApoEの受容体結合領域の構造修飾
3 ApoE,ApoEp,6KApoEpとN末端APPの結合
4 6KApoEpによるApoEとN末端APPの結合阻止
5 6KApoEpの細胞表面へのAPP輸送とp44/42 MAPKリン酸化に対する抑制効果
6 6KApoEpのアルツハイマー病の病態モデルに対する脳アミロイド症・タウ蛋白病変の軽減と行動認知機能の改善効果
7 まとめ
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BIO R&D
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組織再生を促進する幹細胞抽出培養シートの開発
Development of the Regenerative Sheet for Stem Cell Extraction and Culture
我々は再生治療に有用な幹細胞抽出培養シートを開発した。このシートは,生分解性高分子のPLGAとハイドロキシアパタイトからなる不織布で作製されたものである。我々は,このシートを用いて脂肪組織から脂肪幹細胞を迅速に抽出し,大量に培養することに成功した。シート状に大量培養された脂肪幹細胞は,幹細胞シートとしてそのまま再生治療に利用することも可能である。このシートは脂肪組織から脂肪幹細胞を抽出して培養できるだけでなく,様々な組織の幹細胞の抽出と培養にも活用できる。
【目次】
1 背景
2 生分解性不織布シートの開発
3 生分解性不織布シートを用いた幹細胞抽出培養方法の検討
4 生分解性不織布シートの構造が細胞増殖などに及ぼす影響の調査
5 生分解性不織布シート上での幹細胞の分化誘導実験
6 動物への幹細胞シート移植実験
7 まとめ
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BIO R&D
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新生児における母乳中CCL25の免疫促進作用
Promoting Action of CCL25 in Breast Milk on the Development of Immune Function in Neonate
我々は,母乳中のCCL25の存在を世界に先駆けて確認した。そして,新生児の免疫器官およびそれらの免疫機能の発達に母乳中CCL25が重要な役割を果たしていることを明らかにした。そこで,本稿では,これまでに判明した母乳中CCL25の免疫学的機能性について解説する。
【目次】
1 緒論
2 材料および方法
2.1 マウス母乳中のCCL25含有量の分析
2.2 マウス新生仔の人工哺育法による母乳中CCL25の役割の解明
3 結果
3.1 マウス母乳中のCCL25含有量
3.2 人工哺育されたマウス新生仔の臓器重量
3.3 胸腺および脾臓の免疫細胞の解析
3.4 小腸内のパイエル板の発達
3.5 小腸絨毛内のCCL25発現およびIgA産生細胞の解析
4 考察
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BIO R&D
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生体吸収性スナップスルーステントとその微細加工技術開発
Bioresorbable Snap-through Stent and Development of Micromachining Technology
心筋梗塞の治療に用いられるステントを生体吸収性の材料で実現する努力がなされている。生体吸収性ポリマーで製作されたステントが市販されたものの,それまで金属製であったステントと同等の性能を,強度などの材料特性が異なるポリマー製で実現するためには,解決しなければならない問題が依然として残っている。本稿では,筆者らが提案し開発を進めているスナップスルー動作を行うスナップスルーステントと,それを製作するためのポリマーの微細加工技術について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 スナップスルーステント構造の概要
3 ステントの試作
4 製作したスナップスルーステントの拡張力評価
5 ポリ乳酸チューブの微細加工技術開発
6 おわりに
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BIO BUSINESS
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バイオシミラー市場
Biosimilars Market
【目次】
1 市場概要
2 国内の市場および研究開発の動向
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BIO BUSINESS
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美容食品市場
【目次】
1 市場の概要
1.1 美容成分を含む一般食材
1.2 主要美容食品素材
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《BIO PRODUCTS》
ヒドロキシプロピルセルロース(Hydroxypropyl cellulose)
乳酸メチル(Methyl lactate)
乳酸エチル(Ethyl lactate)
テトラヒドロフラン(Tetrahydrofuran)
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月刊バイオインダストリー 2019年9月号
¥4,950
横越英彦 静岡県立大学名誉教授
有原圭三 北里大学
横山壱成 北里大学
大畑素子 日本大学
齋藤忠夫 東北大学
水道裕久 サンスター(株)
磯部勝考 日本大学
赤田倫治 山口大学
鈴木絢子 大分大学
中村美紀子 信州大学
星田尚司 山口大学
藤本哲憲 (株)ヤナギヤ
鎌倉秀行 (株)エコマスター
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【特集】機能性タンパク質・アミノ酸・ペプチドの応用
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緑茶アミノ酸:テアニンと環状テアニンの生理作用
Green Tea Amino Acid:Physiological Function of Theanine and Cyclic Theanine
緑茶特有アミノ酸のテアニンは,多くの生理機能を有しており,今回は,特に睡眠とのかかわり,動物実験での寿命延長作用について紹介する。テアニンが環化された環状テアニンが煎茶よりも玉露や碾茶に多く含まれており,また,緑茶の製造・抽出法の工夫により生成されることが分かり,その機能性について紹介する。
【目次】
1 緑茶特有アミノ酸のテアニンとは
2 テアニンと脳との関わり(概説)
2.1 実験動物を用いた試験
2.2 ヒトボランティア試験
3 テアニンの睡眠改善効果
4 環状テアニンについて
4.1 緑茶中の環状テアニン量
4.2 環状テアニンの機能性について
5 おわりに
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食品タンパク質由来ペプチドの利用における新展開
~メイラード反応による新しい機能性食品素材の開発~
Novel Ingredients from Food Protein-derived Peptides by the Maillard Reaction
第2回国際生理活性ペプチドシンポジウムがスペインで開催され(2019/5/22~24),世界各国から機能性ペプチド領域の研究者が集まり,この分野の最新の情報が発表された。本稿では,このシンポジウムの様子を紹介したうえで,筆者らが取り組んでいるペプチドを原料としたメイラード反応を利用した機能性素材の開発に関する成果を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 国際生理活性ペプチドシンポジウム
3 ペプチドとメイラード反応
4 メイラード反応を利用した「香りの機能性食品」
5 おわりに
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血圧降下ペプチド
Antihypertensive Peptides
2019年4月には,5 年ぶりに高血圧治療ガイドラインが改訂された。本稿では,食事で摂取することで血圧を下げる機能性のあるペプチド類について,血圧調節機構とペプチドの評価方法,トクホと機能性表示食品,血圧降下ペプチドの構造と活性相関,遺伝子発現による大量調製の将来性などについてこれまでの知見をまとめた。
【目次】
1 血圧調節のメカニズムとアンジオテンシンI変換酵素(ACE)
2 ペプチドのin vitroおよびin vivoアッセイ
3 血圧降下ペプチドの活性評価における不整合
4 特定保健用食品(トクホ)と血圧降下ペプチド
5 機能性表示食品の血圧降下ペプチド
6 乳タンパク質由来の血圧降下ペプチド
7 血圧降下ペプチドの化学構造と活性の関連性
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コレステロール代謝改善アミノ酸・ペプチド
Cholesterol Metabolism Improving Amino acids and Peptides
古くからある種の食品に含まれるタンパク質やそれらを構成する特定のアミノ酸にコレステロール代謝を改善する作用があることが知られているが,近年,タンパク質を加水分解してできる特定のペプチドにも同様な作用があることがわかってきた。本稿では,これらアミノ酸およびペプチドのコレステロール代謝改善作用について概説する。
【目次】
1 コレステロール代謝改善アミノ酸
1.1 含硫アミノ酸
1.2 含硫アミノ酸類似物質
1.3 その他のアミノ酸
2 コレステロール代謝改善ペプチド
2.1 大豆由来ペプチド
2.2 乳由来ペプチド
2.3 卵白由来ペプチド
2.4 豚肉由来ペプチド
2.5 牛肉由来ペプチド
2.6 魚由来ペプチド
3 アミノ酸・ペプチドを関与成分とする特定保健用食品
3.1 ブロッコリー・キャベツ由来のSMCS(天然アミノ酸)を関与成分とするもの
3.2 リン脂質結合大豆ペプチド(CSPHP)を関与成分とするもの
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BIO INDUSTRY
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新規導入作物キノアの我が国での栽培化とその市場性
Cultivation and Marketability of Newly Introduction crops, Quinoa in Japan
アンデス高地原産でヒユ科に属するキノアは食材として優れた機能性を有し,塩類が集積した土壌環境下でも生育可能であることから,近年注目を集めている。ただし,我が国で販売されているキノアはそのほとんどが南米などからの輸入品であり,キノアが市民権を得ているとは言い難い。そこで,キノアの持つ能力や機能及び栽培法などについて解説をする。
1 はじめに
2 植物としてのキノア
2.1 キノアという植物
2.2 キノアの耐塩性とセシウム吸収能力
3 キノアを栽培する際のポイント
3.1 生育期間と播種期
3.2 生育に適した土壌環境と施肥
3.3 病害虫や障害の発生状況とその対策
4 国際キノア年
5 キノアの栽培状況と市場価値
6 キノア子実に含まれている成分特性と摂取時の効果
6.1 キノア子実に含まれている成分特性
6.2 キノア子実を摂取した時に期待できる効果
7 キノアの利用法
8 今後の課題
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BIO R&D
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大容量PCR装置によるmLスケールでのDNA生産
mL-Scale DNA Production by a Large-Scale PCR Machine
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)とは,DNAの特定の領域をごくわずかな量から2時間程度で数億倍に増幅することのできる技術である。DNAを扱う研究室でPCR装置を知らない人はほぼいない。しかし,PCR反応は10-50μL程度の少ない量でしか行われてこなかった。本稿では,筆者らが開発した大容量での反応が可能なPCR装置とその使い道を解説する。
1 はじめに
2 食品製造機械メーカーとの共同開発
3 大容量PCR装置「0」号機
4 なぜPCR反応はμLスケールでなければいけないのか
5 均一で急激な温度変化を与える大容量PCR構造
6 サンドイッチ型ペルチェ素子を持つPCR装置1号機
7 耐熱性DNA複製酵素の大腸菌からの生産
8 核酸医薬と大容量PCR
9 研究用試薬としての大容量PCR産物
10 おわりに
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BIO ENGINNERING
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日本初のごみ処理「トンネルコンポスト方式」について
Tunnel Compost, Japan’s First Waste Treatment System
香川県三豊市にあるバイオマス資源化センターみとよでは,日本初となるトンネルコンポスト方式によるごみ処理で燃やせるごみを固形燃料原料にリサイクルしている。この原料を固形燃料製造工場で製品化して最終的に石炭代替燃料として販売している。本稿ではトンネルコンポストの処理フローを中心に紹介し,その特徴をまとめる。
【目次】
1 はじめに
2 処理フロー
2.1 前処理工程
2.2 発酵乾燥工程
2.3 後処理工程
2.4 脱臭工程
2.5 固形燃料化工程
3 特徴
4 今後の展開
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BIO BUSINESS
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バイオ医療品の市場
Maket of Biologics
【目次】
1 はじめに
2 業界動向
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《BIO PRODUCTS》
セバシン酸(Sebacic acid)
バイオコハク酸(Bio Succinic acid)
L-グルタミン(L-Glutamine)
D-キシロース(D-Xylose)
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月刊バイオインダストリー 2019年8月号
¥4,950
加藤美砂子 お茶の水女子大学
今村壮輔 東京工業大学
田中 寛 東京工業大学
宮下英明 京都大学
齋藤 猛 花王(株)
瀧村 靖 花王(株)
松本光史 電源開発(株)
前田義昌 東京農工大学
田中 剛 東京農工大学
増田篤稔 玉川大学
神田英輝 名古屋大学
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【特集】藻類由来バイオ燃料
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微細藻類におけるトリアシルグリセロール生合成
Triacylglycerol Biosynthesis in Microalgae
微細藻類の生産するトリアシルグリセロール(TAG)はバイオディーゼルの原料となる。TAG はグリセロ脂質であり,グリセロール骨格に3 分子の脂肪酸が結合している。本稿では微細藻類におけるTAG の生合成系や細胞内でのTAG の集積場所である油滴について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 トリアシルグリセロールの代謝
2.1 脂肪酸の生合成
2.2 TAGの生合成
2.3 TAGの蓄積条件
2.4 油滴の発達
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オイル生産性が飛躍的に向上した藻類株の作出:オイル生合成のチェックポイントキナーゼTOR の発見とその応用
Improvement of Oil Productivity in Microalgae
微細藻類を用いたオイル生産系の確立には,藻類のオイル生産能の向上が不可欠である。そのためには,オイル生合成制御の基本的な仕組みを理解し,遺伝子工学的手法にて藻類の形質を改変することが必須となる。本稿では,TOR キナーゼによる藻類オイル生産の制御機構と,その知見を活かして作出した,オイル生産性が飛躍的に向上した藻類株について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 単細胞紅藻Cyanidioschyzon merolaeにおける窒素代謝制御
3 TAG生産のON/OFFを決定づけるTORキナーゼ
4 TOR不活性化によるトリアシルグリセロールの蓄積
5 TAG生合成制御におけるTORの作用点
6 考察
7 今後の展望
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油脂蓄積微細藻類の分離・選抜戦略─好酸性緑藻株の分離を例に─
Strategies for the Isolation and Selection of Oil-accumulating Microalgae─ an Example of the Finding of a New Acidophilic Green Alga ─
野外開放型の微細藻類バイオマス生産に適した藻類の分離・選抜事例として,好酸性緑藻の分離・選抜について述べる。藻類バイオ燃料生産におけるコスト削減には,大量の藻類バイオマスを安価に安定供給可能な藻類バイオマス生産システムの構築が不可欠であり,天然からの油脂生産藻類の分離・選抜は,安定的なバイオマス生産や油脂生産性の向上に貢献することができる。
【目次】
1 はじめに
2 藻類燃料生産に用いる藻類選抜の重要性
3 藻類の分離戦略
4 好酸性単細胞緑藻の分離と選抜の実際
4.1 選抜条件の設定
4.2 採取場所の選定
4.3 微細類の採取と集積培養
4.4 分離
4.5 増殖速度による選抜
4.6 油脂蓄積の確認
4.7 増殖特性と油脂蓄積の詳細な評価
5 おわりに
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微細藻類による持続可能な油脂原料開発の取り組み
Deveploment of the Sustainable Algal Oil Production
主にパーム油・ヤシ油など植物系の油脂を原料に製品を生み出す油脂化学(オレオケミカル)分野において,持続可能な事業活動のために,社会課題に配慮した責任ある原料調達を目指すことは重要な取り組みとなる。本稿では,オレオケミカル原料としての藻類油脂開発において進めてきた,主に実装を見据えた藻類株の改変と培養検討の取り組みについて報告する。
【目次】
1 背景
2 オーストラリアにおける実規模培養の検証例
2.1 評価試験実施場所
2.2 培養株の選定およびオーストラリア国外株の利用
2.3 スケールアップ培養と実規模培養の実際
3 セルフクローニング技術による藻体株の開発
3.1 カルタヘナ法批准国における遺伝子改変株の位置づけ
3.2 ナンノクロロプシスの相同組換え技術
3.3 セルフクローニング株の開発の具体例:中鎖脂肪酸生産
3.4 屋外開放培養を想定したセルフクローニング株の生物多様性影響にかかる情報収集
4 今後の展望
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海洋微細藻類によるグリーンオイルの効率的生産技術の開発
Improved Production of Green-clean Oil with Marine Microalgae
本稿では,海洋から見出された珪藻を用いたバイオ燃料(グリーンオイル)生産技術について概説する。筆者らは,脂質高蓄積珪藻のソラリス株と,耐冷性脂質高蓄積珪藻ルナリス株を獲得し,両株の屋外における大量培養技術を確立した。これにより,春季から冬季に渡り通年のグリーンオイル生産が可能であることを実証した。また,遺伝子組み換え技術を用いて,グリーンオイル生産性の向上が可能であることを示した。これらの技術を駆使することにより,グリーンオイル生産の社会実装化を目指している。
【目次】
1 はじめに
2 微細藻類を用いたグリーンオイル生産一貫プロセス設計
2.1 脂質高蓄積微細藻類のスクリーニング
2.2 通年グリーンオイル生産に向けた耐冷性脂質蓄積珪藻の獲得
2.3 低エネルギーで駆動する大型培養装置によるグリーンオイルの通年生産
3 遺伝子組み換え微細藻類の創生による生産性の向上戦略
3.1 グリセロール資化能の付与
3.2 脂質合成に必要なNADPH生産能の強化
3.3 効率的な細胞回収に向けた細胞凝集性の付与
3.4 屋外培養における遺伝子組み換え生物の利用・制御
4 おわりに
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微細藻類の大量培養システム開発における受光量の解析方法
Analysis of Received Light Quantity in Mass Culture System of Microalgae
微細藻類は,培養条件により他の植物には無い光合成能力を持っている。このため,基礎研究からバイオマスエネルギー利用研究まで行われている。また,食品添加剤や化粧品などにも産業利用がなされている。産業化を行うためには,低コストで安定的な生産技術が求めらる。低コスト生産における,大量培養システム開発と受光量解析などの解説と留意点を述べる。
【目次】
1 はじめに
2 微細藻類培養装置開発に関する基礎的知見
2.1 培養槽における環境制御項目
2.2 光環境
2.3 溶存ガス環境
3 設計における環境因子の定量方法
3.1 培養槽外郭周辺の光環境設計計算
3.2 培養槽内の光環境計測と培養器形状
3.3 培養内におけるガス挙動
4 実用プラントにおける餌料用微細藻類培養システム開発
4.1 培養槽条件と設計と性能
4.2 実用プラントシステム
5 屋外培養についての留意点
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液化ジメチルエーテルによる湿潤微細藻類からの油脂の直接抽出
Direct Extraction of Lipid from Wet Microalgae by Using Liquefied Dimethylether
近年,光合成による油脂生産能力が高等植物の数十倍とも数百倍とも言われる微細藻類が,新たなバイオ燃料源として注目されている。しかし,微細藻類は水生植物であるので収穫時の水分が多く,油脂を抽出する前に,膨大なエネルギーを消費する乾燥処理が避けられない問題がある。本稿では,筆者が世界に先駆けて研究を進めてきた,乾燥処理が不要な油脂抽出技術について解説する。
【目次】
1 微細藻類からバイオ燃料への変換の問題点
2 微細藻類からの油脂抽出
3 液化DMEを用いた油脂抽出プロセス
4 液化DMEによる油脂抽出の例
5 ダーバン工科大学との共同研究による取り組み
6 さいごに
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BIO BUSINESS
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ジェネリック医薬品市場
Generic Drug Market
【目次】
1 市場概要
2 国内の市場および研究開発の動向
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再生医療産業
Industry of Regenerative Medicine
【目次】
1 はじめに
2 関連制度と体制
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《BIO PRODUCTS》
L-カルニチン(L-Carnitine)
オレイン酸アミド(Oleic amide)
2-メチルテトラヒドロフラン(2-Methyltetrahydrofuran)
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月刊バイオインダストリー 2019年7月号
¥4,950
北本 大 (国研)産業技術総合研究所
森田友岳 (国研)産業技術総合研究所
福岡徳馬 (国研)産業技術総合研究所
山本周平 東洋紡(株)
曽我部 敦 東洋紡(株)
八代 洵 アライドカーボンソリューションズ(株)
司馬俊士 アライドカーボンソリューションズ(株)
平 敏彰 (国研)産業技術総合研究所
柳澤恵広 (株)カネカ
井村知弘 (国研)産業技術総合研究所
白米優一 高知大学
芦内 誠 高知大学
大野裕和 丸善製薬(株)
春見隆文 (一財)日本醤油技術センター
押村英子 味の素(株)
西川禎一 大阪市立大学
谷本佳彦 兵庫医科大学
中台(鹿毛)枝里子 大阪市立大学
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【特集】機能性バイオ素材の最前線;バイオサーファクタントから食品まで
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特集にあたって
Introduction
最近,持続可能な開発目標(SDGs)やバイオエコノミー,海洋プラスチック問題などを背景に,改めてバイオ素材開発への期待が高まってきている。これまでも温室効果ガス排出量や石油使用量の削減を目指して,バイオリファイナリー戦略に代表される多くの研究が世界中で進められてきた。一方,バイオプロセスで製造される機能性バイオ素材の多くは,石油化学品にはない構造と機能を持っており,より付加価値の高い製品開発が期待できる。例えば,様々な産業分野で利用される界面活性剤は,乳化・分散,洗浄,起泡・消泡など多様な機能を発揮する化学品として,日常生活のあらゆるシーンで活躍しているが,実用されているほとんどは石油由来の合成品である。これに対して,最近,微生物が生産するバイオサーファクタントの開発が進展し,詳細は本特集の記事で紹介されるが,我が国の企業が中心となって,石油化学品にはない特性を巧みに利用した製品開発が進められている。また機能性バイオ素材は,食品分野への応用が盛んで,既に多くの製品が製造されている。
本特集では,上述のバイオサーファクタントのうち,糖型バイオサーファクタント(マンノシルエリスリトールリピッド)について森田ら,糖型バイオサーファクタント(ソホロリピッド)について八代らに,ペプチド型バイオサーファクタントについては井村らに概説して頂く。さらに,アルギニン系界面活性剤について押村らに紹介して頂く。また,納豆のネバネバとして広く知られるポリγグルタミン酸の展開について芦内らに概説して頂く。食品分野からは,加工食品や飲料に使用されるキラヤサポニンについて大野らに,エリスリトールについては春見らに紹介して頂く。
以上,機能性バイオ素材の開発事例のほんの一部にすぎないが,本特集は,その生産から用途展開,さらに製品化例まで幅広い内容となっている。これらの総説が,機能性バイオ素材の研究と産業利用の進展に寄与するとともに,読者の皆様のご研究・開発の一助となれば幸いである。
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糖型バイオサーファクタント(1)マンノシルエリスリトールリピッド
Glycolipid Type of Biosurfactant, Mannosylerythritol Lipids
マンノシルエリスルトールリピッド(MEL)は,酵母が生産する糖型バイオサーファクタントであり,優れたスキンケア特性を有することから化粧品への応用が進んでいる。本稿では,MEL の構造,生産技術,および多様な機能性について概説する。
【目次】
1 マンノシルエリスリトールリピッド
2 生産技術
3 物性・機能
3.1 界面物性
3.2 自己集合特性
3.3 MEL水溶液の展着性
3.4 生物農薬用展着剤へのMELの適用
3.5 保湿効果
3.6 損傷毛修復効果
3.7 抗酸化作用
4 用途展開
5 最後に
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糖型バイオサーファクタント(2)ソホロリピッド
Saccharide Type Biosurfactant(2) Sophorolipids
ソホロリピッドは酵母が生産する糖脂質型バイオサーファクタントで,その生産性の高さ,及び天然物らしい構造・物性の多様性や特徴から,幅広い機能及び用途の展開が考えられる。本稿では生産技術の発展,機能の多様性,及び用途について,特に用途は最近注目度が増している生理活性機能を利用する用途を主として概説する。
【目次】
1 ソホロリピッドとは
2 生産技術
3 物性・機能
4 用途展開
4.1 水質・土壌汚染除去(藻類・油・農薬・重金属・放射能汚染 等)
4.2 石油三次回収(Enhanced Oil Recovery)
4.3 洗剤用途
4.4 化粧品・医薬用途
4.5 農業用途
4.6 畜産用途
5 最後に
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ペプチド型バイオサーファクタント『サーファクチン』の機能と用途展開
Function and Application of Petide-based Biosurfactant, Surfactin
7 つのd, L-アミノ酸からなる環状ペプチド骨格を特徴とする枯草菌由来のバイオサーファクタント『サーファクチン』について,そのユニークな分子構造と,これに起因するバイオ素材としての多様な機能について概説する。さらに,サーファクチンの環境調和性と機能性を活用した新しい化粧品や洗浄プロセスへの応用についても紹介したい。
【目次】
1 はじめに
2 サーファクチンの構造・物性・機能
2.1 構造・生産
2.2 環境調和性
2.3 界面活性
2.4 自己集合特性
3 サーファクチンの用途展開
3.1 洗剤としての用途展開
3.2 化粧品としての用途展開
4 おわりに
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アーキアポリγグルタミン酸の新用途開発
Novel Applications of Archaeal Poly-γ-Glutamate
ポリγグルタミン酸(PGA)は,健康美容や医療分野での利用に加え,環境先進型の機能性バイオ材料としても注目されている。本稿では,アーキアPGA のレアメタルイオン吸着能について詳解するとともに,本新素材から開発された水質浄化(除菌)担体にも触れる。
【目次】
1 はじめに
2 レアメタルイオン吸着試験
2.1 ホモキラルL-PGAの分離と定量
2.2 4-(2-pyridylazo)resorcinol(PAR)を用いたレアメタルイオン検量線
2.3 ホモキラルL-PGAのレアメタルイオン吸着能
3 L-PGAベースバイオプラスチックを利用した除菌担体の除菌試験
3.1 L-PGAのバイオプラスチック化
3.2 除菌担体の開発
3.3 汚染水モデル
3.4 PGAIC-ACの抗菌能評価試験
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キラヤ抽出物の乳化特性と食品用途について
Emulsibility and Food Applications of Quillaja Extract
食品用乳化剤としてユニークな特徴を有している「キラヤ抽出物(キラヤサポニン)」について,その基本特性,物理特性および食品用途について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 サポニンとは
3 キラヤ抽出物の基本特性
4 物理特性
4.1 表面張力および電気伝導度
4.2 乳化力
4.3 起泡力
5 食品用途
6 おわりに
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酵母がつくる機能性糖質,エリスリトール
Erythritol, a Unique Polyol Produced by Yeast-like Fungus
希少な糖質であるエリスリトールを生成する酵母を発見,改良を加えて大量生産法を開発した。エリスリトールは人の体内で消化吸収されないなど,特異な機能性を有しており,食品,医薬品,化粧品などへの利用が広がっている。酵母におけるエリスリトールの生成機構と生理的意義,新たな石油代替化成品原料としての用途
開発等とも合わせ,紹介する。
【目次】
1 エリスリトール生産菌の分離と育種・改良
1.1 生産菌の探索・分離
1.2 菌の育種・改良とエリスリトールの発酵生産
2 エリスリトール生成の代謝系と浸透圧ストレス応答
2.1 エリスリトール生成に関わる酵素系
2.2 浸透圧ストレス応答とHOG経路
3 エリスリトールの特性と用途開発
3.1 食品への用途
3.2 医薬品・化粧品用途
3.3 化成品用途
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アルギニン系界面活性剤の開発と展開
Development and Application of Ariginine-based Surfactants
塩基性アミノ酸の一種アルギニンは,発酵法により製造される。1 つのアニオン性官能基と2 つのカチオン性官能基を有し,これらを生かして様々なタイプのイオン性界面活性剤として利用することが可能である。本稿では,パーソナルケア用素材として開発された4 種類の界面活性剤の特徴と用途を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 アルギニンの特長
3 アルギニン系界面活性剤
3.1 概要
3.2 脂肪酸アルギニン塩(AR)
3.3 アシルアルギニン(LAH)
3.4 アシルアルギニンエステル(CAE)
3.5 アルキルエーテル化アルギニン(12?HEA)
4 おわりに
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BIO R&D
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炎症応答を抑える大腸菌:プロバイオティクスの新メンバー?
Escherichia Coli That Can Suppress Inflammatory Responses: Novel Probiotic Bacteria?
分散接着性大腸菌(DAEC)と呼ばれるグループがある。その病原性を検討する中で,健康者が保有するDAECは下痢症患者のDAECとは異なり,上皮細胞による炎症性サイトカインの合成を抑制して炎症応答を抑制する可能性があることを発見した。その経緯と,本菌を世界でも希少な大腸菌プロバイオティクスあるいは新しい抗炎症剤創薬の資源とする可能性について論じる。
【目次】
1 はじめに
2 発見の経緯
3 上皮細胞内で炎症応答を抑制する機構
3.1 シグナル伝達経路とmRNAの転写抑制
3.2 合成されたタンパク質の細胞内輸送と細胞外分泌の抑制
3.3 分泌された炎症性サイトカインの細胞外での分解の亢進
3.4 小胞体ストレスによる炎症性サイトカイン合成の抑制
4 サイトカイン合成を抑制する菌の因子
4.1 細胞接着性
4.2 炎症抑制の臨界期
4.3 VI型分泌装置(Type 6 Secretion System;T6SS)
5 プロバイオティクスあるいは創薬資源としての応用と今後の課題
5.1 In vivo試験
5.2 他のシグナル伝達系への影響
5.3 尿路病原性
5.4 生体防御への影響
6 おわりに
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《BIO PRODUCTS》
カプロン酸(Caproic acid)
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月刊バイオインダストリー 2019年6月号
¥4,950
井上國世 京都大学
根来誠司 兵庫県立大学
武尾正弘 兵庫県立大学
柴田直樹 兵庫県立大学
樋口芳樹 兵庫県立大学
加藤太一郎 鹿児島大学
重田育照 筑波大学
寺田喜信 江崎グリコ(株)
古林万木夫 ヒガシマル醤油(株)
野村幸弘 野村食品技術士事務所
大日向耕作 京都大学
飛松裕基 京都大学
加藤健太郎 東北大学
Oluyomi Stephen Adeyemi ランドマーク大学
山本兼由 法政大学
安部伸治 広島工業大学
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【特集】食品・バイオにおける最新の酵素応用 II
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特集にあたって
Introduction
食品およびバイオ分野における酵素応用の進歩には目を見張るものがある。その応用範囲は多岐にわたる。酵素応用の全貌を正しく理解し,咀嚼して自らの研究・開発に反映させることが,はなはだ困難になっている。本特集では,「食品・バイオにおける最新の酵素応用」と題し,本分野における最近の興味深い話題を取りまとめた。バイオインダストリー誌5 月号~6 月号をまたぐ特集号である。まず,ご多用にも拘らず,こころよくご執筆をお引き受けいただいた先生方に御礼申し上げたい。本特集が,食品およびバイオ分野における酵素の応用のみならず,ひろく酵素の科学と技術に関わる研究者,技術者,学生諸氏にとって,研究や学習の一助となれば,執筆者一同にとり望外の幸いである。
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ナイロン分解酵素NylB の構造進化,触媒機構とアミド合成への応用
Structural Evolution and Catalytic Mechanism of Nylon Hydrolase NylB,and Application to Amide Synthesis
6−アミノヘキサン酸オリゴマーの酵素分解は,当初,ナイロン工場の排水処理が目的であったが,その後,非天然物質に対する酵素進化のモデル,立体構造と触媒機構の解明,タンパク質工学と分子進化工学による機能改良へ展開した。本稿では,これらの知見を紹介するとともに,加水分解の逆反応によるアミド合成において,酵素反応の方向性に影響を与える構造基盤について述べる。
【目次】
1 はじめに
2 ナイロン分解酵素遺伝子群のゲノム構造
3 NylBの立体構造と触媒機構
4 ナイロン分解酵素の進化
5 加水分解の逆反応によるアミド合成:酵素の内部平衡に影響を与える変異
6 終わりに
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酵素合成多糖(酵素合成グリコーゲン,酵素合成アミロース)の機能性と応用
Enzymatically Synthesized Polysaccharide, Glycogen and Amylose:Functionality and Application
糖転移酵素を利用することで,スクロースなどの低分子からアミロースやグリコーゲンを合成できることは以前から知られていた。遺伝子組み換え技術によりこれら糖転移酵素を生産することで,大量生産が実現した素材が酵素合成グリコーゲンと酵素合成アミロースである。これら酵素合成多糖の合成と応用について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 糖転移酵素による多糖類の合成
2.1 酵素合成アミロース
2.2 酵素合成グリコーゲン
3 酵素合成グリコーゲンの機能
3.1 免疫賦活機能
3.2 その他の機能
4 酵素合成アミロースの機能
4.1 包接機能
4.2 酵素合成アミロース含有繊維(アミセル)
5 おわりに
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醤油醸造における原料分解と健康機能性の発現
Hypoallergenicity and Health Functions of Soy Sauce
日本の伝統的な発酵調味料である醤油に関して,原料である小麦や大豆のアレルゲン分解・除去機構,ならびに有用な機能性成分である醤油多糖類の健康機能について,古くから言い伝えられている醸造工程の意義も振り返りながら解説する。
【目次】
1 はじめに
2 醤油の醸造工程
3 醤油醸造における原料たんぱく質の分解
3.1 小麦アレルゲンの分解機構
3.2 大豆アレルゲンの分解・除去機構
4 醤油醸造における原料糖質の分解
4.1 SPSの抗アレルギー作用
4.2 SPSの鉄分吸収促進作用
4.3 SPSの中性脂肪低下作用
5 おわりに
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食品製造時における酵素による品質劣化への対応
Measures Against Food-Quality Degradation by Enzymes During Food Processing
食品の製造,加工,保存,流通中に起こる品質劣化の主な原因には,油脂の酸化や酵素の関与などがある。今回は,酵素が関与する品質劣化に焦点をあて,食品の製造加工の過程において,原料に含まれる酵素が働いて食品の品質劣化が起こった事例およびその対応について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 食品の品質に関与する酵素群
2.1 物性の変化に関与する酵素
2.2 呈味性の消失や不快臭の発生に関与する酵素
3 おわりに
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超高齢社会に挑む食の先端科学~新しい認知機能改善および血管拡張ペプチドの発見~
Cutting Edge in Food Science for Super Aged Society
我が国の高齢化率は世界トップであり,少子高齢化が顕著で高齢化のスピードが速い。この状況を逆手に取り,超高齢社会に対応した高機能食品を創製し新規市場を開拓すれば世界をリードすることができる。2025 年には認知症が700 万人を超えるとされ,認知症パンデミックへの対応が急務である。「脳」は記憶学習を担う中心的な臓器であることから,これまでの認知症研究では主に脳にフォーカスが当てられてきた。しかしながら,疫学調査により糖尿病などの生活習慣病が認知症の危険因子であることが判明し,「末梢」環境に着目した新しい認知症予防戦略も考えられる。実際,これまで我々は末梢環境に焦点を当て認知機能低下を改善する食品由来ペプチドを見出している。一方,老化の実体解明も期待される。生体情報ネットワークは加齢により徐々に変容・破綻していく。この過程をジペプチドライブラリーを用いて解析し,さらに,加齢により反応性が低下した組織でも作用するペプチドを発見した。今後,これらの生理活性ペプチドをリードとして高機能ペプチドを開発するとともに,酵素利用による効率的な生産を図り新しい高齢者対応食品市場を創造することが期待される。
【目次】
1 はじめに
2 末梢環境に注目した認知機能低下の予防戦略
2.1 脳も臓器のひとつである−多臓器円環−
2.2 糖尿病は認知症の危険因子である
2.3 短期間の高脂肪食摂取により認知機能が低下する
2.4 新しい認知機能改善ペプチドの発見
3 老化の実体解明
3.1 生体の外部環境のシグナル受容,伝達および情報統合
3.2 ジペプチドライブラリーを用いた血管老化の実体解明
3.3 老齢ラットにおいて血圧降下作用を示すペプチドの解明
3.4 CCKを標的とした降圧ペプチドの探索と酵素利用によるペプチド生産
4 今後の展望
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リグニンの構造多様性とバイオマス利用に向けた代謝工学
Structural Variability of Lignin and Its Bioengineering for Biomass Utilization
リグニンは,維管束植物を特徴づける二次細胞壁の主要成分であり,持続型社会構築を担う貴重な芳香族バイオマス資源でもある。本稿では,リグニンの生合成機構と構造多様性について解説するとともに,バイオリファイナリーへの応用も視野に入れたリグニンの代謝工学研究について著者が関わった研究を中心に紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 リグニンの生合成と構造
2.1 ケイ皮酸モノリグノール経路を介したリグニンモノマーの合成
2.2 脱水素重合による高分子リグニンの生成
2.3 リグニンの構造多様性
3 代謝工学によるリグニンの構造改変
3.1 天然リグニンモノマー組成の制御
3.2 非天然型リグニンモノマーの導入
4 おわりに
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BIO R&D
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金属ナノ粒子の抗原虫効果とアミノ酸被膜による向上
Anti-Protozoan Effects of Metal Nanoparticles and These Improvements by Amino Acids Capping
トキソプラズマ症は,トキソプラズマ原虫(Toxoplasma gondii)の経口摂取により引き起こされ,妊婦の感染により流産や胎児の脳症などの先天性感染症を,エイズ患者などには重篤な症状をもたらすことがある人獣共通の感染症である。現状のトキソプラズマ治療のための薬剤は限られており,薬価の高騰もあり,代替薬が求められている。本研究では,金,銀,白金の各々の金属ナノ粒子が,宿主細胞への細胞毒性が発現する1/20以下の濃度でトキソプラズマの増殖阻止に働くことを明らかとした。また,この作用は原虫の酸化還元シグナルに関与し,ミトコンドリアの膜電位に影響を与えることで,原虫の宿主細胞侵入,増殖,感染性に影響を与えることがわかった。さらに,金属ナノ粒子の表面にアミノ酸を被膜することで,トキソプラズマへの増殖阻止作用が増大することを明らかとした。アミノ酸被膜金属ナノ粒子の抗原虫作用には,酸化ストレスや低酸素誘導因子の調節によるキヌレニン経路の活性化等のトリプトファン代謝経路が関わっていることがわかった。本研究の成果は,金属ナノ粒子の抗トキソプラズマ薬のシーズとしての可能性,抗原虫作用の分子メカニズムの解明に向けた新たな知見を提供するものである。
【目次】
1 研究背景
2 金属ナノ粒子の抗原虫効果
3 アミノ酸被膜金属ナノ粒子による抗原虫効果の向上
4 金属ナノ粒子の抗原虫薬としての可能性
5 おわりに
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BIO R&D
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微生物ゲノムを活用したバイオプロセスによる金属資源化
Recovery of Metal with Bioprocess Using the Designed Escherichia Coli
微量分析の発達と微生物ゲノム機能の解明から,微生物における金属の役割を包括的に理解できるようになった。持続可能な社会の観点から,循環型流通の肝となる金属資源供給にバイオプロセスの応用が期待されている。本稿では,金属資源化を可能にするバイオソープションやバイオアキュムレーションに向けた大腸菌デザインについて紹介する。
【目次】
1 サーキュラー・エコノミーにおける金属資源化
2 微生物バイオプロセスによる金属資源化
3 メタルバイオロジー
4 金属資源化への合成生物学的アプローチ
4.1 バイオアキュムレーション
4.2 バイオソープション
5 まとめ
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BIO ENGINEERING
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高齢化社会を支える情報技術-最新の情報技術を利用した高齢者のための生活支援-
Assistive Technology for the Elderly -Daily Living Support Using the Latest ICT Technology-
独居高齢者の会話機会を創出する手法を提案した。本論文では,非言語コミュニケーションによる言語野活性化の効果を高めるため,擬人的媒体や遠隔存在感伝達技術によって,遠隔の家族との自然な対話環境を提供するシステム概要について述べた。また,次期基盤研究開発の一環として,高画質没入型空間表示による外出体験システムを紹介した。
【目次】
1 はじめに
2 スマクロプロジェクト
2.1 システム概要
2.2 課題点
3 プレサービス実証実験
3.1 実証実験フォーメーション
3.2 QoL評価手法について
3.3 評価結果について
3.4 アンケート結果からの考察
3.5 サービス提供開始
4 次期基盤技術開発プロジェクト[I]
4.1 遠隔存在感伝達技術
4.2 プロジェクションマッピングを用いた遠隔存在感伝達技術
5 次期基盤技術開発プロジェクト[II]
5.1 社会的背景
5.2 疑似16 k湾曲配置高精細ディスプレイによる外出疑似体験システム
6 おわりに
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月刊バイオインダストリー 2019年5月号
¥4,950
井上國世 京都大学
伊藤圭祐 静岡県立大学
寺田祐子 静岡県立大学
河原崎泰昌 静岡県立大学
松井健二 山口大学
望月智史 山口大学
伊福伸介 鳥取大学
村上 洋 大阪産業技術研究所
桐生高明 大阪産業技術研究所
木曽太郎 大阪産業技術研究所
中野博文 園田学園女子大学
田尾龍太郎 京都大学
森本康一 近畿大学
國井沙織 近畿大学
星 由紀子 天野エンザイム(株)
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【特集】食品・バイオにおける最新の酵素応用 I
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特集にあたって
Introduction
食品およびバイオ分野における酵素応用の進歩には目を見張るものがある。その応用範囲は多岐にわたる。酵素応用の全貌を正しく理解し,咀嚼して自らの研究・開発に反映させることが,はなはだ困難になっている。本特集では,「食品・バイオにおける最新の酵素利用」と題し,本分野における最近の興味深い話題を取りまとめた。バイオインダストリー誌5 月号~6 月号をまたぐ特集号である。まず,ご多用にも拘らず,こころよくご執筆をお引き受けいただいた先生方に御礼申し上げたい。
本特集が,食品およびバイオ分野における酵素の応用のみならず,ひろく酵素の科学と技術に関わる研究者,技術者,学生諸氏にとって,研究や学習の一助となれば,執筆者一同にとり望外の幸いである。
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総論:酵素の応用
General, Application of Enzyme
【目次】
1 酵素応用の現状と課題
1.1 酵素応用の動向
1.2 世界の産業酵素市場
1.3 日本の産業酵素市場
2 注目すべきトピックス
2.1 新規な酵素分類EC 7(トランスロカーゼ)が新設された
2.2 地盤改良技術およびバイオミネラリゼーション
2.3 プラスチックごみとマイクロプラスチックの問題
2.4 注目すべき問題その3:プラスチックを分解する酵素
2.5 食品添加物と腸内細菌
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合成ペプチドライブラリーと組み換え酵素を用いた機能性ペプチドの探索
Functional Screening of Food Peptides Using Synthetic Peptides Library and Recombinant Enzyme
健康志向の高まりとともに機能性食品の需要が高まっており,混合物である食品中から有効成分を効率的に探索する方法論の開発は重要な課題となっている。本稿では筆者らが取り組んできたジペプチジルペプチダーゼIV阻害ペプチドの研究を例に,合成ペプチドと安価な組み換え酵素を用いた機能性ペプチド探索法を紹介する。
【目次】
1 はじめに
1.1 機能性食品ペプチド
1.2 機能性ペプチドの探索
2 ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV
2.1 DPP-IVの阻害
2.2 DPP-IVの種差
2.3 阻害剤探索への組み換えhDPP-IVの利用
2.4 食品由来のhDPP-IV阻害ペプチド探索の問題点
3 hDPP-IV阻害ペプチドの探索
3.1 ジペプチドのhDPP-IV阻害効果
3.2 hDPP-IV阻害ジペプチドの網羅的解析
3.3 コンベンショナルアプローチにより見いだされてきたhDPP-IV阻害ペプチドとの比較
3.4 合成ペプチドライブラリーの網羅的解析データを用いた茶殻由来hDPP-IV阻害ペプチドの探索
4 まとめ
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植物の脂質/ 脂肪酸から酸素添加反応を経て生成される代謝物群(オキシリピン)とその生合成酵素
Plant Oxylipins, Metabolites Formed from Lipids Through Oxygenation Reaction,and Enzymes Involved in Their Formation
【目次】
1 はじめに
2 みどりの香りの生理生態学的役割
3 食品フレーバーとしてのみどりの香り
4 みどりの香り生合成経路
5 リポキシゲナーゼ
6 ヒドロペルオキシドリアーゼとその関連酵素
7 結語
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カニ殻由来キチンナノファイバーの製造と食品分野への応用
Preparation and Food Application of Chitin Nanofibers from Crab Shell
【目次】
1 はじめに
2 カニ殻由来の新素材「キチンナノファイバー」
3 部分脱アセチル化キチンナノファイバー
4 キチンナノファイバーの服用に伴う効果
4.1 服用に伴う腸管の炎症抑制
4.2 服用に伴う抗肥満効果
4.3 服用に伴う血中コレステロール値の軽減効果
4.4 服用に伴う血中代謝産物に及ぼす影響
4.5 服用に伴う腸内環境に及ぼす影響
5 おわりに
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Paraconiothyrium sp. KD-3 株由来乳糖酸化酵素を用いたラクトビオン酸カルシウムの生産
Enzymatic Conversion of Lactose to Calcium Lactobionate by an Intercellular Oxidase from Paraconiothyrium sp. KD-3
子嚢菌Paraconiothyrium sp. KD-3 の培養上清より,乳糖酸化活性を有するFAD 酵素を得た。本酵素は酸素を電子受容体に用いて乳糖の還元末端アルデヒド基を酸化し,ラクトビオン酸塩を生成した。ラクトビオン酸生産時,本酵素は市販のヘキソースオキシダーゼ剤に比べ安定性の点で有利であった。
【目次】
1 はじめに
2 乳糖酸化活性を有する酵素
3 Paraconiothyrium sp. KD-3株由来乳糖酸化酵素の性質
4 Paraconiothyrium sp. KD-3株由来酵素および市販ヘキソースオキシダーゼ酵素剤の比較
5 Paraconiothyrium sp. KD-3株由来酵素による乳糖からラクトビオン酸への変換
6 固定化酵素を用いたラクトビオン酸の生産
7 その他のアルドースのアルドン酸への酵素的変換
8 おわりに
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バラ科サクラ属果樹類におけるS-RNase 依存性配偶体型自家不和合性
The S-RNase-based Gametophytic Self-incompatibility System in Prunus( Rosaceae) Fruit Tree Species
近年,植物の自家不和合性を支配する遺伝子と自家不和合性反応機構が次々と明らかにされ,自家不和合性が生物学や農学の分野で改めて脚光を浴びるようになってきた。本稿では,果樹類の中でも研究が進んでいるバラ科サクラ属果樹の配偶体型自家不和合性について概説する。
【目次】
1 はじめに
2 自家不和合性の分類と遺伝制御
3 S-RNase依存性配偶体型自家不和合性における認識反応特異性の決定因子
4 ナス科,オオバコ科,バラ科リンゴ亜連における協調的非自己認識モデル
5 バラ科サクラ属にみられる花粉側自家和合性変異型Sハプロタイプ
6 バラ科サクラ属における競合的相互作用の欠如
7 バラ科サクラ属におけるジェネラルインヒビターモデル
8 バラ科サクラ属に特異な自家不和合性認識機構に基づいた効果的な自家和合性育種法
9 おわりに
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コラーゲン酵素分解物の再生医療および食品科学への応用
Application of Low Adhesive Scaffold Collagen to Regenerative Medicine and Food Science
コラーゲンは動物組織に含まれる生体を構造的・機能的に維持するための必須分子である。その一方で,コラーゲンあるいはゼラチン(熱変性コラーゲン)は食品材料としても歴史が古く,食品加工でも欠かせないものである。さらにコラーゲンは抗原性が低いので再生医療分野でも活用されており,利用価値が高まっている。近年,分子量がわずかに小さいコラーゲン酵素分解物が従来のコラーゲンと異なる性質を示すことが分かってきた。その違いを明確にするため,線維構造,粘度,ゲルの硬さなどを調べたので概説する。
【目次】
1 はじめに
2 コラーゲンの安全性
3 動物由来コラーゲンの抗原性
4 再生医療で使われる細胞培養の足場としてのコラーゲン
5 LASColを用いた接着型3次元スフェロイドの形成と応用
6 LASCol線維の観察
7 LASColの粘度と細胞培養条件でのLASColゲルの硬さ
8 まとめ
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マルトトリオシル転移酵素の開発,反応機構,および澱粉加工への応用
Development of Maltotriosyl Transferase and Use Thereof for Starch Processing
マルトトリオシル転移酵素は澱粉等α-1, 4-グルコシド結合で連結した 4 糖以上の非還元末端に作用し,3 糖単位での糖転移反応を触媒する酵素である。食品加工において重要な澱粉を低分子化することなく,食味への影響や物性変化を起こしにくい新たな老化防止対策として期待される。本稿では,マルトトリオシル転移酵素の開発から,その性質,澱粉加工への可能性について紹介する。
【目次】
1 糖転移酵素とは
2 グライコトランスフェラーゼ「アマノ」とは
3 酵素化学的性質と構造
4 グライコトランスフェラーゼ「アマノ」の用途
5 おわりに
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月刊バイオインダストリー 2019年4月号
¥4,950
<著者一覧>
尾鍋史彦 東京大学
権藤壮彦 ユニチカ(株)
寺本好邦 岐阜大学
西田治男 九州工業大学
森 隆 埼玉医科大学
竹岡裕子 上智大学
陸川政弘 上智大学
早川 健 中央大学
津金麻実子 中央大学
鈴木宏明 中央大学
横田秀夫 (国研)理化学研究所
山澤建二 (国研)理化学研究所
渡邉政樹 (株)リコー
辻村有紀 (国研)理化学研究所
大山慎太郎 名古屋大学
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【特集】生分解性機能紙の開発
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天然繊維の機能化と生分解性の両立は可能か
Functionality and Biodegradability of Natural Fibers:Are They Compatible?
「生分解性機能紙」とは使用中には安定的に必要な機能を発揮し, 廃棄物処理においては生分解性が発揮されるという理想的な機能紙である。天然繊維・天然素材は本来生分解性が高いが, 機能化は一般的に生分解性を低下させるので, 機能性と生分解性を両立させることは容易ではない。
地球上最大の植物バイオマス資源で天然高分子繊維であるセルロースの重要な応用分野である製紙とセルロースをナノ微細化した先端素材といわれるセルロースナノファイバー(CNF)を事例として生分解性機能紙の開発に伴う課題を考えてみたい。
【目次】
1 はじめに
2 天然繊維の特性
3 天然繊維の機能化
4 天然繊維の生分解性
5 製紙産業を事例として考えた天然繊維の新たな展開
6 先端的天然繊維としてのセルロースナノファイバー(CNF)の現段階
7 セルロースナノファイバーの機能化
8 セルロースナノファイバーの生分解性
9 セルロースナノファイバーの実用化への課題
10 おわりに
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ポリ乳酸スパンボンド不織布
Poly(lactic acid)Spunbond Nonwovens
スパンボンド不織布は, すぐれた生産性と物性から衛材, 農業, 土木など幅広い分野で使用されている。その用途の多くは使い捨てであり, 環境負荷は小さいとは言えない。ここでは, 生分解性, 植物由来樹脂の代表であるポリ乳酸(PLA)を原料としたスパンボンド不織布の用途と近年の開発動向についてまとめた。
【目次】
1 はじめに
2 PLAについて
3 スパンボンド不織布について
4 PLAスパンボンド不織布の特徴
5 PLAスパンボンド不織布の用途
5.1 防草シート
5.2 ティーバック
5.3 ヘッドレストカバー
5.4 ドレーン材
6 PLA系スパンボンドの開発動向
6.1 芯/鞘=PLA/PE複合繊維スパンボンド不織布
6.2 末端封鎖剤を練り込んだポリ乳酸スパンボンド
6.3 高L体ポリ乳酸スパンボンド
7 おわりに
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シンプルなプロセスで構築するナノセルロース・ナノキチンからのバイオメディカル機能材料
Biomedical Functional Materials from Nanocellulose and NanochitinConstructed with a Simple Process
ナノセルロース・ナノキチンの応用範囲を拡張するために, 筆者らはシンプルで合理的なプロセスを確立して, これらのナノ素材本来の特長を活かすアプローチを試みている。本稿では, それらの中から「マイクロパターニング細胞培養基板の創製」と「紙ベースのマイクロ流体分析装置(μPAD)用モジュールとしての活用」をご紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 キチンNC系マイクロパターニング細胞培養基板の創製
2.1 マイクロパターニング細胞足場材
2.2 インクジェットでの吐出と微細成形
2.3 細胞接着と剥離挙動
3 μPAD用モジュールとしてのCNFの組み込み
3.1 具体的な実験方法
3.2 TOCNによる不安定分子の安定保蔵と半定量μPADの構築
4 おわりに
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竹繊維利用強化プラスチック
Plastics Reinforced by Bamboo Fibers
膨大な賦存量と均質な構造を有するタケを利用するため, 過熱水蒸気を用いて処理し, マイクロウィスカーに変換した。さらに, 押出機を用いてナノ解繊とプラスチックとのコンポジット化を連続的に行い, ワンポットでナノコンポジットを作成した。タケ由来のマイクロ~ナノ繊維は, 成形性と繊維強化のみならず電気的な機能発現にも寄与した。
【目次】
1 はじめに
2 竹の構造
3 マイクロコンポジットへの展開
3.1 マイクロウィスカーへの解繊
3.2 マイクロコンポジットの溶融成形
3.3 マイクロコンポジットの熱的性質
3.4 マイクロコンポジットの機械的性質
3.5 コンポジットの帯電防止特性
4 ナノコンポジットへの展開
4.1 CNFへの解繊技術
4.2 タケからのリグノセルロースナノファイバー(LCNF)コンポジット
4.2.1 押出機内反応(リアクティブプロセッシング)
4.2.2 LCNF/ポリマーコンポジットの透明性と力学物性
4.2.3 CNF表面コーティングとコンポジットの各種物性
5 まとめ
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BIO R&D
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アルツハイマー病の新規治療法:エピガロカテキンガレートとフェルラ酸の併用療法
A New Therapy for Alzheimer’s Disease:Combination Therapy with(-)-Epigallocatechin-3-gallate and Ferulic Acid
自然物質由来の化合物の中から, アミロイド−βタンパク質の産生を抑制する有望なフェノール化合物(α−セクレターゼを活性化するエピガロカテキンガレートとβ−セクレターゼを抑制するフェルラ酸)に着目した。本稿では, 両化合物をアルツハイマー病の病態モデル動物(APP/PS1マウス)へ併用投与し, 観察された加算効果を紹介する。医療機関で処方される薬剤との併用が可能であり, 病態発症の遅延を目的とした軽度認知障害の患者への適応も期待される。
【目次】
1 はじめに
2 エピガロカテキンガレートの概要
3 フェルラ酸の概要
4 行動・認知機能障害の改善効果
5 脳アミロイド症の抑制効果
6 抗炎症効果・抗酸化効果・シナプス安定化効果
7 まとめ
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BIO R&D
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人工骨材料への応用を目指した,バイオセラミックス中における生分解性高分子のIn−situ重合
In−situ Synthesis of Biodegradable Polymers in Bioceramics for Artificial Bone Materials
近年, 平均寿命の延びにつれて, 機能が低下, 喪失した骨, 及び関節などを人工骨, 人工関節で補う必要性も急速に増加しつつある。筆者らは, 人工骨材料への応用を目指してバイオセラミックスと生分解性高分子の複合材料の研究を行ってきた。本稿では,多孔性バイオセラミックス中において,生分解性高分子をin-situ合成することによって得られる複合体について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 多孔性HAp(p−HAp)を用いたPLLA/HAp複合材料の作製と評価
3 多孔性二相性リン酸カルシウムセラミックスの構造制御
4 多孔質リン酸カルシウムセラミックスと生分解性高分子の複合化
5 結論
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BIO ENGINEERING
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振動誘起流れを用いた細胞操作技術
Cell Manipulation Method Based on Vibration-Induced Flow
近年, 生物学や医療の分野において単一細胞の解析を行う需要が高まっている。次世代の単一細胞解析のプラットフォームとして期待されているのがマイクロ流体チップであり, 高効率で再現性の高い細胞解析を行うためには, マイクロ流体チップ上で細胞操作を行う技術が重要である。本稿では, 著者が提案している振動誘起流れというマイクロ領域特有の現象を用いた細胞操作手法を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 振動誘起流れ
2.1 振動誘起流れ現象とその特徴
2.2 振動誘起流れの微小物体操作への応用
3 振動誘起流れを用いた細胞操作の例
3.1 振動誘起流れを用いた単一細胞分離
3.2 振動誘起流れを用いた卵子の回転操作
3.3 振動誘起流れを用いた運動細胞の並列トラップ
4 おわりに
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BIO ENGINEERING
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リポソームバイオリアクター
Liposome Based Bioreactor
細胞と同じ脂質二重膜からなるリポソームを微小なバイオリアクター(反応容器)として用いる技術開発が進展し, 人工細胞モデルや新たな検出系としての利用が期待されている。本稿では, リポソームバイオリアクターの作製法を概説し, これを用いたRNA 検出法について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 リポソームリアクターの作製法
3 リポソーム内でのRNAの検出
3.1 RT−PCR反応液を内封したリポソームリアクターの調製
3.2 リポソームリアクター内の反応効率の評価
3.3 膜融合を利用した標的分子の移送と検出
4 おわりに
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BIO ENGINEERING
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インクジェット式3D プリンターによる
骨置換型人工骨の成形と評価
Forming and Evaluation of Bone Substitutional Artificial Bone by Inkjet 3D Print
【目次】
1 はじめに
2 粉末積層造形法(Binder Jetting)による骨の造形
3 高精度・高強度人工骨を目指した造形法
3.1 概要
3.2 新規BJ方式の概要
3.3 3Dプリント人工骨の特性評価
4 人工骨の生体適応性
4.1 概要
4.2 細胞培養実験
4.3 ラットin vivo実験
5 生体から見た人工骨の反応と応用展開
5.1 要旨
5.2 バイオマテリアルとしての人工骨の立ち位置と課題
5.3 3Dプリント人工骨の生体反応と応用展開
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月刊バイオインダストリー 2019年3月号
¥4,950
<著者一覧>
竹下 毅 (株)アルガルバイオ
河野重行 東京大学
小椋康裕 アスタリール(株)
高萩英邦 アスタリール(株)
吉田和敬 カゴメ(株)
下田博司 オリザ油化(株)
海貝尚史 理研ビタミン(株)
河合博成 アークレイグループ からだサポート研究所
松井英則 北里大学
岸野重信 京都大学
小川 順 京都大学
大社奈摘 同志社大学
剣持貴弘 同志社大学
吉川研一 同志社大学
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【特集】カロテノイドの最新動向
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カロテノイド市場の形成と展開
Formation and Development of Carotenoid Market
カロテノイドの世界市場の動向については, 昨年2018年10月に本誌でカロテノイド世界市場の動向を紹介したが, 今回は特集「カロテノイドの最新動向」が組まれるにあたって, 「カロテノイド市場の形成と展開」と題して, カロテノイド市場の地域, 種別, 用途, 製法, 販路などに加え, 代表的な世界企業についても異なる視点から紹介しよう。
【目次】
1 はじめに
2 カロテノイド市場
2.1 地域と年平均成長率
2.2 カロテノイドの用途の拡大
2.2.1 飼料
2.2.2 家禽
2.2.3 水産養殖
2.3 サプリメントと食品
2.3.1 食品
2.3.2 化粧品
2.3.3 医薬品
3 カロテノイド製造
3.1 化学合成
3.2 植物由来の抽出
3.3 発酵
3.4 微細藻類
4 おわりに
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アスタキサンチン
Natural Astaxanthin
アスタキサンチンは天然のカロテノイドの一種で, ヒトが古くから食生活の中で摂取してきた植物由来の微量栄養素である。自然界においては鮭が急流を遡上する際に必要な持久力を可能にするため, 食物連鎖を通じアスタキサンチンを摂取し自らの筋肉に蓄えていることが知られている。
アスタキサンチンはキサントフィル類に属するカロテノイドで, カロテノイドの中では最も多い13の共役二重結合と両末端環にケト基と水酸基を持っている。この独特の分子構造が赤血球や筋肉, ミトコンドリアなどの細胞膜を貫通する形で取り込まれ, ユニークな抗酸化・抗炎症機能を発揮すると考えられている。近年の研究によれば, それは骨格筋の機能やそれに関わる代謝の恒常性を維持・改善すると共に, 血流改善効果を示すことが明らかにされている。
【目次】
1 骨格筋機能の維持・改善
2 血流改善
3 作用機序
4 さらなる活用可能性
5 結論
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リコピンの機能~リコピンの基礎と応用研究~
The Function of Lycopene −Basic and Practical Research of Lycopene−
リコピンは, 主にトマトやトマト加工品に含まれる赤色のカロテノイドであり, 抗酸化作用をはじめとした多くの生理作用を有することが知られている。ここでは, リコピンの研究の最近の動向を紹介するとともに, そのエビデンスに基づいた機能性表示食品の展開について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 リコピンの基本情報(構造・摂取源)
3 リコピンの体内動態
3.1 リコピンの吸収
3.2 リコピンの代謝
4 リコピンの抗酸化作用
5 リコピンが疾病の予防, QOLの改善に与える影響
5.1 循環器系疾患に対する影響
5.1.1 血中脂質に対する影響
5.1.2 血圧に対する影響
5.2 循環器系疾患以外への影響
5.2.1 リコピンと男性不妊
5.2.2 リコピンと肌の健康
5.2.3 リコピンと骨の健康
5.2.4 リコピンと運動時の酸化ストレス
6 リコピン研究の機能性表示食品への活用
6.1 リコピンを機能性関与成分とした機能性表示食品
6.2 リコピンによる血中HDL−C増加作用に基づく機能性表示食品
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フコキサンチンの機能(抗肥満作用, 美容作用)と最近の動向
Anti−obesity and Beautifying Effects of Fucoxanthin and its Current Trend
フコキサンチンは, 昆布やワカメの褐藻類のみならず近年では微細藻類からも製造される。またフコキサンチンの生理活性に関する研究の報告数はここ10年で飛躍的に増えている。本稿ではその中から抗肥満作用と美容作用について, 最近の動向とともに概説する。
【目次】
1 はじめに
2 フコキサンチンの抗肥満作用
3 美容原料としてのフコキサンチン
4 微細藻類由来のフコキサンチン
5 おわりに
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クロセチン
Crocetin
カロテノイドは, 黄色, 橙色, 赤色を呈することから古くから食品の着色料として用いられてきた。その一方, 近年の研究によりカロテノイドの様々な生理作用が明らかとなり, 健康の維持増進を目的とした利用も進んでいる。クチナシ黄色素の主色素であるクロセチンも健康分野へと用途を広げてきたカロテノイドである。本稿ではクロセチンの健康機能について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 クロセチンの構造と性質
3 クロセチンの吸収
4 クロセチンの機能性
4.1 睡眠に対する作用
4.2 肌に対する作用
5 クロセチンの安全性
6 おわりに
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β-クリプトキサンチン
β−Cryptoxanthin
我々はうんしゅうみかん(Citrus unshiu Marc.)を原料として, β-クリプトキサンチンを高濃度に含む健康食品素材(商品名:クリプトベータ)を開発した。ペースト品は飲料やゼリーなどの嗜好品として, 乾燥品はカプセルなどのサプリメントとして広く応用されることが期待される。
これまでの研究からカロテノイドは体内に貯蔵されやすく, とりわけヒトにはβ-クリプトキサンチンが顕著であり, その健康効果が数多く報告されている。
【目次】
1 β−クリプトキサンチン(β−CRP)
1.1 うんしゅうみかんと疫学調査
1.2 機能性表示食品
1.3 介入試験
2 「うんしゅうみかんパルプ」(商品名:クリプトベータ)
2.1 クリプトベータ摂取によるβ−CRPの血中濃度
2.2 クリプトベータのヒト試験
2.3 クリプトベータD(乾燥タイプ)
3 おわりに
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BIO R&D
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腸内細菌が産生する機能性脂肪酸の抗ヘリコバクター属活性
Anti−Helicobacter Activity of a Functional Lipid Produced by Gut Microorganisms
食事脂質の腸内細菌代謝物に様々な生理機能が見いだされてきている。リノール酸の腸内細菌代謝物である10−ヒドロキシ−cis−12−オクタデセン酸(HYA)に, Helicobacter属が有する特殊なメナキノン生合成経路の特異的阻害剤としての活性が見いだされた。HYAの狭域スペクトルピロリ菌抗菌剤としてのポテンシャルを紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 ピロリ菌の感染と除菌
3 フタロシン経路
4 脂肪酸のHelicobacter属特異的な抗菌活性
5 おわりに
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BIO ENGINEERING
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組織切片の張力伸展応答:がんの病理診断手法の創出
Nobel Method for Cancer Diagnosis: Characteristic Cracking Pattern on Tissue Slices Caused by External Extension
がんの病理診断では摘出した組織切片をスライドガラスに貼り付け, 光学顕微鏡で観察し診断することが一般的である。しかしながら, 顕微鏡像だけでは差異が少なく病理医間で診断が異なるといった問題がある。本研究では, 組織切片に張力を印加し生成する“ひび割れパターン”を定量的に解析することで, 正確な病理診断が可能となる。
【目次】
1 はじめに
2 組織切片伸展実験結果
3 定量的診断方法の提案(ひび割れパターン解析)
4 おわりに
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BIO BUSINESS
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機能性食品の市場動向
Market Trend of Functional Food
【目次】
1 はじめに
2 健康食品と機能性食品
3 トクホ市場動向
4 機能性表示食品市場動向
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月刊バイオインダストリー 2019年2月号
¥4,950
≪著者一覧≫
原健二郎 フジ日本精糖(株)
小林敏樹 (株)はくばく
後藤優佳 (株)はくばく
石原則幸 太陽化学(株)
唐澤幸司 伊那食品工業(株)
金田雅代 女子栄養大学
清水寿夫 清水化学(株)
宮里祥子 松谷化学工業(株)
定清 剛 (株)林原
志多伯良博 (株)ホワイズ
和田美咲 (株)J−オイルミルズ
長畑雄也 (株)J−オイルミルズ
古野麻衣子 (株)J−オイルミルズ
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【特集】腸内環境改善食物繊維の最新動向
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プレバイオティクスとしてのイヌリンとその生理機能性
Inulin as a Prebiotic and its Physiological Function
イヌリンは多くの植物に含まれる貯蔵多糖であり, その構造はグルコースにフルクトースがβ(2,1) 結合で重合した水溶性食物繊維の一種である。消化酵素では分解されずに大腸に達し, ビフィズス菌をはじめとした腸内細菌に利用されることから, 腸内環境を改善するプレバイオティクスとしても知られている。本稿では, イヌリンの腸内環境改善効果を中心に, そこから派生する機能性についても記述する。
【目次】
1 イヌリンとは
2 イヌリンの生理機能性
2.1 イヌリンの腸内環境改善効果
2.2 ミネラル吸収促進効果
2.3 脂質関係
2.4 食後血糖上昇抑制作用
3 まとめ
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大麦に含まれる難消化性多糖「β−グルカン」の合成とその生理機能
Biosynthesis and Physiological Functions of Indigestible Polysaccharide“β−glucan”in Barley
大麦の胚乳細胞壁に含まれる多糖のうち, 主体をなす(1→3), (1→4)−β−D−glucan(以下大麦β−グルカン)は, D−グルコースがβ結合により直鎖状に結合した水溶性多糖であり, その生理機能性について, 古くから多くの研究がなされてきた。本稿では, 大麦β−グルカンの植物体内での生合成について概説するとともに, 近年, 多くの試験を通じて解明が進められている, 生理効果や作用機序について詳述する。
【目次】
1 はじめに
2 大麦β−グルカンの生合成
3 大麦の機能性
3.1 食後血糖値の上昇抑制効果
3.2 血中コレステロールの正常化
3.3 腸内環境の改善
3.4 その他
4 おわりに
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グアーガム分解物の生理作用とその医療食への応用
Physiological Effects and Application to Medical Food of Partially Hydrolyzed Guar Gum
腸内細菌による発酵性が高いことが知られている水溶性食物繊維, 「グアーガム分解物(Partially Hydrolyzed Guar Gum:PHGG)」の生理作用とその医療食への応用を中心に述べた。特にPHGGの腸内細菌改善・便通・下痢に対する作用ならびに臨床栄養分野及び高齢者の排便ケアへの応用について述べた。
【目次】
1 はじめに
2 グアーガム分解物とは
3 腸内細菌叢改善作用
4 便通に対する作用
5 下痢に対する作用
6 臨床栄養分野での応用
7 高齢者の排便ケアへの応用
8 おわりに
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腸内環境を整える食物繊維としての寒天
Agar as Dietary Fiber to Regulate Intestinal Environment
日本で発明された寒天は, 和菓子をはじめ, 洋菓子, 惣菜などの食品の素材である。近年になり, 医薬品や化粧品などの他分野でも利用されるようになった。また, 腸内環境の改善を含む様々な機能も注目され, 寒天由来の食物繊維はおなかの調子を整える機能性素材としても利用されている。本稿では, 寒天の科学的な基礎から, 生理機能性素材としての応用までを幅広く紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 原料と分子構造
3 生理機能
4 腸内環境への影響
5 おわりに
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「大豆多糖類(水溶性おから繊維)の食物繊維としての機能について」学校給食における食物繊維増加の取り組み
Soybean Polysaccharide(water-soluble OKARA fiber)as Dietary Fiber:Efforts to Increase Dietary Fiber in School Lunch and Their Effects
その重要性にも関わらず, 食物繊維の摂取不足は深刻な課題である。水溶性オカラ繊維を利用し, 学校給食の場で調理メニューの開発, 食育を実施したところ, 食物繊維摂取が改善され, 児童生徒及び家庭での認識も高まった。また, 便通や腸内細菌叢への効果も明らかになり, 実践を通して食物繊維による機能が発揮された。
【目次】
1 はじめに
2 大量調理におけるSOFの特性を生かした調理方法の検討
2.1 SOFとは
2.2 料理開発, 調理方法, 作業性
2.3 SOF使用の有無による食味調査
3 学校給食へのSOF使用による変化
3.1 食品構成及び食物繊維量の変化
3.2 エネルギー・脂質の変化
3.3 SOFの排便習慣および腸内細菌叢に対する効果
4 おわりに
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グルコマンナン
Glucomannan
コンニャクイモから加工して製造されたこんにゃく精粉に含まれるグルコマンナンは, 多くの不純物が残存し臭いもあって食物繊維含量も低いのでこんにゃく製品への利用に限られていた。そこでアルコールを用いて精製することで多くの不純物を除去することで高純度グルコマンナンとして, 多くの食品への応用が可能となり, 更には食物繊維としての機能性が優れているので世界中で生理機能などの研究素材として注目されている素材の一つである。
【目次】
1 グルコマンナンとは
2 グルコマンナンとこんにゃく精粉の違い
3 グルコマンナンの基本構造
4 食物繊維としてのグルコマンナンの生理機能
4.1 血清コレステロールの低下
4.2 血糖調節作用
4.3 便秘改善効果
4.4 体重減少効果(肥満の改善)
4.5 抗アレルギー作用
5 グルコマンナンの応用について
5.1 デザート関係
5.2 麺関係
5.3 焼き菓子関係
5.4 不溶化グルコマンナン
5.5 グルコマンナン発泡体(グルコマンナンスポンジ)
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難消化性デキストリン
Resistant Maltodextrin
難消化性デキストリンは, 特定保健用食品や機能性表示食品の関与成分としても利用されている機能性素材であり, これまでにも様々な生理機能が報告されてきた。近年では腸内環境の変化を介した生理機能についても研究が進められており, 新たな知見について本稿で紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 ビフィズス菌の増加
3 整腸作用-メタアナリシス-
4 大腸通過時間の短縮
5 糖尿病・肥満の改善
6 満腹感の持続
6.1 GLP−1分泌の促進
6.2 肥満ラットにおけるエネルギー摂取の抑制
6.3 ヒトにおける満腹感の保持
7 おわりに
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澱粉から酵素でつくられる水溶性食物繊維イソマルトデキストリンの特性と応用
Characteristics and Applications of a Soluble Dietary Fiber, Isomaltodextrin,Enzymatically Produced from Starch
イソマルトデキストリンは, 澱粉から酵素の作用によってつくられる新しい水溶性食物繊維である。その特性から広範囲の食品への利用が可能と考えられ, さらに様々な生理作用を有することもわかってきた。今後, 食物繊維補給や健康訴求を目的とした食品への利用拡大が期待される。
【目次】
1 はじめに
2 イソマルトデキストリンとは
2.1 基本構造
2.2 製造
2.3 安全性
3 イソマルトデキストリンの諸物性
3.1 基本物性
3.2 安定性
4 イソマルトデキストリンの生理作用
4.1 腸内細菌叢改善作用
4.2 便通改善作用
4.3 下痢軽減作用
4.4 免疫調節作用
4.5 血糖上昇抑制作用
4.6 食後血中中性脂肪上昇抑制作用
4.7 脂質代謝改善作用
5 イソマルトデキストリンの食品への利用
6 おわりに
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低分子化アルギン酸ナトリウム
Low Molecular Sodium Alginate
アルギン酸は, 食品, 化粧品, 医薬品等の様々な用途に利用されている。アルギン酸ナトリウムとCa塩を反応させて作られたゲルは熱に対して安定で,他のゲル化剤と違って, 加熱しても溶解しない特徴を持っているので, 殺菌の目的で熱を加える工程がある多くの加工食品に利用されている。
それらの特性を利用し, アイスクリーム, ゼリー, パン, 乳酸菌飲料, ドレッシング, 即席麺, ビールなどの様々な食品に利用されている。また, 「落ちない口紅」に利用されている。医薬品の用途として, 潰瘍治療薬, 制酸薬, 崩壊剤, 点眼薬, 歯科印象材, 創傷被覆材に利用されている。木綿, 麻, レーヨンなどの天然繊維のプリント用糊料にも利用されている。
【目次】
1 はじめに
2 昆布中の機能性成分, 低分子化アルギン酸ナトリウム
3 低分子化アルギン酸ナトリウムの化学構造及び特性
4 低分子化アルギン酸ナトリウムの製造工程
5 低分子化アルギン酸ナトリウムの製品規格
6 用途
7 安全性試験
8 低分子化アルギン酸ナトリウムに含まれているナトリウムの影響
9 有効性
10 特許
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レジスタントスターチの機能
The Function of Resistant Starch
近年, 低糖質やロカボという言葉を耳にする機会が増えてきた。高齢化や女性の社会進出などの情勢を受け, 健康への関心が更に高まっている。中でも低糖質市場において, レジスタントスターチは注目される素材の一つである。本稿では低糖質のみならず, 腸内環境改善の作用や免疫機能への影響に関しても今後期待されるレジスタントスターチの機能を紹介したい。
【目次】
1 レジスタントスターチとは
2 レジスタントスターチの種類
3 レジスタントスターチが豊富な食材
4 レジスタントスターチの体内挙動と生理機能
4.1 体内挙動
4.2 プレバイオティクス効果
4.3 腸内環境の改善
5 トピックス
5.1 血糖
5.2 肥満
5.3 骨
5.4 免疫
6 終わりに
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月刊バイオインダストリー 2019年1月号
¥4,950
≪著者一覧≫
小坂彦二 豊田通商(株)
金高武志 トタルコービオンPLA b.v. 日本連絡事務所
宮保 淳 アルケマ(株)
山崎 聡 三井化学(株)
藤木哲也 (株)カネカ
宮内啓行 住友ベークライト(株)
乾 将行 (公財)地球環境産業技術研究機構
野村紘史 琉球大学
清水雄介 琉球大学
友利 新 琉球大学
角南 寛 琉球大学
河野広朗 京都大学
長谷川光一 京都大学
山田圭一 群馬大学
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【特集】バイオプラスチックの最新動向
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植物由来ポリエチレンの現状と今後の展望
bPE Current Situation and Future in Japan
植物由来ポリエチレン, 所謂バイオポリエチレンは石化由来の通常のポリエチレンと構造・性能とも同一。当社は2010年の商業生産開始当時から日本市場での販売を行ったパイオニアである。そのコストの高さ故, 日本での採用は限定的であったがここにきて大きく流れが変わろうとしている。
【目次】
1 はじめに
2 生産概要と用途
3 植物由来ポリエチレンの製造工程
4 温室効果ガス排出量の削減効果
5 食糧との競合・熱帯雨林への影響
6 今後の展望
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ポリ乳酸(PLA)
Poly Lactic Acid(PLA)
ポリ乳酸(PLA)はバイオマス由来かつ生分解性を有するバイオプラスチックである。近年では耐熱性, 機械的強度, 成形性に改善が見られ従来の石油由来プラスチックからの代替候補として大いに注目を集めている。本稿では当該樹脂の物性, 市場, バイオプラスチックとしてのポジションなどについて概論を述べた。
【目次】
1 ポリ乳酸概略
2 現在の市場
3 光学純度と物性
4 圧電高分子
5 ステレオコンプレックスポリ乳酸
6 抗菌性
7 耐衝撃性
8 バイオマスプラスチックとしてのポリ乳酸
9 バイオマスプラスチックを使用する意義
10 生分解性プラスチックとしてのポリ乳酸
11 生分解性樹脂を使用する意義
12 まとめ
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バイオポリアミド
Bio-Polyamide
バイオポリマーは天然物系, 化学合成系, 微生物合成系に大別できるが, 本稿で取り上げるバイオポリアミドは化学合成系に位置づけられる。詳細については後述するが, バイオポリアミドの特長は以下の通りである。
・商業化されて既に50 年以上が経過しているポリアミド11の功績により, エンジニアリングプラスチックとしての地位を築いており, 機能性部品に使用が可能である
・現在市販されているバイオポリアミドは全て非可食油脂であるヒマシ油を化学変換することによって得られるモノマーを使用している
・モノマーにジカルボン酸とジアミンを使用するため, 石油由来のモノマーと組み合わせることにより多彩な製品群が得られる
本稿では環境意識が高まった2000年以降に急速に多様化が進んでいるバイオポリアミドの現状および将来について解説する。
【目次】
1 ポリアミドとは
2 バイオポリアミドの基礎原料─ヒマシ油
3 ポリアミドの歴史と現在
4 バイオポリアミドの物性
5 バイオポリアミドの現状と課題
6 バイオポリアミドの将来─さらなる発展のためのキーポイント
6.1 バイオポリアミド間の製品特性の明確化
6.2 バイオポリアミド特有の製品開発アプローチ
6.3 石油由来成分のバイオソース化
6.4 ESG経営に基づくエンドユーザーによる調達先選別
7 おわりに
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バイオイソシアネートを用いた新規なポリウレタン
Novel Polyurethanes Based on Bio−Based Isocyanate
ポリイソシアネートは, ポリウレタンの物性を左右する重要な化学品である。これまでもいくつかのバイオイソシアネートが検討されてきたが, その実用的な物性を十分に満足することができなかった。本稿では, 市場ニーズに対応して, 当社が開発したバイオイソシアネート(STABiO(R)(スタビオ(R))PDI(R))およびそれを用いたポリウレタンへの展開について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 開発の背景およびコンセプト
3 STABiO(R)(スタビオ(R))PDI(R)および硬化剤の特徴
4 スタビオ(R)PDI(R)ウレタンシステムの用途
4.1 メガネレンズへの展開
4.2 ゲルへの展開
5 おわりに
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ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)
Polyhydroxyalkanoates(PHA)
ポリヒドロキシアルカン酸(Polyhydroxyalkanoates, 以下PHA)は, 多種類の微生物が炭素, およびエネルギー貯蔵物質としてその菌体内に蓄積する, R−3−ヒドロキシアルカン酸(R−3−hydroxyalkanoate) をモノマー成分とする単重合体, あるいは共重合体のポリエステルである。本稿では(株)カネカが事業化検討を進めているカネカ生分解性ポリマーPHBHTM, (以下, PHBH)を例としてPHAの製造方法, 特性等について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 PHAの生合成
3 PHBH生産菌株の育種
3.1 軟質PHBH生産系の開発
3.2 培養生産性の向上
3.3 更なる3HHxモル分率の向上
3.4 その他の生物による生産方法
4 PHAの精製
4.1 溶剤抽出法
4.2 水系精製法
5 PHAの特性
5.1 PHBHの生分解性
5.2 PHBHの一般物性
6 加工性・用途開発
7 今後の課題
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バイオマス由来フェノール樹脂の生産技術開発
Development of Production Technology for Biomass Derived Phenolic Resin
近年, 低炭素社会実現のためバイオマスからのプラスチックの生産に大きな注目が集まっている。フェノール樹脂は最も古い歴史を持つ実用化されたプラスチックであり, 今もなお発展を続けているが, 現在の工業生産品は石油由来原料から得られているもののみである。本稿では, 世界初のバイオマス由来フェノールの生産技術開発について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 フェノール樹脂について
2.1 フェノール樹脂の歴史
2.2 フェノール樹脂とは
2.3 フェノール樹脂の市場動向
3 フェノール樹脂の用途と技術動向
3.1 工業用フェノール樹脂
3.1.1 摩擦材用
3.1.2 断熱材用
3.2 成形材料
3.2.1 自動車部品用途
3.2.2 電子・電気機器用途
4 バイオマス由来フェノールの生産技術開発
4.1 フェノールのバイオマス由来化の重要性
4.2 バイオプロセスの生産性向上
4.2.1 高生産性RITEバイオプロセス
4.2.2 2段工程法
4.3 バイオマス由来フェノール樹脂の特性
5 おわりに
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BIO R&D
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脂肪組織由来幹細胞培養上清のスキンケア製品への応用
Skin Care Product using the Culture Supernatant of Adipose−derived Stem Cell
脂肪組織由来幹細胞は, 成長因子を豊富に分泌する体性幹細胞の一種である。その培養上清には成長因子が複数含まれ, ヒト由来細胞を用いた場合には生体が元来有するシグナル伝達経路を利用するため, スキンケアの原料成分として有望である。製造に際しては倫理的な取り扱いや関連法規の遵守, 厳密な細胞品質管理が重要となる。
【目次】
1 はじめに
2 脂肪組織由来幹細胞
3 培養上清と成長因子
4 培養上清の産業利用
5 終わりに
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多能性幹細胞を安価で安定供給を実現可能とする合成培地の開発
Development of Defined Culture Medium for Stable and Cost−Effective Human Pluripotent Stem Cell Supply
1981年のマウス胚性幹細胞樹立から26年, ヒトiPS細胞が樹立された。これを発端に, 多能性幹細胞を用いた再生医療・移植医療への取り組みが急加速した。同時に安全で安価な培養条件で培養された大量の多能性幹細胞供給が急務となった。本稿では, 筆者らが世界に先駆けて開発した成長因子と異種成分を完全に除去した合成培地について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 多能性幹細胞培養培地の歴史と課題
3 成長因子を含まない幹細胞培養用合成培地開発の試み
3.1 多能性幹細胞における成長因子非依存の自己複製シグナル経路
3.2 Wntタンパク質を代替可能な化合物の探索
3.3 増殖促進効果を持つ化合物の探索と新規合成培地
4 おわりに
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放射性ペプチド薬剤の標識合成と診断・治療への展開:現状と課題
Development of Radio−labeled Peptides for Diagnosis and Therapy:Present and Future
腫瘍に高発現するペプチド受容体を標的とした放射性薬剤は非侵襲的画像診断だけでなくRI内用療法(標的アイソトープ治療)においても有用な化合物群である。本稿では, 放射性ペプチド薬剤の分子設計に関する最新の知見を概説するとともに筆者らが進めている放射性ハロゲンを用いた標識合成について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 放射性ペプチド薬剤の分子設計
2.1 診断・治療に用いられる放射性核種
2.2 分子改変による動態制御
2.2.1 体内動態改善を志向した分子設計
2.2.2 受容体親和性の向上を志向した分子設計
2.3 ペプチド本来の薬物動態を反映した分子設計:放射性ハロゲンを用いた直接標識
3 まとめと展望
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《BIO PRODUCTS》
l−アルギニン(l−Arginine) -
月刊バイオインダストリー 2018年12月号
¥4,950
≪著者一覧≫
矢澤一良 早稲田大学
田中泰史 株式会社伊藤園
瀧原孝宣 株式会社伊藤園
吉田和敬 カゴメ株式会社
井上拓郎 カゴメ株式会社
竹下尚男 花王株式会社
前田眞治 国際医療福祉大学大学院
足海洋史 キリン株式会社
高見澤菜穂子 早稲田大学
奥 寛雅 群馬大学
平山秀樹 国立研究開発法人 理化学研究所
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【特集】機能性飲料の開発
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予防医学と「機能性飲料」の研究・開発
R&D of "Functional Drinks" for Preventive Medicine
【目次】
1 予防医学の見地から見た「機能性飲料」
2 「機能性おやつ」と「機能性飲料」プロジェクト
3 食育としてのおやつと機能性飲料
4 「機能性飲料」の研究開発と実践レシピ
5 機能性飲料を含む「OYATSU」を世界語に!
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モノグルコシルヘスペリジン高含有機能性フレーバー飲料の開発
Development of Monoglucosyl hesperidin−Rich Functional Flavored Drinks
モノグルコシルヘスペリジンは柑橘由来の成分であり, 様々な生理作用を有する。我々は, その中で特に血中中性脂肪低減効果に注目し, 本成分を高含有するフレーバー飲料を用いて, その効果を検証し, 特定保健用食品として発売するに至った。また, 他の生理作用にも注目して, 機能性表示食品の開発を進めている。本報では, これらのモノグルコシルヘスペリジン高含有飲料の開発について紹介する。
【目次】
1 開発背景
2 モノグルコシルへスペリジンとその中性脂肪低減作用
3 スタイリーウォーター摂取後のモノグルコシルヘスペリジンの吸収
4 スタイリーウォーター摂取による中性脂肪低減効果の有効性評価と安全性評価
5 特定保健用食品スタイリースパークリング, スタイリーウォーターの製品化と機能性表示食品への展開
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植物性食品の機能性に基づいた機能性表示飲料の展開
Development of Beverages with Function Claims Based on the Health Benefits of Plant−derived Foods
当社では, 野菜や植物性乳酸菌などを用いた植物性食品を提供することで日本人の健康寿命の延伸に貢献することを目的に, 野菜や植物性乳酸菌の機能性の評価を行っている。本稿では, 植物性食品の機能性についてシステマティックレビュー(SR)で検証した内容と, それに基づいた機能性表示食品としての展開について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 リコピンによる血中HDLコレステロール上昇作用
2.1 背景
2.2 SRの方法と結果
2.3 リコピンによるHDLc上昇作用のメカニズム
3 GABAによる血圧低下作用
3.1 背景
3.2 SRの方法と結果
3.3 GABAによる血圧低下作用のメカニズム
4 ラブレ菌による整腸作用
4.1 背景
4.2 SRの方法と結果
4.3 ラブレ菌による整腸作用のメカニズム
5 おわりに
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エネルギー代謝研究に基づく茶カテキン含有飲料の開発
Development of Tea Catechin−Rich Beverages Based on the Energy Metabolism Research
アジア諸国において伝統的に愛飲されてきた緑茶には, さまざまな健康機能が知られている。一方, 緑茶の抗肥満作用が科学的に検証されたのは1990年以降である。エネルギー代謝の観点で日常の習慣的な緑茶の飲用がどのように体脂肪の低減に寄与するか, 機能性飲料としてこれまでに明らかになった研究成果を概説する。
【目次】
1 はじめに
2 茶カテキン含有飲料の開発
3 抗肥満作用に関する基礎的研究
4 ヒトのエネルギー代謝研究
4.1 食事誘導性熱産生
4.2 身体活動時の脂肪代謝
4.3 褐色脂肪における代謝的熱産生
5 おわりに
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飲料用炭酸水の効果とその応用
Effect of Carbonated Water for Drinking and its Practical Use
最近日本に定着しつつある炭酸飲料水が, 健康志向の日本人においてなぜ消化管への作用があるのかを, 飲んだ際の消化管などへの作用について解説する。さらにその応用として炭酸飲料水の利用の広がり, 家庭などで炭酸水が料理に使われることもあり, なぜ炭酸料理が他と異なるのかなどについてその特殊性について概説する。
炭酸水の飲用は喉の爽快感だけでなく, 少量で食欲増進, 多量でダイエット向きの食欲低下など消化管への作用もあり健康志向の日本人に広く受け入れられてきている。飲用での作用を紹介するとともに, 炭酸水の特殊性を用いた炭酸料理についても本稿で紹介する。近年, 炭酸水の利用は日本人にも習慣として定着してきている。
【目次】
1 はじめに
2 炭酸水製造法
3 飲用での効果
3.1 喉に対する効果
3.2 胃のぜん動運動亢進による効果
3.3 胃の拡張による効果
3.4 腸に対する効果
3.5 飲用時の炭酸水の他の効果
4 炭酸水の料理への応用
4.1 炭酸料理の背景
4.2 米飯が柔らかくなるか
4.3 他の炭酸料理について
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紅茶ポリフェノールが食事の脂肪吸収に与える影響
Effect of Black Tea Polyphenol on Lipid Absorption
近年, 特定保健用食品や機能性表示食品など「食品の健康機能性」に着目した製品開発の重要性が高まっている。我々は, 紅茶ポリフェノールに着目し, ヒトの生活習慣病(特に食事由来の脂肪吸収)への有効性検証を行った。本稿は, 紅茶ポリフェノールが食事の脂肪吸収に与える影響をヒトの有効性エビデンスと共に紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 紅茶と健康機能性
3 紅茶ポリフェノールが食事由来の脂肪吸収に与える影響
3.1 ヒト食後血中中性脂肪値上昇抑制効果検証試験
3.2 ヒト便中脂質排泄効果検証試験
4 おわりに
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BIO R&D
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食べられる光学素子
Edible Optical Device
本稿では, 一部の食材は物理的に光学素子の形成に適していることを説明し, 食材のみから食べられる光学素子の一種である再帰性反射材を試作した結果を紹介する。この具体的応用として料理へのプロジェクションマッピングがあり, 実際に試作品を用いて料理上に映像を付与した結果も説明する。
【目次】
1 はじめに
2 なぜ光学素子の可食化が必要なのか
2.1 液体光学デバイス
2.2 動的プロジェクションマッピングの料理への応用
3 食べられる再帰性反射材
4 評価実験
4.1 反射率測定
4.2 料理へのプロジェクションマッピング
5 おわりに
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BIO ENGINEERING
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殺菌用・深紫外LED の進展
Recent Progress of Deep−UV LEDs for Application to Sterilization
深紫外LEDは, 殺菌・浄水, 医療, 樹脂加工, 印刷, コーティングなど幅広い応用分野において, 今後の大きな市場展開が期待されている。本研究では, AlN(窒化アルミニウム)系半導体の結晶成長技術を開拓することにより, 深紫外における高効率発光を実現し, 実用可能な深紫外LEDを開発してきた。本稿では, 我々が最近取り組んでいる高効率・深紫外LEDの開発と今後の展望ついて紹介する。
【目次】
1 深紫外LED開発の背景と現状
2 AlN高品質結晶の開発による深紫外LEDの実現
3 高効率・高出力化の進展
4 まとめと今後の展望
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《BIO PRODUCTS》
コレステロール(Cholesterol)
l−チロシン(l-Tyrosine)
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月刊バイオインダストリー 2018年11月号
¥4,950
≪著者一覧≫
佐藤研一 福岡大学
高田昌彦 京都大学
樫村吉晃 日本電信電話(株)
東 恭平 東京理科大学
岡本悠佑 千葉大学
戸井田敏彦 千葉大学
村岡貴博 東京農工大学
千葉俊明 (株)フルステム
内田太郎 (株)フルステム
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BIO INDUSTRY
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竹の土系舗装への活用法
Application of Bamboo to Soil Pavement
近年の竹や筍の輸入量の増大や生産者の減少による竹林の放置は深刻な問題となっている。そこで, 竹をチップ状にした繊維材料に着目し, 竹チップを用いた土系舗装材料の開発を行っている。竹チップ土系舗装は, 歩行者の脚への負担軽減, ひび割れ防止, ヒートアイランド現象の抑制にも繋がる付加価値の高い舗装材料である。
【目次】
1 はじめに
2 竹チップ土系舗装の材料特性
2.1 実験に用いた試料
2.2 実験方法
2.3 実験条件
2.4 締固め特性
2.5 強度・変形特性
2.6 曲げ強度特性
3 竹チップ土系舗装材料の防草効果
4 竹チップ土系舗装の施工事例
4.1 あんずの里運動公園
4.2 @アトサキセブン
4.3 浜松市一般住宅
4.4 マフラーミュージアム
4.5 国土交通省九州地方整備局九州技術事務所構内
4.6 日田市県道法面
5 研究会の発足と今後の展望
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BIO REVIEW
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抗体治療による脊髄損傷からの機能回復
Recovery from Motor Impairments after Spinal Cord Injury by Antibody Therapy
サルを用いて脊髄損傷により傷ついた神経の再生を促し, 一度失われた霊長類の手指機能を回復促進させる抗体治療に成功した。これまで, 成熟した中枢神経においてひとたび損傷した神経が再びその軸索枝を伸ばすことは難しいとされていた。この成果は, 脊髄損傷や脳卒中などの中枢神経障害後の運動機能回復の治療につながると期待される。
【目次】
1 背景
2 研究の方法と成果
3 波及効果
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膜タンパク質の機能で動作するバイオデバイス
Biodevices that Operate with Membrane Protein Function
膜タンパク質などの生体分子とナノテクノロジを融合させたバイオデバイスが実現できれば, 生体機能の解明などの基礎研究分野だけではなく, 医療応用・創薬など様々な方面への応用が期待される。本稿では, 我々のグループで進めている, 膜タンパク質の機能で動作する, 生体環境を模倣したバイオデバイス作製の試みについて紹介する。
【目次】
1 生体分子の機能を利用したデバイス
2 人工脂質膜
3 人工脂質膜シールした微小井戸を用いたバイオデバイス
3.1 モデル細胞
3.2 微小井戸の人工脂質膜シール
3.3 膜タンパク質機能の確認
3.4 基板-脂質膜界面の影響
3.5 表面修飾によるイオンリーク低減
3.6 拡張DLVO理論による脂質膜-基板界面構造の検討
4 むすび
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BIO R&D
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スズキのヒレ, 骨, 眼球に含まれる機能性コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸混成鎖
Identification of Functional Chondroitin Sulfate/Dermatan Sulfate from Lateolabrax Japonicus
医薬品や健康食品の成分として流通するコンドロイチン硫酸の基原は, ブタの気管支軟骨, サケ鼻軟骨やサメ軟骨が知られている。しかしながら, コンドロイチン硫酸は動物の組織全般に含まれているため, 食品加工で生じた廃棄物などには有用な未利用資源が眠っていると考えられる。本稿では, スズキのヒレ, 骨および眼球に含まれる機能性コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸混成鎖について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 スズキ由来コンドロイチン硫酸/デルマタン硫酸混成鎖の構造と生物活性
2.1 CSの構造
2.2 スズキ由来CS/DS混成鎖とタンパク質リガンドとの親和性
3 スズキのヒレ, 骨および眼球からCS/DS混成鎖を調製するメリットとデメリット
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精密設計された低分子を用いるタンパク質安定化
Protein Stabilization by Small Synthetic Molecules
タンパク質の分子機能は, ポリペプチド鎖が適切に折りたたまれた立体構造(ネイティブ構造)を構築することで発現する。その立体構造安定化は, タンパク質を取り扱う上で有用である。筆者らが近年開発した精密設計された低分子を用いるタンパク質安定化技術について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 ポリエチレングリコールを基盤とするタンパク質凝集抑制剤
2.1 構造化ポリエチレングリコール類縁体
2.2 両親媒性ポリエチレングリコール
3 ウレアを基盤とするタンパク質酸化的フォールディング促進剤
4 おわりに
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BIO ENGINEERING
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次世代型自動培養装置の開発
The Next Generation of Automated Culture System for Stem Cells
幹細胞培養は, 経験に基づく目視による細胞管理を基本とし, 人手による培地交換等の作業を実施するのが長年の常識である。また, 再生医療が盛んに実施される現在においても, 人手による治療用の細胞培養加工がほとんどである。しかし, 安全性や有効性が確認された後の細胞加工物や再生医療等製品の大量生産および製造においては, 人手作業でまかなうことができない細胞量の製造が求められるため, 人手作業からの転換が, 今後の産業化における大きな課題となっている。まずは, 品質安定化を達成するため, ロボット制御による培養装置が開発されたが, 人手作業の安定的な模倣に主眼があるため, 処理量およびコスト面における問題の克服にはいまだ遠い状況である。弊社では, 治療に必要とされる1 億(10^8)個以上の幹細胞を自動培養でき, モニタリングによる培養状態の把握が可能であり, 低コストかつ省スペースで運用可能な次世代型培養装置を開発したので報告をする。
【目次】
1 はじめに
2 幹細胞培養装置について
2.1 ファーメンタ(スピナーフラスコ)
2.2 ロボット制御による2次元培養装置
2.3 その他の方式による培養装置
3 治療用の大量培養装置に必要な要件
3.1 必要細胞量について
3.2 細胞品質について
3.3 コストについて
4 次世代型培養装置について
4.1 開発コンセプト
4.2 不織布培養法
4.3 装置仕様
5 さいごに
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BIO BUSINESS
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プロバイオティクス食品メーカーの動向
【目次】
1 明治
2 森永乳業
3 雪印メグミルク
4 ヤクルト本社
5 アサヒ飲料
6 キリングループ
7 カゴメ
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主要乳酸菌素材の動向−Lactobacillus(ラクトバチルス)属−
【目次】
1 概要
2 研究開発動向
3 L.acidophilus(ラクトバチルスアシドフィルス)の動向
3.1 概要
3.2 業務用原料サプライヤーの動向
3.3 L.acidophilus 関連メーカーの動向
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《BIO PRODUCTS》
N−アセチルグルコサミン(N-Acetylglucosamine)
ビタミンD(Vitamin D) -
月刊バイオインダストリー 2018年10月号
¥4,950
≪著者一覧≫
市瀬慎一郎 早稲田大学
小出隆規 早稲田大学
竹下 毅 (株)アルガルバイオ
河野重行 東京大学
坂本 隆 和歌山大学
大倉直人 新潟大学
野杁由一郎 新潟大学
五十嵐一衛 (株)アミンファーマ研究所
滝沢 崇 信州大学
中山 昇 信州大学
羽二生久夫 信州大学
青木 薫 信州大学
岡本正則 信州大学
野村博紀 信州大学
田中 学 信州大学
傍島 淳 信州大学
吉田和薫 信州大学
鎌仲貴之 信州大学
安嶋久美子 信州大学
大石 歩 信州大学
黒田千佳 信州大学
石田 悠 信州大学
岡野怜己 信州大学
加藤博之 信州大学
齋藤直人 信州大学
櫨川 舞 福岡大学
中野涼子 福岡大学
八尾 滋 福岡大学
中島 学 福岡大学
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BIO R&D
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人工コラーゲンの開発とバイオマテリアルとしての応用可能性
Development of a Synthetic Collagen and Its Potential as a Biomaterial
コラーゲンは構造タンパク質としての高分子物性と様々な生物活性を併せもっていることから3次元細胞培養の足場材や再生医療のためのバイオマテリアルとして使われている。最近ではコラーゲンが生物活性をコントロールする仕組みに関する研究も進み, その機能をより効果的に利用することがこれからのバイオマテリアルの課題である。本稿では我々が開発した化学合成コラーゲン様ペプチドからなる人工コラーゲンの分子設計, その特徴と応用について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 人工コラーゲンのデザイン
3 受容体特異的な細胞結合活性を付与した人工コラーゲン
4 ゲルの硬さを制御した人工コラーゲン
5 人工コラーゲンの加工
6 さいごに
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カロテノイド世界市場の動向と七色クロレラ
Trends of the World Market of Carotenoids and “Nanairo Chlorella”
2015年4月に機能性表示食品制度がスタートして, アスタキサンチンやルテインはもとよりカロテノイド全般が注目されている。国民が食品の機能を正しく理解し, 自らの意思で選択して自らの健康維持に役立てようとするセルフメディフィケーション時代が日本にも到来したといえる。そうした時代のカロテノイドの世界市場動向と「七色クロレラ」について紹介しよう。
【目次】
1 はじめに
2 産業としてのカロテノイド
2.1 カロテノイド市場
2.2 合成カロテノイドと天然カロテノイド
2.2.1 アスタキサンチン
2.2.3 ルテイン
3 微細藻類によるカロテノイドの生産
3.1 微細藻類の物質生産
3.2 物質生産を誘導するストレス環境
3.3 二段階法による物質生産
3.3.1 温度
3.3.2 強光
3.3.3 窒素飢餓
3.3.4 高塩濃度
4 七色クロレラとカロテノイド
5 おわりに
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核磁気共鳴を用いる生体分子の多成分同時一斉計測
Simultaneous Analysis of Biomolecules using Nuclear Magnetic Resonance
その高い信号分離能から, 有機化合物の構造解析に用いられてきた核磁気共鳴現象は, タンパク質の構造解析や生体イメージング技術に応用されるなど, 凄まじい技術的発展を遂げてきた。本稿では, 著者らが最近挑戦している核磁気共鳴を用いた生体分子の多成分同時一斉計測技術について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 19F核磁気共鳴分光を用いた複数の標的生体分子の同時一斉計測技術
3 19F核磁気共鳴分光によるアミノ酸の同時一斉検出技術
4 今後の展望
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神経を抜かない新しいむし歯(う蝕)治療の開発
The Development of New Caries Treatment without Pulpectomy
歯髄創傷治癒の詳細なメカニズムはいまだ不明な点が多く, そのため歯髄の保護や再生を困難なものとしている。
本稿では, 歯髄創傷治癒時にみられるプロスタグランジンE2の多彩な生理学的作用に注目し, その体内動態と創傷治癒メカニズムの解明に向けた最新の研究結果を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 歯髄組織におけるPGE2について
3 トランスポーターについて
4 歯髄炎時におけるMrp4とPGE2について
5 PgtとPGE2特異的レセプターの関連について
6 まとめ
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脳梗塞悪化抑制物質の開発
Development of Protective reagents for Brain Infarction
脳梗塞等高齢者の細胞障害による疾病は, 活性酸素が強く関与していると考えられていたが, 筆者らは細胞増殖因子ポリアミンの代謝物であるアクロレイン(CH2=CH−CHO)が, 活性酸素より強く細胞障害に関与しており, アクロレイン除去剤であるN−アセチルシステインの誘導体が脳梗塞の治療薬並びに予防薬になる事を見出した。
【目次】
1 はじめに
2 脳梗塞並びに無症候性脳梗塞のバイオマーカーとしてのアクロレイン
3 脳梗塞モデルマウスを用いたアクロレインの毒性評価
4 細胞内におけるアクロレイン産生とその解毒機序
5 アクロレイン解毒物質の探索
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骨組織修復のためのtitanium fiber plate
Titanium Fiber Plates for Bone Tissue Repair
チタンプレート(titanium plate)は, 骨親和性が高い材料であるため, 広く骨疾患の臨床に普及している。しかし, 弾性率が高いために長期間骨と接していると骨が脆弱化するストレスシールディングを生じることから, 骨と密着させて骨修復に使用することには適していなかった。これに対して, チタン繊維を素材とし繊維形状を残したまま板状に成形させたtitanium fiber plateは, 弾性率を骨皮質と同等にすることができ, 骨と密着して使用してもストレスシールディングを生じない。また, 細胞の接着保持や骨修復の足場に適している多孔性構造を, チタン繊維が生み出すことができる。我々は本研究において, 骨と同等の弾性率と, 骨形成に適している多孔性構造をもつtitanium fiber plateに, 骨髄間葉系幹細胞から分化させた骨芽細胞を複合し, ラットの骨欠損部に留置すると, conventional titanium plateを用いるより高い骨組織修復能を示すことを明らかにした。長期間骨と密着して使用することが可能で, 更に骨修復を促進することができるtitanium fiber plateの用途は広く, 骨折治療や骨再生医療など, 今後ますます増加する骨疾患の臨床に大きく貢献することが期待できる。
【目次】
1 INTRODUCTION
2 MATERIALS AND METHODS
2.1 titanium fiber plateとconventional titanium plate
2.2 MC3T3−E1細胞のtitanium fiber plate上での接着性と増殖能の評価
2.3 骨芽細胞分化誘導後のラット骨髄間葉系細胞のtitanium fiber plate上における細胞接着評価
2.4 titanium fiber plate上に接着させたラット骨髄間葉系細胞分化誘導後のラット骨髄間葉系細胞の遺伝子発現解析
2.5 ウサギ尺骨粉砕骨折の修復方法と評価
2.6 rhBMP−2を用いたマウス背筋内所性骨形成の評価
2.7 ラット骨髄間葉系細胞の骨芽細胞分化方法と骨芽細胞によるラットの頭蓋骨骨欠損修復の評価
3 RESULTS
3.1 titanium fiber plateの機械的特性
3.2 MC3T3−E1細胞のtitanium fiber plate上での接着と増殖
3.3 ラット骨髄間葉系細胞分化誘導後のtitanium fiber plate上における接着
3.4 titanium fiber plate上に接着させたラット骨髄間葉系細胞分化誘導後の遺伝子発現解析
3.5 titanium fiber plateを用いたウサギの粉砕骨折治癒
3.6 titanium fiber plateを用いたrhBMP−2によるマウスでの異所性骨形成
3.7 titanium fiber plateと骨芽細胞によるラットの骨欠損部の骨再生
4 DISCUSSION
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BIO ENGINEERING
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側鎖結晶性ブロック共重合体を用いた表面改質機能の細胞シート作製技術への応用
Application of Surface Modification by Side−chain Crystalline Block co−polymer for Preparation of Cell Sheets
側鎖結晶性ブロック共重合体(SCCBC)は, 接着性・濡れ性に乏しい結晶性高分子の表面特性を改質することができる。我々は, SCCBCをポリスチレン素材である細胞培養皿の表面改質に使用することで, 細胞が接着・増殖し, 加温により細胞が剥離する現象を見出したので, 本技術を新規細胞シート作製方法として紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 市販細胞シート作製専用培養皿─温度応答性培養皿─
3 側鎖結晶性ブロック共重合体の改質機能
4 細胞培養基板ポリスチレンの改質
5 改質による細胞増殖作用
6 改質による細胞シート剥離作用
7 剥離後のSCCBCの局在
8 剥離後の細胞シートの再生着・増殖性について
9 おわりに
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《BIO PRODUCTS》
コエンザイムQ10(Coenzyme Q10)
ベタイン(Betain) -
月刊バイオインダストリー 2018年9月号
¥4,950
≪著者一覧≫
酒井芳紀 大阪大学
森山麻里子 近畿大学
赤木淳二 小林製薬(株)
北郡秀晃 小林製薬(株)
森山博由 近畿大学
山本哲史 大成建設(株)
井上大介 大阪大学
斎藤祐二 大成建設(株)
清 和成 北里大学
池 道彦 大阪大学
川崎 了 北海道大学
加藤好一 佐竹化学機械工業(株)
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BIO REVIEW
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セルフリーな再生医療製剤の開発
Development of Cell Free Regenerative Medical Formulation
自己単核球細胞や筋芽細胞等による細胞を用いた再生医療の作用機序として, 各種体内再生因子誘導によるパラクリン効果が報告されている。我々は, 低分子合成化合物による各種体内再生因子誘導剤として, YS−1301を新しく見出し, 各種DDS(Drug Delivery System)製剤を作製した。これらの製剤は, 疾患局所にて自然治癒力を模倣した各種体内再生因子誘導により血管新生作用, 抗線維化作用, 抗アポトーシス作用及び間葉系幹細胞(MSC)動員・集積作用等により疾患部位を治癒する新しいセルフリー(細胞を用いない)な再生医療製剤になり得る。
【目次】
1 はじめに
2 新しいセルフリーな再生医療等製品
3 YS−1301の体内再生因子誘導作用
4 YS−1301内包4週間徐放性マイクロイスフェアー製剤(YS−1402)
5 YS−1301内包リポソームナノスフェアー(LipoNS)製剤
6 YS−1301は, 体内再生因子誘導剤である
7 肝細胞増殖因子(HGF)は疾患部位でのみ作用する
8 おわりに
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BIO R&D
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アロエベラ液汁による紫外線ダメージ軽減効果
Protective Effect of Aloe Vera Gel Against Ultraviolet Radiation Damage to the Skin
熱帯地方で育つアロエベラの葉肉には, ビタミン類, ミネラル類, 酵素類, 多糖類, アミノ酸などの成分が豊富に含まれており, 民間薬, 化粧品や食品として古来より世界中で利用されている。アロエベラの多岐にわたる効能のうち, 本稿ではアロエベラ液汁のもつヒト皮膚の恒常性維持に寄与する効果について, 特に皮膚が日常的に暴露されている紫外線ダメージからの回復および軽減効果などに焦点をあてた筆者らの研究成果を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 紫外線による皮膚への影響について
3 アロエベラ液汁の表皮に対する効果
3.1 表皮ケラチノサイトの紫外線ダメージ抑制作用
3.2 表皮浸透促進作用
4 おわりに
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高効率1,4−ジオキサン分解菌Pseudonocardia sp. N23 株の排水処理への応用
Application of Very Effective 1,4−Dioxane−degrading Bacterium, Pseudonocardia sp. Strain N23, to 1,4−Dioxane−containing Wastewater Treatment
1,4−ジオキサンは発がん性の疑いが指摘され, 先進各国において環境汚染物質として認知されている。近年, 我が国では水環境に係る各種基準項目に1,4−ジオキサンが追加され, 実効性の高い処理技術が求められている。本稿では, 1,4−ジオキサン分解菌N23株の優れた特長を概説するとともに, これを用いた排水処理技術を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 1,4−ジオキサン分解菌について
3 構成型資化菌N23株を用いた排水処理技術
3 1 構成型資化菌N23株の特長
3.1.1 1,4−ジオキサンの極低濃度化
3.1.2 酸性域での高い1,4−ジオキサン分解活性
3.2 処理プロセスの確立と実排水への適用性
3.2.1 N23株を用いた排水処理プロセス
3.2.2 実排水への適用性
4 終わりに
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BIO ENGINEERING
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バイオセメンテーションを用いた地盤固化技術
Ground Solidification Technologies Using Biocementation
これまで微生物とは無縁と思われていた地盤工学や地盤環境工学の分野において, 微生物を用いた地盤固化技術に関する研究開発が国内外で活発化している。本稿では, 低環境負荷のセメント成分である炭酸カルシウム, シリカ, リン酸カルシウムを用いた地盤のバイオセメンテーションに関する研究事例について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 炭酸カルシウムによるバイオセメンテーション
3 シリカによるバイオセメンテーション
4 リン酸カルシウムによるバイオセメンテーション
5 おわりに
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【連載】細胞培養装置の開発と産業化
第3回(最終回) スケーラブル撹拌培養装置の産業化
Practical Use of Scalable Bioreactor
【目次】(第2回より続き)
4 スケーラブル撹拌培養装置の産業化
4.1 スケーラブル検討事例の紹介
4.2 産業化に向けたCFD数値シミュレーションの活用
4.3 CFD数値シミュレーションの注意事項
5 おわりに
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《BIO PRODUCTS》
ドコサヘキサエン酸(Docosahexaenoic acid, DHA) -
月刊バイオインダストリー 2018年8月号
¥4,950
≪著者一覧≫
藤吉好則 名古屋大学
南部寿則 富山大学
遠山周吾 慶應義塾大学医学部
福田恵一 慶應義塾大学医学部
末次正幸 立教大学
宮入匡平 東京大学
後藤佑樹 東京大学
菅 裕明 東京大学
加藤好一 佐竹化学機械工業(株)
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BIO REVIEW
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クライオ電子顕微鏡によるタンパク質構造解析の現状と展望
Current and Future Vista of Structural Biology Based on Cryo−electron Microscopy
基礎生物学や構造創薬等において, タンパク質の構造情報の重要性は早くから認識されていた。しかし, 特に膜タンパク質の構造解析は, 困難な研究課題とされてきた。その状況がクライオ電子顕微鏡を用いた単粒子解析法の発展で激変した。この昨年ノーベル化学賞が授与された分野の歴史と現状, 今後の展望を概説する。
【目次】
1 はじめに
2 クライオ電子顕微鏡の発展史
3 単粒子解析法とは
4 創薬をめぐる状況と新創薬戦略の提案
5 構造創薬と構造生物学の展望
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BIO R&D
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医薬品開発の効率化に寄与する多置換インドール誘導体の網羅的合成法の開発
Development of a Divergent Synthesis of Highly Substituted Indole Derivatives for the Efficiency of Drug Discovery
インドールは数多くの医薬品に含まれている骨格であり, インドール誘導体の効率的合成法の開発は重要な研究課題である。我々は最近, アミンによるスピロシクロプロパンの開裂―環化反応を鍵工程とする新規インドール合成法およびその中間体を用いた多置換インドール誘導体の網羅的合成法を開発したため, その研究成果について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 スルホニウム塩を用いるスピロシクロプロパンの合成
3 アミンによるスピロシクロプロパンの開裂―環化反応による新規インドール合成法
4 テトラヒドロインドール中間体からの置換インドールの位置選択的合成
5 置換インドールの位置選択的合成法を用いた多置換インドールの網羅的合成
6 まとめ
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BIO ENGINEERING
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2次元培養系によるヒトiPS 細胞由来心筋細胞の大量作製
Large−scale Production of Human iPSC−derived Cardiomyocytes via 2D Culture System
心臓移植治療の代替治療法としてヒトiPS細胞を用いた心臓再生医療が注目を浴びている。しかしながら再生医療を具現化するためには様々なハードルを乗り越えなければならない。その中で最も重要とされるものが, 腫瘍形成を回避する手法の開発と大量培養法の確立である。本稿ではこれらの課題を克服するための筆者らの取り組みを紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 多能性幹細胞からの心筋分化誘導
3 腫瘍形成を回避する戦略
3.1 未分化幹細胞特異的除去法
3.2 心筋細胞の純化精製
4 大量培養用ヒトiPS細胞未分化維持培養液の開発
5 10段培養プレートを用いたヒトiPS細胞の大量培養
6 多層培養プレートを用いたヒトiPS細胞由来心筋細胞の大量作製
7 ヒトiPS細胞由来心筋細胞における特性解析
8 今後の展望
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細胞を使わない長鎖DNA 合成技術
Cell−free Synthesis of Large Circular DNA
ゲノムをまるごと人工合成しようという研究が広まりつつある。この「ゲノム合成」のための技術としては, これまでのところ枯草菌や酵母などのクローニング宿主に依存した手法がある。我々は最近, 無細胞で長鎖DNAを増幅する系の構築に至った。この系を利用して, 細胞を使わずにゲノムサイズの長鎖DNAを合成することを目指しており, 紹介したい。
【目次】
1 ゲノムを「読む」技術と「書く」技術
2 ゲノム合成技術の課題
3 PCRによる試験管内DNA増幅の課題
4 試験管内ミニ染色体複製再構成系
5 染色体複製“サイクル”再構成による長鎖DNA増幅
6 複製サイクル再構成系とDNA連結法を用いた長鎖DNA合成
7 無細胞ゲノム合成技術に向けて
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試験管内人工生合成系による擬天然ペプチド合成技術の開発及びその医薬品候補探索への応用
Development of Artificial in vitro Biosynthesis Systems and Their Application for Discovery of Pseudo-natural Peptides
近年, 人工的に構築された試験管内生合成系が開発されたことで天然物を模した構造を持つペプチドを簡便かつ精密に合成することが可能となった。本稿では試験管内人工翻訳系や骨格修飾酵素を利用して天然には存在しない構造や生物活性を持つペプチドを多種多様に合成する方法, そしてそれを活かした医薬品候補探索技術について簡潔に説明する。
【目次】
1 はじめに
2 擬天然物ペプチドを用いた新規生物活性分子探索戦略
3 再構成型の翻訳系を基盤とした擬天然ペプチドの試験管内生合成
4 翻訳後修飾酵素を用いた主鎖ヘテロ環構造の試験管内生合成
5 試験管内人工生合成系と試験管内分子選択法を組み合わせた医薬品候補探索技術
6 おわりに
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【連載】細胞培養装置の開発と産業化
第2回 効率的な撹拌培養装置の開発
Development of an Efficient Bioreactor
【目次】(第1回より続き)
3 効率的な撹拌培養装置の開発
3.1 各種培養装置の特徴
3.2 撹拌培養装置の課題
3.3 スケーラブル撹拌培養装置の検討
3.4 次世代培養装置の検討
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BIO BUSINESS
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プロバイオティクス食品の動向
Trend of Probiotic Foods
【目次】
1 発酵乳
2 乳酸菌飲料(乳酸菌配合清涼飲料水を含む)の動向
3 乳酸菌サプリメント(健康食品)の動向
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《BIO PRODUCTS》
アスタキサンチン(Astaxanthin)
トコトリエノール(Tocotrienol)
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《新刊紹介》
生命科学・医療系のための情報リテラシー第3版
―情報検索からレポート, 研究発表まで―
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月刊バイオインダストリー 2018年7月号
¥4,950
≪著者一覧≫
小澤敬也 自治医科大学
大嶺 謙 自治医科大学
影山愼一 三重大学
中村加世子 信州大学
中沢洋三 信州大学
藤原 弘 愛媛大学医学部附属病院
木村正伸 タカラバイオ(株)
繁森英幸 筑波大学
岡本章玄 (国研)物質・材料研究機構
加藤好一 佐竹化学機械工業(株)
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【特集】遺伝子改変T細胞の開発:CAR−T療法を中心に
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特集にあたって
Introduction
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遺伝子改変T細胞療法:オーバービュー
Gene-modified T Cell Therapy:Overview
遺伝子改変T細胞療法は, CAR(キメラ抗原受容体)−T細胞療法とTCR(T細胞受容体)−T細胞療法の2つに大きく分けられる。特に, CD19抗原を認識するCAR−T細胞療法は劇的な治療効果を発揮しており, 再発・難治性の急性白血病と悪性リンパ腫に対するCD19−CAR−T細胞療法が2017年に米国で承認された。その他, 遺伝子改変T細胞療法へのゲノム編集技術の応用も活発となっている。
【目次】
1 はじめに
2 CAR−T細胞療法のコンセプト
3 CAR−T細胞療法とTCR−T細胞療法の比較
4 B細胞性腫瘍に対するCAR−T細胞療法の臨床試験
5 CAR−T細胞療法の副作用と対策
6 造血器腫瘍に対するCAR−T細胞療法の今後の課題
7 同種T細胞を用いたユニバーサルCAR−T細胞療法の開発
8 固形がんに対するCAR−T細胞療法の開発
9 おわりに
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CAR−T療法の臨床試験の現状と問題点
2017年後半に急性リンパ芽球性白血病とB細胞性非ホジキンリンパ腫に対するCD19特異的キメラ抗原受容体(chimeric antigen receptor:CAR)導入T細胞(CAR-T)療法が, それぞれ米国FDAに承認された。CAR−T療法は, 遺伝子改変により腫瘍特異性と機能増強を付与したT細胞を用いる免疫細胞療法のひとつである。造血器腫瘍に対するCAR−T療法の臨床的な成功が注目されている一方で, 固形がんを対象とした臨床開発では十分な治療効果が得られていない。また, CAR−Tのクオリティ保持, 再発, 有害事象など新たな課題が浮き彫りになっているが, 生体内がん免疫機構への知見と遺伝子改変やゲノム編集等, 革新的な科学技術を用いて課題の克服へ向けた取り組みが続いている。
【目次】
1 はじめに
2 CARのコンセプト
3 造血器腫瘍に対するCAR−T療法
4 これまでの臨床試験から得られたCAR−T療法の問題点
4.1 CAR−T製造
4.2 CAR−T療法後の再発
4.3 固形がんへ対するCAR−T療法
5 CAR−T療法の毒性とマネージメント
5.1 サイトカイン放出症候群(cytokine−release syndrome:CRS)
5.2 神経毒性
6 おわりに
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TCR-T療法の臨床試験の現状と課題
Current Status and Prospective of TCR-transduced T Cell Therapy
TCR-T療法は, これまでメラノーマを対象にした臨床試験が中心で30~55%の奏功率が得られている。また, 滑膜肉腫での奏功率は50~60%である。TCR分子のアミノ酸置換あるいはマウス由来TCRを用い高親和性としたTCRでは正常組織へのオンターゲット効果あるいは標的外の自己抗原への免疫反応による重篤有害事象の事例がある。
【目次】
1 はじめに
2 メラノーマ
3 滑膜肉腫
4 上皮系腫瘍
5 血液腫瘍
6 重篤な有害事象の発生
7 おわりに
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非ウイルスベクターを用いたCAR−T療法の開発
Non−viral vector−mediated CAR−T−cell therapy
キメラ抗原受容体(CAR)を発現させた遺伝子改変T細胞を用いるCAR−T療法が, 難治性がんに対するブレークスルー治療として注目されている。DNAプラスミドベクターを用いるトランスポゾン法は, 簡単かつ安価な非ウイルス遺伝子改変技術であり, CAR-T療法に応用した場合はCAR−T細胞の製造コストを大幅に減少させる可能性がある。現在, piggyBacトランスポゾン遺伝子改変CAR-T細胞を用いる臨床試験が国内で複数準備されている。
【目次】
1 はじめに
2 ウイルス遺伝子改変CAR-T療法
2.1 キメラ抗原受容体発現T細胞
2.2 ウイルスベクター
2.3 CAR-T療法の課題
3 トラスポゾン遺伝子改変CAR-T療法
3.1 トランスポゾンベクター
3.2 PiggyBacトランスポゾンによるT細胞の遺伝子改変
3.3 PiggyBac遺伝子改変CAR-T細胞の特性
3.4 PiggyBac遺伝子改変CAR-T細胞の実用化
3.5 PiggyBac以外のトランスポゾン遺伝子改変CAR-T療法
4 おわりに
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次世代型CAR−T 細胞療法の展望
Prospects for the Next−generation CAR−T Cell Therapy
がんに対するCAR−T細胞療法はB細胞性血液がんとは異なり, 固形がんに対しては現在まで成功していない。しかしそれら臨床試験の結果から, CAR−T細胞療法が克服すべき課題が明らかにされた。本稿では, CAR−T細胞engineeringの視点から, それら問題点の解決を目指して提案されている次世代型CAR−T細胞療法のコンセプトを概観する。
【目次】
1 はじめに
2 より効果的なCAR−T細胞療法を構築する上で考慮すべき点
2.1 CAR−T細胞の構造上の特性
2.1.1 治療標的抗原選択の重要性
2.1.2 細胞内ドメインの重要性
2.2 有害事象
2.2.1 On−target/off tumor有害事象
2.2.2 サイトカイン放出症候群と中枢神経障害
3 次世代型CAR−T細胞コンセプトの提案
3.1 CAR−T細胞の治療標的抗原の拡大
3.1.1 p/HLA複合体特異的CAR−T細胞(TCR−like CAR−T細胞)
3.1.2 複数の抗原を同時に狙うCAR−T細胞(Multivalent CAR−T細胞)
3.1.3 リガンド型CAR−T細胞(Ligand−based CAR−T細胞)
3.2 抗原認識に続くCAR−T細胞の反応性の向上
3.2.1 KIRリガンドとDAP12を細胞内ドメインに利用した新たなCAR−T細胞(KIR−CAR/DAP12−T細胞)
3.2.2 サイトカイン活性化シグナルであるJAK−STATシグナルドメインを組み込んだ新たなCAR−T細胞(CAR/JAK−STAT−T細胞)
3.3 自殺遺伝子を導入したCAR−T細胞
4 その他の試み
5 まとめ
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遺伝子改変T細胞療法の開発:企業の視点から
Development of Engineered T−Cell Therapy: Industry’s Perspectives
前半は遺伝子改変T細胞療法としてTCRとCARを取り上げ, 企業として開発するにあたり, 安全性情報をどのように収集し, どのように臨床試験に反映させたかをタカラバイオの経験に基づいて記述した。後半は承認された場合の価格についてどのように考えるのかを再生医療等製品の製造の特性の観点から述べた。
【目次】
1 はじめに
2 遺伝子改変T細胞療法について
2.1 TCR
2.2 CAR
3 サイトカイン放出症候群について―企業としての取り組み―
4 中枢毒性について―企業としての取り組み―
5 今後開発企業はどのように対応していくべきか?
6 保険償還費について
7 まとめ
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BIO R&D
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植物由来ポリフェノール化合物のアルツハイマー型認知症予防における基礎的研究
Primary Study on Plant Polyphenols for Prevention of Alzheimer’s Disease
アルツハイマー型認知症(Alzheimer’s disease:AD)は世界的に最も多い神経変性疾患であるが, 根本的治療法は見出されていない。現在, AD発症の原因であるアミロイドβ(Aβ)の凝集阻害活性を有する化合物がADにおける治療や予防法として注目されている。本稿では, 植物ポリフェノールによるAD予防に対する基礎的研究について, 著者らの研究成果を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 CQA類およびPHEG類によるAβ凝集阻害活性
3 CQA類およびPHEG類によるHGF産生促進活性
4 まとめ
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微生物燃料電池によるエネルギーと物質生産の同時実現へ向けて
Toward Simultaneous Generation of Electricity and Valuable Chemicals in Microbial Fuel Cell
発電細菌を用いた微生物燃料電池技術は, 創電型廃水処理技術や暗所での環境中電源として近年盛んに開発が進んでいる。しかし, 細菌から電極への電子移動機構の包括的な理解へ向けた研究はまだ始まったばかりである。本稿では, 該当分野における基礎研究の動向, 発電と共役して進行することが明らかになった発酵反応, ならびにそれを利用した創電型物質生産技術について概説する。
【目次】
1 イントロ
2 発電菌における細胞内の電子移動経路と共役カチオン移動
3 発電細菌が発電時に呼吸ではなく発酵反応を駆動させていることを発見
4 新しい発電細菌の応用技術の可能性:発電と物質生産が同時かつ等速で進行
5 まとめ
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【連載】細胞培養装置の開発と産業化
第1回 培養装置のスケーラブル化と効率的な商用生産の実現
Scalable Bioreactor and Realization of Efficient Production
【目次】
1 はじめに
2 撹拌培養における撹拌翼
2.1 撹拌翼の種類
2.2 高効率撹拌翼の開発・特徴
2.3 培養槽と撹拌翼
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月刊バイオインダストリー 2018年6月号
¥4,950
【特集】アルツハイマー病の早期診断法の現状
<<著者一覧>>
赤津裕康 名古屋市立大学
内田和彦 筑波大学
大森智織 東京大学
山本一夫 東京大学
鈴木利治 北海道大学
遠山育夫 滋賀医科大学
亀島直子 パナソニック ヘルスケア(株)
南條俊文 パナソニック ヘルスケア(株)
加藤智子 滋賀医科大学
清水志乃 滋賀医科大学
清水猛史 滋賀医科大学
吉宗一晃 日本大学
西川美宇 (株)TOPU バイオ研究所
園木和典 弘前大学
政井英司 長岡技術科学大学
岩田正明 鳥取大学
原井基博 富士ソフト(株)
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【特集】アルツハイマー病の早期診断法の現状
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特集にあたって
Introduction
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アルツハイマー病とMCI の新規バイオマーカー
Novel Biomarkers for Alzheimer’s Disease and MCI
認知症の60~80%をしめるアルツハイマー型認知症(AD)は, 認知機能健常のプレクリニカル期(プレクリニカルAD), AD前駆段階の軽度認知障害(MCI due to AD)を経て, 日常生活に支障がでる程度まで認知機能が低下する疾患である。プレクリニカルADからMCI, ADへの病態進行を反映するバイオマーカーはADの発症予防を実現できる有効な手段であり世界中で研究が進んでいる。本稿では, われわれの知見も含め, AD, MCIの血液・髄液バイオマーカーについて述べる。
【目次】
1 はじめに
2 ADの病理
3 ADのバイオマーカー
4 AD・MCIの早期発見のための新規バイオマーカー
5 おわりに
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アルカデイン由来ペプチドp3-Alc のアルツハイマー病診断への応用
Clinical Application of Alcadein-derived Peptides in Alzheimer’s Disease Diagnosis
アルカデインは, アミロイド前駆体タンパク質(APP)と同様にγセクレターゼによる2段階目の切断を受ける一回膜貫通型タンパク質である。アルカデインの切断産物であるp3-Alcは脳神経系由来であり, 非凝集性であるため, 脳内のγセクレターゼの基質切断の量的および質的な変化を, 脳脊髄液や血液を用いた測定により正確に捉える事が出来ると考えられる。筆者はこれまで, 血漿成分中に含まれるp3-Alcがアルツハイマー病患者で増加することを示唆している。
【目次】
1 はじめに
2 アミロイドβタンパク質
3 アルカデイン
4 p3-Alcαとγセクレターゼ切断
5 p3-AlcαのAD簡易診断への有用性
6 おわりに
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鼻粘膜のアルツハイマー病バイオマーカー
Biomarkers for Alzheimer’s Disease in Nasal Smears
アルツハイマー病(AD)の早期診断技術として, PETによるアミロイドイメージングや髄液中のβアミロイドペプチド(Aβ)の測定が提唱されているが, もっと簡便で侵襲が少なく安価な診断法の開発が期待されている。本稿では, 筆者らが研究を進めてきた鼻粘膜サンプルを用いたADの診断技術について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 動物実験による検証
3 ヒトの鼻粘膜スメア中のAβ42とタウタンパクの測定方法について
4 鼻粘膜サンプルを用いたアルツハイマー病診断に関する臨床研究
4.1 中鼻道領域のAβ42量
4.2 中鼻道領域のタウタンパク量
4.3 MMSE(Mini−Mental State Examination)の得点との相関
5 鼻粘膜サンプルを用いたADバイオマーカー測定の問題点
6 おわりに
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抗アミロイドβ凝集体抗体を用いたアルツハイマー病血液診断の試み
Attempt at Serum Diagnosis of Alzheimer’s Disease by ELISA Using Antibodies Against Amyloid β aggregates
血液を用いたアルツハイマー病の診断は陽電子放射型断層撮影(PET)診断や髄液検査と比較して格段に侵襲性の低い診断方法である。本稿では, アルツハイマー病の血液診断法についてのこれまでの報告とともに, 筆者らが進めているアミロイドβ凝集体に対する抗体を用いたenzyme−linked immunosorbent assay(ELISA)による血液診断法について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 Aβ42凝集体に対する抗体
3 Aβ42凝集体に対する抗体を用いた血液診断
4 おわりに
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BIO INDUSTRY
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薬物代謝酵素発現酵母を用いた医薬品および食品成分の代謝予測
Prediction of Drug and Food Factor Metabolism Using Drug Metabolizing Enzymes Expressed in Yeast
近年, 医薬品や機能性食品開発における代謝研究の重要性が高まっている。我々は, ヒトや動物の薬物代謝酵素を酵母に導入した異種発現系を構築し, 代謝研究を一貫してサポートするサービスを提供している。本稿では, 近年の代謝研究の動向について述べるとともに, 酵母発現系を用いた代謝スクリーニングおよび代謝物調製例を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 薬物代謝研究の重要性
3 代謝研究の課題
4 酵母を用いた薬物代謝酵素発現系
5 薬物代謝酵素発現酵母を用いたin vitro代謝試験
6 薬物代謝酵素発現酵母を用いた代謝物調製
7 おわりに
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BIO R&D
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不均一なリグニン由来のフェノール類からのcis,cis−ムコン酸生産
cis,cis-Muconic Acid Production from Heterogeneous Lignin-derived Phenols
木本や草本などの非可食バイオマスの主要成分の一つであるリグニンは, 物理化学的・生物学的な分解によって不均一なフェノール類を生成するため, 特定の化合物を収率よく獲得することは容易ではない。本稿では, これら不均一なフェノール類から幅広いポリマーの合成原料へと展開できるcis,cis-ムコン酸を効率よく生産できる微生物株の作出について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 リグニンを原料としたccMAの生産
3 リグニンを炭素源としたccMAの生産
3.1 針葉樹リグニンを炭素源としたccMAの生産
3.2 広葉樹リグニンを炭素源としたccMAの生産
4 おわりに
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βヒドロキシ酪酸の抗うつ作用の発見
Novel Antidepressant Effects of β Hydroxybutyrate
βヒドロキシ酪酸は, 飢餓時に生体内で産生されるケトン体の一つであり, 近年, 炎症反応の中軸を担うインフラマソームの活性化機序に作用して, 非常にクリティカルな抗炎症作用を持つことが明らかになった。うつ病の病態には炎症が関与していることが示唆されており, βヒドロキシ酪酸が「抗炎症作用を介する新たなうつ病治療薬」となることが期待される。
【目次】
1 ヒドロキシ酪酸の抗炎症作用
2 うつ病の病態 ~従来のモノアミン仮説の疑問点~
3 うつ病と炎症
4 BHBのうつ病への適応と応用可能性
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自己耳介組織由来軟骨細胞を利用したインプラント型再生軟骨(再生医療等製品)の研究開発と, 口唇口蓋裂患者の唇裂鼻形成治療への応用
Research and Development of Implant−type Regenerated Cartilage(Regenerative Medicine Products)Utilizing Auto−auricular Tissue Derived Chondrocytes and its Application to Cleft Lip−nose Deformity Treatment for Patients with Cleft Lip And Palate
再生医療等製品の研究開発者として, 2005年11月から東京大学医学部附属病院で「軟骨・骨再生医療寄付講座」を開講することでアカデミアとの共同研究を実施してきた。企業治験の臨床適応目標9 名に対し, 2017年5月24日に目標企業治験対象の9人目の患者への適応が終わり, 現在, 企業治験の工程に従いモニタリング中である。
その経験の中, あくまでも私的な考え方ではあるが, 臨床で使用される再生医療等製品の開発に, 著者が実際に自己耳介組織由来軟骨細胞を利用したインプラント型再生軟骨(再生医療等製品)の研究開発を進めており現在も企業治験中という状況で, 皆様に報告できることは以下目次の3項目とさせて頂く。
本稿では, 開発の発想部分から企業治験での臨床適応完了までを中心に述べる。
【目次】
1 患者家族目線(研究発想)
2 研究者目線(基礎研究)
3 製品開発目線(安全性・安定性・標準化)⇒企業治験実施・臨床適応完了
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《BIO PRODUCTS》
アクリルアミド (Acrylamide)
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月刊バイオインダストリー 2018年5月号
¥4,950
<<著者一覧>>
前島裕子 福島県立医科大学
下村健寿 福島県立医科大学
内田智士 東京大学;(公財)川崎市産業振興財団
岩倉泰一郎 日本健康科学研究センター
桶葭興資 北陸先端科学技術大学院大学
岡島麻衣子 北陸先端科学技術大学院大学
金子達雄 北陸先端科学技術大学院大学
大城太一 北里大学
供田 洋 北里大学
岡本晃充 東京大学
榎本詢子 横浜国立大学大学院
景山達斗 横浜国立大学大学院
福田淳二 横浜国立大学大学院
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BIO R&D
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オキシトシンによる摂食抑制メカニズムと抗肥満効果~臨床応用の可能性~
The Mechanisms of Feeding Regulation and Anti-obesity Effect by Oxytocin : The Clinical Implication
近年オキシトシンは自閉症, 統合失調症の改善作用が報告され非常に注目されている神経ペプチドである。一方で糖尿病, 代謝研究領域においても食欲の抑制や脂肪分解, 体重低下, 耐糖能改善という抗メタボリックシンドローム作用が注目されている。本稿ではオキシトシンニューロンの生理的摂食抑制作用とそのメカニズムおよびオキシトシンの抗肥満作用に関し, 最新の動向を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 オキシトシンと摂食調節
3 オキシトシンと食欲調節機構
4 オキシトシンによる抗肥満作用と肥満治療応用
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革新的医療の創出を目指したmRNA ワクチンとそのアジュバントの開発
Development of mRNA Vaccine and its Adjuvant for Next−generation Healthcare
メッセンジャー(m)RNAワクチンは, 安全性に優れるほか, 迅速かつ自由に設計でき, さらに細胞性免疫を誘導できるといった特長を有し, 感染症予防や, がん個別化免疫治療などに期待されている。本稿では, mRNAワクチンについて概説した後, 2本鎖RNA構造を付与したアジュバント機能一体型mRNAの開発に関する著者らの研究を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 mRNAワクチン
2.1 mRNAワクチンの特長
2.2 mRNAの調製
2.3 mRNAワクチンの送達
2.4 mRNAワクチンの応用
3 アジュバント機能一体型2本鎖mRNAワクチン
3.1 mRNAワクチンに適したアジュバント
3.2 2本鎖RNA構造付与による免疫賦活化能の向上
3.3 2本鎖mRNAの調製
3.4 2本鎖mRNAの機能, ワクチン作用
3.5 2本鎖mRNAの免疫賦活化メカニズム
4 おわりに
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次世代の外用製剤フィルムスキン製剤の特徴とその応用~紫外線対策用UVカット被膜剤の開発~
Features and Applications of Next−generation External−formulation Film Skin Development of UV−blocking Coating Agent Against Ultraviolet Light
我々は研究室の残渣から発見された被膜化現象から, ニトロセルロースの溶剤揮発により耐水性皮膜を形成するメカニズムを解明した。被膜の特性を評価し, その特性を利用して紫外線防御製剤を開発した。製剤の機能性を市販製剤と比較評価し, UVカットと耐水性の持続効果に極めて優位な結果を得た。
【目次】
1 開発の経緯
2 フィルムスキンの特性評価
2.1 フィルムの調製
2.2 フィルムスキン原液の評価
2.2.1 ゾルの速乾性の評価
2.2.2 ゾルの粘性の評価
2.3 生理的リン酸緩衝液におけるフィルムの吸水量の測定
2.4 フィルム強度の測定
2.5 吸水によるフィルム強度の変化
3 フィルムスキン製剤のUVカット製剤への応用
3.1 フィルムスキンUVのウオータープルーフ評価試験
3.2 フィルムスキンUVの紫外線透過抑制試験
3.3 電子顕微鏡によるフィルムスキンUVの画像評価
4 今後の展開
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天然由来多糖の界面配向とマクロ空間分割現象
Interfacial Orientation of Nature-derived Polysaccharides and Macro-space Partitioning
物理環境を制御して粘性液体やゲルなどの柔らかい材料から空間パターンを自己組織的に生み出す研究は, 人工的に合成された分子を用いて盛力的に行われてきた。しかし, 天然ではない物質を使っているが故に, 自然界の物理的・幾何学的な因果関係を掌握するに至っていない。これに対して直近の研究で, シアノバクテリア由来の多糖など生体高分子を乾燥環境下においたところ, 粘性液体の状態からマクロな空間パターンを形成する現象を見出している。物理化学的条件が整ったin vitro環境下で生体高分子のパターン形成のメカニズムを解明できれば, 生体適合性と環境適応性を併せ持つ高度な材料設計技術が見出せる。
【目次】
1 緒言
2 実験方法
2.1 多糖水溶液の調整
2.2 偏光観察
3 結果と考察
3.1 多糖の階層性とマクロ幾何構造
3.2 マイクロファイバーの気液界面配向
3.3 多糖, 微小管, DNAの気液界面と配向特性
3.4 乾燥界面におけるピニング
3.5 乾燥下における空間分割
4 結言
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脂肪性肝疾患予防治療薬の開発状況と展望
Development and Perspective of NAFLD/NASH Drugs
最近, 非アルコール性脂肪肝 (NAFLD) や脂肪肝炎 (NASH) (本稿では, 両者を併せて脂肪性肝疾患とよぶ) の患者数は急増しているが, その治療薬はいまだに上市されておらず, 製薬企業や大学などで熾烈な開発競争が行われている。本稿では, 現在開発中の脂肪性肝疾患の予防治療薬の開発状況と展望を総括する。
【目次】
1 はじめに
2 脂肪性肝疾患について
3 脂肪性肝疾患予防治療薬の開発
4 遺伝病脂肪性肝疾患について
5 おわりに
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励起子制御蛍光RNA アプタマーを用いた細菌増殖の目視その場検出
Exciton−controlled Fluorescent RNA Aptamers for on−the−spot Investigation of Bacterial Proliferation
筆者らは, 細菌リボソームを定量できる簡便な蛍光分析法を開発した。この手法の鍵物質は, ネオマイシンBを認識する励起子制御蛍光RNAアプタマーである。この細菌リボソーム蛍光分析法を用いることによって, 固相発酵における大腸菌の増殖を劇的に増大する蛍光のモニタリングを通して検知することができた。
【目次】
1 はじめに
2 標的と分子設計
3 チアゾールオレンジ二量体標識RNAの合成と特性
4 チアゾールオレンジ二量体含有ネオマイシンBアプタマー
5 大腸菌増殖の検出
6 さいごに
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ペプチドおよびアプタマーを用いた選択的な細胞の分離技術
Selective Cell Separation Using Peptides and Aptamers
がん研究や再生医療を含む多くの分野では, 必要な細胞を選択的に分離する技術が必要である。本稿では, オリゴペプチドの自己組織化単分子膜とアプタマー分子を利用した選択的な細胞の分離技術について紹介する。さらに, この分離した細胞を, 電気化学反応によって素早く回収可能な基盤技術についても紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 外部刺激を利用した細胞の回収法
3 オリゴペプチドを用いた細胞接着挙動の制御
4 オリゴペプチドおよびアプタマーを用いた選択的な細胞分離
5 おわりに
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《BIO BUSINESS》
産業用酵素工業
Market Trend of Industrial Enzymes
産業用酵素は, 食品やトイレタリーなどの身近な生活製品から, 繊維, タンパク, 油脂, 醸造, 異性化糖向けなどの各種加工製品において, 日常不可欠なものとなっている。こうした既存分野に対して新規の酵素を導入する動きも続いており, 高齢者用の食品加工など新たな技術応用も始まっている。このような市場環境の中, 遺伝子組換え技術によるGMO酵素が環境問題や原料高騰の流れを受けて市場展開の拡大を続けている。また, 産業用酵素の利用分野では, エコロジー分野, エネルギー分野, ファインケミカル分野に伸びが期待され, 洗剤用酵素は近年の液体洗剤へのニーズの高まりによって需要が増大している。エネルギー分野では, バイオエタノールの開発が依然として注目を集めているものの, やや落ち着いた動きとなっている。エネルギー産業への展開は, 国内の産業用酵素市場における飽和状態にインパクトを与える好材料であり, 今後はこうした高付加価値の機能向上品の用途開発を進めることにより, さらなる新規需要も期待される。
【目次】
1 酵素の市場概況
2 産業用酵素の市場
3 メーカー動向
3.1 ノボザイムズジャパン
3.2 天野エンザイム
3.3 ナガセケムテックス
3.4 新日本化学工業
3.5 ヤクルト薬品工業
3.6 三菱化学フーズ
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《BIO PRODUCTS》
メチルセルロース (Methyl Cellulose)
乳酸 (Lactic Acid)
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月刊バイオインダストリー 2018年4月号
¥4,950
<<著者一覧>>
大日向耕作 京都大学
水野賀史 福井大学医学部附属病院
島田浩二 福井大学
滝口慎一郎 福井大学医学部附属病院
友田明美 福井大学
渕脇雄介 (国研) 産業技術総合研究所
若井 暁 神戸大学
長瀬健一 慶應義塾大学
関根秀一 東京女子医科大学
清水達也 東京女子医科大学
金澤秀子 慶應義塾大学
岡野光夫 東京女子医科大学
Seung Jin Lee Ewha Womans University
大和雅之 東京女子医科大学
高橋宗尊 (株)島津製作所
田島健次 北海道大学
小瀬亮太 東京農工大学
石田竜弘 徳島大学
松島得雄 草野作工(株)
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BIO R&D
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食品と神経系の新しい相互作用と腸−脳連関
~経口投与で有効なストレス緩和および意欲向上作用を示す中分子ペプチドの発見~
Novel Interactions Between Foods and the Nervous System via the Gut-brain Communication
膨大な分子種からなる食品成分と生体の相互作用について新しい方法論による解明を目指した。食品タンパク質の酵素消化物の一斉分析情報および構造−活性相関情報 (生理活性を示すペプチドの構造上のルール) を活用し一群の新規ペプチドを発見した。これらの中には10アミノ酸残基前後と比較的分子量が大きいにも関わらず経口投与で医薬品以上の強力な効果を示す場合がある。従来の吸収を前提とした作用機構とは異なり, 腸−脳連関を介した作用であることが明らかとなった。今回, 経口投与で精神的ストレス緩和作用や意欲向上作用を示す大豆や緑葉タンパク質由来ペプチドを中心に紹介する。
【目次】
1 はじめに
1.1 食品タンパク質に由来する生理活性ペプチド研究のはじまり
1.2 食品由来ペプチドの神経系との相互作用
2 構造−活性相関および一斉分析による生理活性ペプチドの効率的探索
2.1 生理活性を示すペプチドの構造上のルール解明
2.2 牛乳由来のストレス緩和ペプチドYLGの発見
2.3 大豆由来のストレス緩和ペプチドβCGα(323−333)の発見
3 腸−脳連関を介した経口投与で有効な機能性ペプチドの発見
3.1 Soy−deprestatin:大豆由来の意欲向上ペプチド
3.2 Soy−ghretropin:大豆由来のグレリン分泌ペプチド
3.3 Lacto−ghrestatin:牛乳由来のグレリン分泌抑制ペプチド
4 環境負荷低減を目指した緑葉の利用
4.1 RuBisCO Anxiolytic−Like Peptides (rALPs) :緑葉由来のストレス緩和ペプチド
5 今後の展望
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ADHDにおける遺伝子と脳画像の関連解析
Imaging Genetics in Children with ADHD
注意欠如・多動症 (ADHD) は不注意・多動性−衝動性を主徴とした神経発達症であり, これまで多くの遺伝子, 脳画像研究が行われてきた。本稿では, それらの研究について簡潔に概説した上で, 近年盛んに行われるようになってきているADHDのimaging genetics (画像遺伝学, 遺伝子と脳画像の関連解析) について, 著者らの研究を中心に紹介する。
【目次】
1 ADHDとは?
2 ADHDの脳画像研究
2.1 脳形態研究
2.2 Task-fMRI研究
2.3 安静時fMRI (resting state fMRI) 研究
3 ADHDの遺伝子研究
4 ADHDにおけるimaging genetics
5 おわりに
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「紙」を利用したその場簡易検査デバイス
Paper-Based Test Strip for Point-Of-Care Diagnostics
高齢化社会の到来に伴い「治療」から「予防」に向けて誰でもその場で手軽に検査が行える技術が望まれている。Point Of Care Testingはセンサの使い捨てが前提となるため, 安価で扱いやすい「紙」を利用した検査技術に対する期待は大きい。本稿では「紙」を利用した最近の診断薬や技術情報, 最先端の研究論文も交えて, その場簡易検査デバイスを実用化していくためのポイントや技術動向について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 簡易な検査デバイスの市場
3 薬毒物検査
4 尿検査
5 先端研究
5.1 紙を利用した化学分析
5.2 統合部材と紙を利用した化学分析
6 まとめ
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加熱で活性型になるバイオサイド
Novel Biocide Activated by Heating
シェールガス・オイル開発で現在も多用されているグルタルアルデヒドは, 生物毒性が高く, 作業者への暴露リスクや安定性の問題点がある。本稿で紹介するグルタルアルデヒド類縁体は安定性が高く, 生物毒性が低いことに加えて, 加熱による加水分解でバイオサイドとして活性型になるユニークな特徴を有している。
【目次】
1 はじめに
2 シェール開発
3 バイオサイド
4 従来型バイオサイド:グルタルアルデヒドの殺生効果と性質
5 新規バイオサイド:グルタルアルデヒド類縁体
5.1 グルタルアルデヒド類縁体の特徴
5.2 グルタルアルデヒド類縁体の殺生効果
6 鉄腐食性微生物に対する効果
6.1 微生物腐食を誘導する微生物
6.2 鉄腐食性微生物の腐食に対する効果
6.3 加熱後薬剤を使用した腐食抑制試験
7 MGTLの特性とバイオサイドしての新用法
8 おわりに
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積層化細胞シートの移植効率向上を目的とした細胞増殖因子徐放ファイバーマットの開発
Cell Growth Factor Releasing Fiber Mats for Effective Transplantation of Stacked Cell Sheets
細胞シート移植における積層化心筋細胞シートでは, 移植可能な心筋細胞シートの積層枚数に限界がある。そこで, 血管内皮細胞増殖因子を徐放するファイバーマットを開発し, 積層化心筋細胞シートと同時に移植すると, 積層化心筋細胞シート内に血管が構築され, 従来よりも多くの積層枚数の心筋細胞シート移植が可能になった。
【目次】
1 はじめに
2 細胞シートの特性
3 細胞増殖因子徐放ファイバーマットによる移植効率化
4 VEGF徐放ファイバーマットによる積層化心筋細胞シートへの血管導入
5 終わりに
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BIO ENGINEERING
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乳房専用PET 装置の開発と今後の期待
Development of Dedicated Breast PET System and the Future Direction
乳がんは女性のがんの中で, 罹患率では第一位, 死亡率では第五位である。しかしその一方で, 早期に発見し早期に治療すれば, 完治する可能性も高い。この20年ほどで急速に普及してきたPET装置は各種がん診断には有効だが, 乳がんの早期診断にはさらに高い解像力が要求される。当社はこれまでの長いPET 開発技術の歴史を基礎として, より性能の高い乳房専用PET 装置を開発したので, ここに概要を紹介する。
【目次】
1 乳がんの背景
2 国内外のPET装置開発の歴史
3 乳房専用PET装置の開発経緯
4 有用性と今後の期待
5 まとめ
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発酵ナノセルロース (NFBC) の大量生産とその医療応用
Large Scale Production of Nano-fibrillated Bacterial Cellulose(NFBC) and Its Medical Application
フルーツから分離したセルロース合成酢酸菌 (Gluconacetobacter intermedius NEDO-01) を用いて発酵ナノセルロース (ナノフィブリル化バクテリアセルロース (NFBC) ) の大量生産を行った。砂糖・糖蜜を原料として200L スケールのジャーファーメンターを用いることにより, 収量5.56g/LでのNFBCの大量生産に成功した。得られたNFBCの医療応用への可能性を調べるために, 胃がん由来腹膜播種に対する腹腔内化学療法への適用を試みた。
【目次】
1 はじめに
2 バクテリアセルロース (BC)
3 酢酸菌におけるセルロース合成
4 発酵ナノセルロース (NFBC) の創製
5 発酵ナノセルロース (NFBC) の大量生産
6 NFBCにおける医療応用の試み
7 まとめ
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《BIO BUSINESS》
脂肪酸工業
Fatty Acid Industry
脂肪酸は脂質を構成するほか, 生体内のエネルギー源にもなる。その工業面での用途は, ゴム工業, 塩ビ安定剤, 金属石けん, 界面活性剤などの多岐にわたっている。わが国の脂肪酸工業は2011年に発生した東日本大震災やそれに続く原子力発電所の稼働停止に加えて, 油糧種子生産国における異常気象の頻発, 原油価格の高騰, 欧州債務危機による世界経済への影響, 円高の長期化などの要因により長く低迷していた。2013年には立ち直りの兆しが見え, 生産, 販売実績ともに大幅な改善を示したが, それ以降はほぼ横ばいで推移している。
【目次】
1 需要概要
1.1 直分脂肪酸, 硬化脂肪酸
1.2 分別・分留脂肪酸
2 輸出入動向
3 原料動向
4 メーカー概要
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《BIO PRODUCTS》
ヨウ素(Iodine)
スクワレン・スクワラン(Squalene・Squalane) -
月刊バイオインダストリー 2018年3月号
¥4,950
<<著者一覧>>
三宅英雄 三重大学
柴田敏行 三重大学
丸山潤一 東京大学
田中知成 京都工芸繊維大学
本田義知 大阪歯科大学
赤平有希 東洋合成工業(株)
山崎ちひろ (株)フェニックスバイオ
石田雄二 (株)フェニックスバイオ
立野知世 (株)フェニックスバイオ
城村友子 東洋合成工業(株)
吉田善一 東洋大学
山科雅裕 ケンブリッジ大学
吉沢道人 東京工業大学
近藤次郎 上智大学
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BIO INDUSTRY
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大型海藻からの希少糖およびマリンポリフェノールの生産
Production of Rare Sugars and Marine Polyphenols from Macro Algae
筆者らは大型海藻バイオリファイナリーを確立するとともに,大型海藻を使った「ものづくり」に関する研究も行ってきた。本稿では,褐藻類から希少糖であるDEHの生産方法やマリンポリフェノールであるフロロタンニン類の生理機能について最新の知見を得たので紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 アルギン酸
3 アルギン酸リアーゼおよびアルギン酸資化微生物の代謝経路
4 DEHの生産
5 褐藻類とマリンポリフェノール(フロロタンニン類)
6 マリンポリフェノール(フロロタンニン類)の生理機能
7 おわりに
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BIO REVIEW
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物質生産における麹菌の分子育種とゲノム編集の可能性
Molecular Breeding and Genome Editing of Koji Mold in Industrial Production
麹菌は,日本の伝統的醸造産業での利用のみならず,酵素や異種タンパク質生産の宿主として用いられ,現在は,天然物の異種生産への利用についても可能性が見いだされている。このような物質生産における麹菌の分子育種は以前より行われてきたが,最新のゲノム編集技術の導入により自由自在な遺伝子改変が可能となり,従来になく効率的な宿主開発が期待される。
【目次】
1 物質生産における麹菌の分子育種
1.1 液胞タンパク質ソーティングの改変
1.2 オートファジー機能の欠損
1.3 小胞体-ゴルジ体間における糖分泌タンパク質の積み荷受容体の欠損
1.4 異種タンパク質高生産に関わる機能未知細胞質因子の発見
2 ゲノム編集技術による麹菌の育種の効率化
2.1 ゲノム編集技術による変異導入の高効率化
2.2 ゲノム編集による多重遺伝子変異導入技術の確立
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カテキン結合ゼラチンスポンジ:水中での合成と骨再生医療への応用
Catechin-modified Gelatin:Synthesis in Water and Application to Bone Regeneration Therapy
再生医療領域における緑茶カテキンの応用例はいまだ乏しい。近年筆者らは,緑茶カテキンの一種である(-)-エピガロカテキンガレート(EGCG)を水中での脱水縮合反応によってゼラチンに結合し,EGCG結合ゼラチンスポンジ(EGCG-GS)を新たに開発した。得られたEGCG-GSは,マウス骨再生試験で顕著に骨形成を促進し,新規骨再生材料となりうる潜在性を示した。
【目次】
1 はじめに
2 カテキン
3 ゼラチン
4 水中でのカテキン結合ゼラチンスポンジの合成
5 EGCG結合ゼラチンの骨再生材料としての機能評価
6 おわりに
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BIO R&D
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新規ready-to-useヒト肝細胞三次元培養システム「PXB-able TM」の有用性の検討
Evaluation of Utility of Novel Ready-to-Use Human Hepatocyte 3D Culture System“PXB-ableTM”
【目次】
1 はじめに
1.1 肝毒性評価のためのin vitroモデル
1.2 三次元培養プレート Cell-able(R)
1.3 PXB-cells(R)
1.4 PXB-able TM
2 PXB-able TMにおける肝特異的機能維持,および他の培養系との活性値の比較
2.1 PXB-able TMの肝特異的機能維持
2.2 PXB-able TMと他の肝細胞培養系との活性値の比較
3 PXB-able TMと凍結ヒト初代肝細胞培養系における,CYP酵素誘導活性の経時変化比較
4 PXB-able TMにおける肝特異的微細構造の構築
5 まとめ
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低侵襲マイクロニードルデバイスの開発
Minimally Invasive Microneedle
いつでもどこでも誰でもが自宅で血液検査ができるシステムを目指して,数cm角のマイクロチップ上に流体デバイスを集積化するマイクロ生化学システムの開発を行っている。マイクロ生化学チップの様々な研究の中から,樹脂ラミネートを応用した微細針(マイクロニードル)付き採血デバイスと重力利用送液・計測デバイスを紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 μTASの作成方法
3 樹脂・金属フィルムハイブリッド型マイクロニードル
4 その他のμTAS
4.1 血球整列機構と血球計数
4.2 血球・血漿分離
4.3 赤血球変形能検査のための疑似毛細血管
5 今後の展開
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分子カプセルを活用した水中での糖分子の識別
Selective Recognition of Saccharides by a Molecular Capsule in Water
生体内のタンパク質ポケットは,水中で親水性の糖分子を厳密に識別できる。これまでに糖分子と結合する人工の分子レセプターは数多く開発されてきたが,その大部分は有機溶媒中での使用に限られ,水中で特定の糖を分子レベルで識別することは極めて困難であった。著者らは最近,同グループが開発した分子カプセルを活用することで,身近な糖分子のショ糖(=D-スクロース)を水中で,高選択的に内包できることを見出した。また,人工の糖分子(アスパルテームなど)のより強い内包にも成功した。本稿では,これらの実験結果の詳細とその識別の仕組みについて解説する。
【目次】
1 はじめに
2 分子カプセルの構造と性質
3 分子カプセルによる単糖分子の内包
4 分子カプセルによる二糖分子の内包
5 分子カプセルによる人工糖分子の内包
6 おわりに
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立体構造解析に基づく核酸医薬品設計技術
Methods for Structure-Based Design of Nucleic Acid Medicine
核酸医薬品の開発がこれまでにない盛り上がりを見せている。この流れをさらに加速させ,難治性疾患患者に希望を与える新しい治療の選択肢としての地位を確立させるためには,従来の創薬手法にプラスアルファが必要である。そのひとつの可能性として,本稿では立体構造解析に基づく核酸医薬品の設計を提案する。
【目次】
1 はじめに
2 核酸のX線結晶解析の現状
3 核酸のX線結晶解析手法
4 核酸医薬品のStructure-Based Design
4.1 アンチセンス核酸医薬品のStructure-Based Design
4.2 アプタマー医薬品のStructure-Based Design
5 おわりに
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《BIO BUSINESS》
芳香・消臭・脱臭剤工業
Market Trend of Parfume and Deodorant Industry
【目次】
1 概要
2 種類・素材など
2.1 天然系
2.2 無機系
2.3 触媒系
2.4 オゾン系
3 市場動向
3.1 室内用
3.2 トイレ用
3.3 衣料用
3.4 自動車用
3.5 冷蔵庫用
4 主な企業動向
4.1 小林製薬
4.2 エステー
4.3 パナソニックエコソリューションズ化研
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《BIO PRODUCTS》
レシチン(Lecithin) -
月刊バイオインダストリー 2018年2月号
¥4,950
<<著者一覧>>
夏地智之 三井化学(株)
冨田峻介 (国研)産業技術総合研究所
長田直人 金沢大学
太田嗣人 旭川医科大学
有賀 純 長崎大学
岡本尚一 (株)オーガンテクノロジーズ
手塚克成 (株)オーガンテクノロジーズ
小川美帆 (株)オーガンテクノロジーズ
豊島公栄 (株)オーガンテクノロジーズ
木村 駿 (国研)理化学研究所
土屋綾子 (国研)理化学研究所
辻 孝 (国研)理化学研究所
金勝一樹 東京農工大学
大島光宏 奥羽大学
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BIO REVIEW
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三井化学のバイオファクトリー(BioFactory)
BioFactory by Mitsui Chemicals
三井化学は2017年4月, 有用物質製造のための酵素開発を受託研究するサービスを開始した。酵素を用いた製造法は, 反応選択性が高いという利点を持つため, 官能基を多く有する化合物や光学活性体の合成に特に適している。当社の酵素技術の利用機会が新たに生まれ, 産業界へ更なる貢献ができることを期待している。
【目次】
1 はじめに
2 L-アミノ酸にはじまる酵素技術の歴史
3 バイオファクトリー
4 事業化例
5 おわりに
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BIO R&D
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タンパク質の特徴パターンを出力できる分子群を用いた生体試料センシング
Sensing of Biological Samples Using Groups of Molecules Capable of Generating Characteristic Patterns of Proteins
抗原抗体反応のような, “特異性”にもとづくタンパク質センシングにおいて, 標的以外の様々なタンパク質と相互作用する“交差反応性”は, 通常, 望ましくない性質である。筆者らは最近, 交差反応的な分子がもつ特性をうまく活かすことで, タンパク質や生体試料に固有の“特徴パターン”を取得できる方法を開発し, これを利用して, ヒトの認識機能を模倣した新しいタンパク質センシングを実現してきた。本稿では, 本手法の原理を概説し, 次いで筆者らの最近の成果を紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 ヒトの認識機能を模倣する
3 タンパク質の物理的変化の評価
4 タンパク質の化学的変化の評価
5 タンパク質組成の評価
6 まとめ
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スルフォラファンの肥満抑制効果
Anti-obesity Effect of Sulforaphane
既存の抗肥満薬は, 食欲抑制や消化管の脂肪吸収阻害等, エネルギー摂取を低下させる作用が主であり, 抑うつや下痢等の副作用が少なくない。ゆえに現在, エネルギー消費を増大させ, 肥満を抑制する新たな薬物や食品因子が求められている。本稿では, ブロッコリーの新芽(スプラウト)に多く含まれるスルフォラファンの肥満抑制効果について, 著者らの研究成果を紹介する。
【目次】
1 スルフォラファンとその標的-生体防御機構Nrf2-Keap1系
2 スルフォラファンの抗肥満効果
3 エネルギー消費器官としての脂肪細胞
4 スルフォラファンの腸内細菌叢への作用
5 Nrf2活性化薬の現状
6 まとめ
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LRRシナプスオーガナイザーと神経発達障害
LRR Synapse Organizers and Neurodevelopmental Disorders
脳神経系に発現するロイシンリッチリピートを含む膜タンパク質の多くは, シナプス形成や機能成熟に重要な役割を持つことが明らかになってきた。これらはシナプス前部と後部間でのトランス相互作用, 足場タンパク質との結合を介して, シナプスの形成誘導や安定性の維持などを担っており, その機能異常は神経発達障害の原因となる可能性が示されている。
【目次】
1 はじめに
2 ロイシンリッチリピート(LRR:Leucine-rich repeat)シナプスオーガナイザー
3 LRFN2と発達障害
3.1 Lrfnファミリー
3.2 Lrfn2欠損マウスの症状
3.3 Lrfn2のシナプス成熟における役割
3.4 LRFN2変異と神経疾患
4 その他のLRRシナプスオーガナイザーと神経疾患との関わり
4.1 LRRTM1と統合失調症
4.2 SLITRKファミリーと神経疾患
4.3 ELFN1とてんかん・多動症
5 おわりに
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機能性評価に向けた次世代三次元人工皮膚モデルの開発
Development of Next Generation 3D Skin Model; “Advanced SkinTM”, for the Evaluation of both Functional Materials and Cosmetic Products
ヘルスケア製品の安全性評価に向けて動物実験に替わる生体外人工皮膚モデルが開発されてきた。一方, 科学的エビデンスのあるヘルスケア製品や医薬品開発に向けて, 成分の機能や有効性の評価, 疾患皮膚モデルにおける医薬品の探索や評価に利用可能な, 天然の皮膚と同様な反応を示す生体外三次元培養人工皮膚モデルに対するニーズが高まってきている。本稿では, 私たちが世界に先駆けて開発した機能性評価用の三次元皮膚モデル「Advanced SkinTM」の機能, 今後の展開について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 動物実験代替法としての人工皮膚のニーズ
3 人工皮膚の発展と期待される機能性評価
4 機能評価に向けた人工皮膚の開発
5 今後の展開
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BIO ENGINEERING
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水稲種子の温湯消毒時の高温耐性の向上
Improvement of Tolerance to Heat Stress during Hot Water Disinfection of Rice Seeds
水稲種子の温湯消毒法は, 農薬を用いないクリーンな技術である。しかしながらこの消毒法では防除が困難な病害があることや, 種子の高温耐性が弱くこの消毒法を適用しにくい品種もある。私たちは, 簡単な処理で種子の高温耐性を強化できる方法を見出し, 防除効果の高い高温での消毒を可能にする技術を開発した。その技術について解説する。
【目次】
1 はじめに
1.1 農薬を使用しない種子消毒法―温湯消毒とは?―
1.2 温湯消毒技術の抱える課題
2 イネ種子の高温耐性を向上させる技術
2.1 育種技術による種子高温耐性の強化
2.2 育種的な改良を経ずに高温耐性を強化することの重要性と可能性
3 簡単な方法で種子の高温耐性を強化できる
3.1 種子の水分含量を低下させた時の高温耐性
3.2 事前乾燥処理を行えばモチ米も温湯消毒できる
3.3 新技術の生産現場における検証
4 事前乾燥法を組込んだ高温での温湯消毒の実用化と普及に向けて
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マイクロRNAによる歯周炎診断
Diagnosis of Periodontitis using microRNA
近年, 血液を始めとする様々な体液にマイクロRNA(miRNA)が含まれることが明らかとなり, がんなどの診断に応用が検討されている。筆者は, これまで生物学的な方法が用いられてこなかった歯周炎の診断と治療の評価に, 歯肉溝滲出液中のmiRNAが有用ではないかと考えpilot studyを行ったので解説する。
【目次】
1 はじめに
2 マイクロRNA(miRNA)とは
3 miRNAアレイによるマーカー候補のプロファイリング
4 カスタムPCRパネルによる診断
5 将来像
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《BIO BUSINESS》
再生医療用基礎培地の組成物質
Constitusion of Basic Culture Medium for Regenerative Medicine
【目次】
1 はじめに
2 培地と添加剤
3 ゼラチン
4 コラーゲン
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《BIO PRODUCTS》
ラミニン(Laminin)
ケラチン(Keratin)
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月刊バイオインダストリー 2018年1月号
¥4,950
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笹澤有紀子 順天á