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  • 2015/04/12

月刊バイオインダストリー 2015年4月号

シーエムシー出版

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【特集】口腔環境と全身疾患の関係

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特集に際して
Introduction
落合邦康 (日本大学)

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口腔レンサ球菌と全身疾患
Oral Streptococci and Systemic Disease
高橋幸裕 (日本歯科大学)
田代有美子 (日本歯科大学)
古西清司 (日本歯科大学)

 口腔レンサ球菌は口腔常在菌叢において最も優勢な細菌群である。本総説では, 口腔レンサ球菌と全身疾患との関連性, 特に歯性菌血症と感染性心内膜炎について概説する。さらに, 口腔レンサ球菌のシアル酸結合性アドヘジン(Hsa)について, 感染性心内膜炎の動物実験の結果などの知見を交えて, Hsaの機能とその病原性について解説する。
【目次】
1. はじめに
2. 口腔感染症と全身疾患
3. 口腔レンサ球菌と全身疾患
3.1 歯性菌血症
3.2 感染性心内膜炎
4. 感染性心内膜炎における口腔レンサ球菌の病原因子
4.1 口腔レンサ球菌Hsa アドヘジンの構造と機能
4.2 口腔レンサ球菌Hsa アドヘジンの分子生物学的役割
4.3 感染性心内膜炎における病原性
5. おわりに

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口腔内細菌と誤嚥性肺炎および人工呼吸器関連肺炎
Oral Microbiota Connected with Aspiration and Ventilator Associated Pneumonia
山下喜久 (九州大学)

 健常者の肺炎発症には特定の病原細菌が関連するが, 健康状態が必ずしも良好でない高齢者では, 普段は特に病原性が問題にならない常在細菌が健康に影響を及ぼす。口腔ケアが高齢者の肺炎予防に有効であるとの概念もこのような考えに立っている。本稿では, 口腔のケアを手段と目的に沿って4つに分類して, 高齢者に多い誤嚥性肺炎と人工呼吸器関連肺炎の予防に必要な口腔ケアについて考察した。
【目次】
1. はじめに
2. 肺炎と口腔細菌
2.1 誤嚥性肺炎
2.2 人工呼吸器関連肺炎
2.3 高齢者の肺炎と口腔細菌
3. 誤嚥性肺炎および人工呼吸器関連肺炎に対する口腔ケアの予防効果
3.1 口腔ケア
3.2 口腔ケアと肺炎の予防
4. おわりに

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口腔内細菌と自己免疫疾患
Oral Bacteria and Autoimmune Diseases
菊池賢 (東京女子医科大学)

 原発性胆汁性肝硬変(primary biliary cirrhosis : PBC)は更年期以降の中年女性に好発する原因不明の自己免疫疾患である。その自己抗体のエピトープは pyruvate dehydrogenasecomplex E2 component(PDC-E2) であるが, 分子相同性(molecular mimic)の原因微生物は未だに明らかになっていない。筆者らは, PBCの発症に Streptococcus intermedius が関与することを見出した。本菌をマウスに投与すると, PBCに酷似した小胆管周囲の慢性非化膿性炎症が起こることがわかった。このマウスのT細胞をヌードマウスに移植することで同様の小胆管周囲の慢性非化膿性炎症が再現された。近年, 核膜タンパク質gp210に対する自己抗体がPBC進行に寄与することが明らかになっているが, このエピトープが本菌の histone-like protein に保存されていた。本稿ではこれまでに取り組んできたPBCと S. intermedius の関係について, 紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. Streptococcus intermedius とはどのような細菌なのか
3. 原発性胆汁性肝硬変とはどのような疾患か
4. ヒトPBC病変と S. intermedius の関係
5. おわりに

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口腔内細菌とインフルエンザ
Relationship between Oral Bacteria and Influenza Virus
神尾宜昌 (日本大学)
今井健一 (日本大学)
落合邦康 (日本大学)

 最近, 筆者らは口腔内細菌が産生するノイラミニダーゼがインフルエンザウイルス感染を促進し, 抗インフルエンザ薬の効果を低下させる可能性を明らかにした。本稿では, この研究成果を中心に, 専門的口腔ケアがインフルエンザ対策において有効な手段であることを紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. インフルエンザウイルスの分類と構造
3. インフルエンザによるパンデミック
4. インフルエンザウイルスのライフサイクル
5. インフルエンザと細菌感染
6. 口腔内細菌がインフルエンザウイルスの放出に及ぼす影響
7. 口腔内細菌が抗インフルエンザ薬の効果に及ぼす影響
8. 口腔ケアがインフルエンザ発症に及ぼす影響
9. おわりに

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口腔感染症とウイルス疾患
Microbial Interaction between Oral Bacteria and Viruses
今井健一 (日本大学)
落合邦康 (日本大学)

 ウイルス性肝炎やエイズに加え, 新型インフルエンザやデング熱, さらにはエボラ出血熱など新たなウイルス感染症が世界的な脅威となるばかりでなく, 我が国においても大きな問題となっている。歯周病と様々な全身疾患との関連性が明らかとなる中, 筆者らは, 歯周病原菌が大量に産生する“酪酸”が, エピジェネティック制御を介して潜伏感染HIVやEBVを再活性化することを見出し, 歯周病がウイルス感染症の進展にも広く影響を及ぼしている可能性を示した。また, これまで細菌感染症と考えられてきた歯周病の発症においても, 細菌とウイルスの負の連鎖が重要な役割を担っていることが明らかになりつつある。病原性発現における「細菌-ウイルスの微生物間相互作用」という新たな視点に立った感染症の病態の理解が新しい治療と予防法の開発につながると期待される。
【目次】
1. はじめに
2. HIVとEBVの潜伏感染
3. エピジェネティック制御によるウイルス潜伏感染維持機構
4. 歯周病原菌による潜伏感染HIVの再活性化
5. 歯周病によるエイズ進展の可能性
6. 腸管と女性生殖器に常在する酪酸産生菌による潜伏HIV再活性化
7. 酪酸によるHIV活性化メカニズム
8. 歯周病の発症と進展における細菌-ウイルスの相互作用
9. おわりに

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口腔微生物とがん
Oral Microorganisms and Cancer
宮崎裕司 (明海大学)
菊池建太郎 (明海大学)
草間薫 (明海大学)

 口腔内には多数の常在菌やウイルスが存在するが, それらの関与により様々な疾患が引き起こされることがこれまでの研究によって示されている。本稿では, 口腔内微生物, 特に歯周病原性細菌やウイルスと発がん・がん進展との関連を中心に述べる。
【目次】
1. はじめに
2. 歯周病原性細菌とがん
2.1 歯周病原性細菌が産生する短鎖脂肪酸
2.2 酪酸と口腔がん進展
2.3 歯周病と他臓器のがん
3. う蝕とがん
4. 他の口腔内微生物とがん
5. おわりに

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歯周病とメタボリックシンドロームとの関連性
Association between Periodontitis and Metabolic Syndrome
前野正夫 (日本大学)
森田十誉子 ((公財)ライオン歯科衛生研究所)

 近年, 歯周病とメタボリックシンドロームの各指標(肥満, 高血圧, 高血糖, 血中の脂質異常)とは密接に関連しており, 深い歯周ポケットを有する人は将来メタボリックシンドロームの発症リスクが高いことが疫学研究によって示された。本稿では, 筆者らが行った疫学研究結果を基に歯周病とメタボリックシンドロームとの関連性について紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. 歯周病
2.1 歯周組織の正常と異常
2.2 歯周病とは
2.3 細菌感染に対する生体防御のしくみ
2.4 歯周病が原因で歯が抜ける現象も生体防御のしくみなのか?
3. メタボリックシンドローム
4. 歯周病とメタボリックシンドローム
4.1 歯周病とメタボとの関連性を探る疫学研究
4.2 歯周ポケット保有とメタボ指標との関連性
4.3 歯周ポケット保有者は将来メタボになりやすいのか?
4.4 歯周病とメタボの関連性
5. おわりに

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歯周病と糖尿病
Periodontitis and Diabetes Mellitus
山下明子 (九州大学病院)
西村英紀 (九州大学大学院)

 歯周病は糖尿病の第6の合併症と言われている。近年, 重度歯周病が全身性に軽微な炎症を惹起し, 糖尿病そのものの病態に影響を及ぼすことが明らかになった。本稿では, 歯周病治療介入が糖尿病へ及ぼす影響を近年の疫学研究の結果を中心に紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. 歯周病と糖尿病
3. HbA1cは重度歯周病によって悪化する
4. 糖尿病患者において重度歯周病で全身性に炎症が惹起される想定機序
5. 動脈硬化と歯周病
6. おわりに

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歯周病と動脈硬化
Periodontal Disease and Atherosclerosis
落合智子 (日本大学)

 近年の研究から炎症性疾患・歯周病と冠動脈疾患との関連性が報告されている。本稿では歯周病原菌で促進される動脈硬化プラーク形成における炎症性メカニズムや酸化変性メカニズムに焦点を当て解説したい。さらに粘膜ワクチンや抗炎症因子が歯周病原菌で増悪される動脈硬化を制御できるか否かを考察する。
【目次】
1. はじめに
2. 歯周病と全身疾患との関連性
3. 動脈硬化進展における歯周病原菌感染の役割
4. 血管内皮細胞の活性化
5. Toll様受容体およびNod様受容体を介した応答
6. 酸化ストレス介在性メカニズム
7. 高脂血症誘導性動脈硬化
8. 粘膜ワクチンによる動脈硬化の予防
9. 抗炎症因子を用いての動脈硬化の制御
10. おわりに

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≪BIO R&D≫
タンパク質-磁性粒子複合体の in vivo 合成と創薬への展開
Production of Magnetic Particle Displaying Functional Protein Complexes toward Drug Screening
吉野知子 (東京農工大学)
本多亨 (東京農工大学)

 医薬品の開発において, 膨大な化合物ライブラリーから標的タンパク質に結合する化合物を高効率に探索することは創薬の低コスト化, 時間短縮において重要なプロセスである。本稿では, 菌体内にマグネタイトのコアを持つ磁性粒子を生合成する磁性細菌を用いた, 効率的なタンパク質-磁性粒子複合体の生産と創薬への展開について紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. マグネトソームディスプレイ技術
2.1 標的タンパク質発現制御システムの構築
2.2 磁性細菌のゲノム改変による標的タンパク質のディスプレイ量の向上
2.3 標的タンパク質のペリプラズム発現による機能向上の取り組み
3. 創薬スクリーニングに向けたタンパク質-磁性粒子複合体の創出
4. おわりに

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TOPICS
ヨーグルト中の乳酸菌を生きたまま分離する
Separation of Lactic Acid Bacteria from Fermented Milk
西野智彦 (東京工科大学)

 生きた乳酸菌を含むヨーグルトは, 希釈して遠心分離を行っても乳成分が菌体とともに沈降するため乳酸菌菌体の分離が難しい。そのことが影響するためかヨーグルト中の乳酸菌の挙動に関する研究例は少ない。本稿では, 密度勾配遠心分離法を用いてヨーグルトから生きた乳酸菌を分離する方法について説明する。
【目次】
1. はじめに
2. 密度勾配遠心分離
3. 微生物細胞の浮遊密度
4. 脱脂粉乳培地からの菌体分離
5. 培養終期における回収率の低下
6. 今後の展望