商品詳細

  • シーエムシー出版
  • ¥4,950
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  • 2019/07/12

月刊バイオインダストリー 2019年7月号

シーエムシー出版

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北本 大 (国研)産業技術総合研究所
森田友岳 (国研)産業技術総合研究所
福岡徳馬 (国研)産業技術総合研究所
山本周平 東洋紡(株)
曽我部 敦 東洋紡(株)
八代 洵 アライドカーボンソリューションズ(株)
司馬俊士 アライドカーボンソリューションズ(株)
平 敏彰 (国研)産業技術総合研究所
柳澤恵広 (株)カネカ
井村知弘 (国研)産業技術総合研究所
白米優一 高知大学
芦内 誠 高知大学
大野裕和 丸善製薬(株)
春見隆文 (一財)日本醤油技術センター
押村英子 味の素(株) 
西川禎一 大阪市立大学
谷本佳彦 兵庫医科大学
中台(鹿毛)枝里子 大阪市立大学
 
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【特集】機能性バイオ素材の最前線;バイオサーファクタントから食品まで

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特集にあたって
Introduction

 最近,持続可能な開発目標(SDGs)やバイオエコノミー,海洋プラスチック問題などを背景に,改めてバイオ素材開発への期待が高まってきている。これまでも温室効果ガス排出量や石油使用量の削減を目指して,バイオリファイナリー戦略に代表される多くの研究が世界中で進められてきた。一方,バイオプロセスで製造される機能性バイオ素材の多くは,石油化学品にはない構造と機能を持っており,より付加価値の高い製品開発が期待できる。例えば,様々な産業分野で利用される界面活性剤は,乳化・分散,洗浄,起泡・消泡など多様な機能を発揮する化学品として,日常生活のあらゆるシーンで活躍しているが,実用されているほとんどは石油由来の合成品である。これに対して,最近,微生物が生産するバイオサーファクタントの開発が進展し,詳細は本特集の記事で紹介されるが,我が国の企業が中心となって,石油化学品にはない特性を巧みに利用した製品開発が進められている。また機能性バイオ素材は,食品分野への応用が盛んで,既に多くの製品が製造されている。
 本特集では,上述のバイオサーファクタントのうち,糖型バイオサーファクタント(マンノシルエリスリトールリピッド)について森田ら,糖型バイオサーファクタント(ソホロリピッド)について八代らに,ペプチド型バイオサーファクタントについては井村らに概説して頂く。さらに,アルギニン系界面活性剤について押村らに紹介して頂く。また,納豆のネバネバとして広く知られるポリγグルタミン酸の展開について芦内らに概説して頂く。食品分野からは,加工食品や飲料に使用されるキラヤサポニンについて大野らに,エリスリトールについては春見らに紹介して頂く。
 以上,機能性バイオ素材の開発事例のほんの一部にすぎないが,本特集は,その生産から用途展開,さらに製品化例まで幅広い内容となっている。これらの総説が,機能性バイオ素材の研究と産業利用の進展に寄与するとともに,読者の皆様のご研究・開発の一助となれば幸いである。

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糖型バイオサーファクタント(1)マンノシルエリスリトールリピッド
Glycolipid Type of Biosurfactant, Mannosylerythritol Lipids

 マンノシルエリスルトールリピッド(MEL)は,酵母が生産する糖型バイオサーファクタントであり,優れたスキンケア特性を有することから化粧品への応用が進んでいる。本稿では,MEL の構造,生産技術,および多様な機能性について概説する。

【目次】
1 マンノシルエリスリトールリピッド
2 生産技術
3 物性・機能
3.1 界面物性
3.2 自己集合特性
3.3 MEL水溶液の展着性
3.4 生物農薬用展着剤へのMELの適用
3.5 保湿効果
3.6 損傷毛修復効果
3.7 抗酸化作用
4 用途展開
5 最後に

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糖型バイオサーファクタント(2)ソホロリピッド
Saccharide Type Biosurfactant(2) Sophorolipids

 ソホロリピッドは酵母が生産する糖脂質型バイオサーファクタントで,その生産性の高さ,及び天然物らしい構造・物性の多様性や特徴から,幅広い機能及び用途の展開が考えられる。本稿では生産技術の発展,機能の多様性,及び用途について,特に用途は最近注目度が増している生理活性機能を利用する用途を主として概説する。

【目次】
1 ソホロリピッドとは
2 生産技術
3 物性・機能
4 用途展開
4.1 水質・土壌汚染除去(藻類・油・農薬・重金属・放射能汚染 等)
4.2 石油三次回収(Enhanced Oil Recovery)
4.3 洗剤用途
4.4 化粧品・医薬用途
4.5 農業用途
4.6 畜産用途
5 最後に

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ペプチド型バイオサーファクタント『サーファクチン』の機能と用途展開
Function and Application of Petide-based Biosurfactant, Surfactin

 7 つのd, L-アミノ酸からなる環状ペプチド骨格を特徴とする枯草菌由来のバイオサーファクタント『サーファクチン』について,そのユニークな分子構造と,これに起因するバイオ素材としての多様な機能について概説する。さらに,サーファクチンの環境調和性と機能性を活用した新しい化粧品や洗浄プロセスへの応用についても紹介したい。

【目次】
1 はじめに
2 サーファクチンの構造・物性・機能
2.1 構造・生産
2.2 環境調和性
2.3 界面活性
2.4 自己集合特性
3 サーファクチンの用途展開
3.1 洗剤としての用途展開
3.2 化粧品としての用途展開
4 おわりに

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アーキアポリγグルタミン酸の新用途開発
Novel Applications of Archaeal Poly-γ-Glutamate

 ポリγグルタミン酸(PGA)は,健康美容や医療分野での利用に加え,環境先進型の機能性バイオ材料としても注目されている。本稿では,アーキアPGA のレアメタルイオン吸着能について詳解するとともに,本新素材から開発された水質浄化(除菌)担体にも触れる。
 
【目次】
1 はじめに
2 レアメタルイオン吸着試験
2.1 ホモキラルL-PGAの分離と定量
2.2 4-(2-pyridylazo)resorcinol(PAR)を用いたレアメタルイオン検量線
2.3 ホモキラルL-PGAのレアメタルイオン吸着能
3 L-PGAベースバイオプラスチックを利用した除菌担体の除菌試験
3.1 L-PGAのバイオプラスチック化
3.2 除菌担体の開発
3.3 汚染水モデル
3.4 PGAIC-ACの抗菌能評価試験

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キラヤ抽出物の乳化特性と食品用途について
Emulsibility and Food Applications of Quillaja Extract

 食品用乳化剤としてユニークな特徴を有している「キラヤ抽出物(キラヤサポニン)」について,その基本特性,物理特性および食品用途について紹介する。

【目次】
1 はじめに
2 サポニンとは
3 キラヤ抽出物の基本特性
4 物理特性
4.1 表面張力および電気伝導度
4.2 乳化力
4.3 起泡力
5 食品用途
6 おわりに

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酵母がつくる機能性糖質,エリスリトール
Erythritol, a Unique Polyol Produced by Yeast-like Fungus

 希少な糖質であるエリスリトールを生成する酵母を発見,改良を加えて大量生産法を開発した。エリスリトールは人の体内で消化吸収されないなど,特異な機能性を有しており,食品,医薬品,化粧品などへの利用が広がっている。酵母におけるエリスリトールの生成機構と生理的意義,新たな石油代替化成品原料としての用途
開発等とも合わせ,紹介する。

【目次】
1 エリスリトール生産菌の分離と育種・改良
1.1 生産菌の探索・分離
1.2 菌の育種・改良とエリスリトールの発酵生産
2 エリスリトール生成の代謝系と浸透圧ストレス応答
2.1 エリスリトール生成に関わる酵素系
2.2 浸透圧ストレス応答とHOG経路
3 エリスリトールの特性と用途開発
3.1 食品への用途
3.2 医薬品・化粧品用途
3.3 化成品用途

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アルギニン系界面活性剤の開発と展開
Development and Application of Ariginine-based Surfactants

塩基性アミノ酸の一種アルギニンは,発酵法により製造される。1 つのアニオン性官能基と2 つのカチオン性官能基を有し,これらを生かして様々なタイプのイオン性界面活性剤として利用することが可能である。本稿では,パーソナルケア用素材として開発された4 種類の界面活性剤の特徴と用途を紹介する。

【目次】
1 はじめに
2 アルギニンの特長
3 アルギニン系界面活性剤
3.1 概要
3.2 脂肪酸アルギニン塩(AR)
3.3 アシルアルギニン(LAH)
3.4 アシルアルギニンエステル(CAE)
3.5 アルキルエーテル化アルギニン(12?HEA)
4 おわりに

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BIO R&D

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炎症応答を抑える大腸菌:プロバイオティクスの新メンバー?
Escherichia Coli That Can Suppress Inflammatory Responses: Novel Probiotic Bacteria?


 分散接着性大腸菌(DAEC)と呼ばれるグループがある。その病原性を検討する中で,健康者が保有するDAECは下痢症患者のDAECとは異なり,上皮細胞による炎症性サイトカインの合成を抑制して炎症応答を抑制する可能性があることを発見した。その経緯と,本菌を世界でも希少な大腸菌プロバイオティクスあるいは新しい抗炎症剤創薬の資源とする可能性について論じる。

【目次】
1 はじめに
2 発見の経緯
3 上皮細胞内で炎症応答を抑制する機構
3.1 シグナル伝達経路とmRNAの転写抑制
3.2 合成されたタンパク質の細胞内輸送と細胞外分泌の抑制
3.3 分泌された炎症性サイトカインの細胞外での分解の亢進
3.4 小胞体ストレスによる炎症性サイトカイン合成の抑制
4 サイトカイン合成を抑制する菌の因子
4.1 細胞接着性
4.2 炎症抑制の臨界期
4.3 VI型分泌装置(Type 6 Secretion System;T6SS)
5 プロバイオティクスあるいは創薬資源としての応用と今後の課題
5.1 In vivo試験
5.2 他のシグナル伝達系への影響
5.3 尿路病原性
5.4 生体防御への影響
6 おわりに

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《BIO PRODUCTS》
カプロン酸(Caproic acid)