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月刊バイオインダストリー 2021年1月号
¥4,950
<著者一覧>
矢澤一良 早稲田大学
孫 輔卿 東京大学
飯島勝矢 東京大学
葛谷雅文 名古屋大学
鈴木隆雄 桜美林大学
大澤俊彦 愛知学院大学
長竹貴広 (国研)医薬基盤・健康・栄養研究所
國澤 純 (国研)医薬基盤・健康・栄養研究所
山口浩平 東京医科歯科大学
戸原 玄 東京医科歯科大学
香川靖雄 女子栄養大学
功刀 浩 帝京大学
田中友規 東京大学
安藤 進 IMS グループ クローバーのさと
大渕修一 (地独)東京都健康長寿医療センター研究所
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【特集】抗フレイルと予防医学
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抗フレイルと予防医学~特集にあたって~
Anti-Frail for Preventive Medicine
1 はじめに
2 ロコモティブシンドロームからフレイルへ
3 ロコモ,フレイル対策としての運動系・抗疲労系機能性食品素材の有効活性
4 抗疲労系機能性食品と「筋肉・脳相関」
5 おわりに
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フレイル対策の実践
Combined Practces for Frailty Prevention
フレイルは健康状態と要介護状態の中間的な段階であり,可逆性があるため,適切なタイミングでの予防・対策により健康な状態に戻れる概念である。フレイル予防・介入には,「運動」「栄養・口腔」,「社会参加」の3 本柱が重要とされている。そのなか,「運動」と「栄養・口腔」は身体的フレイルの予防・介入の中核となる。加齢による骨格筋量の減少や食欲不振による慢性的な低栄養は相互に影響し,さらに悪循環となり,心身機能の低下を加速させることからもサルコペニアと低栄養に対する予防・介入はフレイル予防対策の大きな部分を占めている。現在,フレイルの予防・介入策は確立されているとは言い難いが,アジア太平洋のフレイル管理の診療ガイドラインでは,フレイル管理の原則として,「フレイルはサルコペニアと重複する。そのため管理の原則は両者間で同一になりうる」と述べられている。日本サルコペニア・フレイル学会の「サルコペニア診断ガイドライン2017 年版」においても,栄養と運動がサルコペニアの発症を予防・抑制できるかについて,強く推奨すると示している(表)。
実際,フレイル高齢者における運動や栄養の介入効果については多数報告されている。「運動」や「栄養」単独の効果だけではなく,組み合わせによる増大効果(augment effect)に関してもランダム化介入試験などによる検討が行われ,効果検証されるようになってきた。このような動向からも,フレイルの予防・介入策は「運動」,「栄養・口腔」,「社会参加」をどのように組み合わせて,相乗効果をもたらすか,また続けられる組み合わせはなにかが重要になっている。最近の知見をあげながら,その組み合わせの例を紹介する。
【目次】
1 運動:種類の組み合わせ効果
2 栄養:運動や口腔との組み合わせ効果
3 ウイズ・ポストコロナ社会における「社会参加」の創意工夫
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フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドロームの概念
The Concept of Frailty, Sarcopenia, and Locomotive Syndrome
フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドロームは昨今健康寿命延伸との関連性で良く聞かれるタームである。ただ,それぞれの正確な定義,診断法などは意外と周知されていない。本章ではそれぞれの概念,診断,相違点,地域高齢者の有病(症)率などについて言及する。
【目次】
1 はじめに
2 フレイルの概念
3 サルコペニア
4 ロコモティブシンドローム(運動器症候群)
5 フレイル,サルコペニア,ロコモティブシンドロームとの相互関係
6 さいごに
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フレイルと認知症
Frailty & Dementia
わが国の超高齢社会における高齢者の健康の大きな課題となっているフレイルと認知症について両者の概念,疫学的データを述べた。特に認知的フレイルの特徴や,認知症の前段階とも考えられる軽度認知障害(MCI)における認知症予防対策に関する科学的根拠の構築状況についても実験例を中心として紹介した。
【目次】
1 フレイルと予防対策
2 認知的フレイルについて
3 認知症予防としての軽度認知障害の重要性
4 BDNFと脳機能
5 わが国の地域在宅高齢者を対象としたBDNFに関する研究の紹介
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フレイルとフリーラジカル障害
Frailty and Free Radical Damage
高齢期では加齢に伴ない「フリーラジカル・活性酸素」の過剰な産生が「酸化ストレス障害」を生じ,「フレイル」の大きな原因となっている。本稿では,「酸化ストレス障害」のメカニズムを概説し,「植物エクオール」や「アスタキサンチン」,「レモンフラボノイド」などの「抗酸化物質」による「フレイル」予防の可能性を紹介する。
【目次】
1 「フレイル」と「サルコペニア」
2 「酸化ストレス障害」はなぜ生じるか?
3 「フレイル」の予防における「酸化ストレス障害バイオマーカー」の開発への期待
4 「フレイル」予防における「抗酸化物質」への期待
5 抗酸化評価系のヒト臨床への応用
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加齢による免疫フレイル・炎症・脂質代謝
Frailty in Immune System:Ageing, Inflammation and Lipid Metabolism
加齢は感染症への罹患や重症化のリスク因子であり,その背景には免疫老化や炎症制御機構の破綻が考えられる。本項では,免疫老化におけるT 細胞の質的変容や,胸腺や二次リンパ組織の構造変化,ワクチン応答の差,また筆者らが最近見出した抗炎症性脂質代謝物に関する知見を交えて最近の話題を提供する。
【目次】
1 はじめに
2 加齢による胸腺の退縮とT細胞の変容
3 加齢による二次リンパ組織の変容とワクチン応答の減弱
4 炎症制御における脂質代謝の重要性
5 ω3脂肪酸代謝物による新たな炎症制御機構
6 おわりに
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口から始める,フレイル予防
Frail Measures Starting From the Oral Cavity
オーラルフレイルは,口腔機能の軽微な低下から心身の機能低下に至るまでの一連の現象および過程を指す。フレイルは健常と障害の中間に位置するため,適切な介入による予防効果は高い。口腔・嚥下機能向上には,口腔だけでなく,身体へのアプローチも重要である。フレイル対策には,口腔・嚥下,運動,栄養などが一体化したプログラムの構築が必須であり,同時に対象者を適切に動機付けすることも重要である。
【目次】
1 オーラルフレイルとは?
2 オーラルフレイル理解の第一歩,口腔機能って何??
2.1 口腔乾燥
2.2 口腔衛生環境
2.3 舌圧
2.4 咬合力
2.5 咀嚼能力
2.6 嚥下機能
3 オーラルフレイルの勘所 口腔と全身の関連について
4 オーラルフレイルを広げるために~高齢者のニーズを捉える~
5 まとめ ~オーラルフレイルからの抗フレイル~
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抗フレイルのための栄養学
Nutrition to Prevent Frail
フレイル予防の基本は全ての栄養素を揃える食品多様性である。特にサルコペニアを予防する蛋白質摂取量は1.2~1.5 g/ 体重kg/ 日を3 食に等しく分け,消化能と同化能の低下に半消化態蛋白質,ロイシン,HMB 等を使う。さらに炎症性老化を防ぐ食事炎症指数の低い食事とし,老化で拡大する個人差の原因である遺伝子多型に対応した食事が望ましい。
【目次】
1 フレイル検診
2 心身活動と食事多様性で予防
3 低栄養とサルコペニアの予防
3.1 三大栄養素の最適な割合
4 フレイル予防のビタミン・ミネラル
5 炎症性老化を防ぐ食事
6 フレイルからの回復運動
7 遺伝子対応抗老化栄養
8 おわりに
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フレイルと老年期の精神疾患:うつ病,認知症との関連を中心に
Frailty and Elderly Psychiatric Disorders:Focus on Depression and Neurocognitive Disorders
フレイルと関連する精神疾患として,老年期うつ病や認知症との関連がよく検討されている。うつ病はフレイルの危険性を高め,フレイルはうつ病の危険性を高める。認知症も同様であり,特に歩行速度の低下や筋力低下は認知症発症のリスクとなる。これらの3 病態は互いに関連しており,老年期の健康維持において極めて重要な要因となる。日常的な運動習慣は,これらの病態の予防に重要である。
【目次】
1 はじめに
2 うつ病とフレイル
3 認知機能障害とフレイル
4 抗フレイル対策
5 おわりに
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社会的フレイル
Social Frailty
フレイルの社会的側面(社会的フレイル)は,外出・生活範囲,社会的ネットワーク(人とのつながり),社会的サポート,社会的脆弱な状況(一般・医療資源へのアクセス,経済的困窮など)が絡み合うため,慎重に見極め,介入する必要がある。社会的フレイル対策は貧困対策や生活支援は全体に講じつつも,社会参加や人とのつながりの醸成には性差を加味することが留意点である。
【目次】
1 フレイルとは?
2 社会的フレイルとは?
3 社会的フレイル対策はなぜ必要か?
4 社会的フレイルに性差はあるのか?
5 社会的フレイル対策「人とのつながり」の重要性
6 さいごに
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後期高齢期に要介護にならないために
To Avoid The Requirement of Nursing Care in Late Old Age
後期高齢期に入ると健康上の不具合が多くなる。平均寿命に対して健康でいられる期間はおよそ10 年短いといわれる。介護保険の世話にならないためには第1 に認知症にならないことである。認知症予防を目指す臨床試験の現状を述べる。第2に高齢者は感染症に罹りやすい問題である。免疫力の低下に帰せられるが,特に感染阻止の自然免疫力を高める重要性を述べる。
【目次】
1 はじめに
2 認知症を回避する試み
2.1 中枢神経系の老化─シナプス老化から説明
2.2 中枢神経機能の改善─シナプス機能の改善から
2.3 高次脳機能を向上させる─脳可塑性の賦活によって
2.4 認知症のリスク要因─疫学研究からわかってきたこと
2.5 認知症予防─臨床試験の現状から
3 免疫系の賦活
3.1 免疫系の老化─高齢者の易感染性の理由
3.2 免疫力を高める方法─自然免疫力を高めるのがベターか
3.3 ビタミンD(VD)による感染症流行の抑え込み─有望な臨床効果
4 おわりに
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フレイルと高齢者スポーツ
Sports Participation Preventing Frailty Among Old Persons
超高齢社会に於いては,疾病の予防にくわえて加齢に伴う心身機能,並びに社会機能の低下を予防していく必要がある。この加齢に伴う心身機能や社会機能の低下のうち可逆的なものを日本老年医学会はフレイルと定義した。要介護状態となる原因は疾病よりフレイルが多い。高齢期の生活の質を高めるためにもフレイル予防が大切となる。
本稿では,このフレイル予防に有効と考えられる介入をレビューし,これらの要素を持つスポーツについて論じたい。
【目次】
1 はじめに
2 介入
3 スポーツ
3.1 運動機能低下
3.2 認知機能低下
3.3 口腔機能低下
4 おわりに
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月刊バイオインダストリー 2021年2月号
¥4,950
<著者一覧>
松原輝彦 慶応義塾大学
堀 克敏 名古屋大学
小澤祐市 東北大学
中野祥吾 静岡県立大学
小塚康平 静岡県立大学
南野優季 静岡県立大学
伊藤創平 静岡県立大学
駒崎友亮 (国研)産業技術総合研究所
木村賢一 岩手大学
鈴木 聡 (株)実正
神崎 浩 岡山大学
仁戸田照彦 岡山大学
畑生俊光 岡山大学
森 隆 埼玉医科大学
羅霄霖 (株)ジェヌインR&D
開 忍 (株)ジェヌインR&D
宮鍋征克 ㈱ジェヌインR&D
今井博之 甲南大学
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BIO R&D
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繊細な生体物質を触れずに操る無容器バイオフラスコ
Contactless Bioflask for Investigation of Sensitive Biological Samples
近年,定在波音波を利用して液滴を空気中で捕捉して浮揚させ,特殊な界面を利用した化学および生物反応を行う研究が始まっている。微小重力環境においてのみ可能な三次元の気-液界面を常温・常圧下,地球上で実装できる技術である。本稿では,この技術が次世代の無容器バイオフラスコとして利用できるかどうか,その可能性について解説する。
【目次】
1 はじめに
1.1 繊細な生体物質を扱う実験プロトコールの必要性
1.2 定在波捕捉による浮揚液滴
2 浮揚液滴内による生物有機合成反応
2.1 単軸超音波振動子による浮揚装置の構成
2.2 高分子重合反応
2.3 生体直交反応(クリック反応)
2.4 酵素による発色反応
2.5 制限酵素によるDNA切断反応
2.6 超音波による生体試料への影響
3 近年の研究動向
4 最後に
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微生物接着タンパク質AtaAの無限の可能性
Boundless Applicability of the Microbial Adhesive Protein AtaA
筆者らは,様々な材料表面に付着する細菌の細胞表層タンパク質AtaAを発見し,その性質,構造,接着機構の解明を進めてきた。さらに,AtaAを微生物固定化や接着分子材料へ利用する応用研究についても取り組んできた。本稿では,AtaA分子の特徴を説明するとともに,無限に拡がりつつある応用展開について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 微生物接着タンパク質AtaA
3 AtaAの微生物工学への応用
3.1 微生物固定化技術への応用
3.2 オン・ファイバーディスプレイ
4 AtaAの接着分子材料としての応用
4.1 リポソームのファイバーデコレーション
4.2 分子固定,表面機能化への利用
5 将来展望
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3次元情報を一挙に可視化するレーザー走査顕微鏡法
Laser Scanning Microscopy Acquiring Three-Dimensional Information from a Single Laser Scanning
レーザー走査型蛍光顕微鏡法は試料の3次元構造を詳細に可視化可能なイメージング法として生命科学分野を始めとして広く用いられているが,複数枚の2次元断層画像の重ね合わせから3次元化する従来法では,イメージングの高速化が容易ではなかった。本稿では,光の新しい特性を巧みに利用して深さ情報を一挙に可視化できるイメージング法について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 原理
2.1 長焦点ニードルスポット励起
2.2 蛍光信号に対するエアリービーム変換
3 ニードル顕微鏡システムによる3次元画像構築
3.1 顕微鏡システム
3.2 エアリービーム変換に基づく深さ情報の抽出
3.3 画像構築
4 おわりに
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配列解析を礎とした次世代蛋白質工学~難生産性L-アミノ酸酸化酵素の改良とD-アミノ酸動的光学分割法への応用を例に~
A Semi-rational Protein Engineering by Sequence-based Method and Development of Artificial L-amino Acid Oxidase.
40億年にわたる進化の過程において,生物は変異を遺伝子に蓄積することで,多様な機能を獲得してきた。遺伝子から転写・翻訳され生合成される酵素の進化を俯瞰すると,相同な立体構造を持ち類似の触媒反応を担う酵素であっても,分子全体に多数の変異が導入され,自在に基質特異性,生産性,安定性等の機能が改変されている。しかし,一つ一つの変異のほとんどは,生物の自然淘汰に対して有利でも不利でもない中立的な変異であり,蛋白質の機能においても中立的である。加えて分子進化による変異は極めて不規則であり,人間の目で変異による機能の変化を合理的に理解するのは極めて困難である。よって,実験科学的手法に依存したスクリーニング,構造生物学・分子進化工学的手法による合理的な改変が現在も主流となっている。しかし,これら手法に依存した技術開発や合理的改変のコストは総じて高く,バイオ技術の社会実装を阻む障壁にもなっている。我々は,拡大の一途を辿る遺伝子・配列データベースを,独自の機械学習型配列解析法により演繹的に解析,実験結果と照合することで,蛋白質・酵素機能のデザインが可能であるか検証してきた。本報では,次世代型の蛋白質工学技術の紹介と,適用例として難生産性L-アミノ酸酸化酵素の改良とD-アミノ酸動的光学分割法への応用を紹介する。
【目次】
1 次世代蛋白質工学とは?
2 人工L-アミノ酸酸化酵素の設計と動的光学分割
3 今後の展開
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高柔軟性シリコーン感湿材料の開発と状湿度センサへの応用
Hygroscopic Silicone Rubber Composite and Textile Based Humidity Sensor
近年,人が身に着けて使用する電子機器,「ウェアラブルデバイス」が話題を呼んでいる。本稿では,著者らが衣服型ウェアラブルデバイス向けに開発した布状湿度センサと,それを可能にした高柔軟性シリコーン吸湿材料について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 高柔軟性シリコーン感湿材料の開発
3 布状湿度センサの作製
4 おわりに
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久慈産琥珀に含まれる生物活性物質の多彩な化学構造と生物活性-メラニン産生抑制活性とコラーゲン産生促進活性の発見-
Diversity of Structures and Biological Activities of Bioprobes Isolated from Kuji Amber-Discovery of Inhibition of Melanin Production and Promotion of Collagen Production Activities in Kuji Amber-
久慈産琥珀の約5%を占めるアルコール可溶性画分には,他国産琥珀の場合とは大きく異なり,kujigamberolを中心に多数の新規構造を有する生物活性物質が含まれている。これまで,動物における高い抗アレルギー活性を報告してきたが,今般メラニン産生抑制とコラーゲン産生促進活性が細胞で新たに見出された。今後,それらの活性を有する新たな成分の発見とメカニズム解析,並びに抽出物を用いた多角的な商品化が期待される。
【目次】
1 はじめに
2 医薬品探索のための天然資源としての琥珀
3 久慈産琥珀の生物活性物質の構造
4 久慈産琥珀の抗アレルギー活性
5 久慈産琥珀のメラニン産生抑制活性
6 細胞外マトリックスとコラーゲン
7 久慈産琥珀抽出物の多角的な産業利用
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エノキタケ菌床抽出物の脂肪蓄積抑制効果とペット動物用サプリメントへの応用
Adipogenesis Suppression by Enokitake Mushroom Bed Extract and its Application to Pet Animal Supplements
エノキタケ栽培針葉樹菌床水抽出物が,脂肪蓄積抑制効果を示し,その抽出液を含む飲料を用いる飲水試験で,通常食給餌マウスに対して,体重増加抑制,血糖値抑制,脂肪蓄積抑制,腸内細菌叢改善効果等を示すことが判明した。食用キノコ生産で得られる菌床抽出物のペットサプリメント等への用途開発が期待される。
【目次】
1 はじめに
2 生物試験に供するキノコの培養とその抽出物の調製
3 エノキタケ栽培針葉樹材菌床抽出物の脂肪蓄積抑制効果
4 エノキタケ栽培針葉樹材菌床抽出物の血糖値上昇抑制効果
5 エノキタケ栽培針葉樹材菌床抽出物のマウス飲水試験
6 ペット用試作飲料の小型犬に対する試飲アンケート
7 終わりに
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没食子酸(α/β-セクレターゼ作用剤)はアルツハイマー病のマウスモデルの認知機能障害を改善しアルツハイマー様病態も軽減する
Gallic Acid is a Dual α/β-secretase Modulator that Reverses Cognitive Impairment and Remediates Alzheimer-like Pathology in the Alzheimer’s Disease Mouse Model
植物由来の没食子酸をアルツハイマー病のマウスモデルに6ヶ月間経口投与すると,認知機能障害が改善し,アルツハイマー様病態も軽減した。没食子酸がアミロイド前駆体蛋白質代謝を制御する2種類の切断酵素(α/β-セクレターゼ)に作用して,原因蛋白質の1つであるアミロイド-β蛋白質の産生を抑制することを明らかにした。
本稿では,没食子酸の概要,行動・認知機能障害の改善効果,脳アミロイド症の抑制効果,α/β-セクレターゼへの二重効果,抗炎症・抗酸化効果を紹介する。没食子酸は現行する処方薬との併用も可能であり,軽度認知障害の患者への適応も期待される。
【目次】
1 はじめに
2 没食子酸の概要
3 行動・認知機能障害の改善効果
4 脳アミロイド症の抑制効果
5 α/β-セクレターゼへの二重効果
6 没食子酸の抗炎症・抗酸化効果
7 まとめ
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食用キノコの自己消化反応を利用した植物からの遊離セラミドの生産
Free ceramide production from plants using enzymes prepared from mushrooms
セラミドは,化粧品やサプリメントの美容成分として一般消費者にも周知されてきた。その中でも注目されている角質層セラミドと同じ構造を持つヒト型セラミド(遊離セラミド)を,野菜や果物などの植物から作り出す研究を行った。植物にはグルコシルセラミドなどの糖セラミドはあるが,ヒト型セラミドは存在しない。この植物の糖セラミドを食用キノコの消化反応を利用して遊離セラミドに変え,機能性素材として展開する。
【目次】
1 はじめに
2 キノコの自己消化によるヒト型セラミド産生
2.1 植物スフィンゴ脂質
2.2 スフィンゴ脂質代謝経路生合成系と分解系
3 実験方法
3.1 キノコ自己消化後酵素液の調製
3.2 酵素反応
4 結果と考察
4.1 GIPC由来遊離セラミドの産生
4.2 GlcCer由来遊離セラミドの産生
5 おわりに
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BIO BUSINESS
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医薬品工業
世界の医薬品市場は2014 年に1 兆ドルを突破し,2019 年には1 兆2,500 億ドルを超え,今後も3~6%程度の成長が見込まれている。2018 年の国内医薬品の生産金額は,6 兆9,077 億円となり,前年比2.8%の伸びを示した。医療用医薬品,一般医薬品とも増加したが,配置用家庭薬は減少した。全体的にみると生産金額は年によりばらつきがあるが,製薬業界にとって厳しい状況が続いている。また,2019 年末から発生しているコロナウイルス(COVID-19)による肺炎に関して,2020 年,政府はPCR 検査を幅広く行い,治療薬やワクチンの研究開発や生産体制の整備を行い,医療提供体制を強化することを発表している。今後,医薬品業界に大きな影響を及ぼすと思われる。
【目次】
1 医療用医薬品
2 一般用医薬品
3 臨床検査薬
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《BIO PRODUCTS》
α-アミラーゼ(α-Amylase)
β-アミラーゼ(β-Amylase)
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月刊バイオインダストリー 2016年6月号
¥3,960
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【特集】バイオテクノロジーが育む頭髪の未来
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臨床発毛医学の現状と展望
Current State of Clinical Hair Growth Medicine and Future
松山淳 (国際抗老化再生医療学会;日本臨床医学発毛協会;松寿会)
健康長寿社会が進む現代社会において, アンチエイジングという概念も様々な分野で浸透し, 健康長寿はもちろん, 近年, 「見た目の若さ」も重要な要素となってきている。なかでも, 薄毛や脱毛は男女共通の悩みとして, 関心を集めている。本稿では脱毛症の基礎, 現在の治療法, 今後の治療の発展や可能性などについて臨床的観点から述べたい。
【目次】
1. はじめに
2. 男性型脱毛症(AGA)とは
3. 診断
4. 治療
5. 内服療法
6. 注射療法
7. 実際のHARG(R)治療
8. 効果的な治療介入の時期と治療効果の判定時期
9. 今後の展望
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5-アミノレブリン酸ALAの発毛促進作用
Promotion of Hair Regrowth with 5-Aminolevulinic Acid
松崎貴 (島根大学)
皮膚に適切な濃度の5-アミノレブリン酸(ALA)を塗布すると発毛が促される。本稿ではその作用機序が従来の発毛・育毛剤とは異なることを示すとともに, 投与されたALAがヘムに変換されてATP生成を促進している可能性, および毛周期調節機構に関わっている可能性について解説する。
【目次】
1. はじめに
2. 毛母細胞の細胞活性と毛周期の関係
3. 5-アミノレブリン酸(ALA)と細胞増殖
4. ALAの発毛促進効果
5. ALAの作用機序
6. ヘムタンパク質と毛周期
7. 今後の課題
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ガゴメ昆布由来フコイダンの育毛効果
Effect of Fucoidan from Kjellmaniella crassifolia on Hair Growth
大野木宏 (タカラバイオ(株))
海藻と毛髪に関する伝承は古くから存在するが, 科学的な検証が十分進んでいない。最近の研究において, 昆布に含まれるフコイダンが様々な増殖因子の産生を促進することで育毛効果を発揮することがわかってきた。本稿ではガゴメ昆布由来のフコイダンに関する基礎研究結果と製品応用例を紹介する。
【目次】
1. フコイダンと毛髪
2. ガゴメ昆布由来フコイダンのHGF産生促進作用
3. ガゴメ昆布由来フコイダンのFGF-7産生促進作用
4. ガゴメ昆布由来フコイダンの育毛領域での応用
5. 今後の展望
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フラーレンの持つ抗酸化作用と育毛効果
Effect of the Fullerene on Hair Growth
伊藤雅之 (ビタミンC60 バイオリサーチ(株))
乾重樹 (心斎橋いぬい皮フ科;大阪大学)
フラーレンは, 抗酸化成分としてスキンケア用途で使用されており, 昨年で発売から10年となった。主にシミ・ニキビ・毛穴目立ちなどの肌トラブルに対してフラーレンが用いられているが, 近年, 頭皮・頭髪への効果を期待する声が多くなっている。本稿では, フラーレンが毛成長促進に有効である事を紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. 化粧品原料としてのフラーレン
2.1 フラーレンの発見
2.2 フラーレンの抗酸化力
2.3 フラーレンの化粧品への応用
2.4 フラーレンによる活性酸素対策と美容効果
2.5 フラーレンの安全性
3. フラーレンの毛成長に対する効果
3.1 実験方法
3.2 結果
3.3 考察
4. おわりに
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AGAのメカニズムと治療
Mechanism and Treatment of AGA
乾重樹 (心斎橋いぬい皮フ科;大阪大学)
AGAのメカニズムについて, 近年の遺伝学的研究から得られる示唆と, アンドロゲンの基礎医学的研究から得られるアンドロゲンの関与の仕方の面から議論する。さらに日本皮膚科学会男性型脱毛症診療ガイドラインで強く勧められている治療である, フィナステリド内服とミノキシジル外用について臨床医学的な見地から概説する。
【目次】
1. はじめに
2. AGAの遺伝
3. AGAの病態メカニズム
3.1 毛器官の男性ホルモンに対する感受性の調節因子
3.1.1 5α-還元酵素(5α-reductase)
3.1.2 アンドロゲン受容体(AR)
3.1.3 アンドロゲン受容体共役因子(androgen receptor coregulator)
3.2 AGAの病態に関わるメディエーター
4. AGAの治療
4.1 フィナステリド内服薬
4.1.1 作用機序
4.1.2 用法・適応
4.1.3 効果
4.1.4 副作用
4.2 ミノキシジルローション
4.2.1 作用機序
4.2.2 効能・効果
4.2.3 副作用
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AGA治療におけるデュタステリド(ザガーロ(R)カプセル)の作用
Effects of Dutasteride(Zagallo(R)capsule)on AGA Treatment
畠中俊樹 (グラクソ・スミスクライン(株))
男性における男性型脱毛症(androgenetic alopecia;AGA)の主な原因要因として, ジヒドロテストステロン(DHT)が深く関与することが明らかとなっている。DHTは生体内において, テストステロンから5α-還元酵素により変換され, 生成される。5α-還元酵素阻害薬であるデュタステリドは, 毛髪の毛包部においてDHTの生成を抑制することでヘアサイクルにおける成長期を延長させ, AGAに対して有効性を示すと考えられる。本稿では, デュタステリド(ザガーロ(R)カプセル)の開発経緯とともに, その作用機序, 有効性および安全性に関する臨床試験成績, およびDHT濃度に対する影響を紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. デュタステリドのAGA治療薬としての開発経緯
3. AGAのヘアサイクルとデュタステリドの作用機序
4. デュタステリドの臨床試験成績
4.1 第Ⅱ/Ⅲ相二重盲検比較試験(国際共同試験)
4.2 国内臨床試験(長期投与試験)
4.3 海外第Ⅱ相試験
5. デュタステリドのDHT濃度に対する影響
6. おわりに
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α-リポ酸誘導体の抗がん剤誘発脱毛に対する抑制効果
Inhibitory Effect of α-Lipoic Acid Derivative on Chemotherapy-Induced Alopecia
平塚孝宏 (大分大学医学部附属病院;大分大学)
中嶋健太郎 (大分大学医学部附属病院;大分大学)
圓福真一朗 (大分大学医学部附属病院;大分大学)
河野洋平 (豊後大野市民病院)
麻生結子 (大分大学医学部附属病院;大分大学)
猪股雅史 (大分大学医学部附属病院;大分大学)
北野正剛 (大分大学)
抗がん剤誘発脱毛は抗がん剤による最も心的ダメージの大きな副作用であるにもかかわらずその効果的な治療法はいまだに存在しない。今回我々は新規抗酸化剤であるα-リポ酸誘導体が抗がん剤誘発脱毛抑制効果を有することを明らかにした。その詳細と臨床応用へ向けた取り組みについて解説する。
【目次】
1. はじめに
2. ラット抗がん剤誘発脱毛モデルを用いた基礎研究
3. 乳がん患者を対象とした臨床研究
4. 多施設共同臨床試験
5. おわりに
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発毛・育毛ビジネスの進展と未来
Progress and the Future of Hair Growth Business
伊藤憲男 ((株)アデランス)
現在は脱毛のメカニズムが解明されてきており, その対処方法も実に様々なものがある。医療機関での治療方法も数多く存在しているが, 一方で手術や医薬品の使用に抵抗のある, あるいはまだその段階ではないと考える人も少なくない。本稿ではそれらの人たちを対象に実践されている脱毛への対処を中心に, その周辺と将来の展望について考察する。
【目次】
1. 髪の悩み
2. 脱毛進行の分類と市場
3. 医療機関における対処法
3.1 内服薬または外用薬
3.2 植毛術(自毛植毛)
3.3 GF カクテル注入
3.4 HARG療法
4. 医療機関以外
4.1 育毛剤
4.2 ヘアケア・スカルプケア機器
4.3 スカルプケア系シャンプー類
4.4 スカルプケアサロン
5. 今後の展望
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BIO R&D
ウシ唾液はセルロース分解を促進する
Enhancement of Cellulose Degradation by Cattle Saliva
坂口謙吾 (東京理科大学)
金井良博 (東京理科大学発ベンチャー アクテイブ(株))
関泰隆 (東京理科大学)
草食動物の唾液は咀嚼や反すうの際に植物繊維を分解補助する。難分解性であるセルロースを効率的に酵素分解するため, ウシの唾液が及ぼす影響を調べた。その結果, 唾液によって分解が促進され, セルラーゼ使用量の低減ができる可能性が見出された。バイオマス資源の糖化技術において, 酵素コストは実用化を遅らせている主要因の一つであり, その部分への貢献が期待される。
【目次】
1. はじめに
2. 非生物系と生物系の素材の融合が必要な背景
3. 研究の概要と成果
4. 結論
5. まとめと展望
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TOPICS
環境DNA を用いて水中の生物相を知る
Aquatic species census using environmental DNA
源利文 (神戸大学)
近年, 環境中のDNA情報を用いて生物の分布情報を得る「環境DNA分析」と呼ばれる手法が発展している。本稿では主に, 環境水中のDNA情報を用いて魚類や両生類などの大型生物の分布情報を明らかにする取り組みについて, 研究開発の経緯を概説するとともに, 種特異的な検出法および環境DNAメタバーコーディング法の二つの手法について技術的なポイントを解説する。
【目次】
1. はじめに
2. 環境DNA分析の流れ
3. 種特異的な検出と定量
4. 環境DNAメタバーコーディング
5. 環境DNA分析手法の課題
6. 今後の展望
7. おわりに
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BIO PRODUCTS
ポリL-乳酸
Poly-L-lactic Acid, PLLA
【目次】
1. 概要
2. 毒性
3. 製法
4. 生産
5. 需要
6. 価格・荷姿
7. 市場予測 -
月刊バイオインダストリー 2019年1月号
¥4,950
≪著者一覧≫
小坂彦二 豊田通商(株)
金高武志 トタルコービオンPLA b.v. 日本連絡事務所
宮保 淳 アルケマ(株)
山崎 聡 三井化学(株)
藤木哲也 (株)カネカ
宮内啓行 住友ベークライト(株)
乾 将行 (公財)地球環境産業技術研究機構
野村紘史 琉球大学
清水雄介 琉球大学
友利 新 琉球大学
角南 寛 琉球大学
河野広朗 京都大学
長谷川光一 京都大学
山田圭一 群馬大学
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【特集】バイオプラスチックの最新動向
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植物由来ポリエチレンの現状と今後の展望
bPE Current Situation and Future in Japan
植物由来ポリエチレン, 所謂バイオポリエチレンは石化由来の通常のポリエチレンと構造・性能とも同一。当社は2010年の商業生産開始当時から日本市場での販売を行ったパイオニアである。そのコストの高さ故, 日本での採用は限定的であったがここにきて大きく流れが変わろうとしている。
【目次】
1 はじめに
2 生産概要と用途
3 植物由来ポリエチレンの製造工程
4 温室効果ガス排出量の削減効果
5 食糧との競合・熱帯雨林への影響
6 今後の展望
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ポリ乳酸(PLA)
Poly Lactic Acid(PLA)
ポリ乳酸(PLA)はバイオマス由来かつ生分解性を有するバイオプラスチックである。近年では耐熱性, 機械的強度, 成形性に改善が見られ従来の石油由来プラスチックからの代替候補として大いに注目を集めている。本稿では当該樹脂の物性, 市場, バイオプラスチックとしてのポジションなどについて概論を述べた。
【目次】
1 ポリ乳酸概略
2 現在の市場
3 光学純度と物性
4 圧電高分子
5 ステレオコンプレックスポリ乳酸
6 抗菌性
7 耐衝撃性
8 バイオマスプラスチックとしてのポリ乳酸
9 バイオマスプラスチックを使用する意義
10 生分解性プラスチックとしてのポリ乳酸
11 生分解性樹脂を使用する意義
12 まとめ
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バイオポリアミド
Bio-Polyamide
バイオポリマーは天然物系, 化学合成系, 微生物合成系に大別できるが, 本稿で取り上げるバイオポリアミドは化学合成系に位置づけられる。詳細については後述するが, バイオポリアミドの特長は以下の通りである。
・商業化されて既に50 年以上が経過しているポリアミド11の功績により, エンジニアリングプラスチックとしての地位を築いており, 機能性部品に使用が可能である
・現在市販されているバイオポリアミドは全て非可食油脂であるヒマシ油を化学変換することによって得られるモノマーを使用している
・モノマーにジカルボン酸とジアミンを使用するため, 石油由来のモノマーと組み合わせることにより多彩な製品群が得られる
本稿では環境意識が高まった2000年以降に急速に多様化が進んでいるバイオポリアミドの現状および将来について解説する。
【目次】
1 ポリアミドとは
2 バイオポリアミドの基礎原料─ヒマシ油
3 ポリアミドの歴史と現在
4 バイオポリアミドの物性
5 バイオポリアミドの現状と課題
6 バイオポリアミドの将来─さらなる発展のためのキーポイント
6.1 バイオポリアミド間の製品特性の明確化
6.2 バイオポリアミド特有の製品開発アプローチ
6.3 石油由来成分のバイオソース化
6.4 ESG経営に基づくエンドユーザーによる調達先選別
7 おわりに
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バイオイソシアネートを用いた新規なポリウレタン
Novel Polyurethanes Based on Bio−Based Isocyanate
ポリイソシアネートは, ポリウレタンの物性を左右する重要な化学品である。これまでもいくつかのバイオイソシアネートが検討されてきたが, その実用的な物性を十分に満足することができなかった。本稿では, 市場ニーズに対応して, 当社が開発したバイオイソシアネート(STABiO(R)(スタビオ(R))PDI(R))およびそれを用いたポリウレタンへの展開について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 開発の背景およびコンセプト
3 STABiO(R)(スタビオ(R))PDI(R)および硬化剤の特徴
4 スタビオ(R)PDI(R)ウレタンシステムの用途
4.1 メガネレンズへの展開
4.2 ゲルへの展開
5 おわりに
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ポリヒドロキシアルカン酸(PHA)
Polyhydroxyalkanoates(PHA)
ポリヒドロキシアルカン酸(Polyhydroxyalkanoates, 以下PHA)は, 多種類の微生物が炭素, およびエネルギー貯蔵物質としてその菌体内に蓄積する, R−3−ヒドロキシアルカン酸(R−3−hydroxyalkanoate) をモノマー成分とする単重合体, あるいは共重合体のポリエステルである。本稿では(株)カネカが事業化検討を進めているカネカ生分解性ポリマーPHBHTM, (以下, PHBH)を例としてPHAの製造方法, 特性等について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 PHAの生合成
3 PHBH生産菌株の育種
3.1 軟質PHBH生産系の開発
3.2 培養生産性の向上
3.3 更なる3HHxモル分率の向上
3.4 その他の生物による生産方法
4 PHAの精製
4.1 溶剤抽出法
4.2 水系精製法
5 PHAの特性
5.1 PHBHの生分解性
5.2 PHBHの一般物性
6 加工性・用途開発
7 今後の課題
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バイオマス由来フェノール樹脂の生産技術開発
Development of Production Technology for Biomass Derived Phenolic Resin
近年, 低炭素社会実現のためバイオマスからのプラスチックの生産に大きな注目が集まっている。フェノール樹脂は最も古い歴史を持つ実用化されたプラスチックであり, 今もなお発展を続けているが, 現在の工業生産品は石油由来原料から得られているもののみである。本稿では, 世界初のバイオマス由来フェノールの生産技術開発について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 フェノール樹脂について
2.1 フェノール樹脂の歴史
2.2 フェノール樹脂とは
2.3 フェノール樹脂の市場動向
3 フェノール樹脂の用途と技術動向
3.1 工業用フェノール樹脂
3.1.1 摩擦材用
3.1.2 断熱材用
3.2 成形材料
3.2.1 自動車部品用途
3.2.2 電子・電気機器用途
4 バイオマス由来フェノールの生産技術開発
4.1 フェノールのバイオマス由来化の重要性
4.2 バイオプロセスの生産性向上
4.2.1 高生産性RITEバイオプロセス
4.2.2 2段工程法
4.3 バイオマス由来フェノール樹脂の特性
5 おわりに
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BIO R&D
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脂肪組織由来幹細胞培養上清のスキンケア製品への応用
Skin Care Product using the Culture Supernatant of Adipose−derived Stem Cell
脂肪組織由来幹細胞は, 成長因子を豊富に分泌する体性幹細胞の一種である。その培養上清には成長因子が複数含まれ, ヒト由来細胞を用いた場合には生体が元来有するシグナル伝達経路を利用するため, スキンケアの原料成分として有望である。製造に際しては倫理的な取り扱いや関連法規の遵守, 厳密な細胞品質管理が重要となる。
【目次】
1 はじめに
2 脂肪組織由来幹細胞
3 培養上清と成長因子
4 培養上清の産業利用
5 終わりに
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多能性幹細胞を安価で安定供給を実現可能とする合成培地の開発
Development of Defined Culture Medium for Stable and Cost−Effective Human Pluripotent Stem Cell Supply
1981年のマウス胚性幹細胞樹立から26年, ヒトiPS細胞が樹立された。これを発端に, 多能性幹細胞を用いた再生医療・移植医療への取り組みが急加速した。同時に安全で安価な培養条件で培養された大量の多能性幹細胞供給が急務となった。本稿では, 筆者らが世界に先駆けて開発した成長因子と異種成分を完全に除去した合成培地について解説する。
【目次】
1 はじめに
2 多能性幹細胞培養培地の歴史と課題
3 成長因子を含まない幹細胞培養用合成培地開発の試み
3.1 多能性幹細胞における成長因子非依存の自己複製シグナル経路
3.2 Wntタンパク質を代替可能な化合物の探索
3.3 増殖促進効果を持つ化合物の探索と新規合成培地
4 おわりに
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放射性ペプチド薬剤の標識合成と診断・治療への展開:現状と課題
Development of Radio−labeled Peptides for Diagnosis and Therapy:Present and Future
腫瘍に高発現するペプチド受容体を標的とした放射性薬剤は非侵襲的画像診断だけでなくRI内用療法(標的アイソトープ治療)においても有用な化合物群である。本稿では, 放射性ペプチド薬剤の分子設計に関する最新の知見を概説するとともに筆者らが進めている放射性ハロゲンを用いた標識合成について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 放射性ペプチド薬剤の分子設計
2.1 診断・治療に用いられる放射性核種
2.2 分子改変による動態制御
2.2.1 体内動態改善を志向した分子設計
2.2.2 受容体親和性の向上を志向した分子設計
2.3 ペプチド本来の薬物動態を反映した分子設計:放射性ハロゲンを用いた直接標識
3 まとめと展望
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《BIO PRODUCTS》
l−アルギニン(l−Arginine) -
月刊バイオインダストリー 2019年11月号
¥4,950
<著者一覧>
志字寿文 松浦薬業㈱
今井昇治 松浦薬業㈱
大野高政 松浦薬業㈱
山地史哉 ポーラ化成工業㈱
多田明弘 ポーラ化成工業㈱
鈴木 茂 ㈱バスクリン
秀 道広 広島大学
榎本有希子 ㈱ファンケル
渡辺 均 千葉大学
新藤 聡 千葉大学
松原紀嘉 千葉大学
池上文雄 千葉大学
安藤広和 金沢大学
佐々木陽平 金沢大学
御影雅幸 東京農業大学
白鳥 誠 ㈱ウチダ和漢薬
福井健一 大阪大学
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【特集】漢方生薬・薬用植物の効能と栽培技術
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パフィアエキスパウダーの美肌素材としての有用性
Beneficial Effect of Pfaffia Extract Powder as Beautiful Skin Agent
老化を実感する肌などの組織は,コラーゲンの含有率が非常に高い。体内のコラーゲンは加齢と共に減少することや,20 歳前後をピークにコラーゲン合成能が低下することから,コラーゲン合成促進作用を有する素材はアンチエイジングに有用であると考えられる。
本稿では,パフィアエキスパウダーのコラーゲン合成促進作用,紫外線による光老化に対する改善作用など,パフィアエキスパウダーの美肌分野の研究成果をヒトモニターによるアンケート調査結果も交えて紹介する。
【目次】
1 はじめに
1.1 皮膚の構造
1.2 皮膚老化とコラーゲン
2 パフィアとは
3 パフィアの加齢による皮膚老化に対する有用性
4 パフィアの紫外線による皮膚老化に対する有用性
5 パフィアエキスパウダーの皮膚線維芽細胞活性化作用
6 モニターアンケート調査
7 パフィアエキスパウダーの安全性
8 おわりに
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コルチゾールによる細胞間接着の減少とトウニンエキスによる改善
The Intercellular Adhesion is Decreased by Cortisol and Increased by Peach Kernel Extract
様々な肌のトラブル・悩みに対応するため,有用性のある植物抽出物が多くの化粧品に含まれている。今回我々は,女性の肌悩みの一つである「むくみ」に着目し,むくみが細胞間接着の減少により生じることから,細胞間接着について調べた。
その結果,ストレスにより増加するコルチゾールが細胞間接着を弱くすることが新たに明らかとなり,またトウニンエキスが接着を強化する可能性が示された。
【目次】
1 はじめに
2 実験
2.1 試料
2.2 細胞間接着を構成するZO-1の染色
2.3 画像解析
2.4 ZO-1およびLNX1の発現量解析
2.5 統計解析
3 結果
3.1 コルチゾールが細胞間接着に与える影響
3.2 コルチゾールが細胞間接着を弱くするメカニズム
3.3 細胞間接着を強化するトウニンエキスの効果
4 考察
5 おわりに
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アトピー性皮膚炎に対するタンニン酸のスキンケア剤への活用
Efficacy of Sweat-antigen-inactivating Skin Care Products on Itching of Patients with Atopic Dermatitis
アトピー性皮膚炎の治療では,ステロイド外用薬を中心とした薬物療法ととも,原因・悪化因子の検索と対策,および異常な皮膚機能の補正を行うスキンケアが必要である。我々は,アトピー性皮膚炎に対する悪化因子である汗に着目し,植物成分の中からタンニン酸が汗中の抗原(汗抗原)を中和し,末梢血好塩基球からのヒスタミン遊離を抑制することを見出した。本稿では,アトピー性皮膚炎患者の痒みの軽減を目的としたタンニン酸を配合したスキンケア剤について報告する。
【目次】
1 はじめに
2 アトピー性皮膚炎患者における汗の影響
3 汗に含まれる抗原成分(汗抗原)
4 植物成分における汗抗原の中和作用
4.1 植物成分からのスクリーニング
4.2 タンニン酸の精製汗抗原中和試験
5 タンニン酸を配合したエアゾールスプレー剤の臨床的有用性
6 タンニン酸の入浴剤への活用と臨床的有用性
6.1 タンニン酸の吸着試験
6.2 タンニン酸入浴剤の臨床効果
7 おわりに
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Arginase-1 (ARG-1)に着目した新しい美白機能における生薬・有用植物由来成分“Stigmasterol”の効果
The Effect of“ Stigmasterol”, One of the Herbal Medicine and Useful Plant-derived Compound, on New Whitening Mechanism Regulated by Arginase-1( ARG-1).
「シミ」とは紫外線等により表皮中で過剰にメラニンが産生・滞留して形成される。「酸化反応」がシミ形成を加速することから,多数の抗酸化成分が美白用に開発されてきた。本稿では,抗酸化成分ではなく皮膚内の抗酸化性を間接的に保つARG-1 に着目した新しい美白機能と,その有効成分“Stigmasterol”の効果について紹介する。
【目次】
1 はじめに
2 シミの形成メカニズム
3 美白主剤および抗酸化機能成分から見た近年の美白機能研究
4 角層中ARG-1量とシミ
5 ARG-1阻害によるシミ形成促進メカニズム
6 ARG-1発現促進成分Stigmasterolと美白効果
7 おわりに
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トウキの系統選抜とセル成型苗生産
Line Selection and Plug Seedling Production of Angelica acutiloba Kitagawa
国産生薬の需要の高まりと共に,薬用作物の効率的な生産が求められている。トウキにおいて,国内で栽培されている系統を調査し,系統解析と系統選抜を行なって品質の高い系統を選抜した。また,採種技術の改善により発芽率が飛躍的に向上し,セル成型苗育苗が可能となった。これによりトウキの1 年栽培が実現した。
【目次】
1 生薬「当帰」の基原植物の遺伝的背景と系統選抜
1.1 はじめに
1.2 遺伝子解析によるトウキおよびホッカイトウキ同定法と選抜
2 トウキのセル成型苗生産に向けた課題解決
2.1 トウキ栽培の問題点
2.2 採種法の確立
2.3 トウキのセル成型苗により1年栽培が実現
3 おわりに
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漢方生薬「麻黄」の国産化研究
Studies of Domestic Production for Ephedra Herba
現在,我々は麻黄の国産化に向けて様々な研究を展開している。本稿では原植物の多様性について報告する。マオウ属植物の草質茎は,同一種であっても多様な形態的形質を有しており,含有成分においても個体内で差異を生じている可能性がある。そこで,特徴的な部位に分別し個体内での総アルカロイド含量の局在性を明らかにした。これらの知見は麻黄の製品化に向けた収穫時の重要な指標になると考えられる。
【目次】
1 はじめに
2 マオウ属植物のアルカロイド含量の局在性について
2.1 実験方法
2.2 結果
2.3 考察
3 日局収載種を用いたアルカロイド含量の局在性
3.1 実験方法
3.2 結果
3.3 考察
4 まとめ
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生薬の流通の現状と今後の課題
Current Situation of Crude Drugs and Future Subjects
生薬の流通については,日本漢方生薬製剤協会が継続して実施している「原料生薬の使用量等調査」の結果を基に,医薬品原料として用いられる生薬の種類,使用量,生産国などについて,その現状を報告した。また今後の課題として,生薬の栽培化と産地の複線化,中国産生薬の価格上昇,中国との交流強化の必要性を取り上げ,その状況を説明した。
【目次】
1 はじめに
2 生薬流通の現状
2.1 医薬品原料に用いられる原料生薬の使用量等調査データ
2.2 原料生薬使用量等調査
2.3 医薬品原料として用いられる生薬の種類,使用量及び生産国
2.4 医薬品原料における使用量の多い生薬
2.5 生産国による分類
3 今後の課題
3.1 生薬の栽培化と産地の複線化
3.2 中国産生薬の価格上昇
3.3 中国との交流強化
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BIO R&D
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睡眠中の生体活動に基づく睡眠個性の可視化と良否判別
Sleep Pattern Visualization and Quality Assessment Based on Activities During Sleep
本稿では,人工知能技術よる睡眠中の生体睡眠活動に基づく睡眠個性の可視化,および睡眠の時系列モデリングに基づく良否判別法を紹介する。本技術は,非接触・簡便に計測可能な睡眠中の音に基づいており,また,体動,歯ぎしり,いびきといった睡眠中の生体活動に基づく睡眠の個性を評価している。
【目次】
1 生体活動に基づく睡眠個性の可視化
1.1 睡眠個性可視化の流れ
1.2 睡眠関連音イベントの検出
1.3 睡眠個性の可視化法
1.4 睡眠個性の可視化例
2 生体活動の時系列モデリングに基づく睡眠の良否判別
2.1 睡眠の良否判別の流れ
2.2 音イベントの自動分類
2.3 隠れマルコフモデルによる生体活動の時系列モデリング
2.4 睡眠の良否判別法
2.5 睡眠の良否判別結果
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ポリウレタンの化学と最新応用技術 (普及版)
¥5,940
2011年刊「ポリウレタンの化学と最新応用技術」の普及版!原材料・副資材、分子設計、加工技術等、多岐にわたるポリウレタン応用製品の開発と安全性、リサイクル問題に関する情報を網羅!!
(監修: 松永勝治)
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<<著者一覧>>
※執筆者の所属表記は2011年当時のものです。
山本茂生 住化バイエルウレタン(株)
鈴木千登志 旭硝子(株)
松永勝治 東洋大学
木曾浩之 東ソー(株)
奈佐利久 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
徳安範昭 大八化学工業(株)
早福博史 モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社
大谷一嘉 当栄ケミカル(株)
徳山朋紀 三光化学工業(株)
平岡教子 長崎大学
松本信介 三井化学(株)
村山智 日本ポリウレタン工業(株)
石原眞人 日本ミラクトラン(株)
岩崎和男 岩崎技術士事務所
和田浩志 旭硝子(株)
竹川淳 第一工業製薬(株)
武井良道 サンユレック(株)
宮澤文雄 富士紡ホールディングス(株)
高木正孝 フジボウ愛媛(株)
今井景太 (株)イノアックコーポレーション
三村成利 (株)東洋クオリティワン
大川栄二 アキレス(株)
郷博之 (株)エービーシー建材研究所
大嵜武 三井化学(株)
東本徹 荒川化学工業(株)
林俊一 (株)SMPテクノロジーズ
山田英介 愛知工業大学
浅井清次 浅井技術士事務所 MC Labo.
和田康一 住化バイエルウレタン(株)
山崎聡 三井化学(株)
小椎尾謙 長崎大学
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第1章 ポリウレタンの原材料と副資材
1 イソシアネート
1.1 はじめに
1.2 イソシアネート
1.2.1 イソシアネートの合成法
1.2.2 イソシアネート基の反応の化学
1.2.3 産業上利用されるイソシアネート
(1) イソシアネートモノマー
(2) 変性イソシアネート
1.2.4 最近の開発動向
2 ポリオール
2.1 ポリオールとは
2.2 ポリエーテルポリオール
2.2.1 PPG
2.2.2 ポリマーポリオール
2.2.3 ポリオキシテトラメチレングリコール
2.3 ポリエステルポリオール
2.3.1 重縮合系ポリエステルポリオール
2.3.2 ポリカプロラクトンポリオール
2.4 ポリカーボネートジオール
2.5 ポリブタジエンポリオール
2.6 各種ポリオールを用いたポリウレタン樹脂の性能比較
2.7 バイオマスポリオール
2.7.1 植物油系ポリオール
3 副資材
3.1 鎖延長剤・架橋剤・硬化剤
3.2 触媒
3.2.1 はじめに
3.2.2 ポリウレタン触媒の役割と機能
3.2.3 アミンエミッション低減触媒
3.2.4 難燃性改良触媒
3.2.5 おわりに
3.3 整泡剤
3.3.1 はじめに
3.3.2 整泡剤の役割
(1) 軟質ポリウレタンフォーム
(2) 硬質ポリウレタンフォーム
(3) 高弾性(HR)ポリウレタンフォーム
(4) ポリエステルウレタンフォーム
3.4 難燃剤の最新技術
3.4.1 はじめに
3.4.2 ポリウレタンフォームの概要
(1) 硬質ウレタンフォームの需要
(2) 軟質ウレタンフォームの需要
(3) 課題
3.4.3 難燃化原理と難燃基準に対する材料の選択
3.4.4 おわりに
3.5 酸化防止剤・着色防止剤
3.5.1 ポリウレタンと酸化防止剤
3.5.2 酸化防止剤の種類と特徴
(1) フェノール系酸化防止剤
(2) リン酸系酸化防止剤
(3) イオウ系酸化防止剤
(4) 相乗効果
3.5.3 着色防止剤
3.6 イオン伝導機構による制電性ポリウレタンの技術開発
3.6.1 技術的背景
3.6.2 制電性樹脂の分子設計
(1) 制電剤の作用機構
(2) リチウムイオンによる高分子固体電解質
3.6.3 イオン伝導機構による制電性ポリウレタン
(1)イオン伝導性ポリオール
(2)イオン伝導性グライム類
(3)イオン伝導性脂肪酸エステル
(4)イオン伝導性高分子型帯電防止剤
3.6.4 制電性ポリウレタンの今後の展開
第2章 ポリウレタンの分子設計
1 ポリウレタンエラストマーの分子設計
1.1 はじめに
1.2 分類
1.3 合成法と反応性
1.4 鎖構造
1.5 分岐ないし架橋構造
1.6 相構造
1.7 物性
1.8 おわりに
2 フォームの分子設計
2.1 はじめに
2.2 硬質フォーム
2.2.1 原材料
2.2.2 用途・成形方法と分子設計
2.3 軟質フォーム
2.3.1 原材料
2.3.2 用途・成形方法と分子設計
2.4 おわりに
第3章 ポリウレタンの分析と構造解析
1 はじめに
2 ポリウレタンの分析
2.1 各種分析方法
2.2 ポリウレタンの各種分析法
2.2.1 イソシアネート基の分析
2.2.2 イソシアネート関連生成物の定性
2.2.3 ポリウレタン樹脂の組成分析
2.2.4 添加剤,触媒,不純物,副生成物などの分析
2.3 コンピューターの利用
3 ポリウレタンの構造解析
3.1 一次構造と高次構造
3.2 構造解析法
3.3 フォームのセル構造の観察
4 ポリウレタンの構造と物性の関係
5 まとめ
第4章 ポリウレタン加工技術
1 熱可塑性エラストマー
1.1 はじめに
1.2 TPUの種類と特徴
1.3 TPUの性質
1.3.1 吸湿性と予備乾燥
1.3.2 粘度特性
1.4 成形方法
1.4.1 射出成形
1.4.2 押出成形
1.4.3 カレンダー成形
1.4.4 パウダースラッシュ成形
1.4.5 溶液法
1.5 おわりに
2 熱硬化性ポリウレタンエラストマー
2.1 概要
2.1.1 ポリウレタンエラストマーの歴史
2.1.2 ポリウレタンエラストマーの分類
2.1.3 ポリウレタンエラストマーの需要動向
2.2 注型エラストマー(非発泡タイプ)
2.2.1 原料及び生成化学反応
2.2.2 成形工程及び設備
2.2.3 物性
2.2.4 特徴及び用途
2.3 注型エラストマー(発泡タイプ)
2.3.1 マイクロセルラーエラストマーの原料及び生成化学反応
2.3.2 成形工程及び設備
2.3.3 物性
2.3.4 特徴及び用途
2.4 その他のエラストマー
2.4.1 混練型(ミラブル型)エラストマー
2.4.2 スプレーエラストマー
2.5 新技術,新製品の開発動向
2.5.1 原料関係
2.5.2 成形性の向上
2.5.3 新用途開発
2.5.4 その他の動向
3 ポリウレタンフォームの概要と成形加工技術
3.1 はじめに
3.2 ポリウレタンフォームの市場
3.3 気泡構造
3.4 ポリウレタンフォームの製造プロセス
3.4.1 軟質ポリウレタンフォーム
3.4.2 硬質ポリウレタンフォーム
3.5 おわりに
4 水系ウレタン樹脂
4.1 はじめに
4.2 水系ウレタン樹脂の種類と用途
4.3 非反応型水系ウレタン樹脂の特長
4.3.1 内部架橋構造体の形成
4.3.2 フィルムの形成機構
4.3.3 フィルム物性の発現機構
4.4 反応型水系ウレタン樹脂の特長
4.4.1 架橋剤としての利用
4.4.2 ブロック剤の種類
4.5 水系ウレタン樹脂の高機能化
4.5.1 常温架橋技術(二液型)
4.5.2 常温架橋技術(一液型)
4.5.3 UV・EB架橋技術
4.6 今後の水系ウレタン樹脂
第5章 ポリウレタンの応用
1 車載用電子,燃料電池関係モジュールパッキングのための高信頼性を持つウレタン樹脂
1.1 はじめに
1.2 ポリウレタン樹脂の従来の技術開発概要および新規開発動向
1.3 ポリウレタン樹脂の原材料の種類
1.4 電装部品,燃料電池関連に使用されるポリウレタン樹脂の性質
1.4.1 イソシアヌレート化による問題点
1.4.2 要求特性
1.4.3 防湿絶縁ポリウレタン樹脂の開発製品群について
1.4.4 耐候性
1.4.5 耐湿性
1.4.6 耐熱性
1.4.7 放熱性
1.4.8 難燃性
1.5 今後の展望
2 精密研磨用材料-研磨パッド
2.1 研磨パッドの役割とポリウレタン
2.2 研磨パッドの硬さとポリウレタン
2.3 研磨パッドの種類
2.4 研磨パッドの最近の動き
2.5 おわりに
3 自動車・鉄道車両材料
3.1 はじめに
3.2 ポリウレタンの自動車用途概況
3.3 自動車への展開
3.3.1 シートクッション・シートバック
3.3.2 インストルメントパネル
3.3.3 天井材
3.3.4 フロアカーペット
3.3.5 エンジン周り吸遮音材
3.4 鉄道車両への展開
3.4.1 シート
3.4.2 軌道パッド
4 家具・寝具用材料
4.1 はじめに
4.2 家具・寝具の市場動向
4.3 マットレスの歴史
4.3.1世界のマットレスの歴史
4.3.2日本のマットレスの歴史
4.4 家具・寝具用ポリウレタンフォームについて
4.4.1 各フォームの特徴
4.4.2 低反発フォームについて
4.5 家具・寝具用クッション用フォームの基準について
4.5.1 優良ウレタンマーク制度
4.5.2 家庭用品品質表示法
4.5.3 JIS規格
4.6 最近の技術開発について
4.6.1 低反発フォームのグレードアップ
4.6.2 その他の新材料
4.6.3 療養・介護マットレス
4.7 まとめ
5 土木建築材料
5.1 断熱材
5.1.1 硬質ウレタンフォームの断熱材として優れた特長
5.1.2 硬質ウレタンフォーム断熱製品の成形形態による大きな分類
5.1.3 硬質ウレタンフォームのJIS規格
5.1.4 公的仕様書の状況
5.1.5 省エネルギー基準による断熱厚さ(鉄筋コンクリート造等の住宅)
5.1.6 施工概要
5.2 塗り床材
5.2.1 はじめに
5.2.2 ウレタン樹脂を使用した塗り床材の種類
5.2.3 弾性型ウレタン樹脂系塗り床材
5.2.4 硬質型ウレタン樹脂系塗り床材
5.2.5 水性硬質ウレタン系塗り床材
5.2.6 その他の特殊機能床材
(1) 駐車場用防水床仕上げ材
(2) ゴムチップ弾性舗装材
(3) 石材モルタル舗装材
5.2.7 最近の技術動向
6 塗料・接着剤・バインダー
6.1 食品包装用接着剤
6.1.1 はじめに
6.1.2 ウレタン接着剤の主な原料
6.1.3 ウレタン接着剤の基本構造
(1)一液湿気型
(2)二液硬化型
6.1.4 ウレタン接着剤の加工方法
6.1.5 ウレタン接着剤の機能
6.1.6 ウレタン接着剤の衛生性
6.1.7 おわりに
6.2 印刷インキ用バインダー
6.2.1 ポリウレタン樹脂バインダーの分類
6.2.2 印刷インキの用途と需要量
6.2.3 食品包装材料の製造工程
6.2.4 包装グラビアインキに求められる物性
6.2.5 インキ用バインダーとしてのポリウレタン樹脂の設計
6.2.6 インキバインダー用ポリウレタン樹脂の原料
6.2.7 包装グラビアインキ用ポリウレタン樹脂の環境対応
6.2.8 おわりに
7 その他の応用例
7.1 ポリウレタン系形状記憶ポリマーの特性と応用
7.1.1 はじめに
7.1.2 本ポリマーの種類と形態
7.1.3 材料の特性
(1) 弾性率
(2) 形状回復性と形状固定性
(3) 水蒸気透過性
(4) 体積膨張特性
(5) エネルギー散逸特性
(6) 光学的屈折率特性
(7) その他の性質
7.1.4 応用
(1) 産業分野
(2) 医療分野
(3) 生活関連
(4) 衣料
(5) 易解体ねじ
(6) その他
7.1.5 おわりに
7.2 炭素ナノ材料/ポリウレタン系コンポジット
7.2.1 はじめに
7.2.2 カーボンナノチューブ系コンポジット
7.2.3 グラファイト系コンポジット
7.2.4 フラーレン系コンポジット
7.3 ウレタンジェル
7.3.1 汎用ウレタンジェル
7.3.2 疎水ジェル
7.3.3 親水ジェル
7.3.4 おわりに
第6章 環境対応型ポリウレタンの開発動向
1 法規制と将来動向
1.1 TDI
1.2 MDI
1.3 その他イソシアネート
1.4 TDA 及び MDA
1.5 ポリオール
1.6 ポリウレタン原料に関する工業会
2 ポリウレタンのリサイクルについて
2.1 はじめに
2.2 ポリウレタンリサイクルの現状
2.3 ポリウレタンのリサイクル技術
2.3.1 マテリアルリサイクル
2.3.2 ケミカルリサイクル
2.3.3 サーマルリサイクル
2.4 断熱材のリサイクルについて
2.4.1 RPF(Refuse Paper and Plastic Fuel)化によるリサイクル
2.4.2 断熱材中フロンの問題
2.5 まとめ
3 バイオポリウレタンについて
3.1 はじめに
3.2 ポリウレタンの市場と化学
3.2.1 ポリイソシアネート
3.2.2 ポリオール
3.3 バイオポリウレタンフォームの開発
3.3.1 開発コンセプト
3.3.2 植物由来原料の選定とバイオポリウレタンフォームの位置づけ
3.3.3 第一世代バイオポリオールの開発
3.3.4 第二世代バイオポリオールの開発
3.4 バイオポリウレタンの動向
3.4.1 最近の開発事例
3.4.2 バイオポリウレタン原材料
3.5 今後の技術課題
3.6 おわりに
4 ポリウレタンの安全性
4.1 寝具・家具からのTDI蒸気による暴露
4.2 硬質ポリウレタンスプレーフォーム施工時の安全性
4.3 食品包装材
4.4 フロン規制
4.5 火災問題
4.6 廃棄物処理とリサイクル
4.7 ポリウレタン製品に含まれる未反応モノマー
4.8 ポリウレタンの安全性に関する工業会
第7章 ポリウレタンの研究動向
1 はじめに
2 ポリウレタンのミクロ相分離状態
2.1 原子間力顕微鏡(AFM)を用いた構造観察
2.2 誘電緩和法を用いた相分離状態と分子運動性
2.3 伸張過程におけるミクロ相分離構造変化
3 機能付与を意識した研究例
3.1 原料の化学構造に基づいた力学物性制御
3.2 フィラー添加による力学物性制御
3.3 接着材料
3.4 生体材料
3.5 新しいポリウレタンの合成法
4 おわりに -
月刊バイオインダストリー 2015年6月号
¥3,960
【特集】おいしさを知る・引き出す科学
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特集にあたって
Introduction
山本隆 (畿央大学)
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おいしく感じるしくみ ―味覚の受容と脳内情報処理―
Peripheral and Central Mechanisms of Palatability
山本隆 (畿央大学)
飲食時に生じる各種の感覚情報は大脳皮質前頭葉の眼窩前頭皮質で統合され, 快と判断されれば, すなわちおいしいということになる。情報は報酬系や扁桃体にも送られ, β-エンドルフィン, ドーパミン, オレキシンなどの脳内物質が連鎖的に働き, 快感, 摂取欲, 摂取行動が亢進する。過剰な脳内物質の放出はやみつきを生じる。
【目次】
1. おいしさとは?
2. おいしさを出す感覚性要因
3. 本能としてのおいしさと学習によるおいしさ
4. おいしさの種々相
5. おいしさとコク
6. 味覚末梢受容機構
7. 味覚の中枢経路と味覚情報処理
8. 脳内物質によるおいしさと食行動の発現
9. おいしさとやみつき
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食事に起因する味嗜好性の変化
Changes in Taste Palatability induced by Eating Experience
成川真隆 (東京大学大学院)
三坂巧 (東京大学大学院)
ヒトは生まれつきおいしい味を好む。しかし一方で, 食べ物に対する好き嫌いは生理状態や年齢, 食経験により大きく変化する。本稿では食事に起因して生じる味嗜好性の変化0について, 筆者らが得た最近の知見を含め概説する。
【目次】
1. はじめに
2. 本能的な味の嗜好性
3. 食経験による嗜好性の変化
4. 食経験による脳内分子の発現変動
5. 母親から子に伝えられる味の記憶
6. 栄養状態に起因した嗜好性変化
7. おわりに
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培養細胞評価系を用いた食味評価
Evaluation of Taste Using Cell-Based Assay
櫻井敬展 (日清食品ホールディングス(株))
阿部啓子 (東京大学大学院)
分子生物学的手法の進展により味覚受容機構が明らかになりつつある。味覚受容体の発見により構築された味覚受容体発現培養細胞評価系は, ヒトの味覚を反映した新たな食味の評価手法として注目を集めている。本稿では, 呈味増強・抑制素材の探索に焦点を当て, 近年の研究成果を交えつつ解説する。
【目次】
1. はじめに
2. 味覚の受容体
3. 味覚受容体発現培養細胞を用いた味物質評価系
4. 味覚受容体発現培養細胞評価系を用いた呈味調節素材の探索
5. おわりに
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テクスチャーを改変しておいしく
Texture Modification of Food
舟木淳子 (福岡女子大学)
テクスチャーはおいしさを感じる上で重要な役割を果たしていると考えられる。よりおいしく, 食べやすくするため, 様々なテクスチャーの食品が求められている。本稿では, テクスチャー改変の例として, 酵素を用いた豆腐のテクスチャー改変を紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. テクスチャーとは
3. テクスチャーの重要性
4. テクスチャー改変の研究例
4.1 豆腐中の大豆イソフラボンのアグリコン化
4.2 豆腐のテクスチャー改変
4.3 プロテアーゼ処理豆腐の利用
5. おわりに
-------------------------------------------------
水溶性多糖が旨味の後味に与える影響
Effects of Water Soluble Polysaccharide on Umami Aftertaste
今村美穂 (キッコーマン(株))
後味は, 食品を飲み込んだ後も持続する味を意味し, 食品の嗜好性や選択性に影響する。我々は, 和食の品質に重要な旨味の後味に着目し, つゆをモデルに, しょうゆ中の水溶性多糖がこれを抑制することを明らかにした。本稿では, 本研究およびしょうゆが美味しさを損ねることなく, 約30%食塩摂取を低減できることを示した研究について紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. つゆの旨味の後味に関与する成分の研究
2.1 しょうゆとだしと旨味の後味
2.2 つゆの旨味の後味を抑制するしょうゆ中の高分子成分
2.3 つゆの旨味の後味を抑制するしょうゆ中の水溶性多糖
2.4 しょうゆ中の水溶性多糖
2.5 多糖が食品の品質に与える影響
3. しょうゆによる食品の減塩効果
3.1 しょうゆによる美味しさの保持と減塩
3.2 しょうゆの減塩効果の普遍性
4. おわりに
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食肉のおいしさと「こく」
Palatability and“ Koku Attributes” of Meats
西村敏英 (日本獣医生命科学大学)
江草愛 (日本獣医生命科学大学)
食肉は, 美味な食品の一つであり, 老若男女を問わず食されている。食肉は, 一般的に, 適度に軟らかく, ジューシーであると同時に, うま味が強くて, 動物種の特徴ある香りと調理したときの肉様の香りが感じられるものが好まれる。このようなおいしさは, と殺直後の筋肉には認められず, 筋肉を一定期間低温で貯蔵する熟成処理によりもたらされることはよく知られている。最近, 食べ物のおいしさに寄与する要因として, 「こく」の重要性がわかってきた。本稿では, 食べ物のおいしさに寄与する「こく」を解説すると同時に, 食肉のおいしさにおける「こく」とは何かを解説する。
【目次】
1. はじめに
2. 食べ物のおいしさを決める要因
3. 「こく」の定義
4. 「こく」付与物質とその分類
4.1 味に関する「こく」付与物質
4.1.1 「こく」付与呈味物質
4.1.2 「こく」付与味修飾物質
4.2 香りに関する「こく」付与物質
4.2.1 「こく」付与香気物質
4.2.2 「こく」付与香気修飾物質
4.3 食感に関わる「こく」付与物質(「こく」付与物理刺激物質)
5. 食肉のおいしさと「こく」
5.1 食肉のおいしさ
5.2 食肉のおいしさを引き出す熟成
5.3 食肉のおいしさに関わる「こく」とは
6. まとめ
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嗅覚刺激を利用したおいしさ増強技術
Taste Enhancement by Olfaction
下田満哉 (九州大学)
本稿では, 匂いがないはずの呈味液の味覚応答に嗅覚が関与している可能性について述べた。味覚が嗅覚を誘導するのは, 長年の学習効果に依存すると考え得る。その結果, 嗅覚により味覚応答の増強が起こると考えた。セロリの匂いによる「こく味」増強や醤油の匂いによる「塩味」や「うま味」の増強では, 呈味質と関連の深い匂いによる味覚の増強が惹起された。
【目次】
1. はじめに
2. 呈味物質は匂いを伴うのか (Do Tastants Have a Smell? )
3. セロリの香りは「こく味」を増強する
4. 醤油の香りは塩味を増強する
5. まとめ
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BIO BUSINESS
Point of Care(POC)遺伝子検査技術の開発動向
The Development Trend of POC Genetic Testing Technology
佐野創太郎 ((株)カネカ)
宮本重彦 ((株)カネカ)
遺伝子検査は検出感度に優れた検査法であるが, 専用の大型装置や煩雑な操作を必要とするため, 診療所や検疫所などの小規模施設への普及が妨げられていた。この問題の解決のため, 遺伝子検査の簡便・迅速化技術の開発が進められており, 本稿ではその内容に関して紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. 検体前処理技術
2.1 溶解処理
2.2 精製処理(バインド・エリュート法)
2.3 核酸迅速抽出法
3. 核酸増幅法
3.1 PCR法
3.2 等温核酸増幅法
3.3 コンタミネーションリスクの抑制
4. 増幅核酸検出技術
4.1 蛍光検出法
4.2 目視検出法
4.3 ラテラルフロー型チップ
5. おわりに
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月刊バイオインダストリー 2019年5月号
¥4,950
井上國世 京都大学
伊藤圭祐 静岡県立大学
寺田祐子 静岡県立大学
河原崎泰昌 静岡県立大学
松井健二 山口大学
望月智史 山口大学
伊福伸介 鳥取大学
村上 洋 大阪産業技術研究所
桐生高明 大阪産業技術研究所
木曽太郎 大阪産業技術研究所
中野博文 園田学園女子大学
田尾龍太郎 京都大学
森本康一 近畿大学
國井沙織 近畿大学
星 由紀子 天野エンザイム(株)
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【特集】食品・バイオにおける最新の酵素応用 I
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特集にあたって
Introduction
食品およびバイオ分野における酵素応用の進歩には目を見張るものがある。その応用範囲は多岐にわたる。酵素応用の全貌を正しく理解し,咀嚼して自らの研究・開発に反映させることが,はなはだ困難になっている。本特集では,「食品・バイオにおける最新の酵素利用」と題し,本分野における最近の興味深い話題を取りまとめた。バイオインダストリー誌5 月号~6 月号をまたぐ特集号である。まず,ご多用にも拘らず,こころよくご執筆をお引き受けいただいた先生方に御礼申し上げたい。
本特集が,食品およびバイオ分野における酵素の応用のみならず,ひろく酵素の科学と技術に関わる研究者,技術者,学生諸氏にとって,研究や学習の一助となれば,執筆者一同にとり望外の幸いである。
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総論:酵素の応用
General, Application of Enzyme
【目次】
1 酵素応用の現状と課題
1.1 酵素応用の動向
1.2 世界の産業酵素市場
1.3 日本の産業酵素市場
2 注目すべきトピックス
2.1 新規な酵素分類EC 7(トランスロカーゼ)が新設された
2.2 地盤改良技術およびバイオミネラリゼーション
2.3 プラスチックごみとマイクロプラスチックの問題
2.4 注目すべき問題その3:プラスチックを分解する酵素
2.5 食品添加物と腸内細菌
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合成ペプチドライブラリーと組み換え酵素を用いた機能性ペプチドの探索
Functional Screening of Food Peptides Using Synthetic Peptides Library and Recombinant Enzyme
健康志向の高まりとともに機能性食品の需要が高まっており,混合物である食品中から有効成分を効率的に探索する方法論の開発は重要な課題となっている。本稿では筆者らが取り組んできたジペプチジルペプチダーゼIV阻害ペプチドの研究を例に,合成ペプチドと安価な組み換え酵素を用いた機能性ペプチド探索法を紹介する。
【目次】
1 はじめに
1.1 機能性食品ペプチド
1.2 機能性ペプチドの探索
2 ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP-IV
2.1 DPP-IVの阻害
2.2 DPP-IVの種差
2.3 阻害剤探索への組み換えhDPP-IVの利用
2.4 食品由来のhDPP-IV阻害ペプチド探索の問題点
3 hDPP-IV阻害ペプチドの探索
3.1 ジペプチドのhDPP-IV阻害効果
3.2 hDPP-IV阻害ジペプチドの網羅的解析
3.3 コンベンショナルアプローチにより見いだされてきたhDPP-IV阻害ペプチドとの比較
3.4 合成ペプチドライブラリーの網羅的解析データを用いた茶殻由来hDPP-IV阻害ペプチドの探索
4 まとめ
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植物の脂質/ 脂肪酸から酸素添加反応を経て生成される代謝物群(オキシリピン)とその生合成酵素
Plant Oxylipins, Metabolites Formed from Lipids Through Oxygenation Reaction,and Enzymes Involved in Their Formation
【目次】
1 はじめに
2 みどりの香りの生理生態学的役割
3 食品フレーバーとしてのみどりの香り
4 みどりの香り生合成経路
5 リポキシゲナーゼ
6 ヒドロペルオキシドリアーゼとその関連酵素
7 結語
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カニ殻由来キチンナノファイバーの製造と食品分野への応用
Preparation and Food Application of Chitin Nanofibers from Crab Shell
【目次】
1 はじめに
2 カニ殻由来の新素材「キチンナノファイバー」
3 部分脱アセチル化キチンナノファイバー
4 キチンナノファイバーの服用に伴う効果
4.1 服用に伴う腸管の炎症抑制
4.2 服用に伴う抗肥満効果
4.3 服用に伴う血中コレステロール値の軽減効果
4.4 服用に伴う血中代謝産物に及ぼす影響
4.5 服用に伴う腸内環境に及ぼす影響
5 おわりに
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Paraconiothyrium sp. KD-3 株由来乳糖酸化酵素を用いたラクトビオン酸カルシウムの生産
Enzymatic Conversion of Lactose to Calcium Lactobionate by an Intercellular Oxidase from Paraconiothyrium sp. KD-3
子嚢菌Paraconiothyrium sp. KD-3 の培養上清より,乳糖酸化活性を有するFAD 酵素を得た。本酵素は酸素を電子受容体に用いて乳糖の還元末端アルデヒド基を酸化し,ラクトビオン酸塩を生成した。ラクトビオン酸生産時,本酵素は市販のヘキソースオキシダーゼ剤に比べ安定性の点で有利であった。
【目次】
1 はじめに
2 乳糖酸化活性を有する酵素
3 Paraconiothyrium sp. KD-3株由来乳糖酸化酵素の性質
4 Paraconiothyrium sp. KD-3株由来酵素および市販ヘキソースオキシダーゼ酵素剤の比較
5 Paraconiothyrium sp. KD-3株由来酵素による乳糖からラクトビオン酸への変換
6 固定化酵素を用いたラクトビオン酸の生産
7 その他のアルドースのアルドン酸への酵素的変換
8 おわりに
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バラ科サクラ属果樹類におけるS-RNase 依存性配偶体型自家不和合性
The S-RNase-based Gametophytic Self-incompatibility System in Prunus( Rosaceae) Fruit Tree Species
近年,植物の自家不和合性を支配する遺伝子と自家不和合性反応機構が次々と明らかにされ,自家不和合性が生物学や農学の分野で改めて脚光を浴びるようになってきた。本稿では,果樹類の中でも研究が進んでいるバラ科サクラ属果樹の配偶体型自家不和合性について概説する。
【目次】
1 はじめに
2 自家不和合性の分類と遺伝制御
3 S-RNase依存性配偶体型自家不和合性における認識反応特異性の決定因子
4 ナス科,オオバコ科,バラ科リンゴ亜連における協調的非自己認識モデル
5 バラ科サクラ属にみられる花粉側自家和合性変異型Sハプロタイプ
6 バラ科サクラ属における競合的相互作用の欠如
7 バラ科サクラ属におけるジェネラルインヒビターモデル
8 バラ科サクラ属に特異な自家不和合性認識機構に基づいた効果的な自家和合性育種法
9 おわりに
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コラーゲン酵素分解物の再生医療および食品科学への応用
Application of Low Adhesive Scaffold Collagen to Regenerative Medicine and Food Science
コラーゲンは動物組織に含まれる生体を構造的・機能的に維持するための必須分子である。その一方で,コラーゲンあるいはゼラチン(熱変性コラーゲン)は食品材料としても歴史が古く,食品加工でも欠かせないものである。さらにコラーゲンは抗原性が低いので再生医療分野でも活用されており,利用価値が高まっている。近年,分子量がわずかに小さいコラーゲン酵素分解物が従来のコラーゲンと異なる性質を示すことが分かってきた。その違いを明確にするため,線維構造,粘度,ゲルの硬さなどを調べたので概説する。
【目次】
1 はじめに
2 コラーゲンの安全性
3 動物由来コラーゲンの抗原性
4 再生医療で使われる細胞培養の足場としてのコラーゲン
5 LASColを用いた接着型3次元スフェロイドの形成と応用
6 LASCol線維の観察
7 LASColの粘度と細胞培養条件でのLASColゲルの硬さ
8 まとめ
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マルトトリオシル転移酵素の開発,反応機構,および澱粉加工への応用
Development of Maltotriosyl Transferase and Use Thereof for Starch Processing
マルトトリオシル転移酵素は澱粉等α-1, 4-グルコシド結合で連結した 4 糖以上の非還元末端に作用し,3 糖単位での糖転移反応を触媒する酵素である。食品加工において重要な澱粉を低分子化することなく,食味への影響や物性変化を起こしにくい新たな老化防止対策として期待される。本稿では,マルトトリオシル転移酵素の開発から,その性質,澱粉加工への可能性について紹介する。
【目次】
1 糖転移酵素とは
2 グライコトランスフェラーゼ「アマノ」とは
3 酵素化学的性質と構造
4 グライコトランスフェラーゼ「アマノ」の用途
5 おわりに