【特集】トランジスタ医療―半導体バイオ応用の現状と展望―
--------------------------------------------------
特集にあたって
Introduction
坂田利弥 (東京大学大学院)
------------------------------------------------
診断医療に向けた半導体バイオセンシング技術
Semiconductor-based Biosensing Technology for Clinical Diagnosis
坂田利弥 (東京大学大学院)
本稿では, 診断医療分野における半導体バイオセンシング技術の応用の可能性について紹介する。特に, 生体機能に関連深いイオン挙動に着目し, そのイオンの電荷を直接計測可能な半導体原理ならではの利点について例を挙げながら概説する。
【目次】
1. はじめに
2. 生命の最小単位「細胞」のセンシング
2.1 移植前診断に向けた ART on a Semiconductor ductor
2.2 造血幹細胞の個別診断に向けた網羅的バイオセンシング技術の創製
2.3 アポトーシスセンシングによる副作用・薬効評価
2.4 飢餓適応機構としてのオートファジーの非標識リアルタイムモニタリング
2.5 再生軟骨細胞分化挙動の静水圧負荷時 in situ モニタリング
3. 半導体/バイオインターフェース構造の制御と理解
3.1 Molecular charge contact 法による生体分子計測
3.2 採血フリーグルコーストランジスタ
3.3 酵素活性イオンセンシングに向けた一方向固定酵素ゲートトランジスタの創製
3.4 アレルギー診断に向けた半導体原理に基づくバイオセンシング技術
3.5 分子動力学シミュレーションによる半導体/バイオインターフェース構造の解明
4. マルチバイオパラメータの同時計測技術
------------------------------------------------
イメージセンサ技術のバイオ医療応用
Image Sensor Technology for Biomedical Applications
太田淳 (奈良先端科学技術大学院大学)
イメージセンサ技術のバイオ, 医療への応用について概説を行う。パッケージングの観点から, 機器装着型, 容器封入型, ディッシュ型, 完全埋植型に分類して, 各々について事例を取り上げながら, 解説を行う。機器装着型では高感度と高速センサを取り上げ, 容器封入型ではカプセル内視鏡を取り上げる。またディッシュ型としてレンズレスイメージングを取り上げる。完全埋植型では, 人工視覚と脳内埋植デバイスについて紹介する。最後にまとめと今後の展望について述べる。
【目次】
1. はじめに
2. 高感度イメージセンサ
2.1 EMCCD
2.2 SPAD
3. 高速イメージセンサ
4. カプセル内視鏡
5. ディッシュ型デバイス
6. 完全埋植型
7. おわりに
------------------------------------------------
フレキシブルエレクトロニクスを用いた生体計測センサ
Bio-sensors using Flexible Electronics
関谷毅 (大阪大学)
薄膜, 軽量, 柔軟性に富む有機エレクトロニクスは, 新しい生体計測センサとしての用途が期待されている。筆者の研究グループでは, 有機材料を主要部材としたフレキシブルエレクトロニクス技術を開発してきた。本稿では, この研究背景や要素技術, そして具体的な応用例として触覚センサ, ワイヤレス水分センサシステムについて紹介したい。より具体的には 1.2μm という薄膜の高分子フィルム上に, 真空蒸着技術を用いて高度に集積化された有機トランジスタシステムを構築した。人の皮膚の形状に合わせることができるなど薄膜フィルムの持つ表面形状追従性を活かし, 生体情報を計測するためのシート型センサアレイについて紹介する。さらに有機トランジスタによる発振回路を利用しワイヤレス水分センサシステムを開発した。このシステムは, 離れたところからワイヤレスで電力供給が可能で, 水分検出センサからのデータも最適な通信条件で取ることができる。
【目次】
1. 研究背景と目的
2. フレキシブルエレクロニクス
2.1 触覚センサ
2.2 水分センサシステム
3. 課題と将来展望
------------------------------------------------
グラフェンデバイスによるバイオセンサへの応用
Biological Sensors Based on Graphene Devices
前橋兼三 (東京農工大学)
松本和彦 (大阪大学)
グラフェンは炭素原子のみから構成される究極の2次元物質である。その特異的なバンド構造から電子および正孔の移動度が室温において驚異的に高くなることが知られている。本稿では, グラフェンをチャネルとして用いた電界効果トランジスタにおいて, グラフェン表面上での生体分子認識反応を利用することによって, 生体分子を電気的に検出するバイオセンサについて紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. グラフェンの特性
3. グラフェンデバイスおよび生体分子の検出メカニズム
4. タンパク質の選択的検出
5. おわりに
------------------------------------------------
集積化センサ技術による非標識バイオイメージングデバイス
Non Label Bio-Image Sensor with CMOS Integrated Technology
澤田和明 (豊橋技術科学大学)
CMOSイメージセンサ技術とバイオセンサ技術を融合した, 集積化センサ技術による新たな非標識バイオイメージセンサデバイスを開発している。水素検出領域にイオン選択性を持つ様々な感応膜を修飾することでNaイオン, Kイオンなどを検出することが可能である。また, 酵素をセンサ表面に固定化することで細胞からの神経伝達物質の放出過程を画像化することに成功している。
------------------------------------------------
バイオセンサアレイ集積回路
Biosensor Array Integrated Circuit
中里和郎 (名古屋大学)
バイオセンサアレイ集積回路は, 多種の化学反応をチップ上で同時に行い, 化学反応の結果を電気信号として出力する。トランスデューサとして, 電位, 電流, インピーダンスによる電気化学計測を用いた方法があり, これらを統合したマルチモーダルセンサアレイは統合的診断を可能にするとともにチップの汎用化に寄与する。
【目次】
1. はじめに
2. 電位検出法
3. 電流検出法
4. インピーダンス検出法
5. マルチモーダルセンサアレイ
------------------------------------------------
大規模分子動力学法による半導体 / バイオインターフェース構造の解明
Elucidation of Semiconductor/Bio-interface Structure with Massive Classical Molecular Dynamics Simulation
前川侑毅 (東京大学大学院)
澁田靖 (東京大学大学院)
坂田利弥 (東京大学大学院)
本稿では, これまで実験的には理解が困難であった半導体バイオセンサの固液界面でのイオン挙動に及ぼす生体分子の影響について, 分子動力学法に基づくシミュレーションにより考察した結果を紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. 半導体バイオセンシング技術
3. 古典分子動力学法
4. 固液界面における分子動力学計算
5. FETバイオセンサによる実験結果
6. DNA 分子を含む固液界面のイオン挙動シミュレーション
6.1 計算条件
6.2 計算結果
7. おわりに
------------------------------------------------
≪BIO R&D≫
細胞が接着しにくくなるI型コラーゲンの開発 ―骨芽細胞への分化誘導能の可能性―
Development of Low Adhesive Scaffold Collagen:Application to Osteogenic Differentiation
森本康一 (近畿大学)
國井沙織 (近畿大学)
幹細胞などを用いた再生医療・医学の発展のためには, 生体に模した三次元培養法や分化誘導能をもつ材料などが求められる。筆者らは, 従来と異なる末端配列をもつコラーゲン分子を開発した。播種した細胞は開発したコラーゲンに接着しにくくなることを見出した。本稿では, 接着性が低下したコラーゲンにより形成した細胞凝集塊(スフェロイド)の特徴と骨芽細胞への分化能の亢進について述べる。
【目次】
1. はじめに
2. 単層培養から三次元培養へ
3. 低接着性I型コラーゲンの開発
4. LASColの細胞への作用について
5. 今後の展望
6. おわりに
------------------------------------------------
≪BIO R&D≫
新鮮ヒト肝細胞の三次元細胞培養による薬物性肝障害予測システム
3D Cell-culture System for DILI(Drug Induced Liver Injury)Prediction with Fresh Human
島川優 (東洋合成工業(株))
城村友子 (東洋合成工業(株))
副作用により使用中止になる薬の約30%が薬物性肝障害によるものとの報告がある。また投与部位別にヒト副作用と動物データの一致性を見ると, 肝毒性は約50%と低く, しかも, 肝臓のヒト副作用は, 開発初期段階ではなく, 第II相・第III相で初めて見られる例が多いという報告がある。新薬開発の早い段階から, ヒトにおける薬物性肝障害が高確率で予測できれば, 薬の安全性を高めることが可能となり, QOLの向上に繋がる可能性がある。本稿では, 薬物性肝障害予測試験用として開発した, 経済的でハイスループットアッセイに対応した, 精度の高い三次元新鮮ヒト肝細胞培養システムについて紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. Cell-able(R)
3. PXB-cells TM
4 .ImageXpressTM MicroXLS
5. DILI( Drug Induced Liver Injury) 予測系の構築
6. 試験結果とLTKB+Clinical DILI との比較
7. まとめ
8. 今後の展望
------------------------------------------------
BIO BUSINESS
世界規模で見たバイオプラスチックの需給動向
A Global Trend of the Bioplastics Market
宮森映理子 (みずほ情報総研(株))
【目次】
1. はじめに
2. バイオプラスチック市場の変遷
2.1 バイオプラスチックの歴史
2.2 上市されるバイオプラスチックの変遷
2.3 世界のバイオプラスチックの市場規模推移
3. バイオプラスチックの供給動向
3.1 バイオプラスチック供給国
3.2 供給されるバイオプラスチックの種類
3.3 具体的な製造事例紹介
4. バイオプラスチック市場拡大のドライバー
4.1 バイオプラスチックの分類
4.2 バイオプラスチック市場拡大のドライバー
5. バイオプラスチック市場拡大のための各国政策
5.1 主要国の政策実施状況
5.2 ドライバーを意識した政策実施に向けて
6. 今後のバイオプラスチック市場の展望