【特集】おいしさを知る・引き出す科学
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特集にあたって
Introduction
山本隆 (畿央大学)
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おいしく感じるしくみ ―味覚の受容と脳内情報処理―
Peripheral and Central Mechanisms of Palatability
山本隆 (畿央大学)
飲食時に生じる各種の感覚情報は大脳皮質前頭葉の眼窩前頭皮質で統合され, 快と判断されれば, すなわちおいしいということになる。情報は報酬系や扁桃体にも送られ, β-エンドルフィン, ドーパミン, オレキシンなどの脳内物質が連鎖的に働き, 快感, 摂取欲, 摂取行動が亢進する。過剰な脳内物質の放出はやみつきを生じる。
【目次】
1. おいしさとは?
2. おいしさを出す感覚性要因
3. 本能としてのおいしさと学習によるおいしさ
4. おいしさの種々相
5. おいしさとコク
6. 味覚末梢受容機構
7. 味覚の中枢経路と味覚情報処理
8. 脳内物質によるおいしさと食行動の発現
9. おいしさとやみつき
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食事に起因する味嗜好性の変化
Changes in Taste Palatability induced by Eating Experience
成川真隆 (東京大学大学院)
三坂巧 (東京大学大学院)
ヒトは生まれつきおいしい味を好む。しかし一方で, 食べ物に対する好き嫌いは生理状態や年齢, 食経験により大きく変化する。本稿では食事に起因して生じる味嗜好性の変化0について, 筆者らが得た最近の知見を含め概説する。
【目次】
1. はじめに
2. 本能的な味の嗜好性
3. 食経験による嗜好性の変化
4. 食経験による脳内分子の発現変動
5. 母親から子に伝えられる味の記憶
6. 栄養状態に起因した嗜好性変化
7. おわりに
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培養細胞評価系を用いた食味評価
Evaluation of Taste Using Cell-Based Assay
櫻井敬展 (日清食品ホールディングス(株))
阿部啓子 (東京大学大学院)
分子生物学的手法の進展により味覚受容機構が明らかになりつつある。味覚受容体の発見により構築された味覚受容体発現培養細胞評価系は, ヒトの味覚を反映した新たな食味の評価手法として注目を集めている。本稿では, 呈味増強・抑制素材の探索に焦点を当て, 近年の研究成果を交えつつ解説する。
【目次】
1. はじめに
2. 味覚の受容体
3. 味覚受容体発現培養細胞を用いた味物質評価系
4. 味覚受容体発現培養細胞評価系を用いた呈味調節素材の探索
5. おわりに
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テクスチャーを改変しておいしく
Texture Modification of Food
舟木淳子 (福岡女子大学)
テクスチャーはおいしさを感じる上で重要な役割を果たしていると考えられる。よりおいしく, 食べやすくするため, 様々なテクスチャーの食品が求められている。本稿では, テクスチャー改変の例として, 酵素を用いた豆腐のテクスチャー改変を紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. テクスチャーとは
3. テクスチャーの重要性
4. テクスチャー改変の研究例
4.1 豆腐中の大豆イソフラボンのアグリコン化
4.2 豆腐のテクスチャー改変
4.3 プロテアーゼ処理豆腐の利用
5. おわりに
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水溶性多糖が旨味の後味に与える影響
Effects of Water Soluble Polysaccharide on Umami Aftertaste
今村美穂 (キッコーマン(株))
後味は, 食品を飲み込んだ後も持続する味を意味し, 食品の嗜好性や選択性に影響する。我々は, 和食の品質に重要な旨味の後味に着目し, つゆをモデルに, しょうゆ中の水溶性多糖がこれを抑制することを明らかにした。本稿では, 本研究およびしょうゆが美味しさを損ねることなく, 約30%食塩摂取を低減できることを示した研究について紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. つゆの旨味の後味に関与する成分の研究
2.1 しょうゆとだしと旨味の後味
2.2 つゆの旨味の後味を抑制するしょうゆ中の高分子成分
2.3 つゆの旨味の後味を抑制するしょうゆ中の水溶性多糖
2.4 しょうゆ中の水溶性多糖
2.5 多糖が食品の品質に与える影響
3. しょうゆによる食品の減塩効果
3.1 しょうゆによる美味しさの保持と減塩
3.2 しょうゆの減塩効果の普遍性
4. おわりに
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食肉のおいしさと「こく」
Palatability and“ Koku Attributes” of Meats
西村敏英 (日本獣医生命科学大学)
江草愛 (日本獣医生命科学大学)
食肉は, 美味な食品の一つであり, 老若男女を問わず食されている。食肉は, 一般的に, 適度に軟らかく, ジューシーであると同時に, うま味が強くて, 動物種の特徴ある香りと調理したときの肉様の香りが感じられるものが好まれる。このようなおいしさは, と殺直後の筋肉には認められず, 筋肉を一定期間低温で貯蔵する熟成処理によりもたらされることはよく知られている。最近, 食べ物のおいしさに寄与する要因として, 「こく」の重要性がわかってきた。本稿では, 食べ物のおいしさに寄与する「こく」を解説すると同時に, 食肉のおいしさにおける「こく」とは何かを解説する。
【目次】
1. はじめに
2. 食べ物のおいしさを決める要因
3. 「こく」の定義
4. 「こく」付与物質とその分類
4.1 味に関する「こく」付与物質
4.1.1 「こく」付与呈味物質
4.1.2 「こく」付与味修飾物質
4.2 香りに関する「こく」付与物質
4.2.1 「こく」付与香気物質
4.2.2 「こく」付与香気修飾物質
4.3 食感に関わる「こく」付与物質(「こく」付与物理刺激物質)
5. 食肉のおいしさと「こく」
5.1 食肉のおいしさ
5.2 食肉のおいしさを引き出す熟成
5.3 食肉のおいしさに関わる「こく」とは
6. まとめ
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嗅覚刺激を利用したおいしさ増強技術
Taste Enhancement by Olfaction
下田満哉 (九州大学)
本稿では, 匂いがないはずの呈味液の味覚応答に嗅覚が関与している可能性について述べた。味覚が嗅覚を誘導するのは, 長年の学習効果に依存すると考え得る。その結果, 嗅覚により味覚応答の増強が起こると考えた。セロリの匂いによる「こく味」増強や醤油の匂いによる「塩味」や「うま味」の増強では, 呈味質と関連の深い匂いによる味覚の増強が惹起された。
【目次】
1. はじめに
2. 呈味物質は匂いを伴うのか (Do Tastants Have a Smell? )
3. セロリの香りは「こく味」を増強する
4. 醤油の香りは塩味を増強する
5. まとめ
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BIO BUSINESS
Point of Care(POC)遺伝子検査技術の開発動向
The Development Trend of POC Genetic Testing Technology
佐野創太郎 ((株)カネカ)
宮本重彦 ((株)カネカ)
遺伝子検査は検出感度に優れた検査法であるが, 専用の大型装置や煩雑な操作を必要とするため, 診療所や検疫所などの小規模施設への普及が妨げられていた。この問題の解決のため, 遺伝子検査の簡便・迅速化技術の開発が進められており, 本稿ではその内容に関して紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. 検体前処理技術
2.1 溶解処理
2.2 精製処理(バインド・エリュート法)
2.3 核酸迅速抽出法
3. 核酸増幅法
3.1 PCR法
3.2 等温核酸増幅法
3.3 コンタミネーションリスクの抑制
4. 増幅核酸検出技術
4.1 蛍光検出法
4.2 目視検出法
4.3 ラテラルフロー型チップ
5. おわりに