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【特集】微細藻類が生み出すオイル/成分の産業展望
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リン欠乏応答性プロモーターを利用したナンノクロロプシス油脂合成の改変
A Phosphorus Starvation-inducible Promoter is Effective in Manipulating TAG Synthesis in Nannochloropsis
岩井雅子 (東京工業大学)
太田啓之 (東京工業大学)
近年, 藻類油脂の産業利用が話題になっているが, 藻類では栄養欠乏時に油脂などが大量に細胞内に蓄積することが知られている。最近我々は, 特に植物で研究を行ってきたリン欠乏時における膜脂質転換の仕組みを藻類に活用することで, 藻類の油脂蓄積の改変に成功した。本稿では研究の現状と今後の展望についてモデル藻類であるクラミドモナスと油脂高生産藻であるナンノクロロプシスを中心に述べる。
【目次】
1. 植物における油脂代謝改変研究
2. 藻類における油脂代謝研究
3. クラミドモナスを用いた油脂蓄積
4. ナンノクロロプシスを用いた油脂蓄積の応用
5. 今後の展望
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海洋微細藻類によるグリーンオイル生産における屋外大量培養技術開発
Development of Outdoor Mass Cultivation for Green Oil Production Using Marine Microalgae
松本光史 (電源開発(株))
野島大佑 (国立大学法人 東京農工大学)
田中剛 (国立大学法人 東京農工大学)
微細藻類によるグリーンオイル生産技術では, 安定的に屋外で微細藻類を培養・生産する技術の確立が一貫生産プロセスを構築する上で非常に重要となる。さらに, 生み出されたグリーンオイルがしっかりとしたCO2削減効果を有する価値のあるものとするには, プロセス全体のエネルギー収支, CO2バランスが取れたプロセス技術としなければならない。本稿では, 特に屋外培養技術を中心にし, 上述した点について議論したい。
【目次】
1. はじめに
2. 微細藻類によるグリーンオイル生産一貫プロセスに求められるもの
3. グリーンオイル年間生産に向けた屋外培養技術
3.1 年間生産のハードル
3.2 ソラリス株, ルナリス株による年間を通じた屋外培養
3.3 屋外培養におけるグリーンオイル蓄積条件
3.4 培養規模の大型化と天然海水利用
4. ソラリス株におけるオイル蓄積機構の解明
5. ソラリスオイルのブランド化
6. まとめ
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微細藻類の大量培養システムの開発
Large-Scale-Culture Systems Development of Microalgae
増田篤稔 (玉川大学)
微細藻類は, 食品添加剤から試験薬の原材料まで利用されている。新規産業用の有用物質探査や燃料用途の研究などが継続的に行われており, 産業利用可能な有用物質も発見されるなど注目のバイオマス資源である。しかし, 産業化するためには, 低コストで安定的な生産技術が求められている。室内大量培養システム開発方法を解説し, 屋外培養での留意点を述べる。
【目次】
1. はじめに
2. 微細藻類培養装置開発に関する基礎的知見
2.1 培養槽における環境制御項目
2.2 光環境
2.3 溶存ガス環境
3. 設計における環境因子の定量方法
3.1 培養槽外郭周辺の光環境設計計算
3.2 培養槽内の光環境計測と培養器形状
3.2.1 光透過測定装置と結果
3.2.2 解析
3.2.3 考察
3.3 培養内におけるガス挙動
3.3.1 培養槽内における溶存酸素濃度動態について
3.3.2 培養槽を用いた溶存酸素動態の検討事例
4. 実用プラントにおける餌料用微細藻類培養システム開発
4.1 培養槽条件と設計と性能
4.2 実用プラントシステム
5. 屋外培養についての留意点
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微細藻類収穫用分離板型遠心分離機「三菱ディスクセパレータ」
Disc Type Centrifuge“Mitsubishi Disc Separator”for Harvest of Microalgae
加治圭介 (三菱化工機(株))
三菱化工機(株)は, 産学協同の一社藻類産業創成コンソーシアムに参画し, 「福島県再生可能エネルギー次世代技術開発事業」に採択された福島藻類プロジェクトで活動してきた。本稿では, 福島藻類プロジェクトの藻類バイオマス生産開発拠点で微細藻類の収穫・濃縮用として稼動する分離板型遠心分離機「三菱ディスクセパレータ」について紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. 三菱ディスクセパレータの特徴と構造
2.1 微細藻類の収穫・濃縮方法
2.2 分離板型遠心分離機の分離理論
2.3 排出機構
3. 微細藻類の収穫・濃縮工程の実証結果
3.1 藻類培養液
3.2 微細藻類の収穫率
3.3 濃縮液の濃度
4. おわりに
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金属触媒を用いた藻類オイルの軽質化
Production of Lighter Compounds from Algal Oils using Metal Catalysis
冨重圭一 (東北大学大学院工学研究科)
中川善直 (東北大学大学院工学研究科)
田村正純 (東北大学大学院工学研究科)
藻類が産生する重質な炭化水素を液体燃料として有用度の高い軽質なオイルへ変換して利用する方法について, オイルの炭化水素分子の骨格構造を維持したまま炭素―炭素結合を水素化分解する方法について紹介する。この方法は石油精製産業で用いられている固体酸触媒と金属触媒の二元機能型触媒と異なり, 藻類オイルが持つ構造的特徴を活かした生成物の利用を志向するものである。
【目次】
1. はじめに
2. 触媒の活性金属スクリーニング
3. Ru/CeO2触媒を用いたスクワランの水素化分解反応試験結果と従来触媒系との比較
4. Ru/CeO2触媒上の水素化分解反応を用いたスクワランの軽質化
5. Ru/CeO2触媒の構造的特徴
6. まとめ
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藻類を利用した持続可能な油脂原料の開発
Development of Sustainable Raw Materials of Fats and Oils using Microalgae
萩原浩 (花王(株))
筆者が所属する花王(株)は“社会のサステナビリティヘの貢献”を目的に, バイオマスの高度利用を中心とした先進的な環境技術研究を進めている。本稿では, 界面活性剤の原料である天然油脂の主成分「中鎖脂肪酸」を多く蓄える藻類の獲得, および「中鎖脂肪酸」の生成に寄与する酵素類を藻類より初めて見出すことに成功したので紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. ラウリン酸生産藻類の探索
3. 培地・培養条件の改良によるラウリン酸の生産性向上
4. 藻類由来の中鎖脂肪酸特異的Acyl-ACP thioesterase(TE)の発見
5. 藻類由来の中鎖脂肪酸特異的β-Ketoacyl ACP synthase(KAS)の発見
6. 最後に
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ヘマトコッカス藻から得られるアスタキサンチンの食品への展開
Food Application of Astaxanthin Derived from Haematococcus Algae
清水稔仁 (オリザ油化(株))
単少桀 (オリザ油化(株))
下田博司 (オリザ油化(株))
抗酸化作用を有するカロテノイドの一種であるアスタキサンチンは, ヘマトコッカス藻を産業的に培養し製造している。アスタキサンチンには多岐にわたる機能性が見出されており, 食品への応用も盛んである。本稿ではそのヘマトコッカス藻由来アスタキサンチンの安定性, 安全性, 機能性について紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. アスタキサンチン
3. アスタキサンチンの安定性
4. アスタキサンチンの安全性
5. アスタキサンチンの機能性
6. おわりに
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BIO R&D
加熱変性リゾチームの抗ノロウイルス性とこれを含むアルコール系製剤の開発
Research of Anti-Norovirus Activity of Heat Denatured Lysozyme and Development of Alcohol Based Disinfectant Containing it
武内章 (キユーピー(株))
東京海洋大学食品微生物学研究室との共同研究により, リゾチームを加熱変性したものに抗ノロウイルス活性があることが判った。この加熱変性リゾチームを含み, これ1本でノロウイルス・食中毒菌リスクを軽減できるアルコール系製剤を開発した道筋をご紹介する。
【目次】
1. はじめに
2. ヒトノロウイルスの代替ウイルスを評価系として使用する際の問題点
3. リゾチーム溶液の加熱変性条件とMNV感染価の低下の関係
4. 透過型電子顕微鏡(TEM)を用いたウイルス粒子の観察
5. PMAを使用するqRT-PCR法によるMNVとヒトノロウイルスのカプシド蛋白の破壊の確認
6. ウイルス不活性化を起こすアミノ酸配列領域の決定
7. 学術研究の成果を中核とした新規商材の商品開発戦略
8. 加熱変性リゾチーム含有アルコール製剤「リゾパワーNV」の開発
9. 本製剤と各種抗ノロウイルス剤との比較
10. 本製剤のタマゴアレルゲン
11. 本製剤の使用例
12. 今後の展望
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BIO BUSINESS
バイオポリエチレン(バイオPE)の市場
Market of Bio-based Polyethylene
【目次】
1. はじめに
2. PE の生産量と需要
2.1 低密度ポリエチレン
2.2 高密度ポリエチレン
3. バイオPE 関連企業動向