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  • 29MB
  • 2016/08/10

月刊バイオインダストリー 2016年8月号

シーエムシー出版

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【特集】介護食品の高機能化に期待される素材開発

《著者一覧》
丸田和彦 (株)林原
渡邉卓巳 コンビ(株)
鈴木 誠 ヒガシマル醤油(株)
前渕元宏 不二製油グループ本社(株)
長 秀吉 ユニテックフーズ(株)
柳原 彩 ユニテックフーズ(株)
宮村充彦 高知大学医学部
横田淳子 高知大学医学部
円谷陽一 埼玉大学名誉教授
東海林義和 埼玉大麦食品普及・食のモデル地域実行協議会アドバイザー
早川享志 岐阜大学
加藤節司 島根大学医学部
大野美穂 社会医療法人仁寿会
橋本道男 島根大学医学部
桝田哲哉 京都大学大学院農学研究科
吉野知子 東京農工大学大学院
本多 亨 東京農工大学大学院

《総目次》
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【特集】介護食品の高機能化に期待される素材開発

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トレハロースの介護食品への応用
Application of Trehalose to Nursing Care Food

 非還元性二糖トレハロースは, 様々な食品において多彩な機能を発揮し, 美味しさの向上や品質保持に加え, 最近では嚥下支援や健康機能も見出されるようになった。トレハロースによって, いつもの介護食を高度に進化させることが可能となり, 要介護者の健康寿命の延伸, QOL向上に働きかける。本稿では, トレハロースの介護食品への最新の取り組みについて解説する。

【目次】
1. 介護食品を取り巻く環境
2. トレハロースとは
3. 介護食をもっと美味しく嚥下しやすく
3.1 澱粉老化抑制
3.2 タンパク質変性抑制
3.3 離水抑制
3.4 冷凍耐性
3.5 温野菜の色調保持
3.6 矯臭
3.7 塩味増強
4. トレハロースの健康機能
5. おわりに

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殺菌乳酸菌EC-12の整腸・排便促進作用と床ずれ予防
Effects of Heat-Killed Lactic Acid Bacteria EC-12 on Defecation, Fecal Microflora and Pressure Ulcer

 近年, 乳酸菌に対し数多くの研究がなされ様々な生理活性が報告されている。介護・医療現場においても, 乳酸菌は注目の機能性食品素材である。しかし, 一般的な乳酸菌は生きている菌のため, 使用するにあたり, 保管条件であったり加工に対し制限がある。それに対し殺菌乳酸菌は加工特性に優れており, 長期保管も可能である。本稿では, 殺菌乳酸菌EC-12について整腸・排便促進作用と床ずれ予防に対する研究成果を紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. 整腸・排便促進作用
2.1 方法
2.2 結果
2.3 考察
3. 床ずれ予防
3.1 方法
3.2 結果
3.3 考察
4. おわりに

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鉄の吸収をサポートする大豆発酵多糖類
Promotive Effect of Shoyu Polysaccharides from Fermented Soybeans on Iron Absorption

 我々は, 醤油に含まれている天然成分「醤油多糖類」(SPS:Shoyu polysaccharides)が, 鉄吸収促進作用を有することをこれまでに明らかにしている。当社では, 大豆を原料に独自の醸造技術によりSPSの製造に成功しており, SPSを主成分とする「大豆発酵多糖類」を開発している。本稿では「大豆発酵多糖類」の特長とその利用方法について紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. 鉄吸収促進作用をもつSPS
3. SPSを主成分とする「大豆発酵多糖類」
4. 「大豆発酵多糖類」のラインナップ
5. 「大豆発酵多糖類(鉄)」を使用するメリット
6. おわりに

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大豆タンパク質および大豆ペプチドの機能性介護食品素材としての可能性 
Soy Protein and Soy Peptide as Functional Care Food Materials

 食品の機能性とは人体に対する食品の作用や働きのことで, 栄養機能, 嗜好・食感機能, 生体調節機能の三つの機能がある。本稿では, 大豆タンパク質および大豆ペプチドの生体調節機能に着目し, 機能性介護食品素材としての有用性・可能性について解説する。

【目次】
1. はじめに
2. 経腸栄養剤としての大豆タンパク質の有用性
3. 機能性介護食素材としての大豆タンパク質および大豆ペプチドの可能性
4. 大豆タンパク質のメタボリックシンドローム予防効果
5. 大豆ペプチドのロコモティブシンドローム予防効果
6. 大豆ペプチドの認知機能低下抑制作用
7. おわりに

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ペクチンによる新たなゼリーの紹介    
New Type of Jelly with Pectin

 ペクチンは柑橘類の皮やりんごの搾りかすから抽出される増粘多糖類であり水溶性食物繊維の代表格である。古くからジャムやデザートに使用されてきたゲル化剤であるが, 最近の研究によりLMペクチンのユニークな物性特性を見出したので報告する。

【目次】
1. ペクチンゲルのリセット性(再セット性)
2. リセットゲルの嚥下障害への応用
3. リセットゲルの包埋剤への応用
4. その他の応用
4.1 飲料分野
4.2 コーティングゼリーの分野
5. 今後の課題

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キウイフルーツ由来の肉・魚介類軟化剤“KFPE”の効果
KFPE~Natural Meat Tenderizer from Kiwifruit~

 肉や魚の食感を柔らかくし, 咀嚼・嚥下をより容易にさせるために, 市場には様々な軟化剤が存在する。肉のタンパク質の保水性を高める食塩・リン酸塩や, タンパク質を分解する酵素, 肉の組織内に水を抱いて留まる増粘多糖類や澱粉がその例として挙げられる。本稿では, タンパク質分解酵素“アクチニジン”を豊富に含むキウイフルーツ果汁由来の軟化剤“KFPE”の特徴的な作用を報告する。

【目次】
1. 食肉の軟化とは
2. キウイフルーツパウダー KFPE とは
3. スジ・繊維質に特異的に働く
3.1 豚ロース肉
3.2 牛スジ肉
3.3 タラ
4. 低温で活性を保持する
5. 優れた食品加工適性
6. 今後の応用~介護食~

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ショウガを利用した嚥下機能改善剤
Swallow Function Improvement Agents Using Ginger

 加齢や基礎疾患による嚥下反射低下を有する高齢者, 要介護者が急増している。嚥下反射を亢進させるという観点に立脚し, TRPV1 agonistであるgingerol, shogaolを機能性本体とするショウガを主成分とした口腔内崩壊(OD)錠を開発, 臨床評価を行い, 嚥下機能の低下した高齢者における有用性を認めた。

【目次】
1. はじめに
2. 嚥下反射
3. ショウガ含有口腔内崩壊錠の作成
4. ショウガ含有口腔内崩壊錠の嚥下機能改善機能の臨床的評価
5. 今後の課題
6. 研究体制

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大麦β-グルカンの健康維持増進機能
Barley β-Glucan and its Role in Health Maintenance and Promotion

 大麦は主要穀物の一つとして食されてきたが, 50年ほど前から国内生産量は激減し, 国民一人当たりの年間摂取量は50年前の約1/30(0.3kg, 2014年)になっている。近年, 大麦の水溶性食物繊維(主成分はβ-グルカン)の健康機能性が注目されている。大麦食品が健康維持増進, 生活習慣病の予防と改善, 介護食, 等で広く普及することが期待される。

【目次】
1. はじめに
2. 大麦と食物繊維
3. 食物繊維摂取量の推移
4. 大麦の健康機能性
5. 機能性大麦素材の開発
6. 埼玉大麦プロジェクトの取り組み
7. まとめ

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ルミナコイドによる消化管機能の活性化を介した高齢者のサポート
Support of Elderly People through Activating Intestinal Functions by Luminacoids

 ルミナコイドは“ヒトの小腸内で消化・吸収されにくく, 消化管を介して健康の維持に役立つ生理作用を発現する食物成分”である。その代表として, 食物繊維, オリゴ糖, 難消化性デキストリン, レジスタントスターチについてその所在, 成分, 機能を概説するとともに, 高齢者の健康サポートに役立つ特性を紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. ルミナコイドに包括される有用な難消化性物質について
2.1 食物繊維
2.2 オリゴ糖
2.3 難消化性デキストリン
2.4 レジスタントスターチ(RS)
3. ルミナコイドの有する特性と消化管で期待できる効果について
3.1 溶解性の違い, 保水性と水中沈定体積
3.2 陽イオン(カチオン)の吸着
3.3 非イオン性の吸着
3.4 腸内細菌に対する作用
4. ルミナコイドによる高齢者サポート
5. おわりに

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オメガ3 系脂肪酸の健康増進効果と介護食品への期待
Expectation of ω-3 Fatty Acids on Health Benefits and Care Foods

 ω-3系脂肪酸の健康増進・疾病予防効果に対するこれまでの観察・介入研究の成果, さらには認知機能低下に対するω-3系脂肪酸の有効性を中心に述べた。それらをもとに, いわゆる介護食品の高機能化に必要な論点を整理・考察した。ω-3系脂肪酸に関する介護食品への期待は極めて高く, さらなる充実が望まれる。

【目次】
1. はじめに
2. ω-3 系脂肪酸の生理機能
3. ω-3 系脂肪酸と心血管病
4. ω-3 系脂肪酸と呼吸器疾患
5. ω-3 系脂肪酸と代謝性疾患
6. ω-3 系脂肪酸と炎症性疾患
7. ω-3 系脂肪酸とがん
8. ω-3 系脂肪酸と精神・神経・感覚器疾患
9. ω-3 系脂肪酸とその他の疾患
10. ω-3 系脂肪酸と認知症
11. ω-3 系脂肪酸の介護食品への期待
11.1 日本人の食事摂取基準を満たしている
11.2 安全である
11.3 品質を保持できる
11.4 継続して摂取できる
11.5 健康増進・疾病予防効果
12. おわりに

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BIO R&D

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甘味タンパク質ソーマチンの甘味度強化
Thaumatin“Sweetened Up”by Site-Directed Mutagenesis

 甘味タンパク質ソーマチンはショ糖に比べモル比で10万倍, 重量比で3,000倍と非常に強い甘味を呈する。これまでソーマチンの甘味発現に重要な役割をするアミノ酸残基を同定してきたが, さらに甘味度を強化することは困難であった。本稿では, ソーマチンの甘味度強化に成功した知見について, 甘味物質, 甘味受容体, それら相互作用を交え紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. 甘味物質と甘味受容体との相互作用
2.1 甘味物質の特徴
2.2 甘味受容体
2.3 甘味受容体発現細胞を用いた相互作用部位の探索
2.4 Wedge model による相互作用部位の検討
3. 甘味タンパク質ソーマチンの高甘味度化
3.1 部位特異的変異による甘味発現部位の探索
3.2 ソーマチンの高分解能構造解析
3.3 Hyper sweet proteinの作製
4. おわりに

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効率的なセルロース分解に向けた多酵素-磁性粒子複合体の生合成
Biogenic Synthesis of Multi-enzyme and Magnetic Nanoparticle Complexes for Efficient Cellulose Hydrolysis

 持続可能な社会を構築するための環境負荷の少ない再生可能エネルギーとして, 木質系バイオマスからのバイオエタノールの生産が注目されている。本稿ではセルラーゼ分解菌が生産する多酵素複合体(セルロソーム)を模倣した人工タンパク質複合体の構築と, 菌体内に磁性粒子を生合成する磁性細菌を用いた多酵素-磁性粒子複合体の生合成について紹介する。

【目次】
1. はじめに
2. セルロース分解に用いられる酵素群の複合化
3. コヘシン-ドッケリン相互作用を利用した多酵素複合体の構築
4. マグネトソームディスプレイ技術を用いた多酵素-磁性粒子複合体の開発
4.1 マグネトソームディスプレイ技術
4.2 磁性粒子上への多酵素複合体の構築とセルロース分解への応用
5. おわりに